2025.12.19
地域ブランディングとは|地域の魅力を可視化し、持続可能な成長を
地域ブランディングは、地域の特性・文化・産業など、地域が持つ価値を再構築し、戦略的に発信する取り組みです。DX(デジタルトランスフォーメーション)やデザインの力を活かし、住民・行政・企業が連携して地域の魅力を高め、持続的な成長につなげることを目的としています。
本記事では、地域ブランディングの概要や必要性、自治体による地域ブランディングの進め方、成功のポイント、実際の事例を解説します。
この記事で分かること
・地域ブランディングとは何か
・地域ブランディングの進め方
・地域ブランディングの成功事例
地域ブランディングとは
内閣府の定義によると、地域ブランドとは「地域+商品・サービスを名称とすることによって、それ自体を一体化して、商品・サービス、ひいては地域そのものの価値を高めようとするもの」とされています。その目的は、主に「地域資源の価値化」「関係人口の拡大」「地域経済循環の強化」です。
地域ブランディングは、単なるロゴ制作やPR活動ではなく、地域の歴史や文化、そこに込められた想いといったストーリーを共通価値として可視化する戦略といえます。
地域ブランディングが必要とされる理由
近年、人口減少や観光地間の競争激化、若者流出などの課題が深刻化し、地域の魅力を発信する力が問われています。しかし、自治体間で限られた資源を取り合い、一極集中を進めてしまうような競争は望ましくありません。
一方で、地域ブランディングは各地域単独の競争力を高めるのではなく、周遊性を高めて広域的な成長を目指すことが可能です。地域のブランド形成は、観光や移住促進に加え、地域経済・産業活性化にも寄与する取り組みといえます。
ここでは、地域ブランディングが求められる理由を詳しく解説します。
地域間の差別化戦略
地方では、人口減少や観光競争の激化、移住誘致といった課題が深刻化しています。こうした中で、旅行先や移住先として選ばれるためには、他地域との差別化に必要な「独自価値(=ブランド)」の明確化が欠かせません。
地域ブランディングは、その土地が持つ本質的な魅力を整理し、地域外の人に伝え、選ばれる地域となるために欠かせない取り組みです。
デジタル化・SNS時代における地域ブランドの影響力
情報発信の主流がSNSや動画へと移行した現在、とくにSNSでは共感を生むストーリーが認知拡大の重要な要素となっています。
「おもしろい」「美しい」「応援したい」といった感情に訴えかけるブランドメッセージを発信することが、より多くの人に地域の魅力を届けることにつながります。
地域ブランディングがもたらす経済・社会的効果
地域ブランディングによって、「〇〇といえばこの地域」というイメージが確立すると、観光客の誘致や特産品の付加価値向上が見込めます。
観光収益や移住の促進、産業への波及効果も期待でき、さらにブランディングの過程で住民自身が地域の魅力を再認識することで、愛着や誇りが育まれるといった社会的効果も生まれるでしょう。
自治体による地域ブランディング事業の進め方
地域ブランディング事業は、基本的に「現状分析」「ブランド設計」「発信・運用」の3段階で進められます。ここでは、各ステップの要点を順に解説します。
1. 現状分析と地域資源の再発見
はじめに、地域が持つ資源を整理し、その価値を客観的に評価しましょう。その際には、RESAS(リーサス:地域経済のビッグデータを地図やグラフで可視化する政府提供のシステム)による地域データやSNS上の投稿内容などを収集し、住民意識や観光客の動向、求められているニーズを把握することが重要です。
そのうえで、他地域と差別化できる魅力や特徴を見極めます。地域の現状を把握するためには、「SWOT分析」などのフレームワークが有用です。
2. ブランドコンセプト設計
次に、「誰に・何を・どう伝えるか」を整理し、地域らしさを示す価値提案(Value Proposition)を明確化します。
ロゴやコピーだけでなく、観光客や移住希望者が抱える課題やニーズにどう応えるかを検討することが大切です。地域の歴史や想いをストーリーとしてまとめることで、共感を得やすくなります。
また、統一性を保つためのデザインやブランドガイドラインの整備も欠かせません。
3. 発信と運用
地域ブランドを広く認知してもらうには、適切な媒体での発信と継続的な運用が重要です。広報媒体・SNS・Webサイト・紙媒体など、発信するチャネルと管理体制を検討しましょう。また、発信後には効果測定を行いながら改善を繰り返すPDCAサイクルを継続的に回すことが不可欠です。
データの管理・活用(マルチチャネル発信、データ分析など)を行いやすくするために、CMSやその他のプラットフォームの導入が効果的な場合もあります。
地域ブランディング成功のカギ
地域ブランディングを成功に導くためには、住民や事業者の協力を得ながら、ストーリー性のあるブランド構築をすることと、発信後に継続してPDCAを回すことが重要です。地域ブランディングを成功させるための3つのポイントを解説します。
住民・事業者・行政の一体化
地域ブランドを育てるためには、住民・事業者・行政が共通の目標を持ち、ともにブランドをつくり上げる姿勢と体制づくりが欠かせません。
行政は地域のビジョンを示し、異なる立場の関係者をつなぐ役割を担います。また、ワークショップなど対話の機会を設けることで、意見を共有しながらブランドを形成することが可能です。
共感を生むストーリーテリングとデザイン
ブランドの浸透には、共感を呼ぶ「ストーリーテリング」と、統一感のあるデザインが大きく寄与します。ストーリーテリングとは、ブランドのコンセプトを具体的なエピソードや体験を交えて伝えることで、より印象深く感じてもらう手法です。
地域産品がその土地で生まれた背景や、地域にまつわるエピソードを伝えることで、価値をより身近に感じてもらえます。
