2025.04.24

聖地巡礼で観光はどう変わる?
地域活性化の鍵を握る新たな可能性

聖地巡礼とは、小説や漫画、アニメ、映画、ドラマなどの舞台を巡る観光スタイルです。この記事では、聖地巡礼による地域活性化の事例、成功の工夫などを詳しくご紹介します。

聖地巡礼で観光はどう変わる?地域活性化の鍵を握る新たな可能性

さまざまな地域で、「聖地巡礼」が観光振興に活用されています。この記事では、自治体の観光施策担当者に向けて、観光スポットを作り出す聖地巡礼について解説し、聖地巡礼がもたらす効果や事例をご紹介します。

この記事で分かること

・聖地巡礼とは何か分かる
・聖地巡礼が観光地にどのような効果をもたらすかが分かる
・全国の聖地巡礼の事例が分かる

観光スポットを作り出す「聖地巡礼」とは?

聖地巡礼とは、小説や漫画、アニメ、映画、ドラマなどに登場する舞台やロケ地を、ファンが巡ることを指します。作品の世界観に没入したいというファンの思いによって、現実の場所が特別な聖地として認識されるようになるのです。聖地巡礼が盛んになることで、国内にも多くの新たな観光スポットが生み出されています。

観光振興のために自治体も聖地巡礼を活用しており、現代の観光文化として定着してきました。このように、特定の作品の舞台となった場所などを訪れることを、「コンテンツツーリズム」と呼ぶこともあります。

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聖地巡礼が観光地に与える効果

作品のファンに観光地を知ってもらうことは、新たな層に地域の魅力を知ってもらうことにつながります。観光地に興味を持つ人が増えれば、観光客の増加や地域ブランドの確立、雇用の創出といった経済効果も期待できるでしょう。

ここでは、聖地巡礼が観光地に与える効果について解説します。

地域の認知度・好感度アップ

聖地巡礼は、これまで広く知られていなかった観光資源を再発掘し、地域の認知度や好感度を向上させる効果があります。作品をきっかけに、「聖地巡礼スポット」として地名を知る人が増えるためです。スポットを訪れた観光客が聖地巡礼を楽しみ、その体験をシェアすれば、さらに地域の魅力を知る人が増えていきます。

地域外の人だけでなく、地域住民にとっても同様です。これまで注目してこなかった地元の観光資源が「聖地」となることで、地域に対する誇りや愛着が深まるでしょう。

観光客の増加

地域に興味を持つ人が増えることは、観光客の増加にもつながります。

例えば、鳥取県境港市では、人気メディアミックス作品シリーズの聖地巡礼が盛んになったことで、多くの観光客が訪れるようになりました。コロナ禍により一時的に減少はしましたが、2024年には人口約3.2万人の境港市に年間200万人の観光客が来訪するまでに回復しています。

観光客の増加に伴い、地元の飲食店や宿泊施設、土産物店などの売上増加も期待できます。観光客に対して効果的に観光情報を発信し、地域の魅力を伝えることが重要です。

地域ブランドの確立

地域ブランドの確立も、聖地巡礼がもたらす効果のひとつです。聖地巡礼によって、その地域が作品のファンにとって「特別な場所」として認知されます。ファンからSNSやメディアを通じて地域の魅力や情報が拡散されることによって、地域の知名度が向上し、地域ブランドが確立されていきます。

地域ブランドの確立によって、作品に登場するスポットのみならず、周辺スポットの観光客が増加する事例も見られました。コンテンツと関わる観光資源を活かしながら、地域ブランドを確立することは、観光振興の鍵となります。

雇用の創出

聖地巡礼が盛んになると、観光業を中心に新たな雇用が生まれるという効果も期待できます。代表的な例は、ツアーの案内人、イベントスタッフ、宿泊施設・飲食店の従業員です。

その他、食材や土産品の生産者、交通機関の従業員など、副次的に雇用が広がっていきます。

また、新たなビジネスが生まれる機会にもなります。聖地巡礼をきっかけにして、その作品とコラボした商品開発など、各地域で新たなビジネスが展開されました。聖地巡礼によって、地域の若者が地元で働く機会が増えることで、若者の定住促進にもつながります。

観光資源とは?全国の事例から学ぶ活用のポイント

観光客が多く訪れる聖地巡礼スポットの例

ここでご紹介するのは、自治体が積極的に作品とコラボし、聖地巡礼による地域活性化に取り組んでいる例です。聖地巡礼スポットとされる地域では、関連イベントや商品開発など、さまざまな工夫を凝らしています。

ただし、いわゆる観光地ではない場所が、作品に登場したことで聖地化されることもあります。そのような場合では、周辺住民の住環境への配慮なども必要です。

鳥取県境港市

鳥取県境港市

鳥取県境港市は、長年愛されている人気漫画作品の作者の出身地として知られています。市内では、漫画家の記念館、キャラクターのブロンズ像やモニュメント、キャラクターを描いた列車など、多様な取り組みが観光客を楽しませています。

