2026.06.02

行政DXとは?住民と職員がメリットを実感できる行政DXの進め方

行政DXの概要から重点施策、推進ステップ、先進事例、成功のポイントまでを解説。自治体が住民サービス向上と業務効率化を両立させるための実践的なヒントを紹介します。

人口減少や人材不足、住民ニーズの多様化が進む中、自治体には限られたリソースで質の高い行政サービスを提供することが求められています。こうした課題解決の鍵として注目されているのが「行政DX」です。

しかし、単にDX向けのシステムを導入するだけでは十分な成果は得にくいため、現状の課題を整理したうえで、実現に向けた手順やポイントを押さえることが重要です。

本記事では、行政DXの基本的な考え方や自治体における重点施策、推進ステップ、先進事例、成功のポイントをわかりやすく解説します。

この記事でわかること

・行政DXの概要
・行政DXの成功事例
・行政DXを成功させるポイント





行政DXとは

行政DXとは、デジタル技術やデータを活用し、行政サービスや業務プロセスそのものを変革する取り組みです。行政DXの目的は、手続きのオンライン化やワンストップ化によって住民の利便性を高めることと職員の業務効率化を同時に実現することです。単なるシステム導入や紙の電子化ではなく、「住民サービスのあり方」や「組織・業務の進め方」を見直すことに本質があります。

具体的な取り組みとして、申請・審査・決裁などの業務をデジタル前提で再設計し、紙や転記、重複作業を削減することが挙げられます。また、データの標準化や連携を進めることで、EBPM(証拠に基づく政策立案)や民間連携など新たな価値創出の基盤にもつながります。

自治体における行政DX推進の主な重点取組事項

国が示す行政DXの重点取組事項には、フロントヤード改革、システム標準化、マイナンバーカード活用、AI活用、テレワーク推進などが掲げられています。
※参考:自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第 5.1 版】

行政DXに取り組む際は、こうした国の方針と連動しながら推進することが大切です。自庁の課題や推進フェーズに応じて、重点取組のなかから優先順位を見極める必要があります。

ここでは、行政DX推進で押さえておきたい主な重点取組事項を整理して解説します。

フロントヤード改革の推進

フロントヤード改革とは、窓口対応や申請、問い合わせといった住民と行政の接点を、デジタル前提で再設計し、利便性向上を図る取り組みです。オンライン申請やワンストップサービスを拡充することで、来庁不要の「行かない窓口」や、手書き記入を省略する「書かない窓口」を実現できます。

手続きの標準化・簡素化、迷わず利用できるUI/UX設計を採用することは、誰でも使いやすい行政サービスにもつながります。

また、フロントヤード改革は、バックヤード業務と連携させることが重要です。紙や対面前提の業務フローを見直し、入力・審査・決裁までをデジタルで一貫処理することで、効率化と住民サービスの向上を両立できます。

TOPPANでは、自治体のフロントヤード改革を設計から導入・運用まで伴走支援しています。鹿児島県指宿市での事例では、オンライン申請の拡充と窓口タブレット活用等により、窓口対応時間が約3分の1に短縮されました。

・自治体向け 窓口タブレット申請システム|窓口DX推進を支援

・自治体向け オンライン申請拡充と窓口デジタル化の支援サービス

自治体情報システムの標準化・共通化

自治体情報システムの標準化・共通化は、国が定める標準仕様に基づき、基幹業務システムを統一・最適化する取り組みです。行政DXを推進するうえで重要な施策のひとつであり、自治体やベンダーごとの差異を解消することで、制度改正への迅速な対応や運用負担の軽減につながります。

また、クラウド環境の活用により、コスト削減やセキュリティ強化、災害時の業務継続性向上も期待できます。さらに、データ形式や連携基盤の共通化を進めることで、自治体内外のデータ利活用の促進が可能です。システム刷新にあわせて業務プロセスの見直し(BPR)を行うことで、効果を最大限に発揮できます。

