2025.11.26
ガブテック(GovTech)で実現する自治体DX
ガブテックの意味や国の政策動向、活用できる行政サービス領域、地方自治体でのガブテック推進事例、導入時の課題とその対策をわかりやすく解説します。
この記事で分かること
・ガブテック(GovTech)とは何か
・ガブテックによって効率化できる行政サービス
・TOPPANが支援した自治体DXの事例

ガブテック(GovTech)とは
「ガブテック(GovTech)」は、Government(行政)の課題をTechnology(技術)で解決することを表す造語です。具体的には、政府や地方自治体の業務を、AIやクラウドサービス等民間のテクノロジーを利用して効率化・最適化する取り組みを指します。
このような行政サービスを民間のテクノロジーで刷新する動きは、海外ではエストニアの電子政府や英国の「GOV.UK」、シンガポールの「Smart Nation」などが先行しています。
近年は日本でも、市民中心のガバナンスを支える行政DXの基盤としてガブテックが注目され、自治体の規模を問わず導入が進みつつあります。
ガブテック導入推進に向けた国の取り組み
日本でガブテック導入が進められる背景には、地域の個性を活かした地方活性化を企図した「デジタル田園都市国家構想」や、「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」(2020年閣議決定)、「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」があります。
特に「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」では、自治体が自らの行政サービスをデジタル化するための具体的な行動指針が示されています。その重点分野は、ガブテックの実装領域そのものといえるでしょう。ここでは、自治体DX推進計画の主要項目と、計画を実現するための施策を整理して解説します。
自治体DX推進計画の重点項目
自治体DX推進計画では、次の7項目を重点取組事項として掲げています。
1.自治体フロントヤード改革の推進
住民の利便性向上を目的とし、窓口業務のオンライン化・ペーパーレス化を推進する。来庁せずに申請・手続きが完結する「行かない窓口」などの実現を目指す。
2.情報システムの標準化・共通化
自治体ごとの独自仕様を統一し、共同利用型クラウドを導入。人的・財政的負担を削減しつつ、全国的なデジタル基盤を整備する。
3.公金収納におけるeL-QRの活用
地方税統一QRコード(eL-QR)を導入し、全国の金融機関窓口での納付を可能にする。これにより、利便性向上と収納事務の効率化を両立する。
4.マイナンバーカードの普及促進
本人確認や各種証明書発行をオンラインで一元化し、行政手続きの簡素化を実現する。
5.セキュリティ対策の徹底
総務省ガイドラインに基づき、情報資産管理の強化と職員教育を継続的に実施。市役所内部のデジタル化と個人情報保護を両立する。
6.AI・RPAの利用推進
AI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を用いて定型業務を自動化することで、企画・判断業務へリソースを集中させる。
7.テレワークの推進
在宅勤務、サテライトオフィス、モバイルワークを導入し、働き方改革の一環として行政機能の維持と柔軟な勤務環境を整備する。
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これらの施策は、単なるIT導入にとどまらず、行政運営の構造改革を見据えた「共通基盤整備」として位置づけられています。
国のDX推進施策
総務省と国土交通省を中心に、自治体クラウドの共同利用や標準化基盤の整備、データ連携モデルなどの支援が進められています。これにより、規模の小さい自治体でも段階的にDXに取り組みやすい環境が整っています。
例えば、総務省で行われているのは、「自治体情報システム標準化モデル」を策定し、共通仕様によるクラウド移行の支援です。また、地方自治体への専門アドバイザー派遣や財源措置を通じて、デジタル化を段階的に進められる環境の整備も進めています。
また、国土交通省では「スマートシティモデル事業」を通じ、地域データの連携・活用を推進しています。国の後押しにより、各自治体が規模に応じたDXを実行しやすい体制が整いつつあるといえるでしょう。
ガブテックで解決する行政サービス領域
ガブテックの導入は、行政手続きのオンライン化をはじめ、住民サービスの質向上や職員の業務効率化に直結します。ここでは、窓口業務や通知配信、問い合わせ対応、定型業務、地域広報など、具体的にどの行政サービス領域でガブテックが活用できるのかを解説します。
窓口対応・通知配信のデジタル化
民間技術を活用してオンライン申請や窓口でのデジタル申請を拡充することで、住民手続きの利便性向上と、職員の負担軽減を両立することが可能です。具体的には、窓口に行かずスマートフォンやパソコンで手続きが完結する「行かない窓口」や、何度も書類を書かずに済む「書かない窓口」を実現できます。
TOPPANでは、「行かない」「書かない」窓口を実現するフロントヤード改革を支援し、システム導入後の職員の自走化まで一貫してサポートを行っています。
・自治体向け オンライン申請拡充と窓口デジタル化の支援サービス|TOPPAN BiZ

【導入インタビュー公開中!】
「これで皆はハッピーになるか?」指宿市とTOPPANが実践した住民と職員に寄り添うフロントヤード改革
指宿市が実践したフロントヤード改革の具体的な取り組みと、中小規模自治体に応用可能な業務改革モデルについて、指宿市 前田様に詳しくお聞きしました。
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さらに、紙媒体で通知している書類を電子化することで、職員の負担や郵送コストを削減しつつ、オンライン申請への誘導もスムーズに行えるようになるでしょう。TOPPANでは、スマートフォンで通知物を受け取れる「Speed Letter Plus®」を提供しています。
・自治体向け手続オンライン化・ペーパーレス化支援「Speed Letter Plus®」|TOPPAN BiZ
問い合わせ対応の効率化
チャットボットやAI音声応答の導入により、簡易な問い合わせは自動処理が可能となり、対応時間の短縮が実現します。
多文化共生や観光立国の進展に対応するための多言語対応における、「対応できる職員が限られる」「細やかなコミュニケーションができない」といった課題には、自動翻訳技術の活用が有効です。
