2026.02.27

自治体の電子通知導入ガイド|住民利便性の向上と郵送コスト最適化を両立

行政手続きの通知をデジタルで届ける「電子通知」。マイナポータル、SMSといった手法の比較、全国の自治体での導入事例など、コスト削減と住民サービス向上を両立するための具体的なヒントを解説します。

2024年10月に実施された郵便料金の改定は、自治体財政に継続的な負担を与えています。こうした状況下、解決策として注目されるのが「電子通知」です。 通知書の発送費用を抑えられるだけでなく、作成、封入、発送準備にかかる事務負担も軽減できます。

ただし、十分な設計を行わないまま電子通知を導入しても、技術的な問題から「通知の内容が閲覧できない」といった住民からの問い合わせの増加も危惧されるところです。

本記事では、自治体が無理なく導入できる現実的な電子通知の進め方について、コスト削減と住民サービスの質を両立させる視点から解説します。

この記事でわかること

・電子通知を導入するメリット
・電子通知を導入する方法
・自治体による電子通知の導入事例

自治体で電子通知が求められる背景

なぜ今、多くの自治体で電子通知の検討が急務となっているのでしょうか。その背景には、郵便料金の改定による負担と、国のデジタル化方針による現場負担の増大という2つの側面があります。これにより、職員の業務負荷が増大していることも問題です。それぞれ詳しく解説します。

郵便料金値上げによる予算圧迫

自治体が住民へ送付する通知物の郵送費用は、規模によっては年間で数億円にのぼる場合もあります。住民税や国民健康保険料、各種検診の案内など、法令や条例に基づき送付が義務づけられている通知物は多く、発送件数を自治体の判断だけで大幅に減らすことは困難です。

そのため、郵便料金の値上げ分はそのまま歳出増として財政に跳ね返ります。2024年10月の改定では、郵便料金が約3割値上げされるなど、自治体の通信運搬費予算を圧迫しています。

国を挙げたシステム標準化

現在、国は「デジタル社会の実現に向けた重点計画」などを通じて行政手続きのデジタル化を強く推進しています。とくに、2025年度末を期限とする自治体情報システムの標準化に向け、全国の自治体が基幹システムの移行対応に追われています

このシステム移行のタイミングで、電子通知に対応した仕組みを組み込むことは、業務効率化の観点からも必須の流れといえるでしょう。

デジタル化方針にともなう業務負荷の増大

デジタル化のメリットが強調される中で、自治体の現場の実情としては、従来の紙による通知業務を維持したまま、新たなデジタル施策が業務として「上乗せ」されているのが実態です。

単にデジタルツールを導入するだけでなく、「通知をスマホで受け取り、そのままキャッシュレスで納税する」「通知からオンライン手続きの申請画面へ直接遷移する」といったスムーズな動線を設計し、紙とデジタルの二重業務を削減していくことが求められています。

自治体が電子通知を導入するメリット

電子通知の導入は、単なるコストカットにとどまりません。職員の作業工数削減や、住民の利便性向上など、さまざまなメリットがあります。

郵送コストの削減と予算の最適化

電子通知を希望選択制などで導入すれば、たとえ全件を置き換えられなくとも、郵送費・印刷費・封筒代が削減可能です。

外部要因である郵便料金改定の影響を受けにくい体質を作ることは、予算編成段階で議会や財務担当課へ説明しやすい、実効性のあるコスト対策となります。

職員の通知書作成・発送工数とミスの軽減

電子通知は、紙の通知業務では避けられない、印刷、封入、封緘、差出といった一連の手作業を大幅に削減できます。

また、システムによる機械的な送信となるため、宛名間違いや誤封入といった人的ミスの発生源そのものを減らすことが可能です。物理的な作業が減ることで、個人情報漏洩のリスクも低減されます。

住民の利便性向上とリアルタイムな情報受取

電子通知の大きなメリットは、送信日時が即座に記録され、住民側もスマートフォンなどですぐに確認できる点です。データで容易に見返すことができるため、「過去の通知をなくしてしまった」「再発行してほしい」といった問い合わせの減少が期待できます。

さらに、通知内のリンクや二次元バーコードから直接オンライン申請や納税サイトへ移動できるため、住民は役所や金融機関に行く手間が省け、自治体側も未収金の発生を抑制できます。

電子通知を実現する主な手法

一口に電子通知といっても、その手段はさまざまです。多くの自治体では、住民の年齢層やスマートフォンの利用状況にあわせて複数の媒体を組み合わせて活用しています。

確実に情報を届けるための「マルチチャネル」の視点から、代表的な4つの手法を解説します。

マイナポータル

デジタル庁が運営するマイナポータルを通じて通知を送る方法です。マイナンバーカードを用いた確実な本人認証が基盤にあるため、セキュリティ面での信頼性が高く、税や社会保障など機微な情報の通知に適しています。全国共通のインフラであり、独自アプリ開発などのコストが不要な点もメリットです。