マイナンバーカードの普及・活用促進

マイナンバーカードは、行政手続きのデジタル化を支える重要な基盤として、普及と利活用の促進が進められています。オンライン申請や証明書のコンビニ交付など、来庁不要のサービス拡充に加え、健康保険証・公金受取口座との連携により、手続きの簡素化と住民利便性向上を図ることが可能です。

さらに、利用シーンの拡充を通じて住民のデジタルサービス利用を促進することは、行政DXを加速させる役割も担います。

自治体でマイナンバーカードの普及・活用促進に取り組む際には、取得促進だけでなく、セキュリティ対策や利用者理解の醸成を進めることも重要です。

TOPPANの「Speed Letter Plus®」のように、マイナンバーカードで認証されたID宛に自治体通知を送付する仕組みも登場しています。マイナンバーの活用により、秘匿性の高い情報を安全に届けることが可能です。東京都世田谷区の事例では、行政DXの一環として「Speed Letter Plus®」を導入し、職員の業務負荷軽減と、電子申請率15%向上を実現しました。

・自治体向け手続オンライン化・ペーパーレス化支援「Speed Letter Plus®」

AIによる業務効率化

AIによる業務効率化も、行政DXにおける重点施策のひとつです。AI技術を活用することで、問い合わせ対応や文書作成といった定型業務を自動化・高度化でき、職員の業務負担軽減につながります。

たとえば、チャットボットや音声認識を導入することで、住民対応の迅速化や24時間対応を実現できます。また、議事録作成や要約、データ分析などへのAI活用により、業務効率だけでなく、施策立案や意思決定の高度化(EBPM)にも寄与するでしょう。

一方で、AI活用を進める際は、個人情報保護やガバナンスをふまえたルール整備と適切な運用も不可欠です。

・「子育て支援」事務を部内横断で最適化。 行政手続きのオンライン化とボトムアップ型業務BPRで持続可能な市政運営へ|事例紹介

職員の働き方改革・業務継続体制の整備

職員の働き方改革や業務継続体制の整備も、自治体が行政DXを推進するうえで重要なテーマです。クラウドやリモートアクセス環境を整備することで、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を実現し、庁外からでも安全に業務を行える体制を構築できます。

これらの取り組みは、災害時や感染症拡大時においても行政機能を維持できる体制構築に寄与します。

実現に向けては、ペーパーレス化や電子決裁の導入を進め、出庁前提の業務プロセスそのものを見直すことが重要です。働き方改革や人材確保の観点からも、持続可能な組織運営を支える基盤となるでしょう。

行政DXに向け自治体が直面する課題

行政DXの推進において、多くの自治体が共通して抱えやすい課題が次の4点です。

・現場の心理的ハードルとリソース不足
・レガシーシステムからの移行コスト
・住民間のデジタルデバイド
・情報セキュリティの確保とプライバシー保護

行政DXの重要性は広く認識されている一方で、現場ではこうした制約や障壁により、思うように進まないケースも少なくありません。とくに、人材・業務プロセス・システムを三位一体で改革する必要がある点が、推進を難しくする要因となっています。

それぞれの課題の原因と対策について詳しく解説します。

現場の心理的ハードルとリソース不足

自治体の現場では、業務変更への不安や負担増への懸念から、変革に対する抵抗感が生まれるケースも少なくありません。また、日常業務に追われる中でDX施策に取り組む余力が不足しがちです。

加えて、デジタル人材や推進リーダー不足により、企画から実行までを担う体制を構築しにくい状況があります。属人化した業務が多い場合、引き継ぎや標準化が進みにくく、行政DX推進における改革の障壁となることもあるでしょう。

現場の心理的ハードルとリソース不足に対処するためには、小さな成功体験を積み重ねながら、現場の理解と協力を得ていくことが重要です。

レガシーシステムからの移行コスト

長年運用されてきた既存システムの刷新には、多額の費用や時間が必要となります。業務が既存システムに合わせて構築されている場合、システム移行とあわせて業務見直し(BPR)も求められるため、現場負担が大きくなりやすい点も課題です。

