2026.02.27
自治体BPRとは?成功事例から学ぶ業務効率化とDX推進のポイント
全国の自治体BPR事例をもとに、業務改革による効果や成功のポイントをわかりやすく解説します。職員負担の軽減や住民サービス向上につながる、持続可能な行政運営の考え方と実践のヒントを紹介するので参考にしてください。
【この記事でわかること】
・BPRの概要
・自治体BPRの成功事例
・自治体BPR導入のポイント
自治体は、人口減少や少子高齢化、職員不足といった課題を抱えるなか、限られた人員・予算で行政サービスを維持・向上させることが求められています。その解決策として注目されているのが、業務プロセスを根本から見直す「BPR」です。
この記事では、全国の自治体におけるBPRの取り組み事例をもとに、導入によって得られる効果やメリット、成功に共通するポイントを整理し、持続可能な地域運営に向けたヒントを解説します。
自治体業務を再設計するBPRとは
自治体におけるBPR(Business Process Re-engineering)とは、既存の業務手順や組織構造を前提とせず、業務プロセスを根本から見直し、再設計する取り組みです。単なるシステム導入や紙の電子化とは異なり、「なぜこの業務が必要なのか」「本当に今のやり方でよいのか」といった業務の本質から問い直す点が大きな特徴といえます。
職員不足が進むなかで、限られた人員でも行政サービスを安定的に提供するには、業務そのものの見直しが欠かせません。BPRを行わずにDXを進めると、非効率な業務をそのままデジタル化するだけにとどまり、期待した効果が得られにくくなります。
とくに、予算編成や制度改正に追われがちな自治体現場では、場当たり的な対応を繰り返すのではなく、BPRを通じて長期的な視点で業務基盤を整えることが重要です。業務の可視化や標準化を進めることで、窓口業務や内部事務の時間・コスト削減、住民利便性の向上が期待できます。
さらに、業務改革を先に進めておくことで、BPOやデジタルツール導入の効果も高まり、持続可能な自治体運営の土台となるでしょう。
TOPPANでは、自治体向けBPOサービスを通じて、アナログ業務の代行からデジタル化支援まで、幅広いニーズへの対応が可能です。
自治体BPRの主な対象業務
自治体BPRの対象は、一部の部署に限られません。窓口や電話対応といった住民接点の業務から、庶務・申請処理などの内部事務まで、幅広い領域が対象です。なかでも、人手や時間を多く要する業務は、業務量の多さや属人化が課題となりやすく、BPRによる改善効果が表れやすい分野です。近年では、住民対応業務に加え、内部事務の効率化や標準化に取り組む自治体も増えています。
業務を単位ごとに整理し、優先度の高い領域から着手することで、限られた人員・予算でも着実な成果が創出可能です。ここでは、自治体においてBPRの対象となりやすい代表的な業務領域を紹介します。
住民窓口の見直しとオンライン化
住民窓口業務は、各種申請や相談対応など件数が多く、待ち時間の長期化や職員の業務負担が課題となりやすい領域です。自治体BPRでは、来庁を前提とした従来の手続きを見直し、オンライン申請や事前入力の導入を進めます。書類記入の補助や本人確認をデジタル化することで、窓口対応時間の短縮や記載ミスの削減にもつながるでしょう。
また、窓口・電話・Webといった住民接点を整理・統合し、対応ルールを標準化することで業務効率化の実現が可能です。住民の利便性向上と職員の負担軽減を同時に図れる点から、BPRの優先度が高い分野とされています。
下記リンクでは、フロントヤード改革を推進する手順など重要なポイントを解説しています。
・【関連コラム】自治体フロントヤード改革とは? 推進の手順や先進事例を紹介
給付・申請など内部事務の標準化
給付金や各種申請に関わる内部事務は、制度ごとに業務が異なることが多く、職員負担の増大や属人化が生じやすい領域です。自治体BPRでは、申請受付から審査、支給に至る一連の流れを整理し、業務手順や帳票の標準化を進めます。これにより「属人化」を防ぐことができ、異なる制度であっても共通の業務フローのもとスムーズに処理を行えるようになります。
また、手順や帳票が統一されることで、重複作業や手作業による確認も削減され、処理時間の短縮やミス防止につながります。
さらに、業務フローを共通化することで、急な制度変更や繁忙期にも柔軟に対応できる体制を構築できるでしょう。標準化された業務はRPAやBPO(業務委託)との親和性も高く、継続的な業務効率化の基盤となります。
※RPA(Robotic Process Automation)…人がPC上で行う定型作業を、ソフトウェアが代わりに実行する仕組み
・【関連コラム】自治体への給付金業務を支援するサービスとは?BPOとデジタル活用で業務を効率化
インフラ管理プロセスの最適化
道路や上下水道、公共施設などのインフラ管理業務は、点検・修繕・台帳管理が部門ごとに分散しやすく、業務の属人化が課題となりやすい分野です。自治体BPRでは、点検記録や図面、台帳情報を一元管理し、情報共有や業務フローの効率化を進めます。紙資料や個別システムに依存した管理から脱却することで、確認作業や引き継ぎにかかる負担の軽減が可能です。
