2025.07.25

自治体の防災対策とは?
災害に備えるための基本と事例を紹介

自治体では、災害発生を想定した防災対策として、情報発信や避難所の運営、ライフラインの維持などの計画が不可欠です。本記事では、地方自治体が取り組むべき防災対策と、先進事例をご紹介します。

災害が発生した際、住民の支援を最前線で担うのは地方自治体です。情報発信や避難所運営、ライフラインの確保など、多岐にわたる対策が求められます。

本記事では、地方自治体が取り組むべき具体的な防災対策と、TOPPANが支援した防災対策の先進事例をご紹介します。

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この記事で分かること

・自治体が取り組むべき防災対策
・自治体による防災対策の取り組み事例

自治体の防災対策

地方自治体には、災害対策基本法第42条に基づき、「地域防災計画」を策定することが義務付けられています。平時・災害発生時・復旧期における対応を明確にしなければなりません。

この計画は、地域の特性やリスクに応じて独自に構築されるもので、住民の生命と財産を守る基盤となります。情報発信や避難所の整備、防災教育の推進など、多面的な取り組みを通じて、災害時にも的確かつスムーズに対応できる体制を構築しておくことが重要です。

自治体が主導となって行う主な防災対策には、次のような取り組みが挙げられます。

● 情報収集・発信
● 地域防災力の強化
● 業務継続計画(BCP)の整備
● 避難指示
● 災害対策本部の設置
● 避難所の整備
● 応援の受け入れ体制の確保
● 災害廃棄物対策

それぞれ詳しく解説します。

情報収集・発信

自然災害はいつ発生するか予測が難しいため、被害を最小限に抑えるには、正確かつ迅速な情報収集と住民への適切な伝達が欠かせません。平時から備えておきたい防災対策の例として、監視システムの整備と、情報発信手段の確保が重要です。

監視システムの整備

近年、集中豪雨による浸水や洪水など水害のリスクが高まっています。 災害の早期把握には、危険なエリアやポイントを事前に想定し、センサーや監視カメラなどを活用した体制を整備することが有効 です。自治体には、リアルタイムで状況を把握し、情報が錯綜する中でも迅速な判断・対応を行うことが求められます。

TOPPANでは、河川や貯水池、潮位といった水位を遠隔センサーで確認し、収集したデータを一元管理する「スイミール®」というソリューションを提供しています。さらに、これらのデータを収集・統合して、自治体のホームページやアプリを通じて住民へ発信できる仕組みが「PosRe®︎」です。

リモート水位監視ソリューション「スイミール®」ー自治体DX|TOPPAN Biz

まちの情報集約・発信サービス「PosRe®(ポスレ)|TOPPAN Biz

情報発信手段の確保

災害時に収集した情報は、避難指示や警報として迅速に住民へ伝える必要があります。そのためには、 防災無線や緊急速報メール、地域アプリ、SNSなど複数の発信チャネルを組み合わせた発信体制が不可欠 です。

また、高齢者や障がい者など、情報取得が難しい方々への配慮も求められます。

TOPPANの「Con:tegration®」は、SNS・アプリ・メールを横断して緊急情報を一括配信できるソリューションです。その他にも、視覚・聴覚に障がいのある方にも配慮した「あんしんライト」など、多様な発信手段を提供しています。

緊急情報配信ツール「Con:tegration®」|TOPPAN Biz

自治体向け住民見守りサービス「あんしんライト」|TOPPAN Biz

地域防災力の強化

災害時に効果的な対応を行うには、自治体の対策だけでなく、地域住民との連携も欠かせません。自助・共助の意識と行動を育む取り組みによって、災害時の被害を最小限に抑えることが可能です。

住民への防災啓発活動

災害への備えとして重要なのは、 住民一人ひとりが防災について正しく理解し、いざという時に行動できる力を身につける ことです。従来のチラシやパンフレット、防災訓練の実施に加え、最近ではデジタル教材を活用した教育も注目されています。

TOPPANでは、小中学生向けに楽しみながら学べる防災教育システム「デジ防災®」を提供しており、学校現場を中心に導入が広がっています。

小中学生への学校での防災教育に、楽しく学べる防災教育・学習システム「デジ防災」|TOPPAN Biz

小中学生向けのデジタル防災教材を導入|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

地区防災計画策定の推進

「地区防災計画」とは、地域住民または企業が主導して策定する計画です。 地域の特性を踏まえた現実的な対策を住民主体で構築し、被災地に効果的な自助・共助の仕組みをもたらす ことを目的としています。

