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株式会社ニチレイフーズ様 アミタ株式会社様 インタビュー

食品業界のリサイクルに一石を投じる— 冷凍食品包装回収プロジェクト「ごちそうさまの、その先に。」

冷凍食品包装回収プロジェクト

業界の垣根を超えて実現する食品包装リサイクル構想

2024年10月29日、イトーヨーカドー大森店にて冷凍食品包装(フィルム)をリサイクルする実証実験がスタート。これは使用済みの冷凍食品包装(フィルム)のリサイクルに向けた技術の実証をすると共に、生活者との最適なコミュニケーション手法や効率的な回収スキームを検証する取り組みです。今回は、本プロジェクトに連携して取り組む株式会社ニチレイフーズ 越川順平 様、アミタ株式会社 武津雄太 様、駒井真帆 様、TOPPAN株式会社 蘆田匠、浦野信彦に、プロジェクト開始から約5カ月が経過しての所感や推進するために必要なことをお聞きしました。

<各社の役割>
・ニチレイフーズ
全体進行、検討に必要な情報の整理、流通小売り企業や自治体など各協業先への依頼
・アミタ
廃棄物処理法上の配慮についてのアドバイス、回収BOX設置場所の自治体、リサイクル協力企業などの各種調整
・TOPPAN
啓発、認知促進コミュニケーションツールの開発・再商品化開発、運用

1社では解決できないことを可能に

各社それぞれでサステナブル施策や推進に取り組まれてきたと思いますが、今回、連携してプロジェクトを行うことになった経緯を教えてください。

越川様(ニチレイフーズ) 越川様(ニチレイフーズ): 当社ではこれまでも継続してプラスチックの使用を減らす取り組みを行ってきました。例えば、包装を小さく、薄くしてできるだけプラスチック使用量を減らした設計や、トレーをなくすこと、プラスチックの代替素材となる炭酸カルシウムを半分以上配合したトレーを使用するなどです。食品包装におけるプラスチックには食品の品質を維持し、中身を守るという本来の役割があります。品質の良い状態で安全に生活者に届けることを考えると、単純にプラスチックをなくせばいいということでもありません。そのため、物理的にプラスチックを減らす取り組みにもいずれ限界はくるだろうと思っていました。

そうした課題認識から誕生したのが、冷凍食品包装回収プロジェクトだったのですね。

越川様(ニチレイフーズ): おっしゃる通りです。当社グループでは、マテリアリティの一つに循環型社会の実現を掲げていますが、食品包装に使われるプラスチックの資源循環については、十分な仕組みが構築できておりませんでした。そこで、この循環の仕組みづくりに向けて、具体的な回収方法などについてTOPPANさんやアミタさんに相談したことが、今回のプロジェクト立ち上げのきっかけです。

蘆田(TOPPAN) 蘆田(TOPPAN): 当社が独自に行った日用品の詰め替えパウチの回収実証実験の結果を共有することやノウハウの一部をご紹介させていただいたことを機に、本プロジェクトの一員として声をかけていただきました。 当社では中期経営計画の中でサーキュラーエコノミーの実現を掲げ、包装・販促資材のリサイクルスキーム確立に向けたKPIとして、2030年度までに実証実験の件数として50件の実施を目指しています。着実に増えているものの社会実装に至った案件はまだ少なく、当社としても協業パートナー企業と実績をつくっていきたいと思っていたこともあり、参加しました。

武津様(アミタ) 武津様(アミタ):  当社では神戸市や北九州市など自治体と協力した使用済みプラスチックの回収プロジェクトを実践してきました。一度生活者に渡ったプラスチックを回収する際に、「ごみとして捨てる」「資源として再利用するために出す」といった生活者それぞれの意識がある中で、サステナビリティ推進につなげるためにどのように意識の変容を促していくのか、周知に課題を感じていました。そんな中、冷食のリーディングカンパニーであるニチレイフーズさんが声を上げられたことは、意義のある一歩だと思い、参画させてもらいました。

小さな取り組みの積み重ねで社会実装へ

冷凍食品包装(フィルム)を回収する上で、なぜニチレイフーズの包装のみに絞ら ず、全メーカーの包装を回収することにしたのでしょうか。

越川様(ニチレイフーズ): 選別や加工をするためには材質がわかるものを回収したほうがいいので、当初は自社の包装のみを回収しようとしていました。しかし、リサイクルに協力いただく生活者の目線に立ったとき、ニチレイフーズの包装のみというのは非常にわかりにくく、難易度が高いと考え、全メーカーを対象としたのです。

駒井様(アミタ) 駒井様(アミタ): 生活者にわかりにくいという指摘は、これまでほとんどの自治体担当者から言われてきたのもあり、我々としてもまずは生活者が迷わないやり方で実施するということで賛同しました。当社は日用品の回収事例が中心で、「食品」のプロジェクトに取り組むのはほぼ初めてではありますが、食品業界全体でみても、廃プラスチックのリサイクルに一石を投じるプロジェクトになると期待を持っています。

