2025.04.24
観光資源とは?全国の事例から学ぶ
活用のポイント
観光資源とは、地域の魅力となる自然や文化、産業など全般を指します。この記事では、観光資源の定義や分類、ランク、日本にある代表的な観光資源などについて詳しくご紹介します。

観光資源の発掘に苦戦していませんか?もしかすると、視点を変えることで、地域に根づく日常の風景が新たな観光資源として輝きだすかもしれません。
この記事では、全国各地の観光資源の具体例や、TOPPANが観光資源の磨き上げ・活用をお手伝いした事例をご紹介します。地域の魅力を再発見し、観光客を呼び込むためのヒントとしてお役立ていただければ幸いです。
この記事で分かること
・観光資源の定義や分類が分かる
・全国の観光資源の具体例・活用事例が分かる
・観光資源を活用するポイントが分かる
観光資源とは
観光資源は、一般的には観光スポットとなるような名所や景観などを指しますが、実は厳密な定義が存在するわけではありません。
例えば、観光立国推進基本法においては、「史跡、名勝、天然記念物等の文化財、歴史的風土、優れた自然の風景地、良好な景観、温泉その他文化、産業等に関する観光資源」という表記があります。また、公益財団法人日本交通公社のホームページでは、「感動を生み出す"ふるさとの誇り"」すべてが観光資源となり得ると表現されています。
このように、さまざまなものが観光資源となり得ることから、固定観念にとらわれず、観光資源を発掘していくことが大切です。
観光資源の分類
観光資源にはさまざまなものがありますが、人間の活動によって生まれたものかどうかで、大きく「自然資源」と「人文資源」の二つに分類されます。さらに、「自然資源」は10分類、「人文資源」は14分類に分けられ、各分類の項目は以下のとおりです。
【自然資源に分類されるもの】
●山岳
●高原・湿原・原野
●湖沼
●河川・峡谷
●滝
●海岸・岬
●岩石・洞窟
●動物
●植物
●自然現象
【人文資源に分類されるもの】
●史跡
●神社・寺院・教会
●城跡・城郭・宮殿
●集落・街
●郷土景観
●庭園・公園
●建造物
●年中行事(祭り・伝統行事)
●動植物園・水族館
●博物館・美術館
●テーマ公園・テーマ施設
●温泉
●食
●芸能・スポーツ
これらの項目に着目し、観光資源になるものを考えてみるのも一つの方法です。
観光資源のランク
前述した公益財団法人日本交通公社では、観光資源にランクを設けています。
観光資源のなかでも、より多くの人の心を動かすと考えられる普遍的なものや日本のイメージに直結するものを「特A級資源」、「A級資源」として選定し、ホームページでも公表しています。
観光資源のランクの詳細は、以下のとおりです。
【特A級資源(以下、SA級)】
日本を代表する資源で、世界に誇る観光資源。
日本人の誇り、アイデンティティを強く示すもの。
人生で一度は訪れたいもの。
【A級資源(以下、A級)】
特A級資源に準じるもの。
日本の観光資源の例
前述の公益財団法人日本交通公社は、日本全国の観光資源の評価、整理を行い、「全国観光資源台帳」を作成しました。この台帳では、観光資源が都道府県、分類(観光資源タイプ)、ランク(級)別にまとめられています。
ここでは、そのなかから日本の観光資源の代表的な例を、観光資源のランクとあわせてご紹介します。
SA級:富士山(山梨県 富士吉田市 / 静岡県 御殿場市)

言うまでもなく、富士山は日本を代表する山岳です。外国人の地誌や旅行記のなかでも数多く取り上げられ、世界的にも認知されるようになりました。
観光客は登山や景色を楽しむことができます。特に、山梨・静岡両県からの景色が素晴らしく、富士山と地域の風景や風物詩をコラボレさせた景観が多く楽しまれています。
その一方で、登山者の増加に伴い、環境の保全や保護といった課題も生まれてきました。
SA級:屋久島の森(鹿児島県熊毛郡屋久島町)

屋久島の森は、1993年に日本で最初の世界自然遺産に登録されました。亜熱帯地域に属しながら、標高が高い山々では北国のような寒冷な気候となり、屋久杉をはじめとする多種多様な植物が生息しています。そのため、低地から山頂にかけて異なる生態系を楽しむことができます。
トレッキングが人気で、初心者向けから上級者向けまで多彩なコースが用意されており、ガイド付きツアーも開催されています。樹齢1000年を超える屋久杉や壮大な滝など、屋久島ならではの自然美を満喫できます。
A級:軽井沢保養地(長野県北佐久郡軽井沢町)
軽井沢は、英国聖公会の宣教師であるアレキサンダー・クロフト・ショーが別荘を建てたことをきっかけに、避暑地として発展しました。自然と文化が調和した日本有数のリゾート地で、冷涼な気候と豊かな緑、そして浅間山の雄大な景観などが魅力です。
旧軽井沢の商店街には歴史ある建造物や教会、美術館などが並び、ショッピングモールや新旧の店舗も賑わいをみせています。東京から新幹線で約1時間と交通の便が良い一方で、観光シーズンには渋滞が発生しやすいという課題もあります。
A級:香川の讃岐うどん(香川県全県)

