2025.05.30

観光振興の成功例9選|地域活性化に
つながる取り組みとは

観光振興は地域の魅力を広く伝え、認知度やイメージアップを図る上で欠かせない取り組みです。本記事では、全国各地における観光振興の9つの成功事例と、取り組む際のポイントを解説します。

少子高齢化や過疎化が進む中、地域の持続的な活性化を図るための施策が求められています。その中でも観光振興は、地域の魅力を再発見し、発信することで交流人口の増加や経済効果が期待できる重要な手段の一つです。

この記事では、全国各地における観光振興の成功事例と、観光振興に取り組む際に押さえたいポイントについても解説します。

観光振興は地域活性化のカギ

観光振興は、地域の魅力を広く伝え、認知度やイメージアップを図る上で欠かせない取り組みです。観光客の増加により、地域経済の活性化や雇用創出といった直接的な効果をもたらすだけでなく、地域ならではの資源を活かした高付加価値な観光コンテンツの開発によって、その土地の独自性を際立たせることができます。

また、地域に暮らす人々の郷土愛を育むことで、定住の促進や住みやすい環境づくりにつながるなど、幅広い波及効果が期待されます。

こうした観光振興を成功させるためには、デジタル技術の活用や訪日外国人向けの施策など、時代変化に対応しながら地域の魅力を最大限に引き出す施策を検討することが重要です。

観光振興の取り組み成功例

全国の自治体では、観光振興による地域活性化の成功事例が数多く見られます。特に、地域資源を活かした体験型観光の開発や、VR(仮想現実)・AR(拡張現実)などのデジタル技術を活用した観光コンテンツの導入が成果を上げています。また、インバウンド(訪日外国人旅行)の需要を見据えた多言語対応や受け入れ環境の整備も欠かせないポイントです。

ここでは、TOPPANが支援した9つの取り組み事例をご紹介します。

【愛知県】データ分析による戦略的な観光振興

【愛知県】データ分析による戦略的な観光振興

愛知県では、コロナ禍で減少した観光客数と観光消費額の回復を目指し、『あいち「ツウ」リズム』の強化に取り組んでいます。

取り組みの軸となったのが、旅行の各フェーズ(旅マエ・旅ナカ・旅アト)に応じた戦略的マーケティングの展開です。具体的には、来訪者の属性や行動データをもとに課題を洗い出し、観光誘客の方針を明確化しました。また、動画広告やWebサイトを活用してターゲット層へのアプローチを強化し、認知度向上と来訪意欲の喚起を図っています。

このようにデータに基づいた施策を展開することで、観光プロモーションの効果を高め、地域経済の活性化につなげています。

旅行者のカスタマージャーニーに沿った情報分析による観光振興|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

【岐阜県】地域の自然と歴史への関心を深めるVR・AR体験

【岐阜県】地域の自然と歴史への関心を深めるVR・AR体験

岐阜県では、児童生徒の学びへの関心を高める目的で、「自然史」分野の教育にデジタル技術を取り入れた新たな体験型学習を導入しました。博物館・学校・家庭の三者連携によって地域の歴史や自然への理解を深めてもらう取り組みです。

その中核をなすのが、恐竜時代を再現したVR・AR体験です。具体的には、スマートフォンをかざすと恐竜の姿を360度で鑑賞できるARアプリや、約1億年前の岐阜県にタイムスリップしたかのような映像が楽しめるVRコンテンツの開発を行いました。

こうした取り組みによって、子どもたちの学習意欲を高めると同時に、地域の自然や歴史に対する理解と関心を深め、観光客に質の良いコンテンツを体験してもらうことにもつながりました。

参考:デジタルコンテンツの体験により地域の歴史学習への興味を喚起|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

【奈良県下北山村】人気キャラクターと最新AR技術を活用した観光促進

【奈良県下北山村】人気キャラクターと最新AR技術を活用した観光促進

奈良県下北山村では、日本屈指の規模を誇る池原ダムや豊かな自然環境を活かし、季節を問わず楽しめる周遊型観光への転換を目指しています。その一環として注目されているのが、人気キャラクターと村の景観を融合させた高精度AR体験ができるアプリの開発です。

このアプリには、カメラや映像から得た画像データをもとに、高さや方向などの正確な位置を特定するシステムであるVPS技術が採用されており、より高精度なARを楽しむことができます。ARスポットや観光名所を巡るスタンプラリー機能も搭載され、周遊観光の促進に貢献しています。

さらに、モニターツアーの実施やWeb・SNSを活用した情報発信によって認知度向上を図るなど、話題性と地域資源を掛け合わせた観光施策で、持続可能な観光振興につなげている事例です。

人気キャラクターと最新表現技術を起爆剤にした観光促進|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

【高知県仁淀川流域】奇跡の清流・仁淀川の魅力を世界へ発信する観光映像プロモーション

【高知県仁淀川流域】奇跡の清流・仁淀川の魅力を世界へ発信する観光映像プロモーション

高知県の仁淀川流域では、その美しい水質から「奇跡の清流」と称される仁淀川の魅力を国内外に広めるため、流域6市町村が一体となって観光プロモーションを展開しています。中心的な取り組みとして制作されたのが、仁淀川とその周辺地域の魅力を四季ごとに描き出した観光映像です。

