2026.04.28

自治体DXの次なるステージへ|住民サービスの変革とAI活用で描く行政の未来

自治体DXは、システム導入から一歩進んだ取り組みが求められるようになってきました。自治体DXの基本から2026年以降の動向、フロントヤード・バックヤード改革、AI活用、先進事例まで体系的に解説します。

自治体DXの本質は、単なるIT導入やシステムの電子化ではなく、住民との接点であるフロントヤードのデジタル化と、庁内BPR(業務プロセス再設計)をセットで行うことです。
DX推進担当に任命されたものの、「何から着手すべき?」とお悩みの地方自治体も多いことでしょう。

自治体DXを進める際には、オンライン申請などの住民が利便性を実感できるサービスからスモールスタートし、業務効率化の成功体験を現場に積み上げることが重要です。

この記事では、自治体DXの意味や2026年以降のトレンド、具体的な取り組み、成功事例をご紹介します。

この記事でわかること

・2026年以降に求められる自治体DX
・自治体DXの具体的施策
・自治体DXの成功事例


BPO DX banner

自治体DXとは

自治体DXとは、地方公共団体がデジタル技術やデータを活用し、住民の利便性や行政サービスの質を向上させると同時に、職員の業務効率化を図る取り組みです。

総務省では、将来的に地方行政が立ち行かなくなるリスクを懸念し、限られた職員数でも機能する「スマート自治体」への転換が不可欠であると提言しています。2026年4月時点では、2025年度末を目標とした基幹業務システムの標準化などが全国で進められています。

なお、総務省の「自治体DX推進計画(第5.1版)」にて重点取組事項とされているのは、以下の項目です。

1. 自治体フロントヤード改革の推進
2. 地方公共団体情報システムの標準化
3. 国・地方デジタル共通基盤の共通化等の推進
4. 公金収納におけるeL-QRの活用
5. マイナンバーカードの取得支援・利用の推進
6. セキュリティ対策の徹底
7. 自治体のAIの利用推進
8. テレワークの推進

出典:自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第 5.1 版】|総務省

2026年以降の自治体DX3つの重点ポイント

これまでの「紙をデジタルにする」「システムを導入する」といった準備フェーズから一歩前進し、現在は「住民サービスの見直し」や「AI活用を前提とした業務の高度化」へと関心がシフトしつつあります。

ここでは、総務省の「自治体DX推進計画」に基づき、今後の地方自治体DXに求められることを説明します。

システム標準化とガバメントクラウド移行

総務省が主導する「地方公共団体情報システムの標準化」は、2025年度末を目標に進められてきました。2026年以降は、ガバメントクラウドの運用コスト最適化が重要なテーマとなります。

地方自治体独自のカスタマイズによる莫大な保守費用から脱却し、浮いたリソースや予算をフロントヤードの改善や新たなデジタル住民サービスの創出(EBPM:客観的な証拠に基づく政策立案)へ戦略的に再配分することが求められます。

単なるインフラ移行にとどまらず、標準化されたデータ要件(地方公共団体標準オープンデータセットなど)を活用していくことも重要です。そのためには、複数自治体間での広域連携や、国・県とのシームレスなデータ連携によるアナログ規制の見直し(書面・対面・目視の撤廃)を進める必要があります。

庁内DXから地域DXへ

2026年以降の自治体DXのトレンドとして、庁内業務の効率化にとどまる「庁内DX」から一歩進み、地域全体の課題解決へと取り組みを広げていくことも挙げられます

具体的には、行政が保有するデータやインフラを民間企業、大学などと連携させる「地域社会のデジタル化」へと発展させることが重要な課題です。

また、地域未来戦略と連動しながら、過疎化や産業空洞化といった地方の社会課題をデジタル技術で解決する共創型社会への転換も期待されています。

こうした流れの中で、自治体には単なるサービス提供者ではなく、地域社会のデジタルプラットフォームを支える「オーガナイザー(調整役)」としての役割を担うことが求められます。

生成AIの実用・エージェント化

生成AIの進化は著しく、自治体でもその活用が求められています。デジタル庁の動向を見ると、2026年までに政府共通のAI基盤「ガバメントAI 源内」の構築が進められており、公共分野での利活用環境の整備が進む見込みです。

