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TOPPAN株式会社

パッケージCO₂排出量算定クラウドサービス「SmartLCA-CO₂®」開発者の思い

SmartLCA-CO2開発者

お客さまのサステナブル推進活動を支えるCO2排出量算定クラウドサービス

世界で脱炭素に向けた動きが加速しているなか、TOPPANは、2023年5月にパッケージのCO2排出量を自動算出するクラウド型システム「SmartLCA-CO2®」を販売開始しました。開発の背景やサービスの特徴について、開発チームのSX推進センター高澤氏、山田氏、齊藤氏、マーケティング戦略本部の福武氏に聞きました。

パッケージCO2排出量算定クラウドサービス「SmartLCA-CO2®」とは

—SmartLCA-CO2®とはどのようなサービスですか?

福武:パッケージの仕様情報を入力するだけでCO2排出量の算定を行うことができるクラウドサービスです。

TOPPANでは1998年からパッケージのLCA評価を開始し、軟包装・紙器・プラスチック成型品を中心とする主要パッケージ製品の多くでパッケージのライフサイクル全体を通じたCO2排出量の定量評価を行っています。SmartLCA-CO2®ではこの経験を活かし、確かな計算ロジックや算定に必要な情報をしっかりと搭載しながら、誰でも簡単に排出量の算定を行うことができるサービスを目指して開発しました。
*2023年5月現在では軟包装のCO2排出量算定のみに対応しています

—LCAとはなんですか?

高澤:Life Cycle Assessment(ライフサイクルアセスメント)のことです。LCAとは、原材料(資源採取から原材料製造)から製品の製造・使用・リサイクル・廃棄など、製品のライフサイクル全体にわたって、投入する資源や排出する環境負荷を定量的に評価する仕組みです。このLCAの手法を用いて製品・サービス単位の温室効果ガスの排出量をCO2排出量相当に換算したものをカーボンフットプリントといいます。





CO2排出量の算定をもっと手軽に

—SmartLCA-CO2®はどのような方に向けて開発されたサービスですか?開発のきっかけを教えてください。

福武:ESG経営への取り組みの加速や、政府が掲げる「2050年カーボンニュートラルの実現」といった目標に向けて、2030年、2050年とCO2排出量の削減目標を掲げる企業が増えてきました。​

その企業目標を元に各部門にて活動目標が立てられるわけですが、CO2排出量の算定は特別な知見がないと難しく、実際にはパッケージ領域では「減量化する」などといった目標に置き換えられて運用されてきました。

ただ、その活動にも限界が来ている中、材料選定に悩んだり、イメージだけの取り組みが進んでしまうのではないかとと思い、日ごろからお取引きをさせていただいているお客さまのパッケージ開発やマーケティング部門、調達部門の方々にCO2排出量をもっと身近なデータとして活用いただけるツールを開発しようと思ったのがきっかけです。

—どうして企業はCO2排出量を把握する必要があるのでしょうか?

山田:持続可能な社会の実現に向け各国が脱炭素社会を目指す中で、その実現には社会活動の主を成す企業の取り組みが不可欠です。特に最近は企業の脱炭素の取り組みを重視する生活者や投資家も増えています。脱炭素は企業にとっては事業そのものの持続可能性にも関わる喫緊の課題になっており、方針や目標設定はもちろん、その実現に向けた具体策の提示が求められています。

その第一歩として、企業はCO2排出量の現状を把握し、その値をモニタリングしながら削減に向けたアクションを着実に進めていく必要があります。明確な指標を以て脱炭素に向けた施策を進めていくことは、企業の競争力向上にもつながると考えています。

—TOPPANはお客さまであるメーカーにパッケージを提供してきましたが、近年お客さまからのパッケージに対する要望は変化していますか?

齊藤:弊社では以前より、商品マーケティングから包材開発、プロモーションに至る、パッケージに関わる課題を上流から下流までトータルで解決するパッケージトータルソリューションのもと、生活者にとっての使いやすさ、採用いただくメーカーにとっての扱いやすさ、地球環境への負荷削減の3要素を備え、総合的に無駄がなく最適化されたパッケージの提供を行ってきました。
その中でも近年、お客さまの中で環境負荷削減の優先順位が上がっていると感じています。環境対応=コストと捉える考えから、未来への投資と捉える企業も増えてきた印象です。それだけ危機感を感じておられるということだと思います。

SmartLCA-CO2®の特徴と導入効果

—SmartLCA-CO2®の特徴を教えてください。

福武:パッケージの仕様情報を入力するだけでCO2排出量の算定が行えるクラウドサービスです。算定に必要な排出量原単位としてIDEAのデータを搭載していますので、アカウント発行後すぐにご利用いただくことが可能です。パッケージのCO2排出量算定に特化したサービスの強みを活かし、入力項目を必要最小限に絞り込みました。一般的な軟包装だと基本情報と仕様情報で約30項目の入力を行えば算定結果が確認できます。また、入力権限を委譲していくことが可能になっており、製造を委託する企業や、パッケージサプライヤに入力を代行してもらうことも可能です。

—SmartLCA-CO2®を導入したお客さまはどのように使うのですか?