また、システム仕様のブラックボックス化により、改修やデータ移行の難易度が高い点も考慮する必要があります。ベンダー依存が強く、柔軟な移行計画やコスト管理が難しいケースもあるでしょう。

移行リスクを抑えるためには、段階的な刷新や標準化対応を見据えた計画的な推進が求められます。

住民間のデジタルデバイド

行政サービスのオンライン化が進む一方で、「デジタルデバイド(情報技術を利用できる人と利用できない人の格差)」への対応が重要な課題となっています。年齢や所得、ITリテラシーの差によって、デジタルサービスを利用できる住民とそうでない住民には格差が生じます。デジタルに不慣れな層が行政サービスから取り残されるリスクへの配慮が不可欠です。

具体的には、高齢者や障がい者など、多様な利用者に配慮したアクセシビリティ対応(誰でも利用しやすい設計)を強化する必要があります。オンラインだけでなく対面窓口も併用するなど、誰一人取り残さない包摂的なサービス設計が求められます。さらに、デジタル活用支援や普及啓発を通じて、住民全体の利用環境を底上げしていくことも重要です。

情報セキュリティの確保とプライバシー保護

個人情報や機微情報を扱う行政DXを進めるうえで、情報セキュリティ対策は前提条件です。サイバー攻撃や情報漏えいリスクが高まる中、技術面だけでなく運用面を含めた対策強化が求められています。また、クラウド利用やデータ連携の拡大にともない、アクセス管理や認証基盤の高度化も重要です。

適切なデータ管理や利用ルールを整備し、プライバシー保護を徹底しましょう。利便性と安全性のバランスを取りながら、住民の信頼を確保することが不可欠です。

行政DXを推進するための具体的なステップ

行政DXは、一般的に次のような流れで推進します。

1.課題整理
2.体制構築
3.業務プロセスの見直し(BPR)
4.システムの選定・導入
5.データの利活用と改善

行政DXは、一度に大きく変革するのではなく、段階的かつ計画的に進めることが成功の鍵です。現場の理解や合意形成を図りながら、小さな成功を積み重ねることで、全庁的な展開につなげやすくなります。

それぞれのステップを詳しく解説します。

行政DXは、一度に大きく変革するのではなく、段階的かつ計画的に進めることが成功の鍵です。現場の理解や合意形成を図りながら、小さな成功を積み重ねることで、全庁的な展開につなげやすくなります。

ここでは、行政DXを着実に推進するために押さえておきたい具体的なステップを整理します。

1. 課題整理

行政DXを進める第一歩は、現行業務の流れや課題を可視化し、非効率やボトルネックを把握することです。住民視点での不便さや職員負担の大きい業務を洗い出し、システム起点ではなく業務プロセス全体を俯瞰して本質的な課題を特定する必要があります。

また、各部門へのヒアリングやデータ分析を通じて、属人化や重複業務の実態を明らかにすることも重要です。そのうえで、課題の優先順位を整理し、DXで解決すべき領域を明確化しましょう。

2. 体制構築

行政DXを全庁横断で推進するため、専門部署やプロジェクト体制を整備します。上層部の関与を明確にし、迅速な意思決定と継続的な推進力を確保しましょう。また、情報政策部門と業務部門が連携し、現場視点と技術視点を両立させることも求められます。

人材やノウハウが不足する場合には、外部パートナーの活用で補完しながら、職員のデジタルリテラシー向上や意識醸成を進め、組織全体でDXを支える土壌づくりを行うことが重要です。

3. 業務プロセスの見直し(BPR)

業務プロセスの見直し(BPR)は、既存業務を再設計し、効率化を図る取り組みです。現行の紙・対面・転記といった非効率な工程を排除し、シンプルで標準化された業務フローへ転換することが主な内容となります。

