ライオン株式会社様の衣料用洗剤トップスーパーNANOX詰め替えパウチ(内容量1230g)を2袋まとめて持ち運ぶことができる板紙製パッケージの開発と、そのパッケージにパウチをセット加工する工程をご支援しました。構造企画を担当したTOPPANの商品企画部 松澤、構造設計を担当した設計部 里見、セット加工をご提案したBPO推進部 静野にご支援内容の詳細を聞きました。(所属は2024年1月時点)
環境に配慮した紙器構造を提案
本案件が始まったきっかけを教えてください。
松澤(TOPPAN): 2021年にライオン様へ環境に配慮したパッケージトレンドをご紹介したことです。この機会を活かし、営業メンバーと相談して「セット商品向けパッケージの紙化」というテーマで自主的なご提案をすることになりました。
「セット商品向けパッケージの紙化」というテーマでの構造提案にあたり、どのようなポイントに注力しましたか?
松澤(TOPPAN): 紙製でありながらも強度を持たせることです。対象となる商品は、2袋合わせて通常の7倍の内容量であり、生活者の「大容量化ニーズ」に対応したものです。環境配慮の観点から、通常多く用いられる手提げのフィルム袋から紙パッケージへの切り替えを目標としましたが、大容量の詰め替えパウチの集積包装になるため強度が必要でした。当初はE段(段ボール)で提案を行ったほどです。
構造提案過程での課題と、工夫した点を教えてください。
里見(TOPPAN): 長距離の輸送にも耐えられる強度・ホールド性が課題でした。もともとは背面パネルに両手を差し込む構造でしたが、ホールド性が足りず持ち運ぶ際に左右に大きくズレてしまったので、背面パネルを使わず両手をつなげた構造にすることで強度を上げ、左右のズレを抑制することができました。さらに背面のつめを2つにして差し込み部を強化しました。これにより長距離の輸送にも耐えられるようになりました。
お客さまにはどのようなポイントが評価されたのですか?
松澤(TOPPAN): 大容量の詰め替えパウチ2袋を紙パッケージでまとめることにより、1つの巨大な詰め替えパックのように見せることができた点でしょうか。紙パッケージならではの広い平滑な面を有効に使い、訴求面の自立性があって視認性が高いところもポイントです。 生活者や流通からのパウチ大容量化ニーズを叶える製品となったことで「市場からの反応が好調」とのご評価をいただいています。
用紙はFSC認証紙(ミックス)の仕様で、ライオン様の「環境への取り組み」の「生活者の認知・理解促進」にも貢献できたと思っています。
商品のセット加工も受託
ライオン様からどのような加工工程を受託しているのですか?
静野(TOPPAN): 当社で設計・製造したセット商品向け板紙製パッケージに、ライオン様で充填した大型パウチ2点をセットし、輸送用の段ボールへ梱包するまでの作業を受託しました。
TOPPANのBPOの特徴を教えてください。
静野(TOPPAN): 私たちBPO推進部では、店頭で販売されている商品をはじめ、食品、化粧品、医薬部外品等の一次充填・二次加工・梱包作業から発送まで、一貫したサービスを提供しています。
強みは3点あります。1点目は、全国に社内外あわせて約60カ所の拠点を保有している点。2点目は医薬部外品製造業、菓子製造業等の多様な免許や充填・包装設備を保有した拠点がある点。3点目は、徹底した管理体制です。FSSC22000(食品安全)や個人情報取り扱い項目に沿って定期監査を実施しています。これらの強みを活かし、お客さまのご要望に応じて拠点を選定します。
難しかった課題は何ですか?
静野(TOPPAN): まず委託先の選定に苦労しました。その理由は3つです。1つ目は、ライオン様の商品は全国に展開されておられるため、委託先を全国=東西2拠点で検討する必要があったこと。2つ目は、限られた予算の中で、ライオン様の品質等の監査レベルに適合する拠点であること。3つ目は、大容量パウチを取り扱うための作業および保管スペースがあること、です。
これらの条件をすべてクリアする拠点の選定に苦労しましたが、社内外のリソースやこれまでのノウハウを駆使し、課題を解決することができました。
実作業のライン設計にも工夫が必要でした。
パウチ1つの重さが1230gと非常に重いため作業効率が悪く、段ボール梱包ラインに負荷がかかり、事前の作業工程テストでスムーズな作業ラインを構築するのに苦労しました。
また、板紙製パッケージの破れ防止策としてテープ貼りによる補強加工なども追加提案しました。
お客さまにはどのようなポイントが評価されたのですか?
静野(TOPPAN): パッケージ自体は、手提げのフィルム袋から板紙製パッケージに変更したことで作業工程は増えたものの、環境に配慮したこと、また形状がコンパクトになったことで店頭陳列が非常に楽になった点がよかったと伺いました。
BPOの拠点選定としては、ライオン様の東西ご納品場所に近い加工拠点をご提案することで、物流面での環境配慮・コスト削減にも寄与できたと考えています。また、工場へも視察に来ていただきましたが、設備面・管理面ともに高評価をいただきました。
スケジュール的にも数量が多く、タイトなスケジュールではありましたが、 早い段階で生産シミュレーションを実施・検証したことでスムーズに立ち上げができ、ライオン様のご要望にお応えすることができました。
パッケージの提案に加え、BPOでお客さまを総合的にご支援
パッケージの構造提案とBPOを組み合わせた総合的な支援にTOPPANの強みがあることがわかりました。 今後の展望を教えてください。
松澤(TOPPAN): 環境配慮、作業性はもちろん、店頭効果やアフターユースギミックなど、思わず手に取りたくなるパッケージのご提案をさせていただきます。新しい環境素材を使ったご提案にも積極的にチャレンジしたいですね。
静野(TOPPAN): BPOとしては、環境に配慮したサステナブルパッケージへの置き換えから一次充填・二次加工、また販促支援まで幅広くトータルでコーディネートさせていただきます。また、検査キットなど体外診断用医薬品のセットやEC個配まで対応が可能です。今回の事例は二次加工でしたが、一次充填の案件も積極的に取り組んでいきます。BPOの受注領域を拡大し、お客さまの課題に幅広く対応していきたいと思います。
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