福武:まずは「商品情報」を入力いただきます。商品コードやJANコードを登録したり、任意の「タグ」付けを行うこともでき、ブランドごとや商品カテゴリごとにCO2排出量の状況を確認(*)いただくことが可能です。

その上で、その商品に使用されている「包材情報」を登録していきます。ひとつの商品に対して内容物を包む袋や意匠性を持たせた化粧箱やラベル、さらには流通の為の段ボールなど様々なパッケージが使われていますので、その情報を登録します。

最後にそのパッケージごとの「材料・工程情報」を登録します。使用している材料やどのような工程で生産しているのかを入力することで、その情報をもとにCO2排出量の算定を行っていきます。
*開発中の集計レポート機能を活用

「SmartLCA-CO₂®」商品毎のCO₂排出量・プラスチック重量確認画面イメージ

「SmartLCA-CO₂®」商品毎のCO₂排出量・プラスチック重量確認画面イメージ

—SmartLCA-CO2®導入することでどのような効果が期待できますか?

高澤:商品の“顔”でもあるパッケージの環境配慮度合いを、CO2排出量という指標で数値化できます。数値化することで、企業のサステナブル施策の効果を定量し、脱炭素に向けた具体策を明確な指標を持って進めることが可能になります。

具体的には、把握した数値を指標として、包装資材の環境負荷削減の目標を具体数値で設定したり、環境負荷を削減するための開発方向性決定の指標にしたりなど、内部での施策管理の指標として活用できます。

—他のCO2排出量の算定サービスと比べて、TOPPANのSmartLCA-CO2®の強みはなんですか?

福武:次の3点があげられると思います。
①必要情報を絞った入力インターフェース
②算定に必要な原単位情報の標準搭載+独自の原単位搭載・利用が可能
③製造委託先や包材サプライヤと連携したデータ入力
パッケージのCO2排出量算定に長く携わってきたTOPPANだからこそ、この3つが実現できたと思います。

—開発において苦労したことや嬉しかったことを教えてください。

福武:新規サービスの立ち上げを一からやらせてもらったのは今回が初めてで、本当にこのサービスを欲しいと思ってくれる人がいるのか、社内のメンバーはこのプロジェクトに賛同して参加してくれるのかなど、当初は悩んだこともありました。ただ、22年9月までに実施した事業性検討の中で私を含めたプロジェクトメンバー全体がビジネスの可能性を感じることができ、サービス開発の方向性についても共通認識が取れたことは大きかったです。加えて、CO2排出量の算定がド素人の私でしたので、どのような考え方で計算を行うのか、必要な情報は何なのかを髙澤さんにレクチャーいただき、助けてもらいました。

高澤:苦労したことはシステム開発部門とのコミュニケーション。これまで社内でのLCAの業務は私を含む一部の部署のメンバーだけが扱える専門業務になっていました。一方、私たちLCAを扱えるメンバーはIT技術の分野は全くのド素人。両部門の知識の溝を埋めてくれたのが福武さんでした。プロジェクトを通して密に連絡を取り合い、ミーティングを重ねることで、お互いの専門領域に対する理解も高まり、良い相乗効果が生まれたと思っています。嬉しかったのは、その中でも開発部門の担当者がLCAの基礎知識や算定ロジックを早々に理解し、同じ土台で話ができたことです。いい意味での驚きでもあり、そのおかげでスムースにシステム開発に着手できたのだと思います。

SmartLCA-CO2®で、お客さまの脱炭素の取り組みを後押しする

—みなさんの今後の展望を教えてください。

高澤:今、世界は“LCA創世記”にあると考えています。その中で弊社が提供するSmartLCA-CO2®は、商品の“顔”であるパッケージの環境負荷を定量できる他にないサービスで、その導入・活用は企業にとって取り組みやすいサステナブル施策の一つになると思います。今回のプロジェクトを通して、TOPPANのLCAの体制はより強固になっています。この強力な体制で、お客さまのサステナブル対応を後押しするより良いソリューションを展開していきたいです。

福武:サービスを多くの方に利用いただき、データエビデンスに基づくサステナブル推進活動に少しでも貢献していきたいと思います。その為にはCO2排出量の算定対応が可能な包材の種類を拡げていくことや、より使いやすいサービスとしていけるよう機能拡充などを積極的に行っていきたいと思います。

山田:企業の地球温暖化対策の取り組みは生活者や顧客そして投資家の判断の指標となっています。今回開発したSmartLCA-CO2®によりパッケージの環境配慮の努力を定量的に可視化することが可能になります。当サービスを中心に、根拠に基づいた包材提案を行うことで、お客さまとの協働がさらに推進されると期待しています。

齊藤:CO2排出量の削減目標を達成するためには、ある一点に限った算定ではなく経年で変化を捉えることが必要です。本サービスを利用し続けていただくためには、使い勝手や入力画面の見やすさなども欠かすことはできない重要な要素であると考えています。提供して満足することなく、お客さまの声を頂きながらサービスをより良いものへと進化させていきたいです。


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