重要なのは、デジタル化を目的化せず、「業務のあるべき姿」を起点に最適な手段を選ぶことです。BPRを先行させることで、部門間の分断や重複業務を解消し、全体最適の視点で業務を再構築するだけでなく、システム導入効果を最大化し、持続的な業務改善につなげることができます。

4. システムの選定・導入

BPRによって再設計した新たな業務プロセスに適したシステムを選定し、導入を進めます。標準仕様やクラウドサービスを活用し、拡張性や保守性の高い構成を検討することで、将来的な制度変更にも柔軟な対応が可能です。

システム選びはベンダー任せにせず、自庁の要件や将来像をふまえて比較・評価を行うことがポイントです。導入後の運用やシステム連携も見据え、全体最適の視点で設計することが求められます。スモールスタートや段階導入によってリスクを抑えながら定着を図りましょう。

5. データの利活用と改善

業務で蓄積されたデータは、施策立案や意思決定の高度化(EBPM)につなげましょう。部門間でデータを共有・連携することで、全庁的な視点から課題解決やサービス向上を図ることができます。

また、利用状況や業務データを分析することで、継続的な業務改善やサービス最適化も可能になります。そのためには、データ品質の確保や管理ルール整備による信頼性の高い基盤構築が不可欠です。一度導入して終わりではなく、データに基づく改善サイクルを回し続けることが求められます。

行政DXの先進事例

ここでは、TOPPANによる自治体支援事例をもとに、住民サービス向上や業務効率化につながる行政DXの具体的な取り組みを、現状の庁内業務を改善するものと、地域資源に付加価値を創出するものに分けてご紹介します。
・

領域 自治体 取り組みの概要
業務効率化 鹿児島県指宿市 「行かない窓口」「書かない窓口」の同時実現
東京都文京区 多言語対応の透明ディスプレイで窓口コミュニケーションを円滑化
東京都世田谷区 保育園業務をデジタル前提で再設計
東京都武蔵野市 オンライン申請拡充等で子育て支援事務を4課横断で最適化
熊本県熊本市 複数業務を対象とした定型業務の集約・効率化
千葉県柏市 自動音声電話システム導入による納税催告の効率化
地域資源活用 東京都渋谷区 広報資料のデジタルアーカイブ化・特設サイト構築
兵庫県姫路市 文化資源を3DCG化して保存修理と観光発信に活用

・
行政DXに取り組む際には、自庁と近い規模や課題を持つ自治体の取り組みが、実践的なヒントになるはずです。実際の事例を通じて具体的な進め方や効果を把握しましょう。





業務効率化に向けたDX取り組み事例

まずは行政内部のプロセスを見直し、デジタル技術を活用して効率化を図った自治体の取り組みをご紹介します。TOPPANでは、現状業務の調査・改善(BPR)からデジタル実装、BPOによる業務実施まで、各自治体の実情に寄り添う行政DX支援を行っています。

【鹿児島県指宿市】フロントヤード改革から全庁的な行政DX推進へ

指宿市フロントヤード改革モデルプロジェクト 「指宿モデル」の概要

【背景】
鹿児島県指宿市では、DX推進体制を整備するなかで、コストや技術的負担から取り組みが一部業務に限定されてしまっている点に課題がありました。

【取り組み内容】
低コスト低負荷、かつ職員が自走できる土壌づくりを重視した「指宿モデル」を構築し、「行かない窓口」と「書かない窓口」の同時実現を目指しました。また、オンラインと窓口双方の申請データを統合管理することで、後続業務の一元化と業務効率化にもつなげています。

【成果】
改革により、窓口対応時間が約3分の1に短縮され、住民利便性の向上と職員の負荷低減に大きく寄与しました。DX推進の先進事例として「日本DX大賞2025庁内DX部門」の優秀賞にも選出されています。

・参考:行政DX推進に向けたぴったりサービス活用による「行かない」「書かない」 窓口の同時実現|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

