2025.05.27

自治体の地域課題一覧|持続可能な地域経営のためのアプローチも紹介

人口減少や少子高齢化の進展に伴い、労働力不足や財政の圧迫とそれが引き起こす諸問題など、地方自治体が抱える地域課題は多岐にわたります。

本記事では、各自治体が解決を目指す優先すべき課題一覧を示し、データ分析といったデジタルツールの活用や、民間との連携・BPOなどを通じて解決策を探るための具体的なアプローチをご紹介します。

自治体の地域課題一覧

自治体が抱える地域課題一覧

地方自治体は少子高齢化や人口減少社会の進行とそれに伴う人手不足、財政状況の悪化など多岐にわたる地域課題を抱えています。ここでは、現在の状況と背景を踏まえた主要課題を整理・解説します。

人口に関する課題

地方自治体にとって、少子高齢化の進行と人口の減少は深刻な課題です。特に、地方部においては都市部への人口流出が続いており、自然減と社会減による二重の構造による人口減少が見られます。まずは、人口減少に関する課題を詳しく解説します。

人手・後継者の確保

労働力人口の減少は日本全体の問題であり、企業では働き手や後継者不足が深刻化しています。特に地方では、都市部への人口流出も重なってその傾向が顕著に表れており、地域経済や生活基盤への影響も無視できません。なかでも、医療・介護分野では人材確保が難しく、サービス提供体制の維持が困難になっていることが大きな課題です。

自治体も例外ではなく、公務員受験者数の減少や採用試験辞退率の上昇、若年層職員の早期離職により、人員不足が深刻化しています。地方自治体における人材の確保は、今後の行政運営において極めて重要な課題といえるでしょう。

財政負担の軽減

高齢化により社会保障費が増大する一方、生産年齢人口の減少で税収は先細りが予想されています。文書記録や申請・受付手続きなどにアナログ業務が多く残っている自治体では、効率化による行政の持続性確保のため、デジタル化推進が急務となっています。

経済に関する課題

人口減少や産業構造の変化により、地域経済の活力が低下している点も課題です。また、海外からの観光客が増加するなどの地域経済の構造も変化しています。ここでは、経済活性化に向けた課題を解説します。

雇用の創出

都市圏への人口流出や生産拠点の海外移転による雇用減が問題となるなか、働き手の流出を防いで地域経済を維持するためには、魅力ある雇用創出が必要です。求職者の希望に沿った柔軟な働き方や労働条件を備えた雇用機会の提供が求められています。

海外からの観光客への対応

政府は、2030年までに外国人旅行者数を6,000万人に増やす目標を掲げています。そのため、インバウンド需要を地域経済に取り込むことは不可欠といえますが、一方で観光客の過密によるオーバーツーリズム等の課題も表面化してきました。
自治体では、観光による恩恵を地域全体で持続的に享受できるよう、バランスの取れた観光施策の構築が求められています。

インフラに関する課題

インフラは住民生活や地域経済の基盤です。しかし、多くが高度経済成長期に集中して整備されたため老朽化が進行しています。さらに財政制約、気候変動の影響により、維持管理や安全確保に多くの課題が生じているのが現状です。

公共交通機関の維持

人口の減少に伴い、店舗の減少や病院・学校の統廃合などが進んでいます。サービスを受けるために遠方の施設へ足を運ぶ必要が生じるなど、日常生活において移動の問題が生じやすくなりました。

一方で、利用者の減少や新型コロナウイルス感染症の影響により、路線バスや地域鉄道の経営状況は一層厳しくなっています。さらに、運転業務の賃金水準が比較的低いことから人材の確保も難しく、運転手の人手不足も深刻化しています。

その結果、地域における公共交通サービスの安定的な提供が難しくなっているのが現状です。

老朽化するインフラのメンテナンス

高度成長期以降に整備された道路やトンネル、下水道などのインフラは、建設から50年を迎え老朽化が進んでいます。

2012年の笹子トンネル天井板落下事故を受け、高度成長期に建設されたインフラの適切な補修や修繕が必須ということが広く周知されました。しかし、予算不足で整備が進まないケースも多く、安全確保が課題となっています。

災害発生時の安全確保

日本は地震や台風などの自然災害が多い国であり、近年では異常気象や災害も頻繁に起こっています。しかし、河川整備やダム建設などの防災インフラの整備状況には地域差があるのが現状です。災害時の人流把握や、混乱の少ない避難誘導・避難計画も課題といえます。

また、従来に比べて防災・減災インフラの整備が進んだことで、住民が自然災害を直接経験したことがないというケースも増えています。防災の必要性を実感できるよう、防災教育や防災訓練といった防災意識の向上も、自治体が取り組むべき課題です。