行政・専門家の支援に加え、住民・事業者の積極的な参加と連携が計画の実効性を左右しますが、担い手不足やノウハウの欠如が課題です。

こうした課題に対し、TOPPANでは高校生や子育て世代など幅広い層の参加を促すエンタメ型の防災ワークショップの実施や、リモートで学べる教育コンテンツ「防災アトラクション®」も提供しています。参加者からは「楽しく学べた」「また参加したい」といった声が寄せられ、好評を得ました。自治体との連携による継続的な伴走支援も可能です。

リモート型防災アトラクション®~楽しみながらできる防災教育|TOPPAN Biz

業務継続計画(BCP)の整備

業務継続計画(BCP)は、自然災害やテロ、感染症の流行といった 非常事態が発生した際にも、組織の中核となる業務を止めずに継続する、または可能な限り早く再開する ための計画です。

庁舎や職員が被災して人員・設備に制限が生じた場合でも、避難所の運営や災害情報の発信といった行政機能を止めないためには、事前の計画整備が不可欠です。優先すべき業務や対応手順をあらかじめ定めておくことで、限られた人員・資源の中でも迅速かつ適切な対応が可能になります。

避難指示

台風や豪雨、火山噴火といった自然災害が予測される場合や、地震・津波などの突発的な大規模災害が発生した際には、 住民が速やかに避難行動をとれるよう、避難勧告・指示の発令 を行います。有事の際に迅速な行動をとるには、平時から避難指示の発令基準を明確にし、手順を整えておくことが重要です。

また、平時から住民へ避難情報を提供し、適切な避難行動を促すことも有効です。

TOPPANでは、ハザードマップや防災ブックを活用した情報提供に加え、防災啓発冊子の制作や関連イベントの運営支援も行っており、住民が自ら避難判断できる力を育む取り組みをサポートしています。

すべての住民の防災・減災意識を向上させる|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

災害対策本部の設置

大規模災害の発生時には、地方自治体は首長を本部長とする「災害対策本部」を速やかに設置しなければなりません。この本部は、 庁内の関係部署のほか、消防・警察・自衛隊・医療機関などの各関係機関との連携拠点となり、被害状況の把握や情報の集約・発信を担います。

緊急時に混乱を招かないよう、平時から発令の基準や業務分担をマニュアル化し、定期的に模擬訓練を実施することで、迅速な本部設置と円滑な運営につながります。

避難所の整備

住民の命と生活を守るための避難所の整備も、自治体の重要な役割の1つです。

避難所の開設

災害発生直後には、 避難所を迅速かつ的確に開設することが求められます。 避難所の開設は、自治体職員や施設管理者が中心となって行いますが、対応が遅れた場合には、避難者の安全や衛生環境に深刻な影響を及ぼす恐れがあります。

特に、高齢者や障害者、乳幼児などの要配慮者に対しては、バリアフリー対応や専用スペースの確保など、細やかな配慮が必要です。

TOPPANが提供する「避難所開設キット」の活用は、必要なタスクや資材を一元化し、誰でも短時間で適切な避難所開設支援が行える仕組みづくりに役立つでしょう。

自治体様向け避難所開設キット|TOPPAN Biz

避難所の運営サポート・備蓄の用意

避難所を円滑に運営していくためには、地域住民の協力を得ることが欠かせません。そのため、 自治体は職員の役割分担を明確にした運営マニュアルを整備し、訓練を通じて住民とともに体制を確認する 必要があります。

また、避難生活が長期化するケースも想定し、飲料水・食料・生活用品・簡易トイレなどの備蓄品を事前に準備しておくことが重要です。特に、衛生面の配慮が健康維持に直結するため、感染症対策やトイレの清掃体制まで計画的な整備が求められます。

TOPPANでは、限られたスペースでも必要な備蓄品を効率的に収納できる「BISTA」など、現場のニーズに合わせた備蓄ソリューションを提供しています。

災害用備蓄スタンドで災害備蓄品をコンパクトにオールインワン|BISTA/ビスタ|TOPPAN Biz

応援の受け入れ体制の確保

大規模災害時には、他自治体や民間団体、ボランティアなど外部支援の受け入れが不可欠です。応援協定の締結や、物資・人材を受け入れる窓口の整備、調整役の配置、情報共有システムの構築など、平時から支援の受け入れ体制を整備しておくことで、災害対応のスピードと質が大きく向上します。