また、自律的に複数タスクを実行する「AIエージェント」も登場しており、今後は自治体業務への応用が広がっていく可能性があります。たとえば、条例や各種要綱、過去事例を学習したAIエージェントが申請内容の確認を補助したり、住民が提出する書類などの入力支援を行ったりするような活用も考えられるでしょう。

一方で、AI導入における課題として、既存の業務フローとの不整合があります。単なるツール導入にとどまらず、AI活用を前提として業務プロセス全体を再設計(BPR)することが重要です。

さらに、地方自治体の業務には、機密性の高い個人情報を取り扱うことからセキュリティ面の制約も大きく、LGWAN環境下で利用できるツールが限られるなど、導入が進みにくいケースも存在します。

自治体DXの具体的な取り組み

自治体DXの導入は全庁的な取り組みとなり、部局横断の調整負荷も大きいため、まずは効果が見えやすい領域から段階的に進めることが重要です。

フロントヤード

フロントヤードは、住民と行政の最大の接点です。フロントヤードにおけるDXの取り組みでは、総務省が掲げる「行かない窓口」「書かない窓口」「待たせない・迷わせない窓口」の実現が目標とされています

しかし、オンライン申請を導入しても、住民に利用されなければ意味がありません。紙とデジタルの二重管理になるリスクも考えられるため、UXの向上やBPRによる業務プロセスの抜本的見直しが必要です。そのため、オンライン化だけでなく、申請導線のわかりやすさ、入力補助、多言語対応、来庁者支援まで含めて設計することが重要になります。

TOPPANでは、書かない窓口を実現する窓口タブレット申請システムや、窓口の多言語対応を支援する透明翻訳ディスプレイ「VoiceBiz® UCDisplay®」などを提供しています。ツールやシステムだけでなく、運用定着の支援や業務代行も含め、フロントヤード改革全般のご支援が可能です。

自治体向け 窓口タブレット申請システム|窓口DX推進を支援

透明翻訳ディスプレイ「VoiceBiz® UCDisplay®」

自治体フロントヤード改革とは?推進の手順や先進事例を紹介

バックヤード

バックヤードは、フロントで受け付けた申請の審査、決定、データ入力、通知作成などを行う庁内業務です。労働人口減少にともなう職員不足の中、持続可能な行政運営体制の構築が急務となっています。

紙ベースの決裁フローや手入力作業といった、「定型的なノンコア業務」が職員の時間を奪っているのが現状です。バックヤードのDXは、AI-OCRやRPAといったツールを単独で導入するだけでは局所的な改善にとどまるため、業務プロセス全体の見直しが欠かせません

TOPPANでは、「自治体向け バックヤード改革支援サービス」や、バックヤードを含む行政事務の代行・DX支援を幅広く行う「Hybrid-BPO®」を提供しています。

業務プロセス全体を再設計(BPR)したうえで、定型業務を外部委託(BPO)として切り出し、住民との対話や政策立案といったコア業務に集中できる環境を創出します。

自治体向け バックヤード改革支援サービス

自治体向けBPOサービス Hybrid-BPO®

通知・情報発信

行政から住民への各種通知や、災害・インフラ情報の発信領域でも各地域でDXが推進されています。従来の紙と郵送による通知は、印刷・封入に膨大なコストと手間がかかり、タイムリーな情報伝達が困難なため、情報を配信するチャネルについても見直しが必要です。

TOPPANが提供する電子通知サービス「Speed Letter Plus®」は、通知から電子申請までをデジタル化し、スピーディーで低コストな情報伝達を実現します。また「EngagePlus®」ではデジタル・アナログを一括管理して最適なチャネルを自動選択することが可能です。

自治体向け手続オンライン化・ペーパーレス化支援「Speed Letter Plus®」

通知配信のトータルソリューション-郵送コストを削減しマルチチャネル化|EngagePlus®︎

自治体の電子通知導入ガイド|住民利便性の向上と郵送コスト最適化を両立


また、単なる業務効率化ではなく、行政側の一方的な発信から「住民との双方向コミュニケーション」へと転換することも重要です。

TOPPANが提供するまちの情報集約・発信サービス「PosRe®(ポスレ)」は、住民アプリやLINE、LPWA「ZETA」などのセンサーから収集した地域データ(道路状況や災害情報)をシステム内で一元管理し、公開できるソリューションです。

