2025.07.24
観光客を誘致する効果的な方法は?
課題・成功事例まで解説
観光客の誘致は、地域経済の活性化や雇用創出、地域ブランドの向上など、多くのメリットをもたらします。本記事では、観光客を誘致するメリットと課題、具体的な誘致の方法、全国各地の成功事例を解説します。

観光客の誘致は、地域経済の活性化や雇用創出、地域ブランドの向上など、さまざまなメリットをもたらします。一方で、オーバーツーリズムや受け入れ体制の未整備といった課題も抱えており、対策を講じながら持続可能な観光戦略を構築することが必要です。
本記事では、観光客を誘致するメリットと課題、効果的に呼び込む方法、全国各地の成功事例をご紹介し、観光地づくりに役立つヒントをわかりやすく解説します。
この記事で分かること
・観光客を誘致するメリット
・観光客誘致の課題
・観光客誘致の好事例
観光客を誘致するメリット
観光客を呼び込むことは、宿泊・飲食・交通など幅広い分野に経済的な波及効果をもたらし、地域の活性化につながります。特にインバウンド(訪日外国人、訪日旅行)需要の回復は、地域の重要な成長戦略の一つです。
ここでは、観光客の誘致によって期待される具体的なメリットについて、経済的・社会的な観点から解説します。
地域経済の活性化
観光客が増加すると、宿泊・飲食・土産品の購入といった地域内での消費が増え、地域に直接的な経済効果をもたらします。これにより、ホテルや飲食店、交通、ガイド業など観光関連事業の売上が向上し、地域の企業や事業者の経営も安定します。また、地元の農産物や工芸品など地域資源を活用した商品の需要が高まり、地場産業の振興にもつなげることが可能です。
さらに、体験型ツアーや多言語対応店舗など新たなビジネスやサービスの創出を通じて、地域への投資や雇用も生まれるでしょう。こうした経済活動が循環することで、自治体の税収増や公共サービスの充実といった波及効果が期待できます。
雇用の創出
観光需要が増加すると、宿泊業や飲食業、交通、小売、観光案内など幅広い業種で人手が必要です。これにより、地域内における多様な雇用機会が生まれます。地元住民が、観光ガイドや文化体験の講師といった地域資源を活かした職業に就くことで、地域の知見や伝統、技術の継承にもつながります。
また、外国人観光客の増加に伴い、接客や通訳・翻訳など、語学力や異文化対応スキルを活かした専門的な仕事への需要も高まるでしょう。さらに、観光を起点とした新規事業やスタートアップの立ち上げも促進され、地域に新たな雇用と活力をもたらします。
インフラ整備の促進
観光客の受け入れに対応するためには、道路・空港・駅といったインフラの整備や改善が不可欠です。さらに、公共交通機関の利便性向上や案内表示の多言語化、街並みの美化や景観整備、防犯対策の強化、混雑緩和といった取り組みも重要です。こうした環境整備は、観光地としての魅力を高めるだけでなく、地域住民の生活の質向上にも貢献できます。
その一環として、先端技術を活用したスマートなインフラ整備の導入も進められています。例えば、TOPPANの「nomachi」は、小型センサーによって混雑や空席状況を可視化できるサービスです。観光地の駐車場などに導入することで、観光客の集中による渋滞緩和やスムーズな周遊を実現できます。
・混雑状況や空席をリアルタイムで可視化「nomachi」|TOPPAN Biz
地域ブランド力の向上
観光客が地域を訪れることで、SNSや旅行メディアを通じて地域の魅力が国内外に広く発信され、認知度や人気が高まることもメリットの一つです。伝統文化や自然、特産品といった「その地域ならではの価値」が評価されることで、観光資源のブランド化が進みます。
このような地域ブランドの確立は、農産物や工芸品、地酒など、観光以外の地域産品にも好影響を与え、販路拡大や価値向上につながります。「また訪れたい」「魅力的な地域」としての印象が定着することで、リピーターや長期滞在者の増加が期待でき、さらなる観光客誘致の好循環を生み出すことが可能です。
観光客の誘致に効果的な方法