環境に関する課題

環境問題への対応も、自治体にとって重要な課題のひとつです。地球温暖化対策から自然環境保全、公共交通機関や低炭素地区の整備、ごみ減量・リサイクル推進まで、多岐にわたる取り組みが求められます。

しかし、環境分野の専門知識を持つ人材や財源の不足により、十分な対策が進んでいない自治体も少なくありません。

教育・福祉に関する課題

教育・福祉も自治体の重要な役割ですが、こちらも予算不足や人材不足による問題が生じています。

教育分野では児童生徒数の減少による小規模校の統廃合や、教員不足が大きな課題です。地方公務員の定年引き上げなどの対策もとられていますが、改善には至っていません。

福祉分野では過疎地域での介護職員不足が深刻化しており、高齢者への必要なサービス提供が困難になっているケースもあります。子育て支援や障がい者福祉など他の福祉分野でも、地域の担い手不足によるサービス低下が懸念されています。

地域課題を発見する方法

自治体が自地域の主要な課題を見極めるためには、住民の声やデータ分析、他自治体との比較など多角的な手法が必要です。ここでは、地域課題を発見する方法について、具体的に解説します。

地域住民とのコミュニケーション

地域課題の発見には、住民からのヒアリングが重要です。住民一人ひとりの声に耳を傾け、具体的な困りごとやその背景を丁寧に掘り下げていくことで、行政として取り組むべき課題を明確にできます。

デジタル技術を活用したオンラインアンケートやワークショップを活用することで、より多くの人々から多様な意見を集めることが可能です。

このとき、取り組みの結果は地域社会と共有することで、行政運営の透明性を高められます。結果を公開する際は、個人情報の適切な管理にも十分配慮することが必要です。

データ分析・調査

自治体が保有する人口動態や交通量、経済指標などのデータを分析することで、地域課題の発生を予測できます。さらに、課題を客観的かつ定量的に評価することも可能です。

データに基づく政策立案と実行は、今後ますます重要になってくると考えられます。政府が提供する地域経済分析システム「RESAS」などの活用もそのひとつです。地域経済に関するビッグデータを地図やグラフで可視化できます。

他自治体との比較

人口規模や財政状況が似た他自治体と比較することは、自身の地域課題を客観的に把握する手がかりとなります。他自治体の取り組みを調査し、成功事例を参考にすることで、自地域に適した施策の方向性を検討するヒントを得ることが可能です。

参考:地域活性化|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

地域課題を解決する方法

自治体の抱える課題を解決するためには、行政サービスの効率化や防災啓発、地域資源の活用など多角的な手法が必要です。ここでは、具体的な解決方法をTOPPANが提供可能なソリューションとあわせてご紹介します。

行政サービスの自動化・効率化

人手不足や住民ニーズの多様化が進むなか、行政サービスの質を維持・向上させるには、自動化や業務の効率化が不可欠です。そのための手法として、DX(デジタルトランスフォーメーション)とアウトソーシングがあります。

デジタルツールの導入(DX)

国全体でDXが推進されるなか、申請処理や対応に多大なコストがかかるアナログ業務が多く残ったまま、という地方自治体も少なくありません。デジタルツールの導入により、業務効率化と住民サービスの向上が期待できます。

例えば、TOPPANの「Speed Letter Plus®」は、住民が自治体からの通知をスマホなどの端末で受信することができ、ペーパーレス化やオンライン申請の促進に貢献できるため、大幅な業務効率化が可能です。そのほか多様なソリューションも展開されています。

通知物電子送付サービス「Speed Letter Plus®」|TOPPAN BiZ

アウトソーシング

窓口業務や電話対応といった業務の一部を外部に委託するアウトソーシングは、自治体の人手不足を補う有効な手段です。委託先の選定は慎重に行う必要がありますが、職員の負担軽減だけでなく、住民サービスの質向上にもつながります。

TOPPANのBPOサービスは、単なる業務の委託だけでなく、全体最適による業務プロセスの改善までをサポートするのが強みです。複数の自治体でご活用いただいています。

参考:自治体の業務効率化を目的とした総務事務センターの設立・運営|事例|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

防災意識の啓発

防災対策はインフラ整備だけでなく、平時からの住民への啓発も重要です。防災訓練や講習を通じて地域全体の防災意識を高めることで、災害時の被害軽減につながります。

TOPPANが提供する「デジ防災®」は、小中学生向けの防災学習コンテンツです。楽しみながら段階的に災害知識を習得でき、わかりやすい啓発ツールとしても役立ちます。

デジタル防災教育・学習システム「デジ防災®」|TOPPAN BiZ

地域資源の活用

地域の魅力を再発見し、住民や来訪者に発信することは、観光客の増加や定住促進につながります。そのための施策として、観光振興や地域産品の開発が有効です。

観光振興

地域固有の史跡や自然などを観光資源として活用することで、交流人口を増やし、地域活性化を図ることが可能です。認知度や好感度が高まることで住民の地域に対する愛着も高まり、長期的に見ると若者の定住促進にも効果が期待できます。