また、蓄積したデータの活用により、修繕計画の優先順位づけや予防保全が可能となり、維持管理コストの最適化につながります。限られた人員でも安全・安心なインフラを維持するため、重要なBPR領域とされています。
定型的なデータ処理の自動化と再設計
申請情報の入力や転記、集計作業などの定型的なデータ処理は、多くの時間と人手を要する業務領域です。自治体BPRでは、まず業務手順そのものを見直したうえで、RPAやAI-OCRなどの自動化技術を適用します。
※AI-OCR…AIの推測・学習により複雑な書類や手書きの文字も高い精度でデジタル化できる技術
手作業を削減することで、処理時間の短縮や入力ミスの防止が期待できます。業務プロセス全体の再設計により、部分最適に陥らない持続的な自動化環境の構築が可能です。
全国の自治体BPR事例
全国の自治体では、BPRを活用した業務改革が進んでおり、その多くが職員不足や業務負荷といった課題解決につながっています。
TOPPANは、自治体の業務プロセスを分析・再設計し、BPRとBPOを組み合わせた支援を提供するプロフェッショナルです。給付金申請の受付業務や問い合わせ対応の一元管理など、業務効率化と正確性向上を実現した事例もあります。
また、ノンコア業務の改革やDX推進協定の締結といった先進的な取り組みにより実現しているのが、職員がコア業務に集中できる体制づくりです。ここでは、全国の自治体における具体的なBPR事例を紹介します。
【福岡県福岡市】市民サービスの維持・向上につながるBPR
福岡市では、人口減少や行政サービスの多様化により、区役所職員の業務負荷増大が見込まれるなか、市民サービスをいかに維持・向上させるかが大きな課題となっていました。そこで、より必要性の高い業務へ人的リソースを集中させることを目的に実施したのが、共通事務の集約化・委託化や業務フローの標準化を軸としたBPRです。
市が指定する業務を対象に、現状分析から改善施策の立案までを一体的に推進し、市内7区役所で実施されている11業務について、業務フローや処理時間、業務量を調査・可視化しました。あわせて、区ごとの運用差や課題を整理したうえで、業務手順や処理方法の見直しによる最適化案の検討を進めました。改善後の業務プロセスと業務量を明確にすることで、全区共通で活用可能な業務改革の方向性を示しました。
・参考:業務改革(BPR)で限られた人的資源を活かし市民サービスの維持・向上へ|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
【北海道札幌市】BPR・BPOによるノンコア業務にかかる職員負担の軽減
札幌市では、職員不足が深刻化するなか、多様化・高度化する市民ニーズや感染症対策など新たな行政需要への対応が課題となっていました。そこで、より必要性の高い業務へ人的リソースを集中させるために開始したのが、ノンコア業務を集約処理する「行政事務センター」の運営です。申請受付やデータ入力といった定型業務をセンターに集約することで、BPRとBPOを組み合わせた業務改革を推進し、デジタル技術による自動化や業務手順の見直しによって、業務の効率化と正確性の向上を実現しました。
さらに、業務改善の効果を継続的に可視化できる運営体制を構築し、持続的な業務最適化を可能としています。就学援助申請や医療費助成年次更新などの業務で、受付から審査、問い合わせ対応、発送までを一括対応することで実現したのが、ノンコア業務の負担の大幅な軽減です。職員が本来注力すべきコア業務へリソースを再配分できる環境を整備しました。
・参考:ノンコア業務への職員負荷を軽減し住民サービスの向上へ|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
【東京都世田谷区】デジタル化のみにとどまらない行政改革
世田谷区では、職員不足の深刻化や住民ニーズの高度化を背景に、単なるIT化にとどまらない抜本的な業務改革の必要性が高まっていました。こうした状況を受け、「新たな行政経営への移行実現プラン」を策定し、中長期的な視点で全庁的な行政改革を推進しています。業務量の増大や時間外勤務の増加、人材確保の難化といった課題をふまえ、職員一人ひとりの能力を最大限に発揮できる環境整備を重視しました。
とくに保育入園事務などの分野では、従来の人員増強や部分的な委託では限界があることから、業務プロセス全体の見直しに着手しました。民間企業と連携し、BPRを前提としたアウトソーシングを導入する「攻めの委託」を推進しています。通知のデジタル化や申請フロー改革により、電子申請率の向上と職員負担の軽減を実現するとともに、申請様式や審査ルールそのものを見直すことで、住民視点での利便性向上にも取り組んでいます。
企画総務部門・所管部門・民間が一体となった伴走型改革により、真のDXと持続可能な行政経営モデルの構築を目指している事例です。
・参考:世田谷区が将来の職員不足を見据えて行う、行政民間連携による業務改革|コラム|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
・参考:自治体の業務効率化を目的とした総務事務センターの設立・運営|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