一方で、住民側のマイナポータル利用者登録が必要となるため、登録率が現状の課題であることから、郵送との併用が前提となります。

LINEなどのメッセージアプリ

LINEなどのメッセージアプリは、住民の日常的な利用率が非常に高く、通知に「気づいてもらいやすい」という強みがあります。

ただし、なりすましのセキュリティ懸念があるため、個人情報を含む詳細な通知を直接送るのではなく、軽微なリマインドや、「重要なお知らせがあります」と伝えて認証後の専用ページへ誘導するなどの使い分けが推奨されます。

電子メール・SMS

電子メールやSMS(ショートメッセージサービス)は、導入コストが比較的低く、小規模な自治体でも着手しやすい手法です。

SMSは携帯電話番号だけで送れるため開封率が高い一方、文字数制限があります。またメール・SMSともに、アドレス・電話番号の変更による不達リスクがあるため、用途の限定が必要です。

民間プラットフォーム

自治体の基幹システムと連携し、セキュアな環境で通知を送付できる民間企業の外部サービスも有力な選択肢です。高度なセキュリティと優れたユーザーインターフェースを短期間で導入できる利点があります。

TOPPANでも、自治体の課題に合わせた電子通知ソリューションを提供しています。

Speed Letter Plus®

自治体向けの手続オンライン化・郵送物の電子化など、ペーパーレス化を包括的に支援するサービスです。マイナンバーカードを利用した公的個人認証と連携し、秘匿性の高い文書も電子交付が可能です。

自治体向け手続オンライン化・ペーパーレス化支援「Speed Letter Plus®」|TOPPAN NEWNORMAL

EngagePlus®︎

SMSや+メッセージ(プラスメッセージ)など、複数の通知手段を最適に組み合わせた「マルチチャネル配信」を実現するトータルソリューション。郵送コストの削減を目的としています。

通知配信のトータルソリューション-郵送コストを削減しマルチチャネル化|EngagePlus®︎|TOPPAN Edge

電子通知の導入で直面する課題と解決策

電子通知は業務効率化の効果が高い施策ですが、導入にあたっては「デジタルデバイド(情報格差)」や「セキュリティ」への配慮が欠かせません。直面しやすい課題と、その現実的な解決策を紹介します。

デジタルデバイド層へのフォロー

高齢者などスマートフォンを持たない住民(デジタルデバイド層)が行政サービスから取り残されないための配慮は重要です。スマホ教室や相談会を実施するといったサポートが有効でしょう。

また、電子通知の導入にあたって「いきなり完全電子化しない」こともポイントです。公平性の観点から、紙の通知と電子通知を業務負担の少ない程度で併用し、住民自身が希望する受取方法を選択できる環境を整えましょう

TOPPANでは、デジタル配信と郵送を組み合わせ、希望者には紙で送るといったハイブリッドな運用設計もサポートしています。

段階的な移行による住民の混乱防止

成功している自治体の多くは、紙通知を即座に廃止せず、電子通知を「任意選択」として導入し、十分な移行期間を設けています

TOPPANの電子通知関連ソリューションは、既存の郵送や電話業務といった従来型の通知と電子通知の併存を前提に設計されています。最初からデジタル一択で移行するのではなく、紙・デジタルを選べるようにすることで、住民の心理的な抵抗感を減らしスムーズな移行を促すことが可能です。

これにより「ログインできない」「メールが来ない」といった問い合わせ対応に追われるリスクも軽減できます。

セキュリティの確保

電子通知において最大の懸念事項は、個人情報の漏洩やなりすまし被害です。そのため、まずは口座振替通知などリスクの低い業務から導入する、あるいはマイナポータル連携や電子証明書を活用した厳格な本人確認システムを採用するなどの対策が必要です。

TOPPANは長年にわたり、金融機関や自治体の重要通知の製造・発送(BPO)を担ってきました。そのノウハウを活かし、マイナンバー利用などの厳格なセキュリティ基準を満たした電子通知運用を提供しています。

自治体による電子通知の導入事例

ここではTOPPANが支援させていただいて電子通知を導入し、成果を上げている自治体の事例を紹介します。段階的な導入で運用を安定させた事例や、複数チャネルを活用して効果を上げた事例をピックアップしました。

東京都世田谷区|通知業務の電子化による郵送費削減と運用安定化

世田谷区では、保育園入園に関する業務量の増加が課題となっていました。そこで業務フロー全体を見直すBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)を実施し、通知物電子化サービス「Speed Letter Plus®」を導入しました。