TOPPANが提供する透明翻訳ディスプレイ「VoiceBiz® UCDisplay®」は、音声認識と翻訳表示を同時に行い、住民や観光客との円滑なコミュニケーションを支援するソリューションです。
・透明翻訳ディスプレイ「VoiceBiz® UCDisplay®」|TOPPAN BiZ
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さらに、窓口対応の負荷軽減が可能なAIアバター「AIナリキル」も提供しています。市役所の窓口などにて24時間365日・多言語の対応が可能なため、待ち時間の短縮・混雑緩和など、利用者にとって多くのメリットをもたらすでしょう。指定のデータベースを検索して回答を生成する「RAG技術」を活用しているため、精度の高い受け答えが可能です。
定型業務の自動化・外部化
職員が日常的に行うデータ入力や帳票処理などの定型業務も、AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用すると自動化が可能です。
また、業務の詳細な調査・分析をもとに、業務フローから見直しができる「BPR(業務改革)」サービスも活用することで、業務を整理でき、デジタル化が進みやすくなるでしょう。
BPRとあわせて、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを利用し、一部の行程を外部化して実施することで、さらに職員の負担を軽減することが可能です。
TOPPANでは、現状分析から業務改革、DXサービスの検討、業務委託までを支援するBPOサービスを展開しています。業務の一部を外部化しながら全体最適を図る「Hybrid-BPO®」によって、自治体の人手不足解消と行政コスト削減を同時に実現します。
・自治体向けBPOサービス Hybrid-BPO®|TOPPAN BiZ
情報発信・地域広報のデジタル化
SNSなどを活用して、災害情報や行事案内といった地域情報発信の仕組みをデジタル化することで、住民へ効率的に情報を届けやすくなります。
TOPPANでは、自治体の情報発信を効率化するデジタルソリューションを複数提供しています。「PosRe®(ポスレ)」は、Web・SNS・アプリを一元管理し、住民との接点を最適化する情報集約サービスです。LINEやアプリ経由での情報収集・配信にも対応します。
・まちの情報集約・発信サービス「PosRe®(ポスレ)」|TOPPAN BiZ
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「クラシラセル®」は、すべての自治体サービスの共通窓口として機能するポータルサービスです。登録された情報に応じて、イベントのプッシュ通知やカレンダー、マップなどを表示してサービスの利用を促進できます。
・自治体ポータルサービス「クラシラセル®」|TOPPAN BiZ
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「Con:tegration®」は、自治体メディア間のデータを連携して一元管理できるSaaSサービスです。Webサイトやアプリ、メルマガなど複数メディアへ一括配信が可能です。クラシラセル®と連携することで、メディアの掲載情報をクラシラセル®で配信するという使い方もできます。
地方自治体のガブテック(自治体DX)推進事例
TOPPANでは、各自治体の課題に応じて設計から運用まで伴走支援を行っており、窓口DX・業務効率化・情報発信など多様な分野で成果を上げています。
ここでは、TOPPANが実際に支援させていただいた、地方自治体のガブテック(自治体DX)推進事例をご紹介します。
ぴったりサービスの活用による低コスト・低負荷な窓口DX
鹿児島県指宿市のデジタル戦略課では、オンライン申請システムの導入コストや職員の運用負担が課題となっていました。
そこで国の「ぴったりサービス」と連携した仕組みを活用し、来庁せずに手続きが完結する「行かない・書かない窓口」を実現しました。特別なシステム開発を行わず、既存基盤を利用するため導入コストを抑えられ、オンライン申請・窓口申請のデータの統合管理も実現しています。
この取り組みにより、住民の利便性と満足度が向上するとともに、窓口DXの成功事例として他業務へのデジタル展開の足掛かりにもなりました。
・参考:行政DX推進に向けたぴったりサービス活用による「行かない」「書かない」窓口の同時実現|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
・参考:【インタビュー】 「これで皆はハッピーになるか?」 指宿市とTOPPANが実践した住民と 職員に寄り添うフロントヤード改革
・参考:【セミナーレポート】 指宿市のフロントヤード改革 「行かない・書かない」窓口の実現
煩雑な保育園入園業務をBPRと通知物の電子化で抜本改革
東京都世田谷区の子ども・若者部では、保育園入園手続きにおける書類確認や審査、利用調整、通知発送などの作業が、職員の大きな負担となっていました。
TOPPANは、BPR(業務改革)による業務プロセス分析と、通知文書の電子化を同時に進め、作業工程の大幅削減に貢献しました。
さらに、「Speed Letter Plus®」を活用した通知配信により、住民への連絡もスマートフォン上で完結できるようになり、利便性が向上しています。これにより、職員の残業時間削減と住民利便性の両立が実現し、行政DXの成功モデルとして注目されています。
・参考:行政DXで保育園入園業務を抜本改革、通知物電子化で住民と自治体双方の利便性を向上|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
透明翻訳ディスプレイを導入しPRイベントの多言語対応を実現
京都府では、訪日観光客の増加に伴い、自治体の窓口やイベント現場での多言語対応の重要性が高まっています。しかし、国際イベントや観光案内の現場では、外国語に対応できる職員の確保が難しいという課題もあります。
こうした課題に対し、音声を自動認識して翻訳結果を透明ディスプレイに表示する「VoiceBiz® UCDisplay®」が導入されました。京都府のPRイベントでは、来場した外国人観光客との円滑なコミュニケーションを実現し、観光客満足度の向上に貢献しました。
多言語対応を自動化することで、職員の対応負担の軽減にもつながり、地域の国際交流や観光施策の推進にも寄与しています。
・参考:「VoiceBiz® UCDisplay®」導入事例|京都府様 けいはんな万博PRイベントで透明翻訳ディスプレイを活用!