自治体BPR事例から分析する導入の効果とメリット
自治体BPRは、単なる業務効率化にとどまらず、行政運営の在り方そのものを見直す取り組みとして注目されています。ここでは、全国の自治体事例をもとに、BPR導入によって得られた主な効果とメリットを整理します。
コア業務への人的リソース集中
BPRの大きな効果は、職員を本来注力すべき業務へ集中できる点にあります。先進自治体の事例では、業務量の削減や負担軽減に加え、行政サービスの質そのものが向上しました。自治体BPRでは、定型的・反復的な業務を整理・削減することで、日常業務に追われがちな職員の負荷を軽減します。
さらに、ノンコア業務を集約・自動化、あるいは外部活用することで、職員を企画立案や判断業務といった本来注力すべきコア業務へ再配置することが可能です。人手不足が進むなかでも、限られた人員を重要施策や住民対応に重点的に配分できる点は大きなメリットでしょう。
業務の優先順位が明確になることで、属人化の解消や業務品質の安定化にもつながり、結果として持続可能な行政サービス提供体制の構築を実現します。
住民の待ち時間短縮と満足度向上
窓口業務にBPRを導入することで、手続きの事前申請やオンライン化が進み、来庁時の待ち時間短縮につながります。業務フローの整理や受付方法の見直しにより、繁忙期であっても安定した窓口対応が可能となります。また、手続きの簡素化や記入項目の削減は、住民の負担や手戻りを抑え、ストレス軽減にも寄与するものです。
さらに、窓口・電話・オンラインを組み合わせた対応を整備することで、住民一人ひとりの利用環境に応じた柔軟なサービス提供が実現します。利便性の向上は、住民満足度を高めるとともに、行政サービスへの信頼強化にもつながります。
属人化の解消と業務品質の安定運用
自治体BPRの効果は、時間やコストの削減だけではありません。業務の属人化を解消し、組織全体で安定した運用を実現できる点にあります。
業務フローを可視化し、標準化を進めることで、特定の職員に依存する状況を改善できます。手順や判断基準を明確にすれば、担当者が変わっても一定の品質を維持することが可能です。
さらに、マニュアル整備や業務フローの統一により、引き継ぎ負担や教育コストも抑えられます。処理ミスの減少や対応品質の安定は、住民からの信頼向上にもつながるでしょう。組織全体で業務を支える体制づくりが、持続可能な行政運営の基盤となります。
成功した自治体BPR事例に共通する導入のポイント
自治体BPRの成否は、施策内容だけで決まるものではありません。重要なのは、どのような体制で、どの順序で進めるかという導入プロセスです。
成功事例を分析すると、共通するポイントがいくつか見えてきます。ここでは、自治体BPRを着実に進めるために押さえるべき観点を整理します。
現状業務の可視化と課題の棚卸し
まず、現在の業務フローを正確に把握し、可視化することが重要です。具体的な手順や処理時間、関係部署を整理することで、非効率な作業や重複業務が明確になります。さらに、現場ヒアリングを通じて、属人化や判断基準のばらつきといった潜在的な課題を洗い出すことが可能です。
業務量の定量的な把握により、改善効果の見込みや優先順位を判断しやすくなります。課題を構造的に整理することが、実効性の高い施策立案につながります。
現場職員の不安解消と合意形成
自治体BPRを進める際は、現場の理解と納得が不可欠です。業務変更は負担増や役割の変化をともなうため、不安が生じやすい領域といえます。
業務変更の目的や期待される効果の丁寧な共有により、理解と納得を促すことが可能です。また、現場の意見や課題を反映する仕組みの構築が、実効性の高い改革につながります。一方的な制度導入ではなく、段階的な検討と合意形成を重ねることが重要です。
BPO活用を視野に入れた業務プロセス構築
将来的なBPO活用を見据え、業務フローの標準化や整理を行うことは、自治体BPRにおいて重要なポイントです。
まず、業務手順や判断基準を明確化し、外部委託しやすい構造へ再設計したうえで、属人化した業務を切り分け、委託可能な業務範囲を明確にしましょう。BPRとBPOを連動させることで、段階的かつ柔軟な業務改革が実現しやすくなります。
内製と外部活用の役割を整理することで、限られた人員でも安定した運営体制を築くことができ、持続可能な行政運営が可能になります。
自治体BPR事例を参考に持続可能な地域運営へ
全国の自治体BPR事例からは、業務効率化や職員負担の軽減、住民サービス向上といった具体的な成果が確認されています。業務フローの可視化・標準化に加え、現場職員との合意形成を重ねながらBPOやDXを効果的に活用している点が、成功のポイントです。
定型業務を集約し、デジタル化を進めることで、職員は企画立案や判断業務に注力できる体制が整います。さらに、BPRを通じて業務の属人化を解消し、品質の安定を図ることも重要です。各自治体の事例を参考にすれば、自庁に適した優先施策や改善プロセスの設計が見えてくるでしょう。
TOPPANでは、こうした自治体BPRを支援する取り組みを行っています。業務改革の進め方にお悩みの際は、ぜひご相談ください。
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