TOPPANでは、地域の魅力を再発見・発信する観光振興支援を実施し、観光客を呼び込むためのコンテンツ作りが可能です。例えば、高野山エリアではVRコンテンツの活用や周遊拠点の開発・運用により、長期滞在や消費の促進に貢献しました。

参考:文化資源の魅力を伝える周遊拠点・サービス開発|文化観光推進事例|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

地域産品の商品開発

地域産品の開発やブランド化は、地域産業を活性化する有効な手段です。地域の歴史や文化、生産者の想いを商品に取り入れることで付加価値が生まれ、他地域との差別化にもつながります。特に「食」は、幅広い地域で魅力発信の軸となり得る重要なテーマです。

TOPPANでは、地域産品の磨き上げから、販路拡大、プロモーションまで一貫したサポートを提供しています。実際に、埼玉県川島町では、地域ブランド「KJブランド」の再構築を通し、町の魅力発信に貢献しました。

参考:地域産品を磨き上げ魅力を伝える|地域活性化事例|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

ステークホルダーとの連携

地域課題を自治体単独で解決するには限界があるため、企業、学術機関、医療機関など多様なステークホルダーとの連携が不可欠です。官民連携による体制づくりは、地域資源の活用や社会課題の解決に向けた大きな力となるでしょう。

TOPPANでも地域のステークホルダーと連携した取り組みを支援しています。例えば、2024年10月には横浜市の国際会議開催を支援し、アジアの脱炭素・GXに関するビジネスマッチングを通じた新たな協力関係の構築をサポートしました。

参考:アジアの脱炭素とGXを推進する国際会議の開催|環境・エネルギー・SDGs事例|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

このほか、医療機関・介護施設などと連携して健康拠点を構築・運営するための「健康ステーション構築支援サービス」を提供。地域包括ケアシステムの構築を支援しています。

健康ステーション構築支援サービス|TOPPAN BiZ

地域課題を見極めて持続可能な地域づくりを

自治体が直面する地域課題は多岐にわたります。解決のためには、DXやデータ活用による効率化を進めると同時に、地域の特性を活かして魅力を高める施策も重要です。自治体主体の取り組みに加え、民間や専門機関との連携も視野に、取り組みを進めましょう。

TOPPANでは、業務の効率化から地域資源の発掘まで幅広く支援いたします。課題の発見や解決にお困りの際は、ぜひご相談ください。

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TOPPAN SOCIAL INNOVATION WEB 編集部

参考文献

  • 地域が抱える課題・検討の論点について|総務省(https://www.soumu.go.jp/main_content/000919078.pdf)
  • 地域・地方の現状と課題㈱富士通総研 (chromeextension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.soumu.go.jp/main_content/000629037.pdf)
  • 我が国における総人口の長期的推移 |総務省(https://www.soumu.go.jp/main_content/000273900.pdf)
  • 2024年版「小規模企業白書」 第1節 地域に貢献する小規模事業者 | 中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/shokibo/b2_2_1.html#:~:text=)
  • 地域雇用創出の課題と地域雇用創出の可能性|総務省(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc232220.html)
  • インバウンド観光の最新の動向と課題 : 経済社会総合研究所 - 内閣府(https://www.esri.cao.go.jp/jp/esri/seisaku_interview/interview2020_28.html)
  • 持続可能な観光ガイドライン|国土交通省(https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/810000952.pdf)
  • 地域の公共交通を取り巻く現状と検討の視点・課題|国土交通省(https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/content/001728295.pdf)
  • 公共施設等の総合的な管理による老朽化対策等の推進① |総務省(https://www.soumu.go.jp/main_content/000271742.pdf)
  • 道路の老朽化対策の本格実施について|国土交通省(https://www.mlit.go.jp/common/001046640.pdf)
  • 令和5年版 防災白書|特集1 第2章 第2節 防災・減災インフラの整備等による災害への対応力の向上 : 防災情報のページ - 内閣府(https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/r05/honbun/t1_2s_02_00.html)
  • 地域経済分析システム(RESAS:リーサス)|経済産業省北海道経済産業局(https://www.hkd.meti.go.jp/information/resas/index.htm)
  • 地方公共団体におけるアナログ規制の見直しの取組​|デジタル庁
    (https://www.digital.go.jp/policies/digital-extraordinary-administrative-research-committee/local-government)
  • 3.防災知識の普及啓発 | 令和2年版 消防白書 | 総務省消防庁(https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r2/chapter4/para1/56624.html)

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