BEYOND 04
今回のテーマは「環境」。2015年に国連でSDGs(※1)が採択されるなど、地球環境への意識は世界的に高まっています。凸版印刷でも「トッパングループ地球環境宣言」を掲げ、地球環境の保全に配慮した企業活動を行っています。凸版印刷は環境問題に対してどのように貢献しているのか。同分野に携わる3名に話を聞きました。
※1:SDGs Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)。2015年国連サミットで採択された、国際社会の目標。
私は本社のエコロジーセンターという部署に所属し、「トッパングループ地球環境宣言」の下、各事業部の事業活動で生じる環境負荷を下げるための全社的な目標設定・管理を行っています。また環境配慮型製品の売上数値を管理し外部公表するなど対外的な役割も担っています。
私は食品や日用品に使われるパッケージ分野で環境配慮型製品の販売促進を担当しています。顧客は、消費財メーカーのみならず、PB商品を持つ小売業など、多岐に渡ります。もともと事業戦略の部署にいたこともあり、マーケティングの視点も持ちながら、環境分野に取り組んでいます。
私は住宅や商業施設などに使われる「建装材」を扱う部署にいます。例えば壁紙に使われる化粧シートなどの製造・販売です。最近では建装材もデザイン性だけでなく、「焼却時に有害物質が発生しない」など安全性や環境配慮が求められます。私はその中で技術者という立場から、環境負荷の少ない製品開発や販売促進に関わっています。
我々は別々の部署ではありますが、実は「エコクリエイティブ会議」のメンバーであるという共通点があります。各事業部から担当者が集まり、様々なお客様の環境関連のニーズを共有し、提供できるソリューションを共に考え全社的に展開していくという仕組みです。
私が特に意識しているのは「『一』対『多』」の設計です。環境問題解決には、常にコストの問題が立ちはだかります。リサイクルによって廃棄物をほぼ元の状態に戻すことは技術的には可能ですが、その分費用がかかります。例えば、パッケージ分野においては、材料となるリサイクル材を供給している企業と、それを採用して商品を開発する企業(消費財メーカーなど)とではコストの折り合いがつかないことも多いです。そこで、凸版印刷が間に入り、パッケージ加工の役割を果たしつつ、商品の品質とコストのバランスを両者にとって良い形に調整します。コストなどの問題を乗り越え、リサイクルの輪を生み出すためには、当事者同士が「『一』対『一』」で落とし所を探るよりも、両者はもちろん他のステークホルダーまで幅広く見つつ、全員にとって良い形を「『一』対『多』」で設計するポジションが必要で、凸版印刷はその役割を担っているのだと思っています。
技術者の立場としても、それは感じます。例えば植物由来の樹脂を使用した環境配慮製品を提案する場面では、「熱に弱い」という特性や「価格が高い」という理由などにより採用されない可能性もあるわけです。我々としては、技術改善によりそれらの両立を図っていくことで、お客様や、その先のお客様にも認められる製品を提供していく責任があります。「買手・売手・世間」の「三方よし」を目指すという精神が大切です。
我々の役割として、環境に配慮した商品を製造することはもちろん、それを購入して使ってもらうための消費者とのコミュニケーションを作り出すというものがあります。特にパッケージ分野においては、商品を購入してもらう動機付けとして、作り手の想いやその価値をしっかりと消費者に伝えて共感を得ることが大切です。例えば私が関わった事例として、セブン&アイ・ホールディングス様との取り組みがあります。店頭で回収された使用済ペットボトルをリサイクルして樹脂に変え、それをまたセブン&アイのプライベートブランド商品のフィルムパッケージに一部使用するというものです。「自分が持ってきたペットボトルがリサイクルされて商品になる」ということを消費者が「知る」ことで、その商品を買いたくなる、あるいはペットボトルを持ってまたお店に来たくなるというように、いわゆる「グリーン・コンシューマー」の醸成に繋がっていきます。このように参加型にしていくことで、さらにリサイクルに対する意識や商品の購入意欲を高めることができると考えています。
