2025.10.20

地域産業の活性化ガイド|自治体による産業振興の方法と成功事例

自治体にとって地域産業の活性化は、地域経済の発展や住民生活の質向上に直結する重要課題です。本記事では、地域産業の定義やメリット、課題、活性化の方法、成功事例、国の支援制度・補助金を解説します。

地域産業の活性化は、地域経済の持続的な発展や、住民生活の質の向上に直結する重要なテーマです。各自治体が、人口減少や市場環境の変化といった課題に直面する中で、地域資源の磨き上げやデジタル技術の導入、販路拡大などの多角的な取り組みが求められています。

本記事では、地域産業の定義やメリット、直面する課題、活性化の具体的な方法、全国各地の成功事例、活用可能な国の支援制度や補助金について解説します。

この記事で分かること

・地域産業活性化のメリットと課題
・地域産業を活性化させる方法と取り組み事例

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地域産業とは

地域産業とは、その地域で営まれている農業・製造業・商業・サービス業などの産業を総称する言葉です。地域に雇用や所得、税収をもたらし、地域の経済基盤を支える存在であり、まちづくりや地域活性化の中心的な役割を担います。

類似する言葉に「地場産業」がありますが、こちらは一般的に、地元の中小企業がその地域に根ざした経営資源(技術・労働力・原材料など)を活かし、特定の産品を生み出しながら発展してきた産業を指します。

具体的には、地域産業が小売や建設、観光業といった幅広い分野を含むのに対し、地場産業は「瀬戸焼」や「今治タオル」のように地域独自の価値を持つ産品を育て、ブランドとして発展してきた比較的限定的な産業です。

つまり、地域産業は地域経済全体を支える「広い概念」であり、その中に含まれる地場産業は、地域らしさを象徴する「特色ある産業」と位置づけられます。

地域産業がもたらす地域へのメリット

地域産業は、地域経済や暮らしを支える基盤であり、自立的な発展を実現するために欠かせない存在です。地域産業を活性化させることで、地域には多くのメリットがもたらされます。ここでは、地域産業が地域にもたらす具体的なメリットについて詳しく解説します。

地域経済の循環強化

地域産業を振興することで、地域外への依存度を下げ、自立的な経済構造を構築することが可能です。地域内で資金や資源が循環し、地元企業に対する取引や消費が増えると、経済規模の拡大や雇用創出、所得や税収の増加につながります。

また、生産から販売・サービスまでを地域内で完結することで、地域経済の安定性が高まり、持続可能な発展も見込めるでしょう。

このような循環型の経済は、地域資源の有効活用や中小企業の発展を促進し、持続可能な地域社会の基盤形成に貢献します。

地域ブランドの形成と交流人口創出

地域産業から生み出される特産品や文化・技術は、その土地ならではのブランドを育み、地域の価値を高めます。地域ブランド力が確立されることで、観光客や移住希望者など地域外からの関心を呼び込み、交流人口の増加が期待できるでしょう。

さらに、特産品を活かしたイベントや産業体験を実施すれば、訪れる人々に地域への親しみや愛着を感じてもらいやすくなり、将来的な定住やリピーターの獲得にもつながります。こうした取り組みは、経済的な効果だけではなく、地域コミュニティの活性化にもつながり、持続的な地域発展を後押しします。

地域産業が抱えている課題

地域産業は地域に多くのメリットをもたらしますが、持続的に成長していくためには、人材不足や市場縮小といった解決すべき課題も少なくありません。これらの課題を正しく理解することは、地域産業の現状を的確に把握し、効果的な解決策や今後の方向性を検討するうえで重要です。

続いて、地域産業が抱えている3つの課題を見ていきましょう。

後継者不足と高齢化

地域産業の担い手は高齢者層が中心であり、後継者不足が深刻な課題となっています。若年層の都市部流出により、熟練技術やノウハウの継承が困難となっているのが現状です。

その結果、事業継続が困難になる企業が増加傾向にあり、地域経済全体の安定性にも影響を及ぼしています。持続的な発展のためには、技術継承の仕組みづくりや人材育成の強化が不可欠です。

市場の変化への対応

消費者の嗜好やライフスタイルが変化する中で、地域産業が十分に対応できないケースも見られます。経営資源の限界や伝統的な製法とのミスマッチが要因となり、新商品開発や製品改良が遅れることで、競争力が低下してしまうケースもあるでしょう。

また、地域外や海外市場への販路開拓が進まないことも、成長の停滞を招く一因です。こうした環境で事業を成長させていくには、マーケティング力や情報収集力の強化が求められます。

デジタル化(DX)の遅れ

地域産業では、業務のデジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入が十分に進んでいないケースも少なくありません。さらに、オンライン販売やデジタルマーケティングの活用不足も、販路拡大の妨げとなっています。

ITツールやデータの有効活用は、業務効率化やコスト削減、競争力の向上に直結します。
DXの推進は、効率と競争力を高め、持続的な成長を実現するために不可欠な取り組みといえるでしょう。