2022.01.31

現在、国は「データ戦略」を進めています。特に新型コロナウイルス感染症拡大を踏まえ、ニューノーマルを実現するための政策が進められる中、デジタル化は重要課題となっています。
今回は、データ戦略の概要や、民間企業に関連する課題と施策、押さえておきたいポイントを解説します。

データ戦略とは?

デジタル化の動きが活発化しており、データを活用した社会課題解決が求められる中、2020年(令和2年)10月23日にデジタル・ガバメント閣僚会議内に「データ戦略タスクフォース」が設置されました。

データ戦略を推進する背景として、現代社会の構造的な課題として、少子化・高齢化の克服、東京一極集中の解消、防災、社会保障と財政の両立などに加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、デジタル化・オンライン化の遅れを取り戻すことが大きな課題となっていることがあります。

コンセプトとビジョン

データ戦略のコンセプトは、「データがつながることで新たな価値を創出」することです。

ビジョンとして、「フィジカル空間(現実)とサイバー空間(仮想)を融合させたシステム(デジタルツイン)を活用し、経済発展と社会的課題の解決を両立する「人間中心の社会の実現」が掲げられています。

具体的には、サイバー空間上に国家・社会を再構築するとともに、これを踏まえたサイバー空間そのものが独自の価値を創出できる環境を整えることによって、国・地方の行政機関は自らのDXを実現するだけでなく、我が国最大のプラットフォームとしての役割を果たすことを目指しています。

事例として、利用者視点の改革により「必要な給付が迅速に行われる」などのワンスオンリー(行政手続きに必要な情報は一度の提供で済むようにすること)やプッシュ型サービスの実現が挙げられています。民間分野においても、システムやデータが独立・孤立したサイロから脱却し、自ら保有するデータを幅広く国民や他の企業が活用することを促進する必要があるとしています。

これまで述べた内容は、日本政府が目指す「Society5.0」のビジョンに対応しています。
Society5.0では4つの社会が目標として掲げられています。

・IoTですべての人とモノがつながり、情報共有によって新たな価値が生まれる社会
・少子高齢化、地方の過疎化などの課題をイノベーションにより克服する社会
・AIにより、多くの情報を分析するなどの面倒な作業から解放される社会
・ロボットや自動運転車などの支援により、人の可能性が広がる社会

データ戦略タスクフォース第一次とりまとめ

出典:令和2年 12 月 21 日 デジタル・ガバメント閣僚会議決定「データ戦略タスクフォース第一次とりまとめ」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dgov/dai10/siryou_a.pdf

データ戦略タスクフォース第一次とりまとめ

出典:令和2年 12 月 21 日 デジタル・ガバメント閣僚会議決定「データ戦略タスクフォース第一次とりまとめ」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dgov/dai10/siryou_a.pdf

上記の図のように、データ戦略のアーキテクチャ(構造)はSociety5.0の構造に対応した7つの階層で構成され、「社会実装と業務改革」「データ環境整備」の大きく2つの領域に分類されています。

民間企業に関連する課題と施策

国のデータ戦略において、民間企業はどのように関わっているのか、また、今後はどのように関わっていけばいいのでしょうか。
データ戦略における現状課題の中でも民間企業に関する主なものとして、次の課題があります。

働き方改革

コロナ禍でテレワークやWeb会議が急速に増加する一方、テレワークが難しい業務が顕在化しました。例えば、押印手続きはオンラインでできないことから、わざわざ出社して実施する必要性など、顕在化したテレワークの阻害要因をオンライン化・デジタル化によって解決することが求められています。

給付金や助成金交付に関わる課題

サプライチェーンの一部断絶、物資不足、工場・飲食店等の休業、イベント自粛など企業活動へのコロナ影響を緩和・克服するために、給付金や助成金などの支援策を実施するためのオンライン手続きの実現、国と地方と民間のデータ・システム連携が求められています。

このような課題全般に対して、国と地方自治体、及び民間とのデータ連携基盤の構築が急がれています。

民間企業に求められるデータ戦略への対応

民間企業は、データ戦略の推進に関わっていくために、どのような対応を行う必要があるでしょうか。主な対応策をご紹介します。

・テレワークの定着・拡充
コロナ禍対応に限らず、働き方改革と生産性向上を両立するためのテレワークの定着・拡充が求められます。

・キャッシュレス対応
Society 5.0の一環として、マイナンバーカードを活用した消費活性化と官民共同利用型キャッシュレス決済基盤の構築や、モバイル決済データの活用促進のためのキャッシュレス化が推進されています。この方針に即した対応が求められます。

・地場産業の活性化・BCP
地域においては、地場産業の活性化・高度化や、BCP(事業継続計画)推進などのために、デジタル技術を活用した課題解決や、事業者間連携・活性化が求められています。

・データ戦略で派生するビジネスに必要な技術の取込
データ利活用によるビジネスを推進するためには、データを取得するためのセンサー技術、計測技術、分析技術、表現技術、通信技術、応用技術、ツール・システム機器などが必要になってきます。これらを取込・活用することが求められています。

まとめ

デジタル政策の司令塔である「デジタル庁」が2021年9月1日に発足し、国のデータ戦略は今後加速していきます。民間企業はデータ戦略のビジョンと構造を理解し、積極的に課題解決を推し進めていくことが求められています。

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