2022.09.30
自治体DX推進計画について
新型コロナウイルス対策関連の給付金の誤給付が、社会的な問題となっており、デジタル化による自治体業務の見える化・整流化の重要性が改めて認識されています。 今回は、総務省、デジタル庁が中心となって推進している自治体DX推進計画について解説します。

自治体業務を遂行するための基本構造と課題
自治体の業務内容の分析
自治体業務は、窓口業務、行政事務業務、承認業務、総務業務に分けられ、今後業務改革と ともに構造的改革も必要になると思われます。
①業務の基本構造「【窓口業務】【内部事務(行政事務)】【承認業務】」+【総務業務】
②サービス内容 :行政手続きサービス(市民向け)、まち・ひと・しごとに関する業務
③業務の傾向 :サービスの多様化、処理業務の膨大化と複雑化
④職務の環境 :職員数の削減、国の指導でアウトソーシングを推進

※出典:矢野経済研究所「自治体業務アウトソーシング市場の実態と展望」を追記・編集
自治体の行政サービスの課題と解決の方向性
自治体が、住民に円滑にサービスを提供するために「窓口業務・行政事務の効率化、DX 化」は、重要な取り組み課題です。コロナ禍において様々な課題が浮き彫りになりました。
課題①:「定常的な行政事務」の対応
・デジタル化、オンライン化、データ連携基盤構築による業務の効率化
・行政事務の効率化とマイナンバーカード活用による住民へのサービス向上
・セキュリティ対策など
課題②:「臨時的な政策上の業務」の対応(臨時特別給付金など)
・正確で円滑な業務遂行
上記の課題を解決するためには、RPA、AI-OCR の導入によるBPR(業務プロセス改革)の取り組み、デジタル人材の確保と教育、BPO(業務のアウトソーシング)の活用があげられます。
単なる手続のオンライン化にとどまらず、行政サービスに係る受付・審査・決裁・書類の保存業務といったバックオフィスを含む一連の業務を一気通貫で、デジタルで処理をすることが求められています。
自治体DX推進計画とは?
自治体DXの推進の変遷
2020年12 月25 日に「デジタル・ガバメント実行計画」(改訂版)が閣議決定され、同日「自治体DX 推進計画」も策定されました。翌年7月7日には、自治体におけるDX 化の手順書も策定され、2025年に向けて各自治体でDX化に取り組んでいます。

※出典:「自治体DX推進計画」「自治体DX全体手順書」をベースに追記・編集
自治体DX推進計画と重点取り組み
自治体DX推進計画には、情報システムの標準化・共通化、マイナンバーカードの普及促進などの6つの自治体DX の具体的な方策が掲げられています。
①自治体の情報システムの標準化・共通化
目標時期を 2025 年度として「Gov-Cloud(仮称)」の活用に向けた検討を踏まえて、基幹系17 業務システムについて国の策定する標準仕様に準拠したシステムへ移行
②マイナンバーカードの普及促進
2022年度末までに、ほとんどの住民がマイナンバーカードを保有していることを目指し、交付円滑化計画に基づき、申請を促進するとともに交付体制を充実
③自治体の行政手続きの オンライン化
2022 年度末を目指してマイナポータルからマイナンバーカードを用いてオンライン手続きを実現(子育て、介護、被災者支援、自動車保有の 31 業務)
④自治体の AI・RPAの利用促進
①、③の業務の見直しを契機に、AI・RPA 導入ガイドブック(総務省策定)を参考に AI や RPA を導入・活用推進
⑤テレワークの推進
テレワークの導入事例やセキュリティポリシーガイドライン等を参考にテレワークの導入・活用を推進(①、③による対象業務の拡大)
⑥セキュリティ対策の徹底
改訂セキュリティポリシーガイドラインを踏まえて、適切にセキュリティポリシーの見直しを行い、 セキュリティ対策を徹底
上記の6つの自治体DXの取り組みに合わせて、
①地域社会のデジタル化
②デジタルデバイド対策(デジタル化による格差対策)
③BPR の取り組みの徹底(書面・押印・対面の見直し)
④オープンデータの推進
⑤官民データ活用推進計画の推進
が取り組むべき事項としてあげられています。
自治体DXに関連する関連六法
2021 年5 月12 日、デジタル庁の設置に主眼をおいたデジタル改革関連6法が参議院本会議で成立しました。同年9 月1 日にデジタル庁が設置され、自治体DX 推進の取り組みが加速しています。

※出典:「デジタル改革関連法案WG作業部会とりまとめ」
デジタル庁の役割
2021年9月1日、デジタル庁が設置され、各府省庁・自治体で推進されてきたデジタル化の業務は、デジタル庁が主体で遂行されています。

※出典:「デジタル改革関連法案WG作業部会とりまとめ」
自治体DXによる将来のあるべき姿
自治体DX を推進し、公的機関・準公的機関・民間企業がデジタルを通じて連携し、社会課題を解決する仕組みをつくることが重要です。現実空間とサイバー空間をつなぎ合わせることでシームレスにつながる世界がつくることを将来のあるべき姿として描かれています。(デジタル社会の実現に向けた重点計画)
まとめ
自治体DX推進計画では、自治体の情報システムの標準化・共通化、行政手続きのオンライン化、セキュリティ対策の徹底などを2025年度までに取り組む予定です。
マイナンバーカードの全国民への普及にも引き続き取り組まれ、オンライン上で各種手続きが可能になるほか、将来的に健康保険証や運転免許証との一体化が推進され、国民の利便性向上が期待されています。
参考文献
- 矢野経済研究所「自治体業務アウトソーシング市場の実態と展望」
- 総務省 自治体DXの推進
(https://www.soumu.go.jp/denshijiti/index_00001.html) - デジタル改革関連法案ワーキンググループとりまとめ
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000722993.pdf) - デジタル庁 データ連携基盤の整備について
(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_denen/dai4/siryou8.pdf) - 202111【最終版】政策分析SIレポート【行政サービスとデジタル社会の実現】.pdf