【東京都文京区】ユニバーサルコミュニケーション実現に向けた透明ディスプレイ導入

透明翻訳ディスプレイ「VoiceBiz® UCDisplay®」を使った窓口対応の様子

【背景】
東京都文京区の窓口では、発生しづらい方や聞こえにくい方、外国語を話す方などとのコミュニケーションにおいて、時間短縮や正確な内容伝達に課題を抱えていました。

【取り組み内容】
障害福祉課と幼児保育課の窓口に、13言語に対応した透明翻訳ディスプレイ「VoiceBiz® UCDisplay®」を導入しました。ディスプレイには音声入力とキーボード入力に対応した字幕が表示され、表情と目線を確認しながら自然な会話が可能です。

【成果】
窓口対応の感染防止対策とともに、聴覚・言語に障がいのある方や外国語を話す方に向けたユニバーサルコミュニケーションを実現しました。

・参考:ユニバーサルコミュニケーション支援事例~窓口でのコミュニケーション円滑化を推進~|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

【東京都世田谷区】保育園入園業務の抜本改革に寄与する行政DX

世田谷区保育園入園申請のDX後のフロー

【背景】
東京都世田谷区では、職員減少と業務量増加を背景に、持続可能な行政運営体制の構築が求められていました。

【取り組み内容】
保育園入園業務を対象にBPRを実施し、申請から審査・通知までのフローをデジタル前提で再設計しました。具体的には、申請書様式の改善やAI-OCR対応、通知物電子化サービスの導入を実施しています。

【成果】
2023年度の区立保育園の現況届を対象とした実証実験では、園職員の業務負荷を軽減するとともに、全体の電子申請率も約30%から約45%に向上。利用者の90%以上が「継続して利用したい」との意向を示しています。2024年度から本稼働を開始し、2025年時点のアカウント登録率は60%以上となりました。

・参考:行政DXで保育園入園業務を抜本改革、通知物電子化で住民と自治体双方の利便性を向上|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

・世田谷区が官民連携で成功させた業務DX化の実践モデル|コラム|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

【東京都武蔵野市】ボトムアップ型業務BPRに基づく行政DX

武蔵野市の子育て支援事務DXのコンセプト

【背景】
東京都武蔵野市では、ライフイベントに伴う行政手続きの際、住民は類似した内容を何度も書類に記入する必要がありました。同時に、行政ニーズの多様化・慢性的な職員不足にも直面しており、抜本的な業務改善が求められていました。

【取り組み内容】
部局横断の大規模BPRにより、重複作業やアナログ工程を可視化。その結果をふまえて、子育て支援業務の一体的な集約・外部化を実施しました。オンライン申請の拡大やSMSによる誘導、窓口タブレット活用を通じて、手続きのワンストップ化を実現しています。

【成果】
持続可能な行政運営を実現するための、抜本的な業務改善施策を具体化。市民の利便性向上と窓口の混雑緩和に寄与しました。今後はさらに電子通知やプッシュ通知も活用し、フロントヤード・バックヤード一体でのDX推進を目指しています。

・参考:「子育て支援」事務を部内横断で最適化行政手続きのオンライン化とボトムアップ型業務BPRで持続可能な市政運営へ|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

【熊本県熊本市】総合行政事務センターの開設とDXで職員の業務負担を軽減

熊本市総合行政事務センターのある庁舎ビルの外観

【背景】
熊本県熊本市では、定型業務や窓口対応による職員負担増といった課題が顕在化していました。効率化を進めるハードルとなっていたのが、区ごとに異なる処理を行っている類似業務です。

【取り組み内容】
全庁的な業務調査とBPRを実施したうえで、2024年に「総合行政事務センター」を開設。市税や医療費助成といった定型業務を集約するとともに、OCRや進捗管理システムを活用し、業務の標準化・可視化を推進しました。

【成果】
職員の時間外勤務を前年度比で約32%削減することに成功し、創出したリソースを企画立案や市民対応など付加価値の高い業務へ振り向けています。

・参考: 年間100万枚の書類を電子化し、職員の時間外勤務を削減~熊本市×TOPPANの業務改革|コラム

・熊本市総合行政事務センター 行政DXと業務集約による効率化の実現|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