河川・危険箇所の見回り情報を遠隔監視し一元管理
長野県飯綱町では、集中豪雨や台風による水害が頻発し、災害時の現場確認や情報共有が職員にとって大きな負担となっていました。
そこで、同町ではTOPPANの「PosRe®」を導入し、河川や危険箇所の見回り情報を現場からリアルタイムで共有・一元管理できる体制を構築しました。
現場で撮影した写真や位置情報を即時に職員間で共有できるようになり、情報伝達のスピードと正確性が大幅に向上。これにより、災害対応における意思決定の迅速化と安全管理の強化が実現しました。
紙の報告書や口頭連絡に頼っていた従来の仕組みをデジタル化することで、業務効率化と防災力の向上を同時に達成した事例です。
・参考:【お客様インタビュー】飯綱町役場様 まちの情報集約・発信サービスが防災や業務効率化に「PosRe®」が貢献! |TOPPAN DIGITAL
ガブテック導入の課題
ガブテックの導入は、行政サービスの効率化や住民満足度向上に大きな効果をもたらす一方で、地方自治体の組織体制や文化的な側面に起因する課題も少なくありません。
ここでは、ガブテック導入を進める上で自治体が直面しやすい主な課題と、その対策を解説します。
セキュリティへの懸念
行政データのクラウド移行や、外部システムとの連携を行う際には、情報漏えいやサイバー攻撃といったリスクが伴います。
そのため、総務省などが定めるガイドラインに基づいたリスク管理体制の構築と、職員への継続的なセキュリティ教育が不可欠です。技術面だけでなく、運用面でのリスク管理体制が求められます。
財源の不足
多くの自治体では、システム更新や専門人材の確保に必要な予算が十分に確保できず、DX推進の大きな障壁となっています。
限られた財源の中で効率的に取り組むためには、国の補助金を活用することや、複数自治体でクラウドを共同利用にしてコスト分散することが、現実的かつ持続可能な解決策とされています。
根強いアナログ文化
紙・対面中心の手続きや、従来の業務慣行を重視する文化が根強く残っている場合、職員や住民の意識変革が難しいこともあります。
小規模な実証を重ねて成果を「見える化」し、住民にも利便性を実感してもらうことで、段階的な意識転換を促すことが可能です。また、住民のデジタルデバイド(情報格差)への対応も並行して進める必要があります。
個別最適化システムの乱立
各部署がそれぞれの業務要件に合わせて個別にシステムを導入・運用してきた結果、部門間のデータ連携が難しくなり、結果として特定ベンダーへの依存や運用コストの増加が発生するケースが見られます。
対策として、標準化と共通基盤整備を進め、全庁的なデータ活用体制を構築することが重要です。
持続可能な自治体DXに向けて「小さく始めて大きく育てる」ガブテック
ガブテックは、自治体DXを加速させる中核的な概念として注目されています。まずは小規模な補助業務など、実行しやすい領域から導入を進めることで、住民・職員双方の負担を抑えながら効果を実感しやすくなります。人材育成を行い、一つの業務から試行、成果を見える化し、他部署へと段階的に横展開していくアプローチが有効です。
DXはあくまで手段であり、目的はデジタル化を通じて組織・業務プロセス・文化・風土を抜本的に改革し、地域課題の解決や環境変化に柔軟に対応できる力を育むことにあります。
どこから着手すべきか、どのように進めるべきか迷っている場合は、TOPPANへご相談ください。現状分析からDXサービスの選定、システム設計、運用支援まで一貫してサポートが可能です。
ガブテックによる地域共創型のデジタル社会を目指す自治体の皆さまは、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。

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