森永乳業株式会社様の「森永マミークラシック1965」に、間伐材を含む国産材を30%以上使用している紙を利用した紙製飲料容器・カートカン®をご採用いただきました。同社ミルク事業マーケティング部で森永マミーブランドに携わる谷内様に、弊社営業担当の芦沢が「TOPPANを新製品立ち上げのパートナーとして選定した理由」や「パッケージデザイン以外も相談できるメリット」について伺います。
瓶のように飲めて環境配慮型。カートカン®は森永マミーの価値を伝えるのに最適
芦沢(TOPPAN): カートカン®は、常温流通・長期保存が可能な円柱状の紙製飲料容器です。「国内間伐材を使用することで森林の育成につながる」「紙パックマーク付与で、トイレットペーパーなどにリサイクル可能」「売り上げの一部が日本の森林育成に役立てられる」といった特長があります。
今や消費者もサステナビリティを意識して商品を選ぶようになりましたが、まずは御社や森永マミーブランドにおけるSDGsへの取り組みについてお聞かせください。
谷内様(森永乳業): 森永乳業グループは2022年に「サステナビリティ中長期計画2030」を制定し、持続可能な経営の実現を目指しています。
私が所属するミルク事業マーケティング部では、扱う製品の大半が環境配慮型の紙パック製であり、森林を守りながら生産されたことを意味する「FSC認証マーク」や「PEFC認証マーク」を付与しています。現在の森永マミーブランドの主力である「森永マミー Wの乳酸菌」も同様であり、資源や環境については日頃から強く意識しています。
そして「森永マミークラシック1965」は、まさに1965年に誕生した「森永マミー」の発売当時の味を再現した限定復刻発売品です。瓶で発売した際のイメージに近づけようと、以前から円柱型のカートカン®に注目していました。
こうしてTOPPANさんに問い合わせたことが本プロジェクトの始まりです。弊社の他ブランドにおいても、パッケージデザインのみならずサンプリング企画も組み合わせた実績があると聞いていたので、アイデアの広がりに期待して相談しました。
芦沢(TOPPAN): 御社とはカートカン®事業の立ち上げ時からのお付き合いがあったからこそ採用に至ったと認識しています。最終的にカートカン®を選ばれた決め手は何ですか。
谷内様(森永乳業): 全社的にサステナビリティ活動に取り組む一方、弊社や製品の姿勢を消費者に伝え、購入につなげることの難しさを感じていました。私自身も「森永マミーブランドが環境を意識していることを知っていただき、お客さまに手に取っていただくにはどうすればいいのだろう」と悩んでいました。
しかし、TOPPANさんからカートカン®の説明を受けると「瓶のように口を付けて飲めるためブランドの価値を訴求できる」「瓶と同様に環境配慮型の容器であり、現代の課題に合わせてサステナビリティにも取り組める」と判断できました。こうしたポイントが、「森永マミークラシック1965」と非常にマッチしたことが採用の理由です。
銭湯を森永マミー仕様にジャック。のれんや紙うちわの画像がSNSで「かわいい!」と評判に
芦沢(TOPPAN): 今回のプロジェクトでは、東京・渋谷の銭湯とコラボレートしてサンプリングも行いました。訪れた人に「森永マミークラシック1965」カートカン®と、カートカン®を含む紙パックをリサイクルした再生紙で作った紙うちわを配布してアピールしましたね。
「環境配慮型パッケージ×コラボプロモーション(銭湯ジャック)×アップサイクル品」という企画により、Z世代も含めて森永マミーブランドを周知できましたが、若年層への訴求で課題に感じていたことを教えてください。
谷内様(森永乳業): この数年、森永マミーは若者へのアプローチを課題としてきました。2025年には発売60周年を迎えるロングセラーの安心感や親しみやすさが強く、新しい層である若年層を巻き込めずにいました。