浦野(TOPPAN) 浦野(TOPPAN): 「資源循環の社会実装」のために競合企業同士がタッグを組んだ事例も増えていますが、今回のプロジェクトは縦のつながりを大切にした取り組みです。廃棄物業界や資源循環に専門的な知見を持つアミタさんや、ものづくりだけでなくコトづくり、スキーム構築などを担当する当社、それぞれの知見を生かし合うことで、相乗効果により価値提供をしていく有意義な活動だと思っています。また、テストマーケティングを積極的に実施しているイトーヨーカドー大森店に回収ボックスを設置していただき、小売流通業界にも協力を得られたことも大きな一歩です。さまざまな業界のプレイヤーが一致団結することで社会実装へとつながっていくはずです。スモールスタートで仲間が少しずつ増え、社会基盤的な活動の第一歩となることを願っています。

プロジェクトを進めてきて感じる各社の所感をお聞かせください。

蘆田(TOPPAN): 月に1度、プロジェクトメンバーで回収物を確認していますが、現在は毎月2kg程あります。周知するために店頭でリーフレットを配布していた際には手に取った小学生が母親に伝える様子も見受けられ、若い世代が環境について課題を認識してくれていることもわかり、生活者の環境意識の高まりを感じています。

越川様(ニチレイフーズ): 冷凍食品包装(フィルム)は、1枚につき平均3gから5g程度なので、2kgの回収は相当量あるといえます。当初、このプロジェクトが認知されるまでは正直回収は難しいと思われていました。しかし、1週間、2週間と経過するうちに回収量も増え、生活者のみなさんが非常に協力的だとわかったのは嬉しい誤算でした。一方で、ごみ箱と勘違いして包装(フィルム)とは関係ないものをなんでも入れてしまう方もいるようなので、生活者にとってわかりやすい回収方法の検討を進める必要性も感じています。

実際に設置された回収ボックスと回収ボックスに冷凍食品包装(フィルム)が集められた様子

武津様(アミタ): 回収物の8割は汚れや匂いのないものという実績も出ていますが、TOPPANさんにアイデアを出してもらいながら、冷凍食品包装(フィルム)を入れてもらえるように生活者にわかりやすい表現の改善を進めています。

越川様(ニチレイフーズ): このプロジェクトは、破砕や運搬などさまざまな役割を担う会社、自治体の協力を得ていかないと成り立たないプロジェクトです。今後は、再資源化をお手伝いいただけるパートナーを増やしていきながら、他の自治体や冷凍食品業界全体に活動の幅を広げていきたいです。

浦野(TOPPAN): 自治体も法令を遵守しながら資源循環をサポートしようと前向きにアドバイスをしてくださっている印象ですよね。さまざまな企業がプロジェクトの詳細を尋ねてくることも増えてきましたし、今後はさらにプレイヤーを増やし、社会に根付く動きを作っていきたいですね。

武津様(アミタ): 法律上では、廃棄物処理の権限や業務は自治体に委ねられています。自治体毎に産廃における見解もあるので、今後もニチレイフーズさん、TOPPANさんと連携しながら自治体とも丁寧にコミュニケーションをとっていきたいです。

みんなが一丸となって「リサイクル」を考えていけるように

プロジェクトはまだ始まったばかりですが、すでに生活者の反応や他企業からの問い合わせなど反響を呼んでいます。今後、このプロジェクトをどのように進めていきたいと考えていますか。

蘆田(TOPPAN): 来年度はイトーヨーカドー大森店でミニワークショップの実施など、啓発活動にも力を入れていき、生活者に参加してもらえる機会を増やすことを検討しています。既に冷凍食品フィルム包装材からクリップなどの樹脂加工品を製作するプレテストを行っており、来年度は実際に回収した包装で同じような製作物ができるのかを検証していく予定です。

武津様(アミタ): 生活者に向けては、環境に良いから購入するというより、知らないうちに環境に良いことをしていたという状況をもっと作り出せるようにできたらいいと思います。そのためにも仲間を増やし、協業して進めていくことは非常に重要です。資源循環を促す新法の制定や各省庁のバックアップも強化されてきていますので、追い風を受けてあらゆる角度からプロジェクトを推進していきたいですね。

越川様(ニチレイフーズ): 短期的には冷凍食品の袋を回収する精度を向上させることを目指しています。さらに、中長期的には、10年後、20年後に冷凍食品包装(フィルム)の水平リサイクルを目指し、周りを巻き込んでいく具体的な進め方を模索しながら、その輪を広げていきたいと考えています。プロジェクトが進めばリサイクル方法も判明してくると思いますし、得られた情報をもとに業界で統一した包装を生み出すことにもつながると考えます。もちろんリサイクル可能な包装資材が作れたとしても、各メーカーが生活者に購入してもらうために試行錯誤をしているので、直ちに統一できるものではないと思います。それでも、業界のルールメイキングの一助になるという想いを持って、業界として一緒になって取り組める環境をつくり、プロジェクトを進めていきたいと思っています。

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