2026.03.29
自治体の業務効率化のポイントは?持続可能な行政運営への取り組み事例も紹介
自治体では、人手不足や行政ニーズの多様化を背景に、業務効率化の重要性が高まっています。本記事では、自治体が業務効率化を推進する具体策や定着のポイント、先行自治体の事例を紹介します。
自治体では、生産年齢人口の減少による深刻な人手不足や、複雑化・多様化する行政ニーズなどを背景に、業務効率化の必要性が高まっています。
しかし、単にデジタルツールを導入するだけでは、かえって現場の混乱を招くリスクがあります。本来の目的である「住民サービスの向上」を実現するためには、業務プロセスの可視化と再設計(BPR)をセットで実施することが重要です。
本記事では、自治体が業務効率化を推進するための具体的な手段や、取り組みを定着させるためのポイント、さらには先行自治体の具体的な成功事例を詳しく解説します。
この記事でわかること
・自治体の業務効率化が必要な理由
・自治体が業務を効率化する手段
・先行自治体による業務効率化の成功事例
自治体の抜本的な業務効率化が求められている背景
自治体を取り巻く環境は、人口構造の変化や行政ニーズの多様化などによって厳しさを増しています。従来の業務体制を維持したままでは、持続可能な行政サービスの提供が困難になりかねません。
ここでは、自治体における業務効率化が急務となっている主な背景を整理します。
生産年齢人口の減少にともなう深刻な人手不足
団塊世代の大量退職期を迎え、自治体では職員の高齢化が進む一方、採用難により必要な人員を確保することが難しくなっています。
その結果、限られた職員で従来以上の業務量を担わざるを得ない状況が生まれ、職員一人あたりの負担が増加しているのが実情です。これにより、住民サービス低下のリスクや、自治体運営の維持に対する切迫感が高まっています。
複雑化・多様化する行政ニーズ
社会構造の変化にともない、住民が自治体に求める行政サービスは複雑化・多様化しています。
共働き世帯の増加による時間外の窓口対応の必要性や、オンラインでの手続き完結を求める声は、その一例です。また、多文化共生への対応も加わり、行政サービスの提供方法は多様化しています。
さらに、新しい制度や給付金対応など、特定の課だけでなく庁内全体で現場の業務量が膨張し、職員の負担が増大しています。
国主導のシステム標準化に伴う業務変革の必要性
地方公共団体の基幹業務システムは、国主導のもとで統一・標準化が進められており、原則として2025年度までの移行が求められています。これにより、自治体ではシステムの更新だけでなく、業務そのものの見直しや変革が必要です。
また、住民側からも行政サービスの利便性向上への期待が高まっており、デジタル化の推進は避けられません。
一方で、現場では依然として紙ベースの運用が残っているケースも多く、単にデジタルツールを導入するだけでは、既存の煩雑な運用フローを十分に改善できないという課題があります。その結果、現場では効率化と従来業務の狭間でジレンマが生じています。
自治体の業務効率化を実現するアプローチ
業務効率化を進めるためには、単一のツール導入に終始するのではなく、庁内横断的なプロセス改革が不可欠です。ここでは、持続可能な行政運営の実現につながる、具体的な手段・ソリューションについて解説します。
業務プロセスの可視化と再設計(BPR)
ツール導入の前に必要となるのが、業務プロセスの可視化と再設計(BPR)です。既存の業務フローを詳細に調査・可視化し、慣習的に行われているムダや非効率な作業を徹底的に洗い出す必要があります。
そのうえで、デジタル技術の導入とセットで最適な業務プロセスに再設計することで、根本的な効率化につながります。この業務改革は、次項でご紹介するいずれの効率化手段を進めるうえでも、基盤となる重要な取り組みです。
・自治体BPRとは?成功事例から学ぶ業務効率化とDX推進のポイント
AI-OCRやRPAの導入による手入力の削減
AI-OCR(AIを搭載した光学文字認識技術)やRPA(PC上の定型業務を自動化するソフトウェアロボット技術)を導入することで、定型的なデータ入力や紙の書類からの転記作業を自動化し、職員の手作業によるミスを大幅に削減できます。
これらのツールを活用し、反復性の高いノンコア業務を効率化することで、自治体職員がこれまで費やしていた時間を、住民への相談支援や政策立案といった付加価値の高いコア業務へ注力できるようになるでしょう。
デジタル技術によって、生産性の向上と住民サービスの充実の両立が期待できます。
