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凸版印刷株式会社

“SNSでバズる”パッケージの可能性 |凸版印刷商品企画の挑戦

SNSがコミュニケーションの主流となっている今、商品開発におけるマーケティングに変化が起きている。それは商品そのものだけではなく“パッケージ開発”において顕著だ。例えば菓子などでこれまでもパッケージそのものに目を留まらせる興味の誘引力は求められてきたが、今はそこに消費者の心を掴んだ上に“人に薦めたくなる”ような共感の拡散力が要求される。今後商品パッケージに求められる役割とは? そしてその可能性とは?
※この記事は、2019年11月に制作したものです

商品パッケージプランニングは認知だけではない役割が求められている

森永製菓「PANDARSTM(パンダース)」の事例に見る、
マーケティングと創造性を兼ね備えたパッケージプランニングとは

—森永製菓様のチョコ、DARSの限定商品として2018年に販売されたDARS TOKYO EXCLUSIVEシリーズの中で「PANDARSTM(パンダース)」という商品がSNSで話題となった。実はこの商品パッケージを担当したのがトッパンのパッケージソリューション事業部。特に話題の震源であるパッケージ“デザイン”を担当したのが今回の主役である商品企画部だ。マーケティングにおいて重要視されるSNSを味方につけたパンダースのデザインを担当した同部1チームの貝塚珠季、そして貝塚の良き先輩であり、チーム全体のマネジメントにも関わる森田主任に解説してもらいつつ、その成功の要因を紐解いていきたい。

貝塚(左):元々この限定販売企画は東京駅にある“東京おかしランド”で贈り物としても喜ばれる「特別感」を狙ったものでした。パンダースというアイデア自体は森永製菓様の方でお持ちだったので、それを受けて我々がパッケージプランニングを担当した事例となります。


商品としての菓子の場合、現状のマーケティング主導の小売業界においてパッケージはとても重要だ。食べてみないとわからないお菓子の“味”をどうデザインで表現し、食欲を刺激するか、店頭の陳列棚の中でどう目に留まらせるか。商品を認知してもらうためには重要な要素であるのだが、更に最近ではいかにターゲットに商品の仕掛けに気付かせ、拡散欲を駆り立てるか=SNSでの話題性が条件として加わる。今やパッケージに求められるハードルはとても高いようだ。

貝塚:森永製菓様からはとにかく女性のテンションが上がるようなものを企画して欲しいというオーダーがありましたので、20代女性にターゲットを絞って最新のファッションや人気雑貨などデザイントレンドを幅広く情報収集し、検討していきました。 加えて、忙しく人が行き交う東京駅八重洲地下街という場で「いかに瞬時に人の視線を奪うか」、店頭に並べた時に“塊としての強さ”を感じられるような手法を考慮しました。その2つの条件を受けてファッション業界でよくみられる手法を参考に、製品そのものを抽象化したイメージや色をテキスタイルデザインのように図柄化したものを作成し、パッケージデザインに反映させていくことを考えました。

菓子パッケージに反映する場合、フレーバーカラーで店頭にずらっと並べた時の一体感を演出してあげるのが基本的な手法ですが、2018年のDARS TOKYO EXCLUSIVEシリーズで採用頂いた手法だった為(右写真)、今回のパンダースの場合はキャラクターを記号化したアイコンはどうだろう、ということで進めていきました。(下は2019年 PANDARS シリーズ)


ちなみに私の場合、デザインラフ画は自分で描くことが多いです。そうすることでより商品の性質や、アイデアが適正か自分で判断しやすいですし、なによりデザイナーさんにも伝わりやすいからです。


森田:デザインディレクションをする過程で、様々な鮮度の高い切り口を出すことが大事なのですが、貝塚はそういう手法に長けているタイプ。もちろんそれだけではなくて、提案の切り口の理由を視覚化、言語化してプレゼンできるのというのが大切です。そこにロジックがないとクライアントに納得してもらえません。 そういった意味では貝塚の切り口はいつも独自性があるのですが、前述のデザインラフ画一つとっても、それをキチンと“可視化”させて説得力を持たせる能力が高い。だから相手方も飲み込みやすい。化粧品なども担当しているのですが、このパンダースにしても化粧品にしても、20代の女性という意味では貝塚も消費者と同じ感性を持っている点で説得力が増します。案件を扱う時にはそういうリアリティの部分も大切にしますね。

“バズりたくなる”とは“ツッコミを入れたくなること”である!?

