2026.02.27
自治体の公文書電子化ガイド|法規制や進め方、BPO活用のメリットを解説
自治体の公文書電子化における法規制、正しい進め方、メリットを解説します。公文書管理法への対応や、現場の負担を軽減するBPO活用の成功事例、失敗しないための注意点まで網羅していますので参考にしてください。
自治体におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)が急務となる中、避けて通れない課題が「公文書の電子化」です。紙で保管されてきた膨大な行政文書をデジタル化することは、保管スペースの削減にとどまりません。業務効率の向上や迅速な情報共有につながり、結果として住民サービスの質の向上にもつながります。
しかし、現場では「公文書管理法にどう適合させるか」「所属ごとにどのような文書があり、どのような手順で電子化すべきか」といった法的・実務的な不安も少なくありません。
本記事では、政府の指針に基づいた正しい進め方や、現場の負担を最小限に抑えつつ成果を出すためのBPO活用のメリットを、最新の自治体事例を交えて詳しく解説します。
この記事でわかること
・公文書電子化のメリット
・公文書電子化の進め方
・公文書電子化のBPO事例
政府が示す公文書電子化の指針
公文書の電子化は、国が示す方針に沿って進める必要があります。2019年に決定され、その後改訂された「行政文書の電子的管理についての基本的な方針」は、行政DXの土台となる重要な指針です。
この方針では、行政文書を原則として電子的に作成し、電子決裁を行い、そのまま電子データで保存するという考え方が示されています。行政手続の効率化と透明性の向上を同時に実現することが目的です。
地方自治体においても、公文書管理法の趣旨にのっとり、公文書を適正に管理し将来にわたり利用可能な状態で保存する責務があります。とくに、文書の改ざんを防ぐ「真正性」や、将来も内容を確認できる「見読性」を確保するためのメタデータ付与が必要です。長期保存を前提としたデジタル管理体制を整備することが求められています。
自治体が公文書を電子化するメリット
公文書の電子化は、業務効率と行政基盤の強化を同時に実現することが可能です。従来のアナログ管理では、文書の検索や共有に多大な時間と労力を要していましたが、デジタル化によってこれらのプロセスは大きく改善するでしょう。
さらに、文書の物理的な劣化を防ぎ、災害時などのBCP(業務継続計画)対策としても有効です。ここでは、自治体が電子化に取り組むことで得られる主なメリットを解説します。
検索性の向上による事務効率の改善
電子化の最大の利点は、検索性の向上により必要な情報へ即座にアクセスできる点です。紙の台帳を探す、またはコピーする手間が省け、庁内の情報共有や窓口での文書配布、開示請求への対応まで一連の業務が円滑になります。
しかし、自庁だけで体制を整えるには、文書整理や保存ルールの設計に相応の時間と負担がかかります。日常業務と並行して進めるには限界もあるため、外部の専門的な支援を活用する方法も有効です。
TOPPANでは自治体向けのBPO(業務委託)サービスを展開しており、電子化の仕様設計からデータ活用までワンストップで支援しています。現場の負担を軽減し、行政事務のデジタル化をトータルでサポートします。
・【関連サービス】公文書 電子化サービス|TOPPAN Biz
・【関連サービス】文書電子化BPOサービス|TOPPAN BPO
コスト削減とスペースの有効活用
書庫を圧迫する膨大な紙資料は、多くの自治体にとって深刻な問題です。電子化により、これまで物理的な保管に充てていたスペースをほかの行政サービスや事務スペースへ転用できます。
また、書類の搬送や探索にかかる人的コスト、文書の長期間の維持コストも、データ管理への移行によって大幅に抑制できます。
安全性と透明性の確保
紙文書には、時間の経過による劣化や紛失のリスクがあります。適切なシステムで管理された電子文書であれば、閲覧や更新履歴の記録が可能です。誰が、いつ、どの文書にアクセスしたかを確認できるため、情報の透明性と不正防止の強化につながります。
また、万が一の災害時にも、遠隔地へのバックアップが容易なため、重要な行政記録が消失するリスクを最小限に抑えられます。物理的な劣化を恐れず、歴史的に価値のある資料を次世代へ引き継ぐことが可能です。
公文書電子化の具体的な進め方
公文書電子化に向けて具体的にどのように進めるか、ロードマップ作成や運用ルール整備など、5つの手順に分けて解説します。
1. 対象文書の選別と電子化優先順位の決定
すべての文書を一度に電子化するのは現実的ではありません。まずは対象文書の棚卸しを行い、保存期間や利用頻度、劣化状況などを基準に優先順位を定めます。
とくに、長期保存が必要で活用頻度の高い文書や、劣化が進行している歴史的資料は早めに電子化へ対応しましょう。
2. ルール整備
「誰が、いつ、どのような形式で」電子化を行うのか、標準的なルールを定めます。公文書管理法や各種法令・通達等に基づき、法的証拠力を維持するための解像度の基準やメタ情報の付与ルールを明確にすることが不可欠です。
