2025.04.22
地域活性化の成功事例10選
|効果的な取り組みのポイントとは
地域課題の解決に役立つ地域活性化の成功事例10選をご紹介。観光振興や地域産業など分野別に、取り組みの工夫や効果も詳しく解説します。

少子高齢化や都市部への人口流出が進む中、多くの地域が活性化に向けた取り組みを行っています。地域の魅力を引き出し、新たな価値を生み出すことで、観光振興や産業発展などの地域経済の活性化、住民生活の質の向上につなげることが可能です。
とは言え、どのような施策が効果的なのか、また、何から手を付けるべきなのか、悩む自治体担当者もいるのではないでしょうか。各自治体の課題解決に役立つヒントを見つけるため、日本各地で成功を収めた地域活性化の成功事例10選をご紹介し、その具体的な内容や取り組みのポイントを詳しく解説します。
この記事で分かること
・地域活性化の実践事例が分かる
・地域活性化を成功させるためのヒントが見つかる
日本の地域活性化成功事例
近年日本各地、特に地方では、地域活性化を目的としたさまざまな取り組みが進められています。中には、地域の特性を活かした施策が成功し、地方経済の発展や地域コミュニティの再生に大きく貢献している事例も数多くあります。特に注目されているのが、地域資源とデジタル技術を活用した解決策です。
ここでは、TOPPANがサポートした地域活性化の成功事例を、観光振興、地域産業振興、公共業務、医療・ヘルスケアの4つの分野に分けてご紹介します。
観光振興による地域活性化事例3選
観光振興は、地域活性化の重要な手段の1つとして、多くの自治体や企業が力を入れている分野です。伝統文化や自然資源を活かした観光拠点やサービスの開発、インバウンド需要を見据えたマーケティング戦略、地域住民による魅力の再発見と情報発信など、その取り組みは多岐にわたります。
観光を通じて地域活性化を実現した3つの事例について、それぞれの施策や成果のポイントを見ていきましょう。
【長崎県佐世保市】ARを活用した体験型クルーズ

長崎県佐世保市で実施した、西海国立公園九十九島の美しい自然と融合できるAR体験型クルーズの実証運航事業の事例です。近年観光客のニーズが多様化する中、滞在時間の延長や周遊の促進のために、従来のクルージングとは一線を画す高付加価値の体験を提供する必要がありました。
その課題への対応として、国土交通省観光庁の「既存観光拠点再生補助金」を活用して開発したのが、遊覧船の上で九十九島の魅力を体験できるARコンテンツです。インバウンド需要も見据え、日本語・英語・中国語・韓国語の多言語対応機能を実装しています。
このARコンテンツを活用したモニターツアーでは、参加者の65%以上が満足と回答する高い評価を得られました。
・参考:AR体験型クルーズで地域観光促進|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
【和歌山県伊都郡高野町】高野山の文化資源の高付加価値化

VRコンテンツ『高野山 壇上伽藍ー地上の曼荼羅ー』
製作協力:高野山真言宗 総本山金剛峯寺
製作著作:TOPPAN株式会社 © TOPPAN INC.
和歌山県の高野山で実施したのは、デジタル技術による豊富な文化資源の高付加価値化への取り組みです。
高野山は国内外を問わず人気の観光地ですが、日帰りの観光客が大半で、観光消費の増加には滞在時間の延長や周遊促進が課題でした。そこで、国土交通省観光庁の「既存観光拠点再生補助金」を活用し、地元団体や企業と連携しながら、高野山全体の文化的価値をより深く理解してもらうためのストーリー造成に取り組みました。
具体的な内容としては、「文化観光拠点計画」の策定および周遊拠点となる「高野山デジタルミュージアム」の開発や運営です。VRシアターを活用した没入型の文化体験の提供や、デジタルコンテンツを活用した周遊促進サービスの展開により、滞在時間を延ばすだけでなく、高野山の魅力をより多くの人々に伝えることによる地域全体の価値向上を目指しました。
・参考:文化資源の魅力を伝える周遊拠点・サービス開発|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
【青森県つがる市】地元高校生を主体とした地域資源の掘り起こし

