2025.07.24

地域資源とは?
観光や特産品への活用事例も紹介

自然・歴史・文化などの地域資源を活かすことで、地域の魅力向上や持続可能なまちづくりが可能です。本記事では、地域資源の定義や代表的な分類と、観光・特産品・エネルギーなどへの活用事例をご紹介します。

地域には、自然・歴史・文化・産業といった、まだ十分に活かされていない多様な資源が存在します。これらの「地域資源」に改めて目を向け、観光振興や特産品開発、再生可能エネルギーなどに活用することで、地域の魅力を高め、持続可能なまちづくりにつなげることが可能です。

本記事では、地域資源の基本的な定義や分類を解説し、具体的な活用事例もご紹介します。地域資源の活用に関心のある方は、ぜひ参考にしてください。

この記事で分かること

・地域資源とは何か
・地域資源の活用が求められている理由
・地域資源の活用事例

地域資源とは

地域資源とは、その地域に存在し、人々の生活や産業などに活用可能なあらゆる有形・無形の要素のことです。具体的には、山や川などの自然環境、地形、気候の特性に加え、伝統的な文化や歴史、人々の知恵、技術、風習なども含まれます。

このような地域資源はどの地域にも存在しますが、日常に溶け込んでいるために、その価値に気付かれていないことも少なくありません。

地域の特性を正しく把握し、これらの資源を活かすことで、新たな観光や産業の創出といった形で、地域活性化を実現することが可能です。

地域資源の分類

地域資源は、その性質や活用目的に応じていくつかのカテゴリーに分類されます。主な分類として、「自然資源」「人文資源」「特産的資源」があり、いずれも地域の個性や魅力を形づくる重要な要素です。

こうした分類を明確にすることで、資源の持つ価値や特性をより的確に把握でき、活用方法の検討や地域振興の戦略立案にもつながります。さらに、分類ごとの具体的な資源を知ることで、自分たちの地域にある資源を見つめ直し、地域づくりに活かすヒントを得ることが可能です。

ここでは、代表的な分類に沿って、各地域資源の特徴と活用の可能性をご紹介します。

自然資源

自然資源とは、地域に根ざした地形や気候、山林、河川、海洋、動植物など、自然環境そのものに由来する資源です。例えば、風光明媚な景勝地や温泉、肥沃な土壌、清らかな水源、風力・太陽光などの自然エネルギーが自然資源にあたります。

これらは地域の魅力や個性を形づくる核となる要素であり、観光や農林水産業、再生可能エネルギーの分野などで広く活用されています。

自然資源は、地域の暮らしや文化とも深く関わっており、地域づくりや環境教育の場としての役割も担います。そのため、活用にあたっては自然環境への配慮が欠かせません。保全とのバランスを取りながら持続可能な形で利用していくことが重要です。

人文資源

人文資源とは、地域の歴史や文化、伝統、風習、芸術、建造物など、人々の営みによって築かれてきた資源のことです。具体的には、城や神社仏閣といった歴史的建造物、伝統行事、郷土芸能、方言、郷土料理などが挙げられます。

これらは地域固有の価値やストーリーを内包しており、観光や教育の分野での活用が期待されます。

地域のアイデンティティとして次世代へ伝えることが求められるため、無形文化財としての保存や継承が重要です。また、地域外の人々との交流を促し、住民の郷土愛や誇りを育む要素としても注目されています。持続可能な地域づくりには欠かせない存在です。

特産的資源

特産的資源とは、その地域ならではの産品や産業、加工技術など、経済的価値を持つ地域特有の資源を指します。地場産の農産物や伝統的な工芸品、特有の製法による食品、地域ブランドとして認知された商品などが代表的な例です。こうした資源は地域経済を支える柱であり、雇用の創出や経済活性化に貢献します。

また、近年進められているのが、6次産業化(生産・加工・販売の一体化)やブランド戦略により、特産的資源に新たな価値を加える取り組みです。特産的資源は観光資源とも組み合わせやすいため、体験型サービスや特産品の販路拡大につながります。特産的資源は、地域の魅力を広く発信する手段であり、地域活性化の大きな推進力といえます。