3. システム・BPO先の選定と導入
大量の公文書処理は、庁内での方針統一やリソース確保に多大な労力を要します。専門知識を持つ人材が不足している場合、外部の支援を活用する方法が現実的です。
文書管理に精通した有資格者が在籍するBPOを活用すれば、資料の精査からルール設計まで一貫して進められます。加えて、機密情報を扱うための安全管理体制や導入実績も重要な判断基準です。適切なBPO先を選定することで、制度要件を満たした導入が可能になります。
4. スキャニング・データ登録
スキャン工程では、大判図面や製本資料にも対応できる設備を用意し、一定以上の画質を確保しましょう。
また、必要な情報を即座に探し出せるように、資料名や発行年度、保管区分などを整理した「デジタル目録」を構築します。データ本体と目録情報を結びつけることで、実務で活用しやすい管理環境が整います。
5. 公開・活用
電子データは文書管理システムと連携させ、日常業務で即時に活用できる状態にします。職員間の情報共有や問い合わせ対応の迅速化が期待できます。
また、歴史的資料をデジタルアーカイブとして公開することで、住民サービスの向上や地域の魅力発信につながるなど、付加価値の高い活用も考えられるでしょう。
・参考:デジタルアーカイブとは|文化を未来へつなぐ保存と活用の仕組み|コラム|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
公文書の電子化にあたっての注意点
公文書の電子化は、事務効率を高める一方で、適切なプロセスを経なければ法的効力や歴史的価値を損なうおそれがあります。行政の信頼性を揺るがさないために、実施時に押さえておくべき4つのポイントを解説します。
公文書としての証拠力の担保
内閣府の指針に基づき、紙と同程度の見読性を確保するため300dpi以上の解像度を保持するように気をつけましょう。デジタルデータは改ざんが容易なため、電子署名やタイムスタンプなどを活用し、作成時点の状態を証明できる「真正性」を確保します。
また、スキャン後の紙原本の廃棄については、行政文書の「正本」に該当するかどうかを確認し、内部規程との整合性も合わせて判断します。
長期保存を想定した対策
デジタルデータはファイル形式の陳腐化や媒体の物理的な寿命により、将来的に読み取れなくなるリスクがあります。そのため、特定のソフトウェアに依存しない汎用的な形式を採用することが重要です。
また、ハードウェアの劣化を見越し、数年ごとに保存媒体を更新するなど、計画的なデータ移行を前提とした管理体制を構築する必要があります。
管理ルールの徹底
電子化の効果を発揮するには、統一された運用ルールが不可欠です。後から誰もがすぐに活用できるよう、作成年度や保存期間、適切なキーワードなどのメタデータを正確に付与する、目録や文書番号と連動させるなど工夫しましょう。
また、職員ごとに入力方法が異なると、検索性は大きく低下します。職員ごとの入力差異を防ぐために、命名規則や分類方法を全庁的に標準化・ガイドライン化することで、電子化による検索性を向上できます。
セキュリティ対策と情報漏洩リスクへの対応
電子文書は利便性が高い反面、流出時の影響も大きくなります。文書の重要度に応じて閲覧権限を設定し、アクセス履歴を管理する仕組みが必要です。外部からの不正アクセスへの対策も欠かせません。
また、BPOを利用する際は、作業環境の安全管理体制を事前に確認します。専用エリアでの作業体制や入退室管理の方法、機密情報が適切に保護されているかなど把握することが重要です。情報の利便性と安全性は、常にセットで管理すべき重要事項です。
公文書電子化のBPO事例
公文書の電子化には、膨大な単純作業と専門知識が求められるため、BPOの検討が現実的です。ここでは、全国の自治体からTOPPANが支援した公文書電子化の具体的な成功事例を紹介します。
震災関連資料の収集と震災アーカイブの作成
岩手県において、東日本大震災の教訓を後世に伝える「いわて震災津波アーカイブ〜希望〜」の構築を支援しました。本プロジェクトでは、震災関連資料の収集方針の策定から電子化、システム構築、運用保守までを一体的に実施しています。
膨大な被災記録を整理し、散逸や消失を防ぐ仕組みを整備しました。住民や研究者が活用できる環境を構築し、記録の保存と利活用を両立させています。
・参考:地震の記憶を記録する「震災デジタルアーカイブ」|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
行政DXによる通知物の電子化と業務改革
東京都世田谷区の業務改革事例です。保育園入園事務では、多数の郵送物や封入作業が職員と住民双方の負担となっていました。この課題に対し、TOPPANの提案により通知物電子送付サービス「Speed Letter Plus®」を導入し、通知業務の見直しを実施しています。