青森県つがる市で行われたのは、地元高校生が主体となり、地域の魅力の発掘からPR施策まで一貫して実施するユニークな取り組みです。人口減少が進むつがる市では、関係人口の創出が課題であり、市の認知度を高め、応援してくれるサポーターを増やすことを目的に、高校生とともに地域の魅力を伝える辞典風広告を制作しました。
首都圏在住の女子大学生による社会課題解決チーム「キャンパスラボ」と共同で行った取り組みは、地域のPRにつながる企画コンセプトの立案、クリエイティブ制作、フィールドワークやワークショップの開催などです。そのほか、PRイベントの実施、WEBコンテンツの制作・SNS発信を含む多角的なプロモーション活動なども行なわれました。
制作した広告はイベントやSNS、メディアでも取り上げられ、市の認知度向上やイメージ醸成に寄与しました
・参考:高校生が取り組む「地域の魅力発信」ユニーク企画 |事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
・Z世代向けマーケティングから商品開発・PRを一気通貫で支援「キャンパスラボ」
地域産業による地域活性化事例3選
地域産業の活性化は、地域経済の発展や雇用創出につながる重要な取り組みです。伝統産業の再興、地元資源を活用した新規事業の創出、企業誘致やスタートアップ支援などの施策により、地域内での経済循環が促進され、持続可能な発展が可能となります。
ここでは、地域産業を活かした成功事例を3つご紹介し、各取り組みとそれによる成果を詳しく解説します。
【愛知県春日井市】食用サボテンを使用した新グルメ開発

愛知県春日井市では、地域資源である食用サボテンを活用した新グルメ開発を通じて、地域ブランドの確立と産業活性化に取り組んでいます。全国で唯一「実生サボテン栽培」の歴史を持つ国内有数のサボテン生産地という特長を活かし、「サボテンを食べる」文化をさらに根付かせること、地域ブランドを確立することを目指し、サボテンを核とした事業展開を推進しました。
具体的な取り組みとしては、新グルメの開発、マーケティング調査、商品コンセプトの策定、新グルメのプロモーションなどです。こうした取り組みを通じて、市民の愛着を醸成するとともに、春日井市ならではの食文化を発信することで、観光客誘致や地域経済の活性化にも寄与しています。
・参考:地域資源を活用した商品開発・ブランド確立支援|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
【兵庫県丹波市】市民参画型のシティプロモーション

兵庫県丹波市の取り組みは、市民自らが地域の魅力を発信し、シビックプライド(都市への誇り)を高めることを目的としたシティプロモーションです。豊かな自然や歴史文化、特産品である「丹波大納言小豆」などの地域資源を最大限に活用し、市民の参加を促しながら、交流人口・関係人口の増加、さらには地域経済の活性化を目指しました。
具体的な内容としては、市民参加型ワークショップを通じたキャンペーンロゴの制作やWEBサイトの構築、SNSやフリーペーパーを活用したプロモーションなどです。また、地域の特産品をテーマにした講座の開催を通して、特産品の魅力を知ってもらうとともに、丹波市の魅力を伝えました。
こうした取り組みを通じて、市民がまちの魅力を改めて認知し、シビックプライドの醸成に寄与しました。
・参考:市民参画型のシティプロモーション|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
【埼玉県比企郡川島町】特産品の磨き上げとPRによるブランド力の向上

埼玉県の川島町では、特産品の魅力向上と積極的なPR活動を通じて、地域ブランド「KJブランド」の確立を目指しました。
豊かな自然環境と農産物、健康的な食文化などの魅力を有する一方で、町の認知度が低く、地域資源の価値が十分に伝わっていないという課題に対し、地方創生の一環として取り組んだのが、地域ブランドの強化です。
具体的には、専門家による商品パッケージの改良や販売促進ツールの検討により、特産品の磨き上げを行いました。また、農産物や郷土料理の魅力をストーリー化し、WEBメディアでの発信、マルシェや物産展などのPRイベントの開催を通して地域内外への認知度向上を図りました。
これらにより川島町の特産品がより多くの人に認知され、ブランド力の向上と地域の活性化に寄与しました。
・参考:地域産品を磨き上げ魅力を伝える|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
公共サービスによる地域活性化事例2選
公共業務の効率化やDX推進などは、住民の利便性向上や行政サービスの質の向上に大きく貢献し、地域活性化において重要な役割を果たします。特に近年注目されているのは、デジタル技術を活用した自治体DXの取り組みや、官民連携による新たなサービスの導入です。
ここでは、公共サービスを活用した地域活性化の成功事例を2つご紹介し、それぞれの取り組みの成果とポイントを詳しく解説します。
【静岡県沼津市】スマートシティの実現に寄与する自動運転車両