選考結果の通知を電子化することで、確実な郵送費削減を実現すると同時に、紙の通知を希望する住民にも配慮した複合的な運用設計を行っています。

参考:行政DXで保育園入園業務を抜本改革、通知物電子化で住民と自治体双方の利便性を向上|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

奄美市|複数チャネル活用による住民利便性の向上

「EngagePlus®」運用イメージ

鹿児島県奄美市では、特定健診の受診率向上が課題でした。電話や訪問による勧奨を行っていましたが効果が限定的だったため、TOPPANの「EngagePlus®」を導入しました。

従来の郵送通知に加え、SMSなどを用いた電子通知を補完的に組み合わせることで、住民への到達率を高め、特定健診の予約率向上につなげています。また、予約システムとの連携により、電話予約を受ける職員の負担も軽減されました。

参考:【お客さまインタビュー】デジタル通知を活用した自治体DXの先進事例 EngagePlus®の導入で、特定健診の受診率向上と業務効率化を実現!|TOPPAN Edge

つくば市|オリジナルアプリで住民一人ひとりに合わせた情報を配信

茨城県つくば市では、高齢者から子育て世代、外国人住民まで、多様な属性の住民に対して適切な情報を届けることが課題となっていました。そのため、TOPPANの自治体オリジナルアプリ構築サービス「クラシラセル®」を導入しました。

住民は自分に必要なカテゴリの情報だけをプッシュ通知で受け取れるため、利便性が大きく向上しています。また、マップ機能なども搭載し、生活に役立つ情報を直感的に届けられるようになっています。

参考:自治体向けオリジナルポータルアプリで情報を適切に届ける|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

電子通知導入に向けたロードマップ

電子通知を導入する際は、いきなり全庁的に切り替えるのではなく、試験運用から始めて段階的に拡大する「スモールスタート」が成功の鍵です。一般的な導入の流れを紹介します。

1. 現状業務の可視化と対象業務の選定

まずは庁内の発送業務を棚卸しします。発送件数、コスト、職員の作業工数を洗い出し、「どの通知がもっとも負担になっているか」を数値化しましょう。

コスト削減効果が高く、かつセキュリティリスクの許容範囲内にある業務から選定することで、電子化の優先順位が明確になります。

2. システムと運用フローの構築

住民の特性に合わせた最適なシステムを選定します。重要なのは、システム導入に合わせて内部事務そのものを見直すこと(BPR)です。

電子通知と紙通知が併存しても、データ管理が煩雑にならないよう、登録・認証・送信・結果管理の一連のフローを整理し、二重管理を防ぐ設計を行います。

3. パイロット運用

特定の部署や、モニターとして募った希望者のみを対象に試行運用(パイロット運用)を行います。実際に運用することで、想定外の問い合わせやシステムトラブルを洗い出すことが可能です。

この期間に、公式サイトや広報紙での周知徹底、わかりやすい操作マニュアルの整備も進めます。

4. 本格導入・全庁展開

パイロット運用の検証結果をもとに、本格運用へ移行します。実際にどれくらいの郵送費や残業時間が削減できたか、住民の開封率はどうかといったデータを分析し、改善を繰り返しながら対象業務を全庁的に拡大していきましょう。

住民からのフィードバックを反映し、画面の見やすさ(UI)や案内文の改善も継続的に行います。

電子通知の導入でコスト削減と利便性向上を両立

自治体における電子通知の導入は、失敗しない設計で確実に成果を積み上げることが重要です。そのためには、「紙か、電子か」という二者択一で考えるのではなく、過渡期においては両者を最適に組み合わせた「ハイブリッド運用」を視野に入れるべきでしょう。
TOPPANは、通知業務全体を見渡した設計と運用支援により、自治体が安全かつ着実に電子通知へ移行できる体制づくりを支援しています。電子通知の具体的な進め方や費用対効果の整理については、ぜひTOPPANへご相談ください。

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TOPPAN SOCIAL INNOVATION WEB 編集部

参考文献

  • 郵便料金の改定および新料額の普通切手の発行などについて|郵便局(https://www.post.japanpost.jp/notification/pressrelease/2024/00_honsha/0613_01.html)
  • 処分通知等のデジタル化に係る 基本的な考え方|デジタル庁(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/b5857733-d26d-4ec5-a089-a92b72949647/181f5ec8/20230403_get-involved_multi-stakeholder-model-for-digital-transformation_outline_02.pdf)
  • 郵便料金の改定および新料額の普通切手の発行などについて|日本郵政グループ(https://www.post.japanpost.jp/notification/pressrelease/2024/00_honsha/0613_01_01.pdf)
  • 自治体情報システムの標準化・共通化|総務省(https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/chiho/jichitaijoho_system/index.html)
  • 都におけるデジタルデバイド対策の取組について|東京都(https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/0501-03_digitaldivide)

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