2026.07.03
自治体における総務事務センターの立ち上げ事例と運営のポイント
本記事では、自治体の総務事務センターについて、業務範囲や運営体制、導入メリットを解説。業務集約やDX推進による効果、導入・運営の成功事例、立ち上げを成功させるポイントを紹介します。
自治体では、少子高齢化による職員不足や業務量の増加に加え、紙中心の運用や手作業、属人化した業務への対応が大きな課題となっています。住民サービスの維持・向上を図りながら行政DXを推進する手段として注目されているのが、人事・給与・旅費などのバックオフィス業務を集約・標準化する「総務事務センター」の設置運営です。
本記事では、総務事務センターの概要や導入メリット、業務範囲、運営体制に加え、導入事例や立ち上げを成功させるポイントについて解説します。
この記事でわかること
・総務事務センターの概要
・自治体における総務事務センター設置運営の事例
・総務事務センター立ち上げに当たってのポイント
総務事務センターとは
総務事務センターとは、人事・給与・旅費・福利厚生・物品調達など、自治体内の定型的なバックオフィス業務を集約して処理する組織・システムです。自治体によっては「行政事務センター」や「総合行政事務センター」などの名称で設置され、住民向け申請処理や審査業務まで対象とするケースもあります。
さらに近年は、専門事業者へのBPO(業務委託)を活用し、運営負担の軽減や安定運用を図る自治体も増えています。
総務事務センター設置による自治体のメリット
人事・給与・旅費などのバックオフィス業務を集約・標準化する「総務事務センター」は、行政改革やDX推進を支える取り組みとして注目されています。ここでは、導入によって期待できる主なメリットをご紹介します。
業務負荷の削減・コア業務へのリソース集中
総務事務センターを設置し、人事・給与・旅費などの定型業務を集約することで、各部局で行っていた事務処理の負担を軽減できます。
また、申請・承認フローの標準化や電子化により、紙書類の管理や二重入力といった非効率な作業の削減も可能です。問い合わせ対応や事務処理をセンターで一括して担うことで、職員は定型的なバックオフィス業務から解放され、部署ごとの業務負荷を平準化しやすくなります。
その結果、職員は住民対応や政策立案などのコア業務に集中でき、安定した行政サービスの維持が可能になることで組織全体の生産性向上につながります。
属人化の解消
総務事務センターの開設に当たって業務手順やルールを標準化することで、担当者ごとの処理方法のばらつきを抑えられます。業務マニュアルや運用フローも整備しやすくなり、特定職員への依存を軽減できます。
さらに、人事異動や退職時の引き継ぎ負担を減らし、継続的かつ安定した業務運営につながる点もメリットです。センター側で業務知識を集約・共有することで、組織全体のノウハウ蓄積が進み、処理ミスや対応遅延の防止、業務品質の均一化も図りやすくなるでしょう。
コストの最適化
総務事務センターは、バックオフィス業務の集約・標準化を通じてコストの最適化にも貢献します。重複作業や非効率な運用を見直すことで、業務全体の生産性向上が期待できます。
また、紙申請や手作業を電子化へ移行することで、印刷・保管・郵送にかかる関連コストの削減も可能です。業務量の可視化によって人員配置の適正化が進み、繁閑に応じた運営体制の構築にも寄与します。
加えて、BPOを活用すれば、限られた人員でも安定した業務運営体制を維持できます。定例業務にかかるコストの最適化によって生まれた人的・財政的リソースを、住民サービスや政策推進へ振り向けられる点もメリットです。
業務品質・ガバナンスの向上
各部局に分散していた事務を総務事務センターへ集約することで、担当者の経験や判断に依存していた業務が標準化され、誰が対応しても安定した品質を保てるようになります。また、専門知識を持つ職員の集中配置により、処理精度の向上も期待できます。
さらに、事務処理プロセスの統一は、ガバナンス強化にも有効です。監査対応や証跡管理が容易になり、ブラックボックス化や不正のリスクを抑制できるほか、法令や規則の遵守状況も一元的に管理しやすくなります。
総務事務センターの業務範囲
総務事務センターを導入する際は、「どの業務を集約・標準化するか」を明確に整理することが重要です。対象となる業務範囲は、自治体の規模や抱える課題、既存システムの状況、委託方針などに応じて設計されます。これは自治体によって運営体制や課題が異なるためです。
現在は、人事・給与・福利厚生・旅費・物品調達といったバックオフィス業務が中心ですが、自治体によっては住民向け申請の受付や審査業務まで対象を広げるケースもあります。