・LLMをはじめとするAI技術で、OCRによる文字認識率を向上させ業務を効率化|AI-OCRソリューション
・RPA導入を徹底サポート~導入後の研修実施で導入効果最大化|RPAソリューション
窓口業務のデジタル化(フロントヤード改革)
オンライン申請や窓口でのタブレット申請システムを導入することは、「行かない」「書かない」窓口の実現に直結します。
これにより、住民の利便性を向上させると同時に、申請内容のデータ化が進むことで、職員側のフロントヤード業務と、その後の審査・処理を行うバックヤード業務の双方を効率化することが可能です。
・自治体の窓口DXとは?現場課題を解決するデジタル化と改善のポイント
・自治体向け オンライン申請拡充と窓口デジタル化の支援サービス
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の活用
ノンコア業務、とくに定型的なバックオフィス業務を外部に委託し、「行政事務センター」などへ集約するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を活用することも、自治体の業務効率化に有効な手段です。
外部の専門的なノウハウを取り入れながら庁内リソースを最適化する目的から、デジタルとアナログを組み合わせて段階的に効率化を進める「Hybrid-BPO®」などの手法も活用されています。
職員が付加価値の高いコア業務に専念できる環境を整えることで、自治体全体の生産性向上につながる点が大きなメリットです。
先行自治体による業務効率化の成功事例
全国の自治体では、すでに業務効率化に向けたさまざまな取り組みが進められています。ここでは、DXの導入、BPRやBPOによって成果を上げている先行自治体の成功事例をご紹介します。
熊本市|総合行政事務センターの設立によるバックヤード業務の集約とDX化
熊本市では、職員の負担増や、それにともなう業務改善の停滞が大きな課題となっており、事務業務の集約と効率化が喫緊の課題でした。
そこで、全庁的な業務調査を実施して委託化に適したノンコア業務を抽出し、費用対効果が見込める業務を対象に、市役所庁舎内へ「総合行政事務センター」を開設してBPOを実施しました。
この施策により、時間外勤務が約32%削減され、さらに定期異動では15名程度の配置見直しが可能になるなど、大幅な業務効率化とリソースの最適化を達成しています。
・参考:熊本市総合行政事務センター 行政DXと業務集約による効率化の実現
・参考:年間100万枚の書類を電子化し、職員の時間外勤務を削減~熊本市×TOPPANの業務改革
東京都世田谷区|保育園入園業務のBPRと通知物電子化による利便性向上
東京都世田谷区では、職員数の減少と業務量の増加が深刻な課題となっていました。
この状況を改善するため、とくにルールが複雑で属人化しやすい保育園入園の選考指数付け計算業務などを対象に、BPRを実施しました。具体的には、業務マニュアルの作成による属人化の防止、計算処理の自動化、AI-OCRで読み取りやすい帳票への見直し、さらに通知物電子化サービスの導入などを包括的に進めたのです。
これにより、職員の負荷軽減と、申請から通知までのプロセスにおける住民の利便性向上を実現しています。
・参考:行政DXで保育園入園業務を抜本改革、通知物電子化で住民と自治体双方の利便性を向上
福岡市|現行業務の見える化による効果的な業務改善
全国的に人口減少や少子高齢化が進む中、福岡市でも職員の業務負担の増加が懸念されており、業務効率化が求められていました。
そこで、市民サービスの最前線である区役所(7区役所・11業務)を対象に、業務プロセスの可視化と課題の把握・整理を実施しました。
現行の業務と見直し後の業務を明確にすることで、よりわかりやすく効率的な行政事務処理業務の設計が可能となり、効果的な業務改善につながっています。
指宿市|低コスト・低負荷・自走可能なフロントヤード改革モデル
鹿児島県指宿市では行政DXを推進していたものの、取り組みが短期的かつ局所的にとどまっていることが課題となっていました。
そこで、導入・運用のコストが低く、自治体での自走が見込める「ぴったりサービス」と、TOPPANが開発した窓口タブレット申請システムを活用し、住民の利便性向上と行政の業務効率化を両立するフロントヤード改革を推進しました。
さらに、各課向けの勉強会を開催し、職員が主体的にDXを進められる土壌づくりにも取り組んでいます。