香川県と言えば讃岐うどんと言われるほど有名で、麺の強いコシが最大の特徴です。観光客にも人気ですが、地元の人々にとっても日常的に食べられている、生活に密着した食文化の一つとなっています。
讃岐うどんの魅力は、店ごとに異なる麺の太さや硬さ、だしの風味、ボリューム感にあり、「絶対的な一店」は存在しません。そのため、食べ歩きを楽しんだり、お気に入りの店に何度も足を運んだりと、それぞれのスタイルで楽しまれています。
A級:熊本城(熊本県熊本市)

熊本城は熊本市の中心部にある名城で、1607年に加藤清正が築城しました。細川忠利が藩主として治め、剣豪・宮本武蔵も晩年に登城するなど、歴史に名を残す多くの人物とゆかりを持っています。
明治時代の火災で天守や本丸御殿が焼失しましたが、1960年に市民の寄付と募金によって天守閣が再建されました。壮大な石垣や武者返しの構造が特徴で、「難攻不落の城」としても知られています。現在も復元・修復が進められ、多くの観光客が訪れる歴史スポットです。
関ケ原古戦場(岐阜県不破郡関ヶ原町)

関ケ原古戦場は、天下分け目と称される関ケ原の戦いで、激戦が繰り広げられた地です。
1600年、東軍と西軍がこの地で激突し、日本の歴史を大きく変えました。
現在はのどかな田園風景が広がっていますが、戦いの跡をしのばせる石碑や陣旗が各所に立てられています。周辺には、岐阜関ケ原古戦場記念館や関ケ原町歴史民俗学習館があり、訪れる人々に歴史の深さを伝えています。
特に歴史好きにとって、はずすことのできない魅力あふれるスポットです。
眼鏡橋(長崎県長崎市)

眼鏡橋は、長崎市内を流れる中島川に架かる、日本最古のアーチ型石橋の一つです。1634年に興福寺の僧・黙子如定によって架けられ、二つのアーチが川面に映ると眼鏡のように見えることから、その名が付けられました。
風情ある景観が魅力で、長崎の観光名所の一つとして親しまれています。水位が低いときには川縁まで降りることができ、間近で石橋の美しさを楽しめます。歴史と風情が息づくスポットとして、多くの人が訪れる観光地です。
佐賀インターナショナルバルーンフェスタ(佐賀県佐賀市)
佐賀インターナショナルバルーンフェスタは、佐賀市嘉瀬川河川敷で開催されるアジア最大級の国際熱気球大会です。世界各国から100以上のバルーンが集まり、色とりどりの熱気球が空を彩ります。
開催期間中は、バルーンの競技や夜間係留の幻想的な光景が楽しめます。また、フォトコンテストも開催されており、訪れた人々が美しい瞬間を写真に収めることも可能です。
例年10月下旬から11月上旬にかけて開催され、秋の風物詩として多くの人々に親しまれています。
その他の観光資源はこちらから一覧で確認できます。
観光資源の活用事例
ここでは、各地域の工夫によって観光資源を活用し、観光客の誘致を目指した事例をご紹介します。特に、観光資源に乏しい地域においては、観光資源の発掘や工夫が大切です。
一例として、地域が保有する観光資源を活かして、TOPPANが支援を行った事例をご紹介します。観光資源を発掘・活用するための参考としてお役立てください。
VRシアターで焼失前のお城の姿を再現

2011年、九州新幹線の開業による観光客増加が見込まれるなか、熊本城周辺の観光拠点として、「桜の馬場・城彩苑」が整備されました。
TOPPANはその目玉コンテンツとして、熊本城ミュージアム「わくわく座」の整備・運営に携わり、VRシアター作品「熊本城」を制作しています。明治の西南戦争で焼失する以前の熊本城の姿を、現地取材や資料調査、城郭研究者の監修に基づき再現しました。
VRでは高い臨場感・没入感が得られるほか、超接近・拡大、俯瞰といった通常とは異なる鑑賞方法で、文化財の新たな魅力を発見できます。
・参考:文化財を観光コンテンツとして活用「熊本城VR」|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
観光資源の魅力を伝えるプロモーション映像制作