観光客を効果的に誘致するためには、地域の魅力を的確に発信することに加え、受け入れ体制の整備が欠かせません。特に外国人観光客にとっては、言語や文化の違いがハードルとなるため、多言語対応や案内の工夫など、きめ細かな配慮が重要です。
ここでは、観光客の誘致に役立つ具体的な方法をご紹介します。
受け入れ体制の整備
観光客の円滑な受け入れには、観光案内所や宿泊施設など、観光客と接する場での多言語対応が必要不可欠です。英語をはじめとする外国語での接客マニュアルの整備や、スタッフへの語学研修を通じて、外国人観光客への対応力を高めることが求められます。
TOPPANが提供する「まちなかAR」は、現地の風景に交通情報や施設情報、観光案内、キャラクターなどを重ねて表示できるARサービスです。視覚的にわかりやすく魅力的な案内を実現できます。
・ウォーカブルなまちづくり推進「まちなかAR」|TOPPAN Biz
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また、観光客の受け入れ体制の整備には、施設予約のデジタル化や無料Wi-Fi、キャッシュレス決済の導入など、利便性の向上も重要です。さらに、ハラールやベジタリアン対応、礼拝スペースの整備など、文化や宗教への配慮も欠かせません。
このような体制づくりを進める際には、地域住民から理解を得ることや啓発活動を通じた意識づくりも求められます。
TOPPANでは、こうしたインバウンド対応を支援する多言語サービスも展開しています。
・インバウンド対応 AI翻訳サービス「VoiceBiz® Remote」|TOPPAN Biz
戦略的なマーケティング
効果的な誘致には、観光客の属性(国籍・年齢層・関心分野など)を分析し、ターゲットを明確にすることが重要です。
その上で、SNSやYouTube、旅行系インフルエンサーなどを通じて、リアルで視覚的な魅力を発信することで、海外の潜在的な旅行者に強く訴求できます。英語・中国語・韓国語など、現地語によるプロモーションも、情報の受け取りやすさを高めるために有効です。
また、海外の旅行博や観光イベントに出展し、旅行会社や現地メディアと連携することで、継続的な認知拡大が期待できます。季節や地域の特色を活かしたキャンペーンの実施も、目的意識の高い観光客の誘致に効果的です。
さらに、デジタル広告やアクセス解析を活用し、施策の効果を定量的に把握しながら改善を重ねることで、費用対効果の高い集客を実現できるでしょう。
TOPPANでは、観光客の目的や消費傾向の調査から観光振興計画の策定に至るまで、一貫した支援を数多く手がけてきた実績があります。
・観光振興計画の目標設定および観光政策の企画・立案に資するデータ取得「宇治市観光動向調査事業」|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
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また、訪日観光客が増加傾向にあるイギリス市場での現地調査やイベント開催、情報発信などを含む長期的なプロモーション支援も行っています。
・地域の魅力をPR イギリスでの観光PR・誘客施策をトータル支援「イギリス観光レップ事業」|TOPPAN Biz
高付加価値の体験の提供
観光客のニーズが多様化する中で、特別な体験の提供は地域の魅力を高め、他の観光地との差別化にもつながる重要な要素です。特に観光客に強い印象を残せるのが、地域独自の文化や自然、暮らしに触れられる「没入型」の体験です。
例えば、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)を活用したデジタルガイドや歴史体験は、理解と臨場感を高める効果があります。
また、季節ごとの祭りや地域行事への参加、自然資源を活かした体験ツアーなどは、長期滞在や高額消費を促進する要素となるでしょう。少人数制のガイドツアーや伝統文化の個別体験といったプレミアムサービスでは、富裕層のニーズにも応えることが可能です。
TOPPANでは、VRコンテンツの制作やデジタルアーカイブ構築など、観光の価値を高めるためのデジタル技術を活用した支援も行っております。
観光客誘致の課題