地域資源の活用が求められている背景

地域資源の活用は、地域が本来持つ独自の魅力や強みを生かし、活力あるまちづくりや持続可能な社会の実現を目指すための手段として注目されています。ここでは、地域資源を戦略的に活かす取り組みが各地で求められている背景について、詳しく解説します。

人口減少と高齢化

地方では、若年層の都市部への流出が進み、高齢者の割合が増加することで、地域の人口構造が大きく変化しています。その影響で、農林水産業や地場産業を支える人材が不足し、公共交通や医療・福祉サービスの維持も難しくなりつつあります。

こうした課題に対応するためには、地域資源を活かして新たな雇用や交流の場を生み出し、人を地域に呼び込む工夫が必要です。

また、地域資源を再発見・再評価することで、住民が自らの地域に誇りや愛着を持ち、定住意欲の向上やU・Iターンの促進にもつながる可能性があります。

持続可能な社会の実現への気運

地球環境への配慮や地域の自立を重視する「持続可能な社会」の実現は、地域にとっても重要なテーマです。地域資源を活用し、地産地消の促進や再生可能エネルギーの導入などを進めることで、環境負荷の低減に貢献します。

さらに、地域内で資源を循環させる取り組みは、外部への依存を減らすことにもつながり、災害時にも柔軟に対応できるレジリエンス(回復力)の高い地域づくりも実現できるでしょう。

地域住民が主体的に参加・協働して資源活用に取り組むことで、地域の持続的な発展力を高めることも可能です。こうした動きは、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)にも合致しており、近年では自治体や企業の関心も急速に高まっています。

地域資源を活用する方法

地域資源を活用する方法は多岐にわたりますが、地域ごとの特性や資源の種類を見極めて最大限に生かすことで、地域の魅力を高め、持続可能なまちづくりへとつなげることが可能です。ここでは、地域資源の代表的な活用方法について、具体例を交えてご紹介します。

観光資源として活用する

地域の自然、文化、歴史を活かした観光資源の開発は、地域の魅力を広く発信し、観光客の誘致につながります。近年特に注目されているのは、エコツーリズムや農業・漁業体験など、地域の特色を活かした体験型観光のプログラム開発です。

こうした取り組みには地域住民の参画が不可欠で、資源の維持・管理を通じて持続可能な観光地づくりが推進されています。観光を通じた地域資源の活用は、地域経済の活性化や雇用の創出にも寄与する重要なアプローチです。

観光資源とは?全国の事例から学ぶ活用のポイント|コラム|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

エネルギー資源として活用する

日本では、エネルギー自給率の低さや自然災害の経験から、化石燃料への依存を見直し、地球温暖化対策や環境負荷の軽減が求められています。

こうした背景を受けて進められているのが、太陽光や風力、地熱など、地域の自然環境を活かした再生可能エネルギーの導入です。また、森林資源を活用した木質バイオマス燃料の利用も注目されており、地域産資源をエネルギーとして活かす取り組みが各地で展開されています。

地域内でエネルギーを生み出し循環させることは、エネルギーコストの削減や地域経済の自立を後押しし、災害時のエネルギー供給の確保といったレジリエンス強化にもつながります。こうした持続可能なエネルギー活用は、環境保全やSDGsの観点からも意義ある取り組みといえるでしょう。

環境・エネルギー・SDGs|分野から探す|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

地域資源の活用事例

地域資源を活用した取り組みは、観光、産業、環境などさまざまな分野で進められており、地域の特性を生かした多様な活用モデルが全国各地で展開されています。自治体と企業が連携しながら進める事例を通じて、地域資源の価値を再発見し、地域経済や暮らしにどのような効果をもたらすかを学ぶことが可能です。