【千葉県柏市】持続可能な税務行政サービスを実現する行政DXの推進

柏市の納税案内DXの仕組み

【背景】
千葉県柏市では、限られた人員の中、デジタル技術の導入や委託による効率化を図りつつ、安定した税収を確保することが求められていました。

【取り組み内容】
税務業務の抜本改革を実施し、定型業務の委託と、納付勧奨における自動音声電話(オートコール)やSMSの活用を進めました。窓口対応・バックヤード業務も集約し、一体的な管理・運用を行っています。

【成果】
夜間・休日を含めた納付勧奨を実施することで、接触率・収納率の向上に成功しました。さらにBPOにより繁閑に応じた柔軟な人員配置を可能にし、業務の平準化と効率化の実現にも寄与しています。

・参考:自治体の業務効率化を加速させる行政DX ボトムアップ型BPRとDX推進で実践する、持続可能な税務行政サービスの実現|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

【東京都渋谷区】広報資料のデジタルアーカイブ化で区の魅力を発信

渋谷区デジタルアーカイブサイト、「SHIBUYA CITY RECORD」のTOPページ

【背景】
東京都渋谷区は、2022年に区制90周年を迎えるにあたって区の情報発信と保存が求められていました。また、区広報誌や広報取材写真は紙媒体かつ一般には非公開で保管されており、十分な利活用ができていませんでした。

【取り組み内容】
区が保有する1万点を超える資料をデジタルアーカイブ化。属性情報を付与し検索しやすくしたうえで、特設サイト「SHIBUYA CITY RECORD」に公開しました。

【成果】
国内外の人が区の歩みを知り、活用を促す機会を創出しました。またサイトはデザインと機能性が国際的に評価され、「Indigo Design Award」※において金賞を受賞しています。
※Indigo Design Award 2023ブランディング部門ゴールド

・参考:自治体の周年を機に歴史を次世代へ。渋谷区が構築する次世代デジタルアーカイブ|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

【兵庫県姫路市】姫路城を3DCGデータで再現し保存修理・観光発信へ活用

姫路城を3DCGデータで再現し保存修理・観光発信へ活用

【背景】
兵庫県姫路市では世界遺産・国宝である姫路城について、美しさを継承するため保存修理と、観光資源としての魅力向上の2点が求められていました。

【取り組み内容】
姫路城有料区域内の姿を、高精細な3DCGデータとして再現。データは多言語対応のVR動画の制作やSNSプロモーションなど、多角的な情報発信へ活用しています。

【成果】
PR動画に3DCGデータを活用し、視覚的な興味を惹きつけることで現地への訪問意欲を高めました。また、地域資源の調査測量データをデジタルで保管・活用できる仕組みを整え、将来の維持管理につなげています。

・参考:世界遺産・姫路城を次世代へ!3DCGデータが拓く新たな文化資源の活用例|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

行政DXを成功させるポイント

行政DXに取り組む際は、次の5点を押さえた設計にすることが重要です。

・BPRの徹底
・小さく始めて早く改善する
・住民ニーズをとらえたサービスデザイン思考
・職員のITリテラシー向上とマインドセットの変革
・DXを支援する最適なパートナー選び

DX成功のためには、単なるデジタル導入ではなく、業務・組織・サービスを一体で変革する視点が欠かせません。それぞれのポイントを詳しく解説します。

BPRの徹底

行政DXでは、まず現行業務の見直しを行うことが成功の前提となります。紙・対面・重複作業といった非効率な工程を排除し、シンプルで標準化された業務フローへ再設計することがポイントです。

また、部門単位の最適化ではなく、全庁視点で全体最適を意識した業務改革が求められます。業務の可視化やデータ分析を通じてボトルネックや属人化を解消することで、システム導入効果を最大化し、持続的な改善につなげることが可能です。