自治体ポータルサービス「クラシラセル®」は、住民が必要とする情報を適切に届けるデジタル窓口の役割を担います。住民への発信もワンストップで行えるため、行政と住民の関係性強化に寄与します。

自治体ポータルサービス「クラシラセル®」

まちの情報集約・発信サービス「PosRe®(ポスレ)」

文書・記録管理

自治体では、法定保存年限のある膨大な公文書や行政記録の保管・管理が求められます。紙媒体での保管は物理的スペースを圧迫し、検索性が低く、災害時の紛失リスクが高い上、テレワーク推進の障壁にもなります。紙で保管されている文書のデジタル化と、検索性の高い文書管理システムの導入が必要です。

TOPPANでは、「文書電子化BPOサービス」を提供しています。機密性の高い行政文書をセキュアな環境でスキャニングし、高精度なAI-OCR技術を用いてデジタルデータに変換してペーパーレス化を推進します。

また、自治体情報発信支援ツール「Con:tegration®」は、自治体が運用するメディアの情報を一元管理できるツールです。このデータベースを基盤として、AIエージェントが自動でキャプションを作成したり、自律的かつ効率的に資料の検索が可能な機能も実装するなど、文書管理業務の分類・検索をAIが支援し効率化が可能です。

文書データ利活用ツール「Con:tegration®」

文書電子化BPOサービス

デジタルアーカイブとは|文化を未来へつなぐ保存と活用の仕組み

キャンペーン・給付金給付業務

国や自治体の経済対策などにともなう各種給付金の支給や、地域経済を回すためのプレミアム付商品券・地域通貨の発行などは、突発的かつ期限が設けられているのが一般的です。既存の業務を抱える職員だけで対応するには限界があるにもかかわらず、システム開発や人員増強の迅速な手配も困難なため、使いやすいシステムの導入に加え、BPOによる外部リソース活用も検討する必要があります

TOPPANでは、自治体向けのキャッシュレス決済プラットフォーム「地域Pay®」を提供しています。

さらに、「自治体向け 給付金BPOサービス」では、住民向けオンライン申請フォームの迅速な構築、AI-OCRを活用した大量書類の審査、専用コールセンターの開設・運営から金融機関への支給手続きまでをワンストップで受託可能です。

セキュアでミスのない迅速な給付体制を構築し、現場職員の負荷を軽減します。

自治体キャッシュレス決済プラットフォーム「地域Pay®」

自治体向け 給付金BPOサービス

自治体への給付金業務を支援するサービスとは?BPOとデジタル活用で業務を効率化

自治体DXの成功事例

自治体DXは、限られたリソースのなかで変革を実現するためのツール・システム選定や、それにともなう業務プロセスそのものの見直しが欠かせません。ここではTOPPANが支援した自治体DXの代表的な事例をご紹介します。

【フロントヤード】ぴったりサービス活用で「行かない・書かない」窓口を同時実現(指宿市)

鹿児島県指宿市では、自治体職員不足という喫緊の課題に対し、官民連携での抜本的な改革が必要でした。

そこで、国のオンライン申請システム(ぴったりサービス)を最大限に活用し、住民がスマートフォンから24時間申請できる「行かない窓口」を整備しました。同時に、来庁者には職員がタブレットで入力支援を行う「書かない窓口」を展開しています。

これにより、住民の利便性向上だけでなく、後続のバックヤード業務の一元化・効率化を実現しました。中長期的にはシステム標準化後のデータ連携や通知のデジタル化を見据えた、継続的な行政DXモデル(指宿市モデル)を確立しています。

参考:地方自治体の新発想フロントヤード改革・伴走型支援が実現した指宿市の段階的行政DXとは

【バックヤード】BPRと通知物電子化などによる業務最適化(世田谷区)