ブロンズ像は、資金不足を補うために寄付を募って製作されました。お店や駅、街灯などもキャラクターをモチーフにしており、まち全体で作品の世界観を表現しています。

観光客は作品の世界観に浸るとともに、境港港で水揚げされた海産物も多く楽しんでいます。

埼玉県久喜市

埼玉県久喜市

埼玉県久喜市(旧鷺宮町)をモデルにしたアニメが放映され、注目を集めました。聖地巡礼ブームのはしりとも言える地域です。

アニメが放映される以前は目立った観光スポットはありませんでしたが、作中に登場する神社などが代表的な聖地巡礼スポットとなり、全国的な認知を得るようになりました。

新年の初詣や作品に関連したイベントの時期には、多くのファンが訪れ、地域の賑わいに貢献しています。地元の商店を巻き込んでのグッズ販売など、地域を挙げての取り組みが特徴です。

埼玉県越谷市

埼玉県越谷市を舞台にしたアニメの影響で、聖地巡礼スポットとなりました。市内に実在する高校をモデルに、その高校に通う女子高生と野球をテーマにした作品です。

越谷市ではアニメとのコラボ企画が開催されました。まち巡りをして、市内の飲食店でグルメを楽しんでもらうというものです。作品に登場するスポットを紹介するマップやオリジナルグッズを作り、市内の飲食店など協力店舗で配布されています。

その他、市内の大型商業施設では、キャラクターを演じている声優が登場するイベントも開催されています。

聖地巡礼の魅力を引き出す工夫とポイント

聖地巡礼の魅力を引き出す工夫とポイント

聖地となったスポットの魅力を、どうすればより引き出せるのでしょうか。作品ファンによる聖地巡礼を迎える観光地側には、聖地を訪れたファンが楽しめるような工夫が求められます。

より充実した観光体験を提供するためには、ファンへの配慮と準備が重要です。

ここでは、聖地巡礼の魅力を引き出す工夫とポイントを解説します。

作品の世界観を尊重する

第一に、作品の世界観を尊重することが重要です。ファンにとって聖地巡礼の醍醐味は、作品の世界観を深く味わうことです。観光をしながら、作品中のシーンや登場人物の心情を思い返すファンも多いでしょう。

観光地側は、安易に作品を利用するのではなく、適切なコラボを行わなければなりません。例えば、作品に登場した景観を再現したスポットの設置や、作品と地域の特産品とのコラボグッズの開発などがありますが、コラボには作品の世界観を理解し、尊重することが大切です。

また、作品のタイトルやイラストを使用する際は、著作権への配慮も必須となります。版権元と一緒に事業を進めていく必要があるので、注意しましょう。

現地での体験を大切にする

聖地巡礼では、現地でどのような体験ができるかが重要です。例えば、作品中に登場するカフェで、実際に作品に登場する料理を味わうことや、作品に関連したオリジナルメニューを楽しむことで、訪れたファンは作品の世界をより深く楽しむことができます。

商店を巡る中で地域の住民との交流が生まれたり、作品中に登場するスポットのみならず、周辺の観光地まで足を延ばして楽しむファンも多くいます。そういったファンをスムーズに誘導し、観光を楽しんでもらえるよう、観光地側では情報発信や受け入れ体制を整備することも重要です。

SNSを活用して情報を共有する

SNSを活用して、その作品の情報を共有するファンは大勢います。自分が撮影した写真や体験談を発信し、同じ聖地を訪れたファン同士で交流することにより、新たな楽しみ方や、隠れスポットなどを知ることができるからです。

観光地側にとっても、SNSを活用した情報収集・発信を強化することは、聖地巡礼ファンを含む観光客により楽しんでもらうための工夫として非常に効果的です。情報が拡散されることで、新たな観光客の誘致にもつながります。

作品のジャンルやターゲット層に応じて、インフルエンサーを活用したプロモーションを行う方法も考えられます。

ファンと地域を結ぶ聖地巡礼を観光資源に

聖地巡礼では、アニメや映画の舞台となった場所を訪れることで、作品の世界観を体感し、地域の魅力を再発見できます。今では多くの聖地が観光客を惹きつけてやみません。

聖地巡礼は作品のファンと地域を結び付け、地域の認知度を向上させるものです。それによって観光客が増加し、文化の発信、地域経済の活性化、雇用の創出などへの貢献が期待できます。

聖地巡礼は、訪れるファンにとって思い出深い体験となるだけでなく、地域にとっても貴重な観光資源として、重要な役割を果たしているのです。

TOPPANでは、地域資源の発掘と発信を支援する取り組みを行っています。プロモーションの企画から実行まで、トータルでのサポートが可能です。

興味のある方はお問い合わせください。

TOPPAN SOCIAL INNOVATION WEB 編集部

TOPPAN SOCIAL INNOVATION WEB 編集部

参考文献

  • 水木しげるロードへ鬼太郎に会いに行こう! | しまね観光ナビ(https://www.kankou-shimane.com/mag/1563.html)
  • 越谷市が舞台のアニメ「球詠(たまよみ)」(https://www.city.koshigaya.saitama.jp/citypromotion/film_commission/tamayomi_machimeguri/tamayomi.html)
  • ゼロからレジェンドへ。アニメ聖地巡礼で地域振興の先駆者「久喜市鷲宮」と「らき☆すた」の取り組み|外務省(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/local/page24_002273.html)

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