小さく始めて早く改善する

行政DXは将来的には全庁への展開が期待されますが、まずは影響範囲の小さい領域からスモールスタートで着手することが重要です。短期間で成果を可視化し、効果検証を行いながら改善を繰り返すことで、現場の負担や導入リスクを抑えられます。

また、成功事例を庁内で共有することで、職員の理解や協力も得やすくなります。段階的に対象範囲を拡大し、「試行→改善→展開」のサイクルを回し続けることで、持続的なDX推進につなげることが可能です。

住民ニーズをとらえたサービスデザイン思考

行政DXでは、行政都合ではなく住民の体験(UX)を起点にサービス全体を設計することが欠かせません。手続きのわかりやすさや使いやすさなど、利用者視点で課題を把握し、ライフイベント単位で手続きを整理することで、ワンストップ化や簡素化を推進できます。

また、高齢者やデジタルに不慣れな人にも配慮し、デジタルと対面を組み合わせた包摂的な設計が求められます。さらに、利用データや住民のフィードバックを活用し、継続的にサービス改善を図ることが重要です。

職員のITリテラシー向上とマインドセットの変革

行政DXを推進するには、全職員のITリテラシー向上が不可欠です。単なるツール操作だけでなく、データ活用や業務改善の視点を持つ人材育成が求められます。また、変化を前向きに捉え、挑戦と改善を繰り返す組織文化への転換も重要です。

研修や実践機会を通じて、現場主導でDXを進められる体制を整えることで、継続的な改革につながるでしょう。さらに、成功事例の共有や評価制度の見直しを行い、職員の主体的な取り組みを促進することが大切です。

DXを支援する最適なパートナー選び

行政DXでは、システム導入支援だけではなく、課題整理やBPRまで一貫して伴走できるパートナー選びが重要です。自治体業務への理解や豊富な実績を持ち、現場に即した提案ができるかを見極める必要があります。

また、技術力だけでなく、導入後の運用定着や職員支援まで含めた継続的なサポート体制も欠かせません。ベンダー任せにするのではなく、自庁の方針や将来像を共有しながら対話できる関係を築き、中長期的な改善や拡張に柔軟に対応できるパートナーを選ぶことが成功の鍵となります。

行政DXの今後の展望

行政DXは、単なる個別業務のデジタル化にとどまらず、データとサービスを軸とした行政運営全体の変革へと進展していくと考えられています。人口減少や人材不足が進む中、限られたリソースで高品質な行政サービスを提供する仕組みづくりが、今後さらに重要になるでしょう。

ここでは、行政DXの今後の展望について整理して解説します。

電子化から自動化へ

行政DXは、紙のデジタル化から、業務そのものを自動化する段階へと進んでいます。RPA(定型業務を自動化するソフトウェアロボット)やAIの活用により、入力・審査・通知などの定型業務の省力化が進み、業務効率化が加速しています。

自動化によって、職員は判断を要するコア業務や住民対応に注力することが可能です。継続的な改善と組み合わせることで、より高効率で持続可能な行政運営の実現につながることが期待されています。

生成AIの本格導入

生成AIの活用により期待されているのが、文書作成や要約、問い合わせ対応、審査・点検など、幅広い行政業務の効率化です。ナレッジ検索やFAQ対応の高度化によって、職員・住民双方の利便性向上にもつながります。また、定型業務だけでなく、企画立案や政策検討の補助など高度な業務支援への活用も拡大しています。

一方で、生成AIの活用を進める際には、セキュリティや個人情報保護をふまえたガイドライン整備と適切な運用は不可欠です。人とAIの役割分担を明確にしながら、業務品質と生産性の両立を図ることが求められています。

ガバメントクラウドへの移行加速

政府が整備を進める自治体向け共通クラウド基盤である「ガバメントクラウド」への移行が進むことで、自治体システムの標準化・共通化は今後さらに加速すると見込まれています。