ここでは、TOPPANが支援した地域資源の取り組みを例に、具体的な内容とその成果をご紹介します。

地域資源を活用した食文化の創出とブランドの確立

愛知県春日井市では、全国でも珍しい食用サボテンの生産地という特産的資源を再評価し、地域活性化の中核に据える取り組みを進めました。

市民・生産者・飲食店・専門家が連携して地域全体で挑戦したのが、新たな食文化の創出に向けた「サボテングルメプロジェクト」です。市民アンケートや試食会を通じて消費者ニーズを把握し、商品開発に反映しました。

完成したメニューは市内の飲食店で提供されるようになり、さらにはSNSや動画、イベントなどを活用して情報発信も実施しています。市内外への知名度を高めることで、「サボテンのまち」という地域ブランドを確立し、地域経済の活性化にもつなげた好例です。

TOPPANでは、地域や企業の強み・魅力を伝えるための「ブランド構築」のご支援も行っています。

地域資源の商品開発・ブランド確立による地域産業活性化|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

ともに考え、ともにつくる ブランドコンサルティング|TOPPAN Biz

史料調査・アーカイブによる地域文化財の活用

福島県二本松市では、人文資源を現代の技術と組み合わせて活用する取り組みが行われました。二本松城(三ノ丸御殿)跡に残る石垣を起点に、藩政時代の史料を調査し、往時の城郭の姿を再現する施策です。

発見された貴重な史料をもとに実施したのは、CG技術を活用した建物全体の復元です。現存しない構造物を視覚的に体感できるコンテンツの制作により、地域の歴史的価値をわかりやすく伝える新たな手段が創出されました。

復元コンテンツは観光資源として活用できます。地域の魅力発信や経済活性化につながる、文化財の保存・活用の新たなモデルとしても注目されています。

TOPPANは、史料調査からアーカイブ構築、CG制作、コンテンツ化までを一貫してサポートし、地域の文化財活用を後押しします。

石垣しか残っていない御城の復元に向けた調査・史料アーカイブ|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

アーカイブ構築・文化財コミュニケーション支援サービス|TOPPAN Biz

地域の自然を活かしたARコンテンツの制作

長崎県の西海国立公園・九十九島では、大型遊覧船での新たな観光価値を創出する目的で、AR(拡張現実)技術を活用した体験型コンテンツの制作に取り組みました。

当初抱えていた「航路変更の制約」という課題に対し、国土交通省の補助金を活用して、自然や歴史を多言語で紹介するARアプリの開発を行っています。乗船中にタブレットをかざすと、各島の特徴や映像が表示され、観光客の理解と満足度を高める仕組みです。

実施されたモニターツアーでは、多くの参加者から高評価を得ており、個人旅行客や外国人観光客(インバウンド)への対応強化にもつながっています。地域の自然資源と最先端技術を組み合わせた観光振興の事例といえるでしょう。

AR体験型クルーズで地域観光促進|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

持続可能な地域の未来に向けて、地域資源の活用に取り組もう

地域が持つ自然・文化・産業などの地域資源を活かすことで、持続可能なまちづくりの実現や、人口減少・高齢化といった社会課題の解決につながる可能性があります。

資源を最大限に活用するには、地域住民の主体的な参加や、自治体・企業など関係者同士の連携が欠かせません。地域資源の価値を再認識し、先進的な取り組みも参考にしながら、自分たちの地域に合った活用方法を見つけていくことが大切です。

TOPPANでは、地域資源の発掘から磨き上げ、情報発信までを一貫してご支援し、地域の持続可能な未来づくりをともに推進いたします。地域資源の活用に課題を感じている方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

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TOPPAN SOCIAL INNOVATION WEB 編集部

参考文献

  • 環境省_平成27年版 図で見る環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第1部第3章第2節 それぞれの特性を生かした持続可能な地域づくり(https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/zu/h27/html/hj15010302.html)
  • 総務省|平成27年版 情報通信白書|人口流出の背景(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc231120.html)
  • 国土形成計画(全国計画)関連データ集|国土交通省(https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001611639.pdf)
  • 地域の生活サービスの維持困難化|国土交通省(https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r02/hakusho/r03/html/n1213000.html)

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