観光客の誘致は地域経済に多くの恩恵をもたらしますが、その一方でオーバーツーリズムや受け入れ体制の未整備といった課題も浮き彫りになっています。地域住民とのトラブルや観光客の満足度低下につながる恐れもあるため、慎重かつ持続可能な観光戦略が必要です。
ここでは、観光客誘致に伴って起こり得る主な課題と対策をご紹介します。
オーバーツーリズムと地域環境の悪化
観光客が一部の人気スポットへ集中すると、交通渋滞や騒音、混雑といった日常生活への悪影響が生じます。さらに、ゴミの増加や計画性を欠いた開発による景観の破壊など、自然資源や環境への負荷も深刻化し、地域の魅力が損なわれる恐れもあります。
その他にも、観光客が地元住民の生活圏に入り込むことで、プライバシーの侵害や生活へのストレスが生じ、「観光疲れ」と呼ばれる現象が起きる可能性もゼロではありません。こうした状況が続くと、観光客の受け入れに対する地域の姿勢が消極的になり、サービス品質の低下や受け入れ拒否にもつながりかねません。
このようなオーバーツーリズムのリスクに対処するためには、観光振興と環境保全を両立させる地域マネジメント体制の強化が不可欠です。
受け入れ環境の整備の遅れ
観光客の満足度を高めるためには、案内表示やスタッフの多言語対応、無料Wi-Fiやキャッシュレス決済などの整備が必要です。これらが不十分な場合、観光客の不便さや不満から、満足度の低下を招く恐れがあります。
また、観光地としての受け入れ体制として、宗教や文化的背景への配慮も求められますが、実際には人的体制や設備の整備が遅れている地域も少なくありません。
こうした受け入れ環境を整えるためには、行政・企業・地域住民が連携し、インフラ整備と人的対応力の底上げを図ることが重要です。有効な対応手段として、IoTなど先端技術の活用が挙げられます。
TOPPANでは、多言語AI翻訳サービス「VoiceBiz® Remote」をはじめ、観光客の受け入れを支援するさまざまなソリューションを展開しています。複数名の訪日客に対するリアルタイム翻訳も可能です。
・インバウンド対応 AI翻訳サービス「VoiceBiz® Remote」|TOPPAN Biz
地域による需要の格差
日本へのインバウンド需要は年々高まっていますが、観光客の訪問先は都市部に集中しており、地域間で大きな偏りが生じていることも課題の一つです。地方にも魅力的な観光資源は多く存在しますが、それらが十分に言語化・可視化されていなければ、観光客の関心を引くことは難しく、効果的な誘致にはつながりにくいでしょう。
また、観光情報サイトやアプリなどが古く、使いにくいといった課題を抱えているケースも多くあります。こうした状況を改善するには、専門的なマーケティングの視点を取り入れ、ターゲットとなる観光客のニーズを的確に捉えた戦略的な情報発信が不可欠です。
観光客誘致の成功事例
全国各地では、地域の特性を活かした観光施策により、観光客誘致に成功する事例が増えています。観光客のニーズに応じた情報発信や、地域資源を活用した独自の体験コンテンツなど、効果的な誘致のための体制づくりや地域連携の参考となる取り組みも多いでしょう。
ここでは、TOPPANが支援させていただいた観光客誘致の成功事例を、いくつかピックアップしてご紹介します。
【長崎県佐世保市】AR技術を活用した高付加価値の体験型クルーズ

長崎県佐世保市では、観光客のニーズの多様化やインバウンド対応の必要性を受け、従来のクルーズ観光との差別化が求められていました。この課題に対応するために行ったのが、AR技術を活用し、クルーズ中に見える島々の自然や歴史を日本語・英語・中国語(簡体・繁体)・韓国語の5言語で解説する体験型コンテンツの開発です。
この多言語対応により、外国人観光客の満足度が向上し、モニターツアーでは65%以上の参加者が「満足」と回答しています。ARによる情報提供と地域資源の融合により、滞在時間や消費額の増加、観光周遊の促進につながる成功事例となりました。
・AR体験型クルーズで地域観光促進|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
【福岡県北九州市】地域資源の活用による観光客誘致の促進