また、ブランドの世界観を統一されたデザインやメッセージで発信することで、受け手にひと目で地域らしさを感じてもらいやすくなり、記憶にも残りやすくなります。
持続的なブランド価値を育てるPDCAとデータ活用
地域ブランディングは短期で完結するものではなく、継続的な取り組みが求められます。定期的に成果を検証し、状況に応じて施策を見直すことで、変化する環境に対応しながらブランド価値を高めていくことが可能です。
そのためには、観光データ、SNS反応、Webアクセスなどのデータを活用した客観的な検証・分析が必要です。
自治体とTOPPANの地域ブランディング協働事例
TOPPANは全国の自治体と連携し、地域資源の再発見やブランド設計、デザイン(ビジュアル)制作、情報発信まで一貫した支援を行っています。ここでは、自治体とTOPPANが協働で進めた地域ブランディングの一例をご紹介します。
地域資源を活用した新グルメ開発による地域ブランド確立
愛知県春日井市の独自の食材や伝統的な食文化を活かし、新たな「ご当地グルメ」を開発して地域ブランドの確立に結びつけた事例です。
観光客の満足度向上と地域産業の付加価値創出という2つの目的のもと、食文化の調査からターゲット設定、コンセプト設計、商品開発、パッケージデザインまで一連の取り組みを実施しました。
具体的には、ブランドを的確に伝えるためのガイドラインやデザインの統一、関係者が共通の基準で活用できる体制の整備です。また、SNSを活用して参加店を募集するなど、ブランド浸透に向けた取り組みもあわせて実施しました。
地域を訪れる動機づくりや、販売促進・知名度向上の両面での成果が期待できる取り組みです。
・参考:地域資源を活用した商品開発・ブランド確立支援|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
地域産品の磨き上げと情報発信でブランド力向上
埼玉県川島町では、地域産品の魅力を再整理し、商品価値を高める取り組みとして、ビジュアル表現やストーリーテリングを強化しました。
特産品の歴史や生産者の想いを丁寧にヒアリングし、ブランドメッセージとして編集しています。さらに、オンライン・オフラインの両面で発信戦略を構築し、販路拡大とブランド認知向上に貢献しました。
地域産品の価値を「見える化」することで、地域経済への波及効果も期待できます。
・参考:地域産品を磨き上げ魅力を伝える|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
日本のお酒を世界へ発信する統合型プロモーション
日本貿易振興機構(ジェトロ)の日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)が実施したプロモーションでは、日本各地の酒蔵が持つ独自の技術や文化を、輸出が拡大している海外市場に向けて発信しました。
TOPPANは、ブランド戦略の策定からデザイン制作、映像コンテンツの制作、さらに海外イベントでの展示・広報まで、統合的に支援しました。地域の自然風土や醸造ストーリーを多言語で表現することで、海外の消費者に価値が伝わりやすくなり、輸出促進や新規ファン層獲得につながっています。地域文化の国際的な発信に成功した好事例です。
・参考:海外向けプロモーション・日本酒等の販路開拓支援|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
市民自らが地域の魅力を発信する参加型プロモーションの実施
兵庫県丹波市では、市民自らが地域の魅力を取材し、写真・文章・動画などのコンテンツとして発信する「参加型プロモーション」を実施しました。行政主導の一方向的な広報では届きにくい「生活者の視点」を活かすことで、リアルで共感性の高い情報発信が可能になっています。
TOPPANはワークショップの運営、編集ディレクション、制作サポートを提供し、市民が主体的に地域ブランドを形づくる仕組みを構築しました。結果として、地域内外の認知向上や関係人口の増加に貢献しています。
・参考:市民参画型のシティプロモーション|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
地元の高校生が取り組む、地域の魅力を伝える広告制作
青森県つがる市東京事務所では、地元高校生が地域の魅力を自ら取材し、広告として制作する取り組みを行いました。若い世代ならではの視点が活かされ、従来とは異なる切り口での、地域価値の再発見につながっています。
TOPPANは取材方法の指導から、デザイン・コピー制作のサポート、作品発表の場づくりまで伴走しました。若者の学びと地域貢献を両立させるプロジェクトにより、地域の魅力発信と次世代育成の双方に寄与しました。
・参考:高校生が取り組む「地域の魅力発信」ユニーク企画 |事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
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このほか、地域に受け継がれてきた文化財を広く発信するためのプラットフォームやアーカイブの構築、地域の魅力をオリジナルの絵本として伝える取り組みなど、幅広い手法で地域ブランディングを支援した事例があります。

地域ブランディングで地域の新たな成長モデルを描こう
地域ブランディングは、地域の魅力をわかりやすく定義・発信し、改善し続けることで地域の成長を支える、地域経営の新しい形です。さらに、デジタル技術を活用することで、より効果的な魅力発信や精度の高いデータ分析が実現可能です。
TOPPANでは、調査・ブランド設計・デザイン制作・情報発信・データ活用まで一貫して支援し、地域の可能性を広げるパートナーとして寄り添います。
地域ブランディングに関するご相談や、具体的な取り組み事例のご紹介も承っています。地域の魅力を最大化し、新たな成長モデルを描くために、ぜひお気軽にお問い合わせください。