静岡県沼津市では、自動運転技術の実証実験を通じて、スマートシティの実現を目指しています。2020年に発足した国土交通省による「Project PLATEAU」では、3D都市モデルを活用した社会課題への対応として、さまざまな実証実験が行われています。本事例はその一環として実施されたものです。
この実証実験では、産業技術総合研究所が保有するVPS(Visual Positioning System)を活用し、現実の風景から高精度に位置情報を特定する技術を用いて、自動運転車両の自己位置推定精度が検証されました。
沼津市内で走行テストを実施し、実用可能な自己位置推定が確認されたことで、自動運転車両の実用化に一歩近づいたといえます。将来的には市民の利便性向上や環境負荷軽減に寄与することが期待されています。
・参考:スマートシティの実現に向けた自動運転車両の自己位置推定システム開発|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
【茨城県つくば市】住民にパーソナライズされた自治体ポータルアプリ

茨城県つくば市における取り組みは、オリジナルの自治体アプリ「つくスマ」の開発です。
多国籍化が進み、多言語対応も求められる中、市のホームページだけでは適切な情報提供が難しいという課題に直面しました。そのため、自治体からの情報を住民一人ひとりの属性に応じてパーソナライズし、最適なタイミングで届ける仕組みを構築しました。
多言語対応を実装することで、外国人住民に対しても必要な情報をスムーズに提供できるようになっています。
また、自治体職員や住民の意見をもとに、新機能を追加実装することで、単なる情報発信ツールから双方向のコミュニケーションが可能なサービスへと進化しています。
住民の利便性向上だけでなく、市全体のDX推進にも寄与する取り組みの事例といえるでしょう。
・参考:自治体向けオリジナルポータルアプリで情報を適切に届ける|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
医療・ヘルスケアにおける事例2選
高齢化が進む多くの地域では、医療・ヘルスケア分野での取り組みが不可欠です。
近年では、高齢者向けの健康管理アプリや地域包括ケアシステムの構築など、テクノロジーを活用した施策のほか、住民参加型の健康促進イベントや、官民連携による健康づくりの仕組みも進んでいます。
医療・ヘルスケアを活用した地域活性化の成功事例を通して、自治体や地域コミュニティの取り組みに役立つポイントを解説します。
【大分県】楽しく健康づくりを推奨する健康アプリ

大分県では、県民の健康寿命日本一を目指し、「みんなで進める健康づくり事業」の一環として、楽しみながら健康習慣を改善できる環境づくりに取り組んでいます。その施策の1つとして導入されたのが、健康アプリ「おおいた歩得(あるとっく)」です。
このアプリは、おおいた健康ポイント推進事業の一環として開発され、日常の健康活動や関連イベントへの参加を通じてポイントが貯まる仕組みが導入されました。貯めたポイントは県内の協力店で特典やサービスと交換できるため、健康維持へのモチベーション向上につながります。
デジタル技術を活用したこの取り組みは、県民の自主的な健康増進を促し、継続的な健康づくりの習慣化に貢献している事例です。
・参考:健康寿命延伸に向けた取り組み 健康ポイントアプリによる健康増進|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
【北海道札幌市】地域スーパーを核とした地域包括ケアシステムの構築