四国を流れる仁淀川流域の6市町村は、仁淀川流域をよりブランド力を持つ観光エリアとするため、連携してプロモーションを実施しています。
TOPPANはその一環として、国内外の観光客に向けて仁淀川流域6市町村の観光資源を撮影・編集し、春編・夏編・秋冬編の映像作品を制作しました。インバウンドの観光客向けに、英語と中国語の字幕翻訳にも対応しています。
仁淀川流域の魅力を最大限に表現し、感覚的に伝えることで、新たな観光客の誘致を目指しています。
・参考:地域PR動画・観光促進成功例 仁淀川流域プロモーション委託業務|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
高精度ARを活用して人気キャラクターとコラボ

奈良県下北山村では、村の大部分を占める国立公園や、日本最大級のアーチを描く池原ダムの堰堤といった観光資源を持ちつつも、それまで充分に活用されていませんでした。
そんな村の魅力を広く知ってもらうため、TOPPANでは高精度ARを活用して村内の風景と人気キャラクターがコラボした世界を体験できるアプリを開発しました。
さらに、モニターツアーの実施やキャラクター公式HP・SNSからの情報発信、キャラクターとのコラボ商品の検討などで、認知度の向上と村の観光力向上を目指しています。
観光資源を活用するポイント
観光資源を活用するためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。ここでは、地域の魅力を最大限に引き出し、観光客を誘致するために、重要なポイントをご紹介します。
明確なターゲット選定
まず、観光客を誘致するためには、どういった層にアプローチしていくのか、ターゲットを選定することが重要です。ターゲット選定が曖昧では、その後の事業展開にブレが生じてしまい、結局どの層にも訴求できない可能性があります。
明確にターゲット層を設定することによって、効果的なプロモーションが可能になります。アニメの聖地巡礼などは、ターゲットを絞り込んだ一例です。
地域の魅力を分析し、興味関心の高そうな客層を見極めて、ターゲットを設定しましょう。
ターゲットを明確にすることが、戦略的な観光資源の活用の第一歩です。
ターゲットに合わせた情報発信・プロモーション
ターゲットとする客層に届くように、的確な情報発信・プロモーションを行うことが重要です。観光情報を分かりやすくまとめ、観光客が閲覧しやすい仕組みを構築しましょう。
ターゲット層によって、有効な情報伝達の手法も変わってきます。
SNSや動画配信、イベント、企業とのコラボレーションなど、ターゲット層に適した手法を選択すると効果的です。
例えば、若年層向けにはInstagramなどのSNSや、TikTokなどの動画アプリの活用が有効と考えられます。一方で、シニア層向けには新聞広告や地域情報誌などを活用したアプローチも検討すべきです。
観光地側の受け入れ環境の整備
観光客の誘致とあわせて、観光地側の受け入れ環境を整備しましょう。
観光客が増加した際に、受け入れる環境が整っていないと、オーバーツーリズムなどの新たな問題が発生し、地域の住民の住環境が悪化する恐れがあります。宿泊施設や交通機関、案内サービスなどについては、観光客の増加を受け入れられるようなキャパシティの拡大が必要不可欠です。
そうした整備を限られた財源で実施するためには、国の補助金を活用する方法もあります。オーバーツーリズムの未然防止に関する補助金などさまざまな補助事業があるので、それらを検討するのも一案です。
民間企業や市民団体との連携
観光事業を成功させるためには、行政だけでなく、民間企業や市民団体などと連携し、民間のノウハウを活用することが不可欠です。なかでも市民団体は、案内ツアーなどのサービスを提供し、観光客と直接関わるポジションを担っていることも多くあります。まちを挙げての観光事業では、そういった方々の協力を得ながら事業を展開していく必要があります。
また、地域の観光協会のような団体が効果的に機能するよう、体制を整えることも重要です。地域全体で協力しながら観光資源を活用することで、より魅力的な観光地を創出することができます。
地域に眠る観光資源を発掘・活用しよう
ここまで、埋もれた観光資源を発掘し、活用していくための、事例やポイントをご紹介しました。
他地域の成功事例を参考にしながら、他にはない独自の資源や特色を活かすことが成功の鍵となります。そのためには、地域の特性を理解し、情報発信など適切な手法の選択が重要です。
地域の持つ魅力を最大限に引き出し、観光資源を活用していきましょう。
TOPPANでは、地域資源の発掘と発信を支援する取り組みを行っています。プロモーションの企画から実行まで、トータルのサポートが可能です。

参考文献
- 美しき日本 全国観光資源台帳(https://tabi.jtb.or.jp/)