災害廃棄物対策

地震や風水害といった大規模災害の後には、大量の災害廃棄物(倒壊建物、家具、土砂など)が発生します。通常ごみに加え災害ごみに対応するため、仮置き場の確保、分別基準、処理業者との協定、運搬経路の設定などを事前準備項目とし、十分なマネジメントができる体制を想定しておく必要があります。

地方自治体は「災害廃棄物処理計画」を策定し、復旧の迅速化と住民の生活環境保全につなげることが重要です。

自治体による防災対策の先進事例

ここでは、TOPPANが支援を行った地方自治体における防災DXの先進事例をご紹介します。住民の防災意識向上や、実効性ある計画づくりに向けた具体的な取り組みが展開されています。

【香川県三豊市】デジタル防災学習システムで防災を自分ゴト化

香川県三豊市では、児童・生徒の防災意識を高めるための取り組みとして、TOPPANの「デジ防災®」を市内の小中学校に導入しました。従来の避難訓練中心の防災教育に加え、VRによる災害体験やクイズ形式の学習を取り入れることで、 子どもたちが災害を自分ごととして捉え、自ら考えて行動する力を育む ことが期待されています。

この取り組みにより、家庭や地域にも防災意識が波及し、教育現場を起点とした地域全体へ防災文化の定着が進んでいます。

小中学生向けのデジタル防災教材を導入|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

小中学生への学校での防災教育に、楽しく学べる防災教育・学習システム「デジ防災」|TOPPAN Biz

【徳島県牟岐町】津波災害を疑似体験できるVRコンテンツの制作

南海トラフ巨大地震による津波被害が想定される徳島県牟岐町では、住民の防災意識を高めるため、TOPPANと連携して津波災害をリアルに疑似体験できるVRコンテンツを制作・導入しました。

視覚的なシミュレーションによって、 災害発生から避難までの流れを具体的にイメージできるようになり、地域住民の危機意識の醸成に貢献 しています。さらに、学校教育との連携として「デジ防災®」も併用され、子どもから高齢者まで幅広い層に防災教育が行き届く仕組みが整えられています。

住民の防災意識を高めるためには?災害体験VR制作事例|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

【大阪府吹田市】ハザードマップをセットにした防災ブックを配布

大阪府吹田市では、全住民の防災・減災意識の向上を目的に、地域のハザードマップと連動した防災ブックを市内の全戸・全事業所に配布しました。この冊子では、 地域ごとの危険箇所を可視化しながら、平時・災害時の行動指針をわかりやすく解説しており、自助・共助を促進する内容 となっています。

また、防災イベントもあわせて開催し、世代を問わず参加しやすい工夫を取り入れました。これらの取り組みは、TOPPANが企画から制作、イベント運営までを一貫して支援しています。

すべての住民の防災・減災意識を向上させる|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

自治体向け防災・減災支援サービス

その他の防災対策の取り組み事例を知りたい方は、
こちらをご覧ください。

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自治体の防災対策は平時の準備と協力体制がカギ

災害による被害を最小限に抑えるためには、地方自治体が中心となり、平時から計画的な備えを整えることが重要です。情報発信の体制や避難所の整備、住民との連携、防災教育の充実など、多方面の対策が求められます。

TOPPANでは、各自治体のニーズや地域特性に応じた防災ソリューションを幅広く提供しています。地域に最適な防災体制の構築をご検討の際は、ぜひTOPPANへお気軽にご相談ください。

お問い合わせはこちらから|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

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TOPPAN SOCIAL INNOVATION WEB 編集部

参考文献

  • 災害対策基本法等の一部を改正する法律(令和七年法律第五十一号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/336AC0000000223/#Mp-Ch_3)
  • 防災の動き : 防災情報のページ - 内閣府(https://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/r01/97/news_06.html)
  • 地区防災計画ガイドブック|内閣府防災担当(https://www.bousai.go.jp/kyoiku/chikubousai/pdf/250404_guidebook.pdf)
  • 大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手引き|内閣府防災担当(https://www.bousai.go.jp/taisaku/chihogyoumukeizoku/pdf/R5tebiki.pdf)
  • 災害対策基本法 : 防災情報のページ - 内閣府(https://www.bousai.go.jp/shiryou/oukyuutaisaku/horei_1.htm)
  • お役立ち情報(地方自治体向け): 防災情報のページ - 内閣府(https://www.bousai.go.jp/oyakudachi/info_jichitai.html)

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