高齢化が進む札幌市厚別区もみじ台地区では、高齢者の運動不足や買い物難民化といった課題が深刻化しています。
こうした状況を受け、地域の中核的なスーパーの店舗内に、健康づくりを総合的に支援する「健康ステーション」を設置しました。これは、ヘルスケア関連の講座・教室の開催、健康管理サービスの提供、アクティブシニアによる生活支援サービスの導入など、主にシニア層を対象とした多様な支援策を展開する拠点です。
日常的に利用するスーパーの中に拠点を設けることで、買い物ついでに負担なく健康づくりに取り組める環境が整備されました。また、地域住民同士の交流を促進する場としての役割も果たし、高齢者が社会とつながる機会の創出にも貢献しています。
・参考:地域包括ケアシステム運用事例 高齢者の健康づくりを支援「健康ステーション」|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
事例から学ぶ地域活性化のポイント
地域活性化の取り組みは、観光振興、産業支援、公共サービスの改善など多岐にわたりますが、成功する地域には共通する重要なポイントがあります。例えば、地域資源の活用、住民参加の促進、デジタル技術の導入、補助金の活用などが挙げられます。
これまで紹介した事例をもとに、地域活性化を成功に導くための重要なポイントを整理し、具体的なアクションにつなげるためのヒントを探ってみましょう。
地域資源の再発見と活用
地域活性化の第一歩は、歴史や文化、自然、特産品など地域が持つ独自の資源を再発見し、それを最大限に活かして新たな価値を創出することです。
例えば、地域ならではの体験プログラムやイベント企画による観光振興、特産品や伝統工芸品のブランド化による市場展開が効果的でしょう。また、SNSやECサイトを通じた、地域の魅力の発信や商品の販路拡大も重要です。
TOPPANでは、専門のアドバイザーや調査スタッフが地域資源を発掘し、魅力的なコンテンツの開発からプロモーション、効果検証まで、観光振興の取り組みをトータルでサポートします。
地域住民の参加と協力
地域活性化の成功には、自治体のみならず地域住民の積極的な参加と協力が不可欠であり、行政主導ではなく、住民が主体となってアイデアを出し合い、自発的に活動できる仕組みを構築することが重要です。
例えば、若者と高齢者が協力して地域イベントなどの運営を行う世代間交流の促進、地域コミュニティを強化するワークショップの開催、各団体の連携による地域課題の解決に向けた持続可能な活動の展開などが有効と考えられます。
また、地元企業や産業と連携し、地域経済への貢献につながる特産品の開発や販売促進に住民が関与できる仕組みを作ることも1つの手段でしょう。
デジタル技術の活用
地域活性化の取り組みに大きく貢献するのがデジタル技術の活用です。
例えば、VRやARを活用したデジタルコンテンツによる体験型サービスの提供、AIやIoTを活用した交通・防災・医療サービスの向上などが挙げられます。また、行政手続きのオンライン化やデータ活用などによる、公共サービスの利便性向上も効果的です。
TOPPANでは、自治体ポータルサービスの開発や窓口業務の電子化など、課題に応じた支援が可能です。例えば、ASP型ポータルサービス「クラシラセル®」は、自治体オリジナルアプリを簡単に構築可能であり、住民との円滑なコミュニケーションの実現に寄与します。
補助金の活用
地域活性化の推進において、資金の確保は重要な課題です。資金確保のための有効な手段の1つとして、国や自治体が提供する補助金の活用が考えられます。
例えば、令和6年度に創設された「新しい地方経済・生活環境創生交付金(旧デジタル田園都市国家構想交付金)」は、地域課題の解決に向けた取り組みなどに対して活用できます。
こうした補助金を適切に活用することで、地域に必要な事業をスムーズに推進し、持続可能な発展を目指すことができるでしょう。
成功事例をヒントに地域活性化を実現しよう
地域活性化の取り組みは全国に多くの成功事例があり、各地域が抱える課題や特性に応じて、地域資源の活用やデジタル技術の導入など、さまざまな手法が用いられています。自身の地域と類似の課題に取り組んだ成功事例を参考にすることで、最適な施策を見つけられるでしょう。
TOPPANでは、地域資源の見直しから具体的な施策提案まで、地域活性化をトータルでサポートしています。