ここでは、総務事務センターで取り扱われる代表的な業務をご紹介します。
人事・給与関連業務
人事・給与関連業務は、総務事務センターの中心的な業務の一つです。その主な内容は、職員の給与計算や各種手当の支給確認、給与関連データの管理のほか、勤怠管理や休暇申請、超過勤務申請などの受付・確認への対応などです。
また、年末調整や社会保険、住民税に関する事務手続き、人事異動や採用・退職にともなう各種手続き、職員情報の登録・更新も担当します。さらに、各部局からの問い合わせ対応や申請内容のチェックなど、日常的な人事・給与関連事務を集中的に処理します。
福利厚生関連業務
福利厚生関連業務では、職員の福利厚生制度に関する申請受付や各種手続きを行います。具体的には、職員の健康診断や各種給付制度、共済関連手続きの運営・管理を担当するほか、育児休業や介護休暇、慶弔関連などの職員支援制度に関する事務処理にも対応します。
そのほか、福利厚生サービスの利用案内や問い合わせ対応など、職員向けの窓口業務を担うことも重要な役割です。申請内容や利用状況を一元的に管理しながら、福利厚生関連業務を効率的に処理する必要があります。
旅費精算関係業務
旅費精算関係業務では、出張申請や旅費精算に関する受付・確認を行います。交通費や宿泊費、日当などの支給内容を規程に基づいてチェックするほか、出張実績や精算データの入力・管理を通じて、旅費関連情報を一元的に管理することが主な業務です。
また、申請不備の確認や添付書類のチェック、各部局からの問い合わせ対応も担当します。近年は電子申請システムやワークフローを活用し、申請から承認、精算までの一連業務の効率化を図る自治体も増えています。
物品調達関連業務
物品調達関連業務では、事務用品や消耗品など庁内で使用する物品の調達・発注を担います。購入申請の受付や内容確認、発注手続きを集中的に処理するほか、納品確認や在庫管理、支払処理などの関連事務も対象です。
調達ルールや契約基準に基づいて購買手続きを管理し、公正かつ効率的な運用を支えることも重要な業務です。さらに、各部局からの問い合わせ対応や調達状況の把握を通じて、物品調達業務を一元的に運営します。
住民向け申請・審査関連業務
自治体によっては、「総務事務センター」ではなく「行政事務センター」や「総合行政事務センター」として設置され、住民向け申請・審査関連業務まで対応するケースがあります。
具体的には、以下のような業務が対象です。
各種申請書の受付・開封・仕分
添付書類の確認
申請内容の審査補助
システム入力
不備内容の確認、申請者への問い合わせ対応
審査結果に基づく通知書の作成・発送
このように、住民向け業務のバックヤード機能も担い、申請から通知までの一連の事務処理を集中的に実施する運用も見られます。
総務事務センターの運営形態
総務事務センターの運営形態は、自治体職員が運営する「直営型」と、民間事業者へ包括的に委託する「完全委託型」、両者を組み合わせた「ハイブリッド型」に分けられます。業務範囲や自治体の規模、運営方針に応じて、導入方法を検討するとよいでしょう。
ここでは、それぞれの特徴や導入時のポイントをご紹介します。
直営型
直営型は、自治体職員が中心となって総務事務センターの運営や業務処理を行う形態です。人事・給与・旅費などのバックオフィス業務を庁内で集約し、一元的に管理します。
自治体独自の制度や規程への柔軟な対応が容易である点に加え、各部局との連携や調整を庁内で進めやすく、運用変更にも迅速に対応できる点が特徴です。
一方で、業務量の増加への対応や専門人材の確保、継続的な運営負担が課題となる場合があります。
完全委託型
完全委託型は、総務事務センターの運営業務を民間事業者へ包括的に委託する形態です。申請受付やデータ入力、問い合わせ対応などの定型業務を事業者側で処理し、業務量に応じた柔軟な人員配置や専門ノウハウの活用によって効率的な運営を図ります。
自治体は制度設計や業務管理、委託先との連携・監督を中心的に担うケースが一般的です。委託先には、自治体特有の制度理解や高いセキュリティ水準、安定した運営体制が求められます。
TOPPANのBPOサービスは、アナログ業務からデジタル対応まで幅広く支援しており、検討状況に合わせて、現状分析や業務改革(BPR)の段階から伴走します。
・関連サービス:自治体向けBPOサービス Hybrid-BPO®|TOPPAN BPO
ハイブリッド(一部委託)型
ハイブリッド(一部委託)型は、自治体職員による運営と民間事業者への業務委託を組み合わせて運営する形態です。一般的には、制度判断や最終確認は自治体側が担い、定型的な事務処理や受付業務などを外部へ委託します。