パッケージデザインがマーケティングという視点で生み出されている、ということがよくわかるコメントだが、では近年重要視されているSNS方向からの視点ではどうだろうか。最近ではただ“可愛い”“オシャレ”なだけではSNSでの拡散に繋がらないという。ただしパッケージとは、ただ見るだけではなく手で触って、かつ開封するもの。そこの工夫にこそSNS対策の秘密が隠されているようだ。

貝塚:パンダースは食べながらでも楽しんで欲しいので、パッケージ内側にストーリー仕立ての工夫が仕込んであり、開封するとそれが楽しめるようになっています。これは私が初めて担当した別の案件がSNSでとてもバズったことを発展させた手法。その時はツッコミたくなるようなネタを仕込んだのを覚えています。つまり『これには一言ツッコミをいれたい!』というような興味をくすぐってあげるのが効果的だということです。

このパンダースの中のストーリー仕立ての絵も、開けた後に何かがあるという意味でツッコミどころを消費者に残しておいておく。買った人にしかわからない部分ではあるのですが、だからこそSNSでのコミュニケーションに繋がっていくわけですね。
パンダースのパッケージを担当するのは今回で2年目なのですが、森永製菓様にも大変喜んで頂いています。特に初年度のSNS効果は森永製菓様でも前例がない、と評価して頂きました。その評価を受けて2019年は最低限の条件を満たせばあとは自由にやってください、というありがたいオーダーがあったので、より自由にアイデアを練ることができました。パッケージを単なる見た目が良いだけの包装箱ではなく商品をより深く知ってもらう橋渡しをするコミュニケーションツールとして発想できたよい事例だと思います。

事例:森永製菓様 DARS「PANDARSTM(パンダース)」パッケージ企画

2種の異なる味わいのチョコを2層仕立てにした特別なDARSをストーリー仕立てのパッケージで包んだ、ギフトとしても喜ばれそうな限定商品。パンダースの企画が発案された当初からトッパン商品企画部がパッケージを担当。2年目の2019年ではパンダを記号化したデザインに加えて、キャラクターとなったパンダースが巻き起こす2つのストーリーを開封後にも楽しめるパッケージとすることで注目された。発売初年度にSNSで話題になったことでシリーズ中の商品でしかなかったパンダースが独立したキャラクターとして発展、認知されたのに加えて女性の支持も高かった、と森永製菓様内でも評価が高い事例となった。

発想したアイデアを実現する「企業力」が販売実績に繋がる

パッケージのデザインやアイデアは単なる思いつきでは意味がない。1つの立体物として生産可能なカタチや表現可能なデザインであるからこそ価値があると言える。その点でいえば、トッパンの持つ“企業力”こそが非常に重要だと言う。

貝塚:パッケージプランニングを進める上では、もちろんSNS拡散効果も踏まえたマーケティングデータから導き出したアイデアやデザインは必須ですが、実はアイデアをどのレベルで実現できるのか、デザインにマッチした新しいことをどれだけ現実的に盛り込めるのか、そこを最も重視すべきだと私は考えています。

少し具体的な話になるのですが、トッパンの場合、パッケージの印刷・加工をする工場を持っていますし、新たな包装資材や印刷技術の開発・設計を自社内で行っています。これが他社さんとは大きく違う強みの部分となります。

この場合の強みというのは2つほどあって、まず提案の際に実現可能性が高く具体的なプレゼンが可能という点。パンダースで言えば、パール紙という特殊紙やグロス/マットニスの切り替え効果を狙った印刷で高級感を出す、というような製造段階での精密な調整を必要とする印刷表現をしています。そんな細かい部分を含めたコントロールができるということ。つまり企画で提案したものと寸分違わず同じものが大量生産物として提供できる。この部分は意外と難しいことが多いのですが、デザインと製造技術が一体になった企画制作だからこそ可能だと言えます。トッパンが製造メーカー故の強みです。

さらに最新の技術を使った提案などもより具体的な企画として提示できる点もクライアントにとっては有用な点ですね。量産技術と知見の膨大なデータがあるからこそ、今までパッケージでは使ったことがないような素材や技術を使ってみませんか、といった攻めの提案が自信を持ってできるわけです。 もちろんトッパンのように製造まで自社でまかなえる企業は他にもあるのですが、そういったデザインやアートディレクションといった創造性・製造・開発といった技術を融合した提案ができる点もトッパンの強みの一つですね。

