ニュースリリース

2006年03月31日

アモルファス酸化物半導体によるフレキシブルな薄膜トランジスタ(TFT) を用いてE Ink電子ペーパーの駆動に成功 〜 薄型で曲げられる次世代ディスプレイの実現を目指して 〜

 凸版印刷株式会社(東京都千代田区 代表取締役社長:足立直樹 以下、凸版印刷)は、アモルファス酸化物半導体を用いたフレキシブルな薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)を試作し、このTFTを使用して電気泳動方式のE Ink電子ペーパーを駆動することに成功しました。

 現在の液晶ディスプレイなどに用いられるTFTは,ガラス基板上に高温で作製されたアモルファスシリコンが一般的に用いられています。凸版印刷では、東京工業大学 細野秀雄教授のグループが開発したアモルファス酸化物半導体によるTFTが室温で作製でき、従来のアモルファスシリコンに比べても優れた特性を持つことに着目しました。この材料を用いて室温でプラスチック基材上にTFTを作製し、電気泳動方式のE Ink前面板と組み合わせることでフレキシブルな電子ペーパーを試作しました。アモルファス酸化物半導体TFTによるE Ink電子ペーパーの駆動は世界で初めてです。
 アモルファス酸化物半導体を用いたプラスチック(樹脂)基材のTFTは、ガラス基板のものに比べて薄く、軽量で、壊れにくく、曲げることができます。これらの特性により、薄型で軽量、フレキシブルな次世代ディスプレイが可能となります。

 今後、凸版印刷では、電子ペーパーに代表される薄型、軽量でフレキシブルなディスプレイの実用化を目標にフレキシブルなTFTの研究開発を進め、2008年度に実用レベルの試作品開発を目指します。また同時に製造プロセスへの印刷法の導入など、さらなる簡素化・低コスト化に向けた研究開発を進めます。

○上段左: アモルファス酸化物半導体によるフレキシブルTFT / ○上段右:フレキシブルな電子ペーパーの試作品 /
○下段:<参考>アモルファス酸化物半導体TFT(ガラス基板)で駆動した電子ペーパー
Copyright 2006 TOPPAN PRINTING co.,ltd.

【背景】
・ 次世代商品として軽量でフレキシブルなディスプレイが多くの注目を集めています。特に電気泳動方式に代表される電子ペーパーの開発が進む中、軽量で耐衝撃性にも優れたプラスチック基材にフレキシブルTFTを作製するニーズは非常に高まっています。

・ 液晶ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイの駆動には,ガラス基板上にシリコン薄膜を250℃以上の高温プロセスで作製したTFTが一般的に用いられています。一方で、ガラス基板を使用するTFTは、重量があり、衝撃に弱く、曲げられないなどのデメリットがあります。そのため、軽量で衝撃に強い材料であるプラスチック基材を用いた研究が進められていますが、プラスチック基材は高温でのTFT作製プロセスに耐えられないため、低温や室温でのTFT作製プロセスの開発が多くの研究機関で行われています。

・ 凸版印刷では、これまでも軽量でフレキシブルなTFTの開発に向けた研究を行ってきました。2003年11月には、「全印刷プロセスによる有機トランジスタ」を開発するなど、成果を上げています。この開発は、有機半導体材料を用いることにより、印刷法によってTFTを作製することを可能にします。現在、内外で活発な研究が行われていますが、印刷可能な有機半導体材料は、移動度やオン・オフ比などのTFT特性や、長期安定性などに技術的な課題が残されています。

・ このような状況のなか、2004年秋に東京工業大学 細野教授のグループからアモルファス酸化物(a-InGaZnO)半導体を用いたフレキシブルなTFTの作製が報告されました。凸版印刷は、新たなアプローチとしてこのアモルファス酸化物半導体に着目し、研究・開発に取り組んでいます。アモルファス酸化物半導体は室温での作製が可能で、従来の高温プロセスで作製したアモルファスシリコンと比較しても優れた特性を示すなど、注目を集める材料です。また、印刷法による作製プロセスにも適しています。

【試作品の仕様】
・ ディスプレイサイズ : 対角2インチ(画素数80×60)
・ TFT基材 : PEN(ポリエチレンナフタレート)
・ 半導体材料 : アモルファス酸化物半導体(a-InGaZnO)
・ 特性 : PEN基材上に作製されたTFTは移動度5cm2/Vs以上、オン・オフ比は10^5以上
        (※一般的なアモルファスシリコンTFTを上回る特性)
・ TFT作製方式 : スパッタ法
        TFTを構成するゲート電極、ソース・ドレイン電極,ゲート絶縁膜,
        アモルファス酸化物半導体膜のすべての層を室温プロセスで作製

【アモルファス酸化物半導体TFTの特長】
・ 室温で作製可能であるため、安価なプラスチック基材が使用可能です。そのため、ガラス基板上に作製されたTFTと比較して軽量、薄型で衝撃に強く、曲げることも可能です。また電気泳動方式のE Ink前面板と組み合わせることで、フレキシブルな電子ペーパーを実現できます。

・ 将来的には、製造プロセスに印刷法を導入することが可能です。印刷法を用いることで1. コストの高い真空プロセスを排除できる、2. 直接パターン加工が可能であるため工程数を大幅に短縮できるといった大きなメリットがあります。

※ なお、この研究成果は2005年12月6日に、「IDW(International Display Workshop) 2005 EP2-4L」にて発表致しました。

以上