春は映画のようなストーリー仕立ての映像を、夏はプロモーション施策で活用しやすいダイジェスト映像、秋冬は紅葉や雪景色の幻想的な表現を取り入れるなど、季節ごとの映像のバリエーションも工夫されています。

また、これらの映像をWebプロモーションと連動させることで、国内外への情報発信を強化し、仁淀川流域の認知度向上と広域的な観光振興を同時に推進しています。自然資源を活かした映像戦略が、地域活性化に貢献している事例といえるでしょう。

映像を活用した仁淀川流域プロモーション委託業務|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

【愛媛県松山市】道後温泉のデジタルアーカイブ活用による歴史継承と魅力創出

【愛媛県松山市】道後温泉のデジタルアーカイブ活用による歴史継承と魅力創出

愛媛県松山市の道後温泉では、温泉の歴史と文化を次世代に継承し、観光誘客を促進するための取り組みが行われています。道後温泉の地域固有資源である「道後温泉史料」に関して、詳細な調査を行い、その歴史的価値を明確にした上で、資料の整理・保存・データベース化を実施しました。

また、道後温泉の新たな魅力を引き出す施策として、高精細なレプリカを用いた展示や「重ね押しスタンプラリー」など、体験型のコンテンツも導入しています。さらに、多言語対応の公式サイトや、ポスター・チラシなどの各種プロモーションツールを通じて、国内外への情報発信を強化しました。

歴史的資料の保存・活用と体験型イベントの実施によって、道後温泉の新たな魅力創出に成功した事例です。

文化資産のデジタルアーカイブを活用した観光施策|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

【愛知県名古屋市】太閤秀吉ゆかりの地・中村区の魅力発信プロジェクト

【愛知県名古屋市】太閤秀吉ゆかりの地・中村区の魅力発信プロジェクト

名古屋市中村区では、豊臣秀吉のふるさととしての歴史や文化資産を活かし、地域のシンボルづくりと魅力発信に取り組んでいます。リニア中央新幹線の開業により増加が見込まれる来訪者に対応するため、観光客誘致のための賑わいづくりにつながる施策として、「出世・挑戦・成功したい人を日本一応援するロード」をコンセプトとした、太閤秀吉モニュメントを制作・設置しました。

また、地域イベントや事業者との連携によりエリアの賑わい創出を図るとともに、多言語案内サービスや英語による情報発信も強化し、SNSや中部国際空港でのPRなど多角的な手法で国内に向けた広報活動も実施。歴史を切り口とした観光振興が、地域のブランド力の向上と活性化につながっている好例です。

武将を活用した地域の魅力発信と賑わいの創出|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

【奈良県】歴史文化を未来へつなぐデータベース活用

【奈良県】歴史文化を未来へつなぐデータベース活用

奈良県では、豊かな歴史文化を地域や産業の発展に活かすため、文化資源のデータベース化と発信強化に取り組んでいます。その一環として、歴史文化資源を集約し、広く発信する「いかす・ならホームページ」を運用しており、指定文化財だけでなく、文献史料や伝承、旧跡など幅広い歴史文化資源を掲載しています。

サイトのデザインには、ユーザーにとって使いやすく、データベースとの互換性も高めたユニバーサルデザインを採用しました。また、多言語化に対応するため、英語・中国語(簡体・繁体)・韓国語への翻訳対応も行っています。

さらに、専門用語の誤訳防止や、ホームページ内のコンテンツを簡単に作成・更新できるCMSの導入により、継続的かつ正確な情報発信を実現していることも特徴です。これらの取り組みにより、奈良の歴史文化が未来へと継承され、国内外からの理解と関心を高める基盤づくりが進められています。

地域の歴史と出会い・楽しみ・理解を深め・未来に活かす|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

【福岡県北九州市】夜景観光・産業観光のプロモーションによる人口増加促進

【福岡県北九州市】夜景観光・産業観光のプロモーションによる人口増加促進

福岡県北九州市では、観光を通じた経済活性化と人口減少への対応として、地域の夜景や産業遺産を活かした観光プロモーションを展開しています。文化・産業・景観の3つの観光資源を核として、滞在時間の延長や交流人口の増加を目指す取り組みを行いました。

具体的には、ツーリズムEXPOジャパン2017への出展や、旅行事業者・メディア向けの夜景観光ファムツアーを実施し、マーケティング調査による効果測定を実施。関東・九州それぞれのターゲット層に応じたプロモーション戦略を展開し、その反響を次なる観光施策に活用しています。