福岡県北九州市を中心とする「北九州都市圏域」では、転出超過による人口減少が大きな課題でした。そこで、地域の強みである「文化」「産業」「景観」を観光資源として磨き上げ、滞在時間の延長と交流人口の増加を目指す施策を展開しました。
具体的には、現役で稼働する工場や産業遺産を活かした「産業観光」や、夜景観光の魅力を伝えるファムツアー(海外の旅行会社やメディア、インフルエンサーを招いた現地視察型プロモーション)を実施しています。また、旅行業者やメディアへの情報発信の強化も進めました。
さらに、「ツーリズムEXPOジャパン2017」では4K映像によるPRを行い、国内外に北九州の魅力を発信しています。マーケティング調査と分析に基づくプロモーションの効果検証と戦略策定を通じて、地域資源を活かした戦略的な観光誘致が進められています。
・地域の魅力を引き出し観光誘客を促進|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
【奈良県】訪日外国人観光客向けのVRアプリを制作

奈良県が周遊促進のために行ったのは、春日大社や旧大乗院庭園など訪日外国人に人気の文化財を舞台とした、VRアプリの導入です。イラストアニメーションやCGによる春日大社の歴史紹介や、五重塔など普段見られない神社内部のVR再現、参拝方法や祭事の多言語解説を組み合わせ、より深い文化体験を提供しています。
また、GPSと連動した現地ガイド機能や、映像・パンフレットによる事前情報提供も充実させました。こうしたデジタル施策により、訪日外国人の満足度向上と滞在時間を延ばす効果が期待されています。
TOPPANは、VRや多言語音声ガイド、GPS連動といった先端技術を活用し、文化財の魅力を活かした観光体験の高度化を支援しています。
地域の魅力を活かし、観光客誘致に取り組もう
観光客の誘致は、地域経済の活性化や雇用創出など、多くのメリットをもたらす重要な施策です。その成功には、地域固有の自然・歴史・文化といった魅力の掘り起こしと効果的な発信が欠かせません。また、デジタル技術や多言語対応を活用して、多様な観光客のニーズに応える体制づくりも求められます。
観光地としての魅力を高めるには、独自性のある体験コンテンツの開発や、快適に過ごせる受け入れ環境の整備が必要です。現状の課題を把握し、他地域の成功事例も参考にしながら、持続可能で魅力ある観光地づくりを目指しましょう。
TOPPANでは、こうした地域の観光振興を支援するソリューションを多数ご用意しています。観光客の誘致に課題を感じている方は、お気軽にご相談ください。

参考文献
- 経済波及効果 | 観光統計・白書 | 観光庁(https://www.mlit.go.jp/kankocho/tokei_hakusyo/keizaihakyukoka.html)
- インバウンドの取込みとインフラ| 国土交通省(https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h27/hakusho/h28/html/n1312000.html)
- オーバーツーリズムの未然防止・抑制に関する関係省庁対策会議| 観光庁説明資料(https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/810002897.pdf)
- 各地域における地域ブランドを活用した地域経済活性化の取り組みについて| 日本商工会議所(https://www.jcci.or.jp/file/chiiki/202405/2023brand.pdf)
- 観光の現状について| 国土交通省(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kankorikkoku/dai21/siryou.pdf)
- インバウンド観光の最新の動向と課題 : 経済社会総合研究所 - 内閣府(https://www.esri.cao.go.jp/jp/esri/seisaku_interview/interview2020_28.html)
- 多様な宗教的、文化的習慣を有する旅行者の受入環境の充実 | 観光地等の外国人対応の推進 | インバウンド受入環境の整備 | インバウンド回復戦略 | 観光政策・制度 | 観光庁(https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/kihonkeikaku/inbound_kaifuku/ukeire/kankochi/shukyo.html)
- 第2章 第1節 インバウンド需要の拡大と地域差 - 内閣府(https://www5.cao.go.jp/j-j/cr/cr18/chr18_02-01.html)