オンプレミス(自庁内でシステムを運用する形態)からクラウドへ転換することで実現されるのが、コスト最適化や運用負担の軽減です。また、セキュリティ対策の高度化や災害時の業務継続性(BCP)の強化も期待できます。

システム間連携が容易になることで、データ利活用や行政サービス高度化の基盤整備も進むでしょう。移行を契機にBPRを推進し、業務とシステムの最適化を同時に進めることが重要です。

行政DXを加速させ、住民が実感できる価値を創り出そう

行政DXは、単なるデジタル化を目的とするものではなく、住民サービスの質を高めるための手段です。実現するためには、業務改革(BPR)とデジタル活用を一体で進め、現場と住民双方にメリットをもたらす取り組みが求められます。小さな成功を積み重ねながら段階的に全庁展開へつなげていくことが、現実的かつ持続可能な推進につながるでしょう。

行政DXに取り組む際には、外部パートナーの力も活用し、自庁の課題やフェーズに応じた最適な進め方を選ぶことが重要です。住民が「便利になった」と実感できる価値創出こそが、行政DXの最終的な成果といえます。

TOPPANでは、行政DXを支援するさまざまな取り組みを行っています。行政DXの進め方にお悩みの際は、ぜひご相談ください。

行政DXに関するよくある質問

行政DXにはどのくらいの費用がかかりますか?

行政DXにかかる費用は、導入するシステムや自治体の規模によって数百万円~数千万円以上まで幅があります。課題や状況に合わせて費用も変動するため、用途や取り組みに合わせて国の補助金なども活用すると良いでしょう。

TOPPANでは多数の支援実績をもとに、課題と予算に応じた施策のご相談が可能です。まずはお気軽にご連絡ください。

行政DXのベンダーを選ぶときのポイントは何ですか?

自治体に合ったベンダー選びの目安となるのは次の3点です。

・自治体特有の業務や法制度への深い理解があるか(導入実績が豊富か)
・高度なセキュリティ体制があるか
・導入後の伴走支援が充実しているか

行政DXのベンダーは、単にツールやサービスの提供を受けるだけでなく、庁内の業務プロセスそのものを見直すパートナーです。DXの構想から運用まで、継続した改善やサポートができるベンダーを選びましょう。

小規模自治体でも行政DXを進められますか?

小規模自治体でも、行政DXの推進は可能です。むしろ人手不足や高齢化が深刻な小規模自治体こそ、DXによる業務効率化が求められるといえます。

ただし、年間の処理件数が少ないと費用対効果が見合わないケースもあるため、対象業務の見極めが重要です。一部の部署や特定の業務からのスモールスタートや、既存のシステムの活用、近隣自治体との共同調達などでコストを抑えて進めることをおすすめします。

TOPPANの支援事例のなかには、国のオンライン申請システムの活用や、運用は変えずに一部業務のみをデジタル化することでコストを抑えた事例もあります。

・【インタビュー】「これで皆はハッピーになるか?」指宿市とTOPPANが実践した住民と職員に寄り添うフロントヤード改革

・
TOPPANは、自治体業務の現場に入り込み、調査からKPI・運用ルールなどの施策設計、システムの選定と導入、BPOによる業務実施まで、行政DXとその先にある効率化を一気通貫でサポートいたします。さらにDX施策の実施後も、成果を検証しさらなる業務改善につなげるお手伝いが可能です。

「課題が複雑なので整理からお願いしたい」「ツールを導入したが改善効果が見られない」という自治体さまも、ぜひお気軽にご相談ください。





TOPPAN SOCIAL INNOVATION WEB 編集部

参考文献

  • 自治体デジタル・トランスフォーメーション (DX)推進計画 【第5.1版】|総務省(https://www.soumu.go.jp/main_content/001053408.pdf)
  • 自治体DX全体手順書 【第4.0版】 |総務省(https://www.soumu.go.jp/main_content/000944054.pdf)
  • 業務改革・自治体DXに向けて持つべき視点と考え方(https://www.soumu.go.jp/main_content/000970327.pdf)

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