東京都世田谷区では、特定の時期に集中する業務(保育園入園業務など)や煩雑な総務事務が、職員のコア業務への集中を妨げていました。

保育園入園業務における対策として、世田谷区は単なるツール導入ではなく、抜本的なBPRを実施。具体的には、事務センターを設立・伴走運営し、入園選考結果などの通知物を電子化することで、電子通知から電子申請へシームレスに繋ぐ導線を構築しました。

その結果電子申請の利用率が向上。紙の郵送よりも迅速な通知が可能となり、印刷・封入作業の負荷の軽減に寄与しています。

参考:行政DXで保育園入園業務を抜本改革、通知物電子化で住民と自治体双方の利便性を向上|事例紹介

参考:自治体の職員不足を対策した官民連携による行政改革事例

【通知・情報発信】センサーを活用したインフラ遠隔監視と情報一元化(飯綱町)

長野県飯綱町では、中山間地域特有のインフラ管理(配水池の水位確認など)や、獣害対策の罠の見回りのために、職員が毎日現地へ赴く必要があり、多大な労力と危険がともなっていました。

飯綱町はTOPPANの「PosRe®」を導入し、独自アプリと連携。住民からの道路破損報告を位置情報つきで収集し、低消費電力広域ネットワークLPWA規格の「ZETA」を活用して河川水位や狩猟罠を遠隔監視するシステムを構築しました。

これにより、画像と精緻な位置データを活用することで、職員の初動対応にかかる労力が半減しました。豪雨時などの危険な見回り業務が削減され、客観的データに基づく防災情報の収集が可能となっています。

参考: 高負荷な見回り業務をセンサーで自動化|事例紹介

参考: 【お客様インタビュー】飯綱町役場様 まちの情報集約・発信サービスが防災や業務効率化に「PosRe®」が貢献!

【文書・記録管理】震災の記録を残すデジタルアーカイブ構築(石川県)

石川県では、人口減少と高齢化が進む地域で令和6年能登半島地震を経験しました。従来の震災記録は利活用ができていない状態だったため、震災の被害状況や復旧・復興の過程で得た教訓をまとめる震災アーカイブを新たに構築しました。

自治体や関係機関が保有する写真や文書、映像といった資料をデジタル化し、Web上で公開する基盤を整備しています

このデジタルアーカイブの取り組みは、生活基盤の復興から地域文化・産業の振興、さらには次世代の防災教育や観光分野への利活用促進にもつながっています。

参考:デジタルアーカイブによる能登半島地震の記憶継承と発信|事例紹介

【キャンペーン・給付金給付業務】定額給付金の給付業務BPO

経済対策で突如決定した定額給付金では、自治体は通知発送から申請受付、審査、電話応対までを一気に担う必要があり、人員不足が大きな課題となりました。

TOPPANでは、全国23の自治体から定額給付金の事務局運営を受託し、住民データ抽出、申請書印刷・発送、開封・審査、不備通知、振込データ作成をワンストップで実施しました

さらに、専用コールセンターでは進捗照会や記載方法を案内し、事務局システムと連携することで新着状況と応対履歴を即時共有し、問い合わせのリードタイムを大幅に短縮しています。

参考:自治体向け 給付金BPOサービス

自治体DXの推進で地域の新たな価値を創造しよう

自治体DX推進で期待される成果は、単なるITツールの導入ではありません。2026年度以降の自治体DXは、システム標準化を契機とした業務プロセスの見直し(BPR)や、AIエージェントを活用した住民サービスの抜本的な変革など、次のステージに進んでいます。

総務省の推進計画にもあるとおり、DXの目的は「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」であり、浮いたリソースを地域社会の課題解決へ還元していく視点が不可欠です。

一方で、自庁の予算や体制のみでDXを完遂することは容易ではありません。フロントヤードからバックヤード、情報発信に至るまで、自庁だけで抱え込まず、実績を持つ外部パートナーと協働しながら進めることが、DX推進の一助となります。

TOPPANは豊富な伴走実績があり、各自治体の課題に応じた最適な提案が可能です。DX推進の遅れや、具体的な課題を感じている領域があれば、ぜひ一度ご相談ください。


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TOPPAN SOCIAL INNOVATION WEB 編集部

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