だからこそ「森永マミークラシック1965」を発売するとともに、TOPPANさんの企画で、若年層へのアプローチができることを期待し採用しました。
芦沢(TOPPAN): 銭湯をジャックし、外壁に「森永マミークラシック1965」の特大ポスターを掲げ、入口ののれんも森永マミー仕様にしました。浴室の照明にもロゴのステッカーを貼り、幻想的な雰囲気を演出しました。
若者に人気のサウナも備えた施設であり、必ず話題を呼べると信じて提案しました。製品とターゲットを単に結びつけるだけでなく、森永マミーが彼らの間で昇華していくと考えました。
谷内様(森永乳業): 複数のアイデアを提案してもらった中でも「森永マミー×銭湯」は秀逸でした。かつて「森永マミー」は銭湯でも販売されていたので、飲用するシーンとして最高だと思いました。
コラボした銭湯も老舗でありながら、時代に合わせてアップデートを続けていると聞いています。昔と今が融合する場であり、森永マミーブランドに近しいと感じました。
ちなみに照明のステッカーはロケハンの成果ですよね。湯船でゆっくりする皆さんの視界に、ぼうっと明るく森永マミーのロゴが映り込むのが印象的でした。
芦沢(TOPPAN): あと、外壁のポスターや紙うちわのイラストには若者に人気の作家の方にお願いしました。レトロなテイストと現代的な感覚を併せ持っている方です。
谷内様(森永乳業): うちわは社内でも私としても高評価でした。「森永マミークラシック1965」の懐かしさと新しさを伝えるのに最適で、味わいのある印刷にも「さすがはTOPPAN」と思いましたね。
製品のパッケージも含め、色味は繰り返し確認しました。TOPPANさんはひと目では分からないような微妙な違いにも配慮してくださり、まさにプロの仕事を目の当たりにしました。プロジェクト全体の統一感を確認するためにも、自身も印刷に立ち会いました。
芦沢(TOPPAN): 高級感やレトロ感をグラビア印刷で表現し、全体的にマットに仕上がるよう進めました。「限定復刻」や「クラシック1965」と書かれた金色の部分も光沢を出しながらつやを消し、古き良き、かつ新たな復刻の雰囲気を出しています。印刷のプロフェッショナルとして、ゆずれないこだわりです。
また、銭湯スタッフがSNSで自発的に情報を拡散してくださったことも起爆剤の一つになりましたね。
谷内様(森永乳業): 特大ポスターものれんも目を引くように作ってくれたので、皆さんが珍しそうに次々と写真を撮っていました。SNSではうちわの画像もよく見かけ「かわいい!」とのコメントが飛び交っていました。
特に若者に親しまれているInstagramへの投稿が多く、銭湯の場所をタグ付けするなど大きな効果がありました。
芦沢(TOPPAN): 渋谷界隈の話題を扱うニュースサイトにも本プロジェクトが取り上げられていました。実際に銭湯の店長さまも「とにかく利用客が増えました」とおっしゃっていました。
各ツールの試作段階から自信を持って公開できる仕上がりだったので、「銭湯に来た多くの人に撮影していただけるだろう」と確信していました。カートカン®から特大ポスター、のれん、ステッカー、うちわまでテイストを合わせたことにより、それぞれを組み合わせてInstagramに投稿する人が多かったですね。
谷内様(森永乳業): 御社のこだわりに感謝しています。そもそもパッケージのデザインからサンプリングの企画、アップサイクル品まで、一貫して任せられる企業はなかなか他にありません。製品のコンセプトや解決したい課題、目指すべき方向など、全て理解してくれましたね。
芦沢(TOPPAN): ご相談を受け、御社や谷内様が抱える全ての課題を解決するつもりでプロジェクトに臨みました。カートカン®の製品を作って満足するのではなく「ゴールまで一緒に駆け抜けましょう」との想いでいました。