自治体特有のルールや運用を維持しながら、業務負荷の分散や効率化を図れる点が特徴です。また、繁忙期の対応や専門人材の活用など、状況に応じて柔軟に運営体制を調整できるという利点もあります。
ただし、安定した運営を実現するためには、委託範囲や責任分担を明確にし、円滑な連携体制を構築することが重要です。
自治体による総務事務センター・行政事務センターの設置運営の成功事例
総務事務センターを導入する自治体では、業務集約やDX推進を通じて、業務効率化や職員負担の軽減を実現する取り組みが広がっています。導入効果を高めるためには、各自治体に合わせた業務設計や運営体制の構築が重要です。
ここでは、TOPPANによる自治体支援事例をもとに、総務事務センターや行政事務センターの設置運営に関する具体的な取り組みをご紹介します。
【世田谷区】柔軟な運営体制が可能な総務事務センターの設立・運営
世田谷区では、住民ニーズの多様化や業務量の増加を背景に、持続可能な行政運営に向けた業務効率化が課題となっていました。そこで、「新たな行政経営への移行実現プラン」に基づき、約80の人事・給与・福利系業務を対象とした総務事務センターの設立を進めています。
TOPPANは、BPO・BPR・DXを組み合わせながら、センターの開設準備から管理・運営までを支援しています。業務内容を徹底的にドキュメント化することで、属人化の解消や継続的な業務改善を推進している点が特徴です。
また、年末調整業務のオフサイト化を皮切りに進めているのが、庁舎外拠点を活用した柔軟な運営体制の整備です。さらに、制度変更や業務改善にも対応しやすいアジャイル型設計を採用しており、継続的な業務効率化につなげています。
・参考:自治体の業務効率化を目的とした総務事務センターの設立・運営|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
【熊本市】業務効率化に寄与する複数業務の集約と行政DX
熊本市では、定型業務の分散運用に加え、時間外勤務の増加も課題となっており、業務集約と行政DXの推進が求められていました。
その解決のため、2024年10月に取り組んだのが、市役所内での「総合行政事務センター」の開設による、市税口座登録や医療費助成、就学援助などの定型業務の集約です。TOPPANは、BPRによる業務調査や運用設計、マニュアル整備などを通じて、センターの立ち上げから運営までを支援しました。
また、OCRや進捗管理システムなどのICTツールを活用し、業務の標準化と可視化を推進しています。受付や審査、システム入力などの業務を一元化した結果、時間外勤務を約32%削減し、職員配置の最適化にもつなげています。
・参考:熊本市総合行政事務センター 行政DXと業務集約による効率化の実現|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
・関連コラム:年間100万枚の書類を電子化し、職員の時間外勤務を削減~熊本市×TOPPANの業務改革|コラム
【札幌市】ノンコア業務の集中対応により住民サービスの向上へ
札幌市では、職員不足や行政需要の増加を背景に、ノンコア業務の効率化と人的リソースの最適化が課題となっていました。そこで、職員でなくても対応可能な定型業務を集約する「行政事務センター」を設置し、業務効率化の推進を行いました。
TOPPANは、BPOによる業務運用に加え、BPRによる課題の可視化や継続的な改善を支援しています。また、就学援助申請や医療費助成更新などの業務について、受付から審査、問い合わせ対応、発送業務までを一括して運営しています。
さらに、デジタルを活用した自動化や独自システムによる審査を導入し、省力化と正確性の向上を実現しました。ノンコア業務の負担軽減によって、職員が市民対応などのコア業務へ集中しやすい体制づくりにつなげています。
総務事務センター立ち上げの進め方
総務事務センターの立ち上げは、単なる事務集約ではなく、現状の業務を再確認したうえで標準化・効率化を進め、適切な形で委託につなげることが重要です。ここでは、立ち上げを円滑に進めるための基本的なステップをご紹介します。
1. 業務棚卸し・対象業務の選定
総務事務センターの導入に当たっては、まず各部局で実施している業務内容や処理フローを整理・可視化します。そのうえで、業務量や処理件数、作業工数を把握し、集約・標準化に適した業務を選定します。
また、部局ごとに異なる運用ルールや紙業務を洗い出し、重複作業や非効率な工程を整理することも重要です。
2. 庁内の合意形成
総務事務センターの導入は各部局の業務運用に影響するため、早い段階から丁寧な説明を行うことが重要です。業務集約の目的や期待される効果を共有し、現場職員の理解を深める必要があります。