森田:強みの部分で一つ補足があるとすれば、トッパンは印刷物の製造をベースとした企業という点です。これは我々商品企画部が担当したクライアントの商品が売れてくれれば、印刷会社としてのトッパンの受注増にもつながるということです(笑)。つまりクライアントの売り上げとトッパンの受注は運命共同体なわけで、真のパートナーと言えます。その点でも他社とはやはり取り組み方が変わる気がしています。

アイデアの源である創造力の可能性をリソースとして認知し、なおかつ開発からデザイン、製造まで自社でまかなえるのがトッパンの持つ「企業力」の中身。スタッフ一人一人の能力も自社の重要なリソースであると考え、さらに印刷会社の強みを最大限生かしたトッパンの商品パッケージプランニングにはもはや隙がない、と言い切ってしまうのはさすがに言いすぎであろうか。

パッケージデザインの今後の可能性とは?

貝塚:今後はネット通販が普及して店頭で買い物することが少なくなり、さらにエコロジー的な観点からもそこにマッチしないような華美な装飾などはなくなっていく。パッケージもミニマル化していくことが予想されています。そうするとパッケージも徐々に大衆向けではなくなり、よりパーソナライズされていくのは否めないかな、と感じています。

森田:“パッケージ”という枠を越えた、一つのコミュニケーションツールとして使っていただけるようなモノになっていくのでは、と予想していますし、実際にそういう方向に向かっていると感じています。

それに本質的な部分で一番大事なのはパッケージというのは“アナログ媒体”、ということです。ARなどのデジタルコンテンツを仕込むこともありますが、パッケージそのモノ自体は決してデジタルにはなり得ません。触って、手に取って体感できる実在物、という点はこれからもしばらくは変わらないでしょう。だからこそ商品パッケージは表現ツールとして多方面に広がっていく可能性を秘めています。

貝塚:近年ではショッピングバッグ一つ取ってもブランドコミュニケーションという視点ではとても大きな意味合いを持つツールになっています。そういう意味ではパッケージの持つ力も同様にブランドマーケティングの大きな要素の一つと考えられます。

商品パッケージとは、単にどんな商品なのかを伝達するだけではなく、様々な役割を担うことができるツールなのだということを再確認した取材であった。

特にコミュニケーションツールという視点から見ると、実在物であるからこそ商品パッケージの可能性は大きく拡がるのではないか、ということがイメージできたのではないだろうか。とはいえ、それを実現できるのはトッパンの持つ“企業力”があるからこそである。願わくば、その力を今後も消費者が楽しめる、幸せになれるモノ作りに注力していってもらいたい。

※この記事は、2019年11月に制作したものです

貝塚 珠季(かいづか たまき)
凸版印刷株式会社
パッケージソリューション事業部 商品企画部
1チーム
2014年、凸版印刷株式会社入社。トッパンアイデアセンター 商品企画部に配属(現パッケージソリューション事業部 商品企画部)。商品パッケージの アートディレクターとして、構造やグラフィックデザイン、パッケージプロモーション企画に携わる。

受賞履歴 : 2017年日本パッケージデザイン大賞 審査員特別賞
2019年 ジャパンパッケージングコンペティション(JPC)経済産業省製造産業局長賞 &日本印刷産業連合会会長賞
2019年 日本パッケージングコンテスト(JPI)包装アイデア賞
2016年 JAGDAおいしい東北パッケージデザイン展 奨励賞など、パッケージ関連アワードを計16賞受賞


森田 総一郎(もりた そういちろう)
凸版印刷株式会社
パッケージソリューション事業部 商品企画部
1チーム
2006年、凸版印刷株式会社入社。パッケージ事業本部 企画本部配属(現、商品企画部)、 パッケージデザインのアートディレクターとして従事、現在はデザイン領域を強みとしつつクリエイティブ視点でのパッケージ調査、トレンド分析や ワークショップ設計、商品企画サポートなど幅を拡げて活躍。
受賞履歴 : ジャパンパッケージングコンペティション(JPC)
2013年 最上位賞 経済産業大臣賞
2015年 経済産業省 商務情報政策局長賞



 トッパンの商品企画部隊は、様々な業界のお客さまと商品・パッケージを共創しています。市場調査、ネーミング・ブランド開発から店頭プロモーションまで一貫してお任せいただけます。多数の実績が強みです。

※企業名・所属は2019年11月時点

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