谷内様(森永乳業): 繰り返しになりますが、製品づくりから各施策まで依頼できるのはTOPPANさんならではです。通常であればデザイン会社、印刷会社、イベント会社など複数の企業を探して声をかけ、一社ごとに対する調整や気配りが求められますよね。
私としては、御社と色へのこだわりを共有できたことに格別な思い入れがあります。おかげでカートカン®でもサンプリングのツールでも「森永マミーの赤」を表現できました。モニター上の見え方と印刷後の比較など、色味について親身に教わりました。
芦沢(TOPPAN): 私は森永乳業様、銭湯スタッフの方々、サンプリングに参加してSNSに発信してくださった皆さんをはじめ、各方面から好評の声をいただけたのがうれしかったです。
振り返ると、若年層の認知という森永マミーブランドの課題に寄り添いながら、歴史を踏襲しつつコンセプトに合った提案やサポートがかなったのではないでしょうか。
弊社ではカートカン®を活用した事例を拡大中ですので、本プロジェクトのおかげで魅力をさらにアピールできそうです。今後につながる経験を得られました。
出合える確率は24分の1。レアパッケージの仕掛けも楽しみな新商品を発売
芦沢(TOPPAN): 森永マミーブランドで新商品が発売されますね。その新商品にも、パッケージをリニューアルしたカートカン®を採用いただきました。
谷内様(森永乳業): はい、そうなんです。2024年9月17日に一部CVSで先行発売、10月1日より全国発売いたします。カートカン®を採用した「森永マミー濃いあじ」を発売予定です。
今回のプロジェクトを通じ、濃厚な味わいとカートカン®の組み合わせで若者を引きつけられると分かったので、方向性は保ちつつも新たにキャラクターを活用したコンセプトにしました。
その一つ、TOPPANさんのカートカン®だからこそできる面白い仕掛けも楽しみです。森永マミーブランドのキャラクターであるライオンのマミーレオやカバのカバノン、ウサギのピョコリーナなどに価値を見出してくれましたね。
芦沢(TOPPAN): 各キャラクターのデザインを少しだけ変えた、レアなパッケージが登場する予定です。出合える確率は24分の1で、こちらも話題になりそうです。
谷内様(森永乳業): 商品名の「濃い」と「恋」をかけた素敵な演出なので、ぜひ楽しみにしていただきたいですね。
大切なのは愛される森永マミーを提供し続けること。本件を通じてTOPPANの新たな強みを実感
谷内様(森永乳業): 今の時代、どの企業もサステナビリティと向き合う必要があります。しかし、どんなに懸命に取り組んでも、消費者の価値に直結させるのは本当に難しいですよね。
実際に今回の紙うちわも通常のノベルティより単価が高いです。メーカーとしては販売価格に反映させるか悩むことになりますが、そもそも大前提にあるのは「お客さまに喜ばれる森永マミーを提供する」という想いです。
これからも同じ気持ちで、愛される製品を世の中に送り出していきます。
芦沢(TOPPAN): 弊社は今、パッケージで培ったノウハウにマーケティングやDXを掛け合わせ、バリューチェーンに沿う選択肢を提供できるサステナブルブランド「SMARTS™(スマーツ)」を打ち出しています。
今後もお客さまの製品のライフサイクルに沿い、事業の川上から川下まで一貫したソリューションを提供したいと考えています。
カートカン®についても間伐材使用のサステナブルな面だけでなく、製品の企画から販促の支援、アップサイクル品の提案など、あらゆる視点で価値の最大化をお手伝いできるとアピールしていきます。
谷内様(森永乳業): 今回は芦沢様のみならず、上司の方やTOPPANさんの企画部門の皆さんにもご協力いただきました。まさにチームとして支えられ、私も打ち合わせのたびに多様な意見を聞けて発想が膨らみました。
本プロジェクトを通じて「環境配慮型パッケージ×コラボプロモーション×アップサイクル品」というTOPPANさんの新たな強みを実感しましたね。