これは社内の取り組みですが、私の事業部では工場で出た製品の廃材利用というものがあります。たとえば木目調の印刷・加工がされていて住宅などのドアに用いられる「エコシート」という製品があるのですが、生産の中でどうしても切れ端などの廃棄物が発生します。それを使ってベンチをつくり公園などに設置する、という活動です。これも地域や社会への還元の一つですね。
パッケージでの事例としては、トッパンを代表するエコプロダクツ「カートカン」という紙製飲料容器があります。高いバリア性を誇る当社の「GLフィルム」を容器の内側に用いることで、内容物の劣化を抑えるだけでなく、紙パックと同様、トイレットペーパーにリサイクルすることができます。この製品の一番の特徴は、国産の「間伐材」が用いられていることです。「間伐」とは、成長に伴って混みすぎた林の立ち木を一部伐採すること。間伐材を含む国産材を利用することで、森林の育成に貢献できます。最近ではCSR活動の一環として森林保全に取り組む企業が増えてきているのですが、我々はそこに着目し、「企業の森」から出た間伐材をカートカンに使用し表示することを提案しています。これによって商品コンセプトと企業の社会活動がリンクし、一つの「ストーリー」として発信できる。実際、そこに付加価値を見出してカートカンを採用してくださるお客様も増えています。
従来の企業における環境活動というのは、どちらかというと「守り」の要素が強く、「公害を出さない」とか「環境負荷を減らす」とか、そういうところに重点が置かれていましたが、今はそれだけではないですね。「エコである」ということ自体が企業や事業の強みとなりえるため、お客様からも様々な相談が舞い込むようになっています。
海外のお客様からの相談も多いですね。先日も「海外輸出している化粧シートのCO2排出量を測定してほしい」と言われまして。国内の企業とは事情の異なる部分もあり、駆け込み寺のように木下さんの部署に相談に行きました。(笑)
あの件は我々も大変ではありましたが、学ぶことも多かったです。企業が環境活動を推進する上では、法律が関係していたり、定量評価のために特殊な算定方法が必要であったり、かなり専門的な部分もあるため、行政や研究機関などとの連携も必要ですね。
リサイクルを実現するにしても、法律や自治体の回収方法、設備の問題など、様々な要素が絡み合います。企業だけでなく、政府や自治体と一緒になって仕組みを作っていく必要があります。そこで我々の力が試されるのだと思います。
我々が目指す「サスティナブルな社会」とは、「ムリ、ムダ、ムラのない社会」を実現することだと思います。今の我々のライフスタイルのように好きなときに消費できる世の中は大量生産・大量ストックが前提で、期限切れで捨てられるものも多く、そのことが環境に影響を与えている一面もあります。必要なときに必要な量だけ手に入る、「オンデマンド」な世界。それを実現するためには、配送システムやトレーサビリティの確保など物流を根本的に変えていかなければならない。さらには、店舗の購買履歴や商品の在庫数と製造現場のライン状況をデータで連動させることができれば、「生産」もコントロールすることができます。凸版印刷は、環境に配慮した製品づくりはもちろんのこと、ハードウェアやシステムなどの側面からも支援することができるため、それらを組み合わせて仕組自体をつくっていくことが今後ますます求められていくでしょうね。
そうですね。従来のものつくりだけではなく、サービスや仕組みなどのことづくりへのシフトが求められています。そのためには、様々なステークホルダーを繋げる必要があります。凸版印刷が、多様な商材に関わっていることや、良いサービスを提供していることを、もっと世の中に発信していけるといいですね。そうすることで、多様な業種やサービスを横断してさらに大きなミッションを任せられるポジションになります。それを実現するには、事業部間での連携も強化していかなければいけませんね。
それをリードするのは、今後入社する皆さんだと思います。環境配慮型製品の技術開発はもちろん、社会の仕組みや消費者の意識を変えることによりライフスタイルまで変革するようなイノベーションを、凸版印刷から起こしてもらいたいですね。