自治体特有のハードルである「公印(印影)」が必要な秘匿性の高い通知についても電子署名を付与し、関係各所との綿密な調整を経てデジタル化を進めました。住民は24時間いつでもスマホで通知を確認できるようになり、郵送コストの削減と同時に、住民サービスの向上と職員の業務負担軽減を達成しています。
・参考:行政DXで保育園入園業務を抜本改革、通知物電子化で住民と自治体双方の利便性を向上|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
高セキュリティ環境下でマイナンバー申請書類の電子化
マイナンバーを含む申請書類は極めて機密性の高い個人情報です。こうした重要書類の電子化を検討する際、自治体がもっとも重視すべき点は、委託先の作業環境におけるセキュリティレベルの高さが重要な判断材料となります。
TOPPANは自社工場内に専用のセキュリティエリアを整備し、物理的な入退室管理や認証体制を整備した環境で電子化を実施することで、機密性の高い情報を安全に取り扱う体制を構築しました。単なるスキャン作業ではなく、高セキュリティな電子化プロジェクトを実践しています。
区広報紙と取材写真をデジタルアーカイブ化
東京都渋谷区では、区制施行90周年を契機に非公開の広報紙や取材写真の電子化を実施。TOPPANは広報紙の全文テキスト化と写真の高精細スキャン、約5カ月での専用CMSサイト構築を支援しました。
これにより、区の歩みを国内外へ発信する環境を整え、地域資産の継承と利活用の両立を実現しています。
大量の申請書のデータ入力・分析
紙媒体の申請書類をPDFデータとして受領し、関連する省庁間で連携するシステムのデータ入力を実施しました。電子データのプラットフォームに取り込めるよう、申請書から必要情報を選別し、入力データとして整備しました。さらに、入力データを用いた集計表の作成や詳細な分析レポート作成まで支援しています。
自治体が公文書の電子化を進める際の障壁
自治体が公文書の電子化を推進する上で、技術的な問題以上に大きな壁となるのが、長年続いてきた慣習や組織体制の変革です。法的な不安やコスト面の制約に加え、現場職員の心理的な抵抗感がプロジェクトの停滞を招くケースも少なくありません。
ここでは、多くの自治体が直面する主要な障壁について掘り下げます。
組織文化と意識の壁
長年、紙運用に慣れ親しんできた職員にとって、操作方法の変化や新しいシステムの習得は心理的な負担となりやすく、電子化への抵抗感を生む要因といえます。単なるシステム・やり方の変更ではなく、業務を効率化するという目的意識を共有することが重要です。
TOPPANでは、操作研修や伴走支援を通じ、職員の不安を解消し、組織全体での意識醸成からサポートした事例も豊富にあります。
移行期の一時的な負担増大
電子化の過程では、紙とデジタルの二重管理が発生する期間があります。通常業務と並行した資料整理が必要となるため、現場の負担は一時的に増大するでしょう。
とくに情報公開請求への対応は、整理不十分な状態では混乱を招きかねません。あらかじめ活用場面を想定したデータベース設計を行い、資料整理の段階から体系的に進めることが重要です。
TOPPANでは、活用シーンを見据えたデータベース構築を見越し、煩雑な事前の資料整理から一貫してサポートを行っています。職員が本来の業務に集中できるよう、移行期の負荷を最小限に抑えることが可能です。
導入・維持コストやIT人材の不足
初期費用や運用コストの確保に加え、専門知識を持つIT人材の不足が電子化を阻む大きな壁となっています。自庁のみで完結させようとすると、かえって非効率や安全管理上の不安が生じるかもしれません。
TOPPANには文書情報管理士等の有資格者が在籍し、資料の現状把握から電子化方針の策定まで一貫してサポートします。また、生成AIによる検索・要約機能を備えたデータベース「Con:tegration®」を提供し、職員が使いやすく、高度な専門知識がなくても容易に文書活用ができる環境を構築します。
公文書電子化でDXの第一歩を
自治体における公文書の電子化は、住民サービスの質を高め、職員の働き方を変える行政DXの基盤です。
未来に引き継ぐべき大切な公文書を、安全かつ有効に活用するために、TOPPANでは、電子化の仕様設計から高セキュリティな環境での作業、さらにはデータの利活用まで支援いたします。自治体のDX推進を着実に前進させていきましょう。
参考文献
- 2-5 スキャナ等を利用して紙媒体の行政文書を電子媒体に変換する場合の扱いについて(案) 内閣府(https://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2022/0204/shiryou3-2-5.pdf)
- 行政文書の電子的管理についての基本的な方針 内閣府(https://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/densi/dennshigaiyou.pdf)











