文化資源の魅力を伝える
周遊拠点・サービス開発

[課題背景]

和歌山県の高野山は、弘法大師空海が真言宗を開いた地として、豊富な文化資源を1200年以上守り継いできた場所として国内外から多くの来訪者を引き寄せていますが、ほとんどの来訪者は日帰りで帰ってしまう傾向があります。周遊や滞在長期化による観光消費増加を促すためには、高野山全体の持つ世界遺産としての文化的価値を深く理解してもらうためのストーリーを造成し、来訪者に訴求する必要がありました。

[事業概要]

高野山エリアの観光振興の中心的存在である、総本山金剛峯寺と地域まちづくり会社のDMC高野山の協力体制の構築を支援しました。文化観光拠点計画の策定支援、周遊拠点施設「高野山デジタルミュージアム」の開発・運営支援、周遊活性化のためのサービス開発を実施しました。

[具体的な取り組み]

• 文化庁「文化観光拠点計画」の策定支援

  高野山エリアの文化観光推進法^※拠点計画では、高野山の歴史や文化をストーリーとして伝えるVRシアターを併設した周遊拠点開発が主な事業として定められています。周遊拠点施設を起点に、観光ツアー造成、オリジナル商品開発、WEBサイトでの多言語発信などが位置付けられています。TOPPANは、文化庁の補助金採択に必要な拠点計画策定支援を通して、観光振興に必要な資金調達に貢献しました。

  ※文化観光推進法…博物館や寺社などの文化施設を観光拠点とし、その経済効果が文化資源の保全修復などにあてられる好循環を目指して2020年5月に施行された法律。文化庁は文化観光推進法に基づき、地域の観光振興の事業計画を認定しており、認定を受けた地域は、計画で位置づけられた事業実施にあたって補助金などの支援が受けられる。

• 周遊拠点の開発・運営支援

  地域まちづくり会社のDMC高野山が運営する「高野山デジタルミュージアム」は、VRシアターにカフェ・ショップが併設された複合施設です。高野山観光の中心地に位置しており、来訪者が高野山の歴史や文化について理解を深めたり、観光の途中に休憩したりできる拠点となっています。VRなどのデジタルコンテンツを用いることで、文化資源のストーリーが見える化されています。TOPPANは、文化関係者との調整、VRシアターの設置施工と運営支援を行いました。

• 周遊活性化のためのサービス創出

  「高野山デジタルミュージアム」では、高野山の聖地である壇上伽藍の魅力を伝えるVRコンテンツを上演しています。TOPPANは、VRコンテンツの提供と、VR鑑賞を通して文化資源の魅力を知った来訪者に対し長期滞在や消費を促す体験サービスを開発しました。例えばインバウンド富裕層向けに、VRなどのデジタルコンテンツで高野山の歴史や文化について理解を深めた後に、阿字観（瞑想）や夜間境内ガイドウォークで僧侶と関わり合うことのできるツアーを開発しました。また、オフシーズンの地域資源活用を目的に、長く続く高野山文化からSDGsや企業倫理について学ぶ、企業の人材研修プログラムを開発しました。