その結果、オンライン申請手続きの数は約2倍に増加し、DX推進の先進事例を表彰する「日本DX大賞2025 庁内DX部門」で優秀賞を受賞するなど、大きな成果を上げています。
・参考:行政DX推進に向けたぴったりサービス活用による「行かない」「書かない」窓口の同時実現
・参考:【インタビュー】「これで皆はハッピーになるか?」指宿市とTOPPANが実践した住民と職員に寄り添うフロントヤード改革
東京都世田谷区|職員の事務作業を最小化する総務事務センターの設立
東京都世田谷区は、持続可能な行政運営の実現に向けて「新たな行政経営への移行実現プラン」を策定し、業務効率化の取り組みを進めてきました。
その施策の一環として、人事・給与・福利系の約80の業務を対象とした「総務事務センター」を開設し、全庁的な事務業務のアウトソーシング(BPO)を実施しました。
TOPPANの強みである「BPO・BPR・DX」の3機能を連動させることで、職員の負荷軽減と自治体業務の効率化を推進しています。
自治体の業務効率化を軌道に乗せるポイント
効率化の手段を導入しても、運用が定着しなければ効果は発揮されません。ここでは、自治体の業務効率化の取り組みを一過性の改善で終わらせず、軌道に乗せるための重要なポイントを解説します。
ツール導入の前にBPRで業務のムダを削減する
「システムを導入したものの、従来の煩雑な業務フローが残ってしまう」といった失敗を防ぐためには、まずは業務プロセスの根本的な見直し(行政BPR)を徹底し、業務フローを整理することが重要です。
また、DXを自己目的化させるのではなく、住民の利便性向上や後続業務の改善にどうつながるかをふまえて設計する必要があります。
現場の不安に寄り添うヒアリングと合意形成
新しい仕組みに対する現場職員の不安や抵抗感を払拭するためには、丁寧にヒアリングを行い、職員一人ひとりが抱える具体的な課題や懸念を把握することが重要です。
そのうえで、「なぜ業務改革が必要なのか」という目的を共有し、マインド醸成のための勉強会を実施するなど、現場に寄り添った伴走型のサポート体制を構築することで、取り組みの定着を促進できます。
小さな成功(スモールウィン)の積み重ねで組織の気運を高める
庁内横断的な大規模改革を一度に進めようとすると、準備に時間がかかり、現場のモチベーション低下や抵抗を招きかねません。そのため、まずは費用対効果や取り組みの効果が見えやすい部門・業務からスモールスタートで着手することが重要です。
この初期段階での成功体験(スモールウィン)を庁内に積極的に共有することで、効率化に対する組織全体の気運を高め、取り組みを本格的な展開へとつなげていくことができます。
外部人材の知見を活用して職員のリテラシーを向上
民間企業の知見や外部専門家によるサポートを活用することで、最新のデジタル技術や業務改革に関するノウハウを効果的に取り入れることが可能になります。
あわせて、自治体側でも継続的に運用できる「自走化」を見据え、研修や実践を通じて職員のデジタルリテラシーを高めていくことが重要です。
高頻度かつ専門性の低い業務から始める
業務効率化を進める際は、まずは処理件数が多く、属人化しにくい定型業務から着手するのが効果的です。こうしたノンコア業務をBPOやRPAの対象として抽出することで、職員の負担を効率的に軽減できます。
費用対効果が見込める業務から段階的に集約・効率化を進め、成果を確認しながら徐々に適用範囲を広げていくアプローチが、組織全体の改革の気運を維持・向上させるために重要です。
自治体の業務効率化を加速させ持続可能な行政運営の実現へ
自治体の人手不足や多様化するニーズに対応し、持続可能な行政運営を実現するためには、業務効率化の推進が欠かせません。その際、単なるシステム導入で終わらせず、BPRによる業務の可視化・プロセスの再設計をセットで行うことが重要です。
そのうえで、ノンコア業務のアウトソーシング(BPO)や窓口DXを有効に活用することで、職員の限られた時間を「住民サービスの向上」に直結するコア業務へと振り向けることができます。
先行自治体の事例も参考にしながら、現場の課題に寄り添った伴走支援やマインド醸成を進め、持続可能な行政運営の実現を目指すことが求められます。
TOPPANでは、現状業務の見直しから計画策定、DX・BPOの実行までをトータルで支援可能です。自治体の業務効率化に課題を感じている場合は、ぜひご相談ください。
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