観光を軸とした魅力発信で、持続可能な地域社会の形成が進んでいる事例です。

地域の魅力を引き出し観光誘客を促進|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

【滋賀県東近江市】XRツーリズムで新たな観光体験を創出

【滋賀県東近江市】XRツーリズムで新たな観光体験を創出

滋賀県東近江市では、魅力ある地域資源を持ちながらも、効果的なプロモーションにつなげられていないことが課題でした。これを解決するために、重要伝統的建造物群保存地区である五個荘金堂地区を舞台に、XR技術を活用した観光モニターツアーを実施しています。XR(クロスリアリティ)とは、VR・AR・MR(複合現実)などを含む、現実と仮想を融合させた体験を生み出す先端技術の総称です。

観光スポットである近江商人屋敷「外村繁邸」では、近江鉄道の人気キャラクターをAR案内役として起用することで、若年層への訴求力を高めました。また、VRによる遠隔リアルタイム案内を導入し、全国初のリアルタイム観光体験を実現。さらに、多言語対応の音声翻訳アプリを導入し、訪日外国人にも配慮したサービスが強化されています。来訪者の満足度向上と観光誘客を両立する試みです。

最先端のXR技術で新しいツーリズムを体験|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

成功例から学ぶ観光振興のポイント

観光振興の成功には、地域ごとの特性を最大限に活かした創意工夫が求められます。歴史や自然、文化などの地域資源を活用するだけでなく、多言語対応やバリアフリー化など、観光客を迎えるための受け入れ環境の整備も重要です。また、効果的なプロモーション施策の展開は、観光誘致と地域活性化につながります。

ここでは、実際の成功例を参考に、注目すべきポイントをご紹介します。

観光資源の発掘と活用

観光振興の第一歩となるのは、その地域特有の観光資源を見つけ、活用することです。観光資源には、自然や歴史的建造物、伝統的な祭り、地元の食文化など多様なものがあり、それらを地域の魅力として発信することで、観光客の関心を引くことができます。まずは地元住民や専門家と連携し、地域に眠る魅力を調査・発掘することが重要です。

また、観光資源の魅力をより引き出すには、デジタル技術の活用が有効です。具体的には、VR・AR技術などを活用し、観光地での没入型体験を提供することで、訪問価値の向上や、効果的な魅力発信が可能になります。

TOPPANでは、こうした地域資源の再発見から観光資源化、デジタル技術を取り入れた観光振興支援まで幅広く対応しています。例えば、「ストリートミュージアム®」では、アプリを通じて文化財や史跡の往時の姿を再現し、スタンプラリーや謎解きイベントで地域周遊を促進するなど、観光体験の魅力向上を図ることが可能です。

自治体観光誘客 XR観光ガイドアプリ ストリートミュージアム®

受け入れ環境の整備

観光客の満足度やリピート率を高めるとともに、地域住民の負担を軽減するために必要なのが、観光客を受け入れるための環境整備です。例えば、多言語対応の強化、公共交通機関や観光地へのアクセス改善、無料Wi-Fiスポットの設置といったデジタルインフラの整備が必要です。また、より円滑に推進するための要素として、地元住民の理解や協力の獲得や、観光客の集中を避けるオーバーツーリズム対策の実施なども挙げられます。

インバウンド対策の一環として、円滑なコミュニケーションを支援するための具体的な手段の一つに、TOPPANが提供する「VoiceBiz® Remote」があります。これは、工場見学や観光ツアーなどで、複数の外国人観光客に対して、同時に複数言語での多言語対応を可能にするAI翻訳サービスです。

インバウンド対応 AI翻訳サービス「VoiceBiz® Remote」

効果的なプロモーション施策

観光客を呼び込むためには、地域の知名度やイメージを高めるプロモーションが不可欠です。地域の魅力・特色・ターゲット層に応じて、映像や写真によるビジュアル訴求、SNS広告やインフルエンサーマーケティング、観光イベント・展示会でのPRなど、最適な手法を選択することが求められます。人気キャラクターや有名人とのコラボ、特産品・伝統文化を活かしたストーリーテリング型のプロモーションも有効です。

映像を活用した観光プロモーションを検討する際には、TOPPANの動画レンタルサービス「Meet Japan! ®」もご活用ください。デジタルサイネージへの展開や、地域特化型のPR映像制作など、多様なニーズに対応可能です。

地域PRに活用できる動画レンタルサービス「Meet Japan! ®」

成功事例をヒントに観光振興による地域活性化を実現しよう

観光振興による地域活性化の実現には、まず地域ならではの観光資源の発掘が出発点となります。その上で、デジタル技術の活用や効果的なプロモーション施策を通じて、観光客の誘致を図ることが重要です。また、地域住民や事業者との連携を深め、環境負荷や住民負担にも配慮した持続可能な観光モデルを構築することも欠かせません。

TOPPANでは、専門のアドバイザーが地域資源の発掘から魅力あるコンテンツの制作、プロモーション、効果検証に至るまでを一貫してサポートします。観光振興の取り組みを検討される際は、ぜひお気軽にご相談ください。

TOPPAN SOCIAL INNOVATION WEB 編集部

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