各部署が抱える課題や懸念を把握し、その意見を反映しながら業務フローやルールを整備することで、導入後の混乱を防ぎやすくなります。継続的なコミュニケーションを通じて庁内全体で取り組む体制を構築することが、成功につなげるためのポイントです。
3. DX設計
総務事務センターを効果的に運営するためには、単なる業務集約ではなく、DXを前提とした業務設計を行うことが重要です。電子申請やワークフローシステムを活用し、紙書類や手作業中心の運用を見直します。また、OCRや進捗管理システムの導入によって業務の可視化や処理効率の向上を図れます。
さらに、データ連携や標準化を進めることで、二重入力や確認作業の削減も可能です。制度変更や業務量の変化にも柔軟に対応できるよう、継続的な改善を前提とした運営設計が求められます。
4. 委託範囲・責任分担の明確化
業務棚卸しの段階から、どの業務をセンターへ委託するか検討を進めることが重要です。原課とセンターの責任や役割を明確に切り分け、委託範囲を整理します。
基本的には、データ入力や書類の形式チェックなどの定型作業をセンターが担当し、事実確認や最終承認、例外的な個別事情の判断は原課の責任領域とします。
5. パートナー選定
総務事務センターの運営方法として、直営か民間委託(BPO)かを検討します。委託を選択する場合は、自治体業務への理解が深く、安定した運営体制を持つパートナーを慎重に選定することが重要です。
総務事務センターの立ち上げを成功させるポイント
総務事務センターの導入効果を高めるためには、事前準備から運営設計までを段階的に進めることが重要です。ここでは、総務事務センターの立ち上げを成功に導くための主なポイントを解説します。
標準化・BPRを徹底する
各部局で異なるルールや様式をそのまま集約すると、センター側の処理が追いつかず、円滑な運営が難しくなる可能性があります。
そのため、センターへの業務集約の前に、申請様式や承認ルート、締切などを統一するとともに、不要なタスクを洗い出して廃止するなど、BPRによる業務の精査を行うことが重要です。
対象業務を絞ったスモールスタートでリスクを抑える
最初から全庁・全業務を対象に総務事務センターを稼働させると、想定外のトラブルが発生した際に庁内全体の混乱を招く可能性があります。そのため、まずは旅費精算など対象業務を限定したパイロット運用や、特定部局のみでの先行導入から始める方法が有効です。
先行運用を通じて明らかになった課題や不備を改善しながら、段階的に対象範囲を拡大していくことで、導入リスクを抑えやすくなります。
適切なパートナー選定
総務事務センターの導入・運営を円滑に進めるためには、自治体業務への理解が深いパートナーの選定が欠かせません。自治体特有の制度や規程、個人情報管理に対応できる運用実績とセキュリティ体制は重要な判断基準です。
また、BPOだけでなくBPRやDXも組み合わせることで、単なる業務委託にとどまらない業務変革を進めやすくなります。さらに、継続的な伴走支援に対応し、現場職員とのコミュニケーションや庁内調整を丁寧に行えるパートナーを選ぶことが、導入の定着につながります。
総務事務センターを構築し、自治体の業務変革を始めよう
総務事務センターは、バックオフィス業務の集約・標準化を通じて、自治体全体の業務効率化を支える重要な取り組みです。人事・給与・旅費などの定型業務を見直すことで、職員の負担軽減と住民サービス向上の両立を図りやすくなります。
導入効果を高めるためには、BPRによる業務整理を行い、DXを前提とした運営設計を進めることが重要です。また、継続的な業務改善と柔軟な運営体制の構築の実現には、BPOやデジタルツールの適切な活用が有効です。
さらに、自治体特有の制度や現場運用を理解したパートナーと連携しながら、持続可能な行政運営に向けた業務変革を進めることが求められます。
TOPPANでは、自治体業務の現状調査やBPR、業務設計、マニュアル整備、BPO運営、ICTツール活用まで、総務事務センターの設立・運営を包括的に支援しています。総務事務センターの設立・運営や自治体BPOの進め方にお悩みの方は、TOPPANの関連資料をご覧ください。
参考文献
- 総務事務センター (https://www.soumu.go.jp/iken/pdf/051108_3_41.pdf)
- 地方公共団体における行政改革の取組 (https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/innovation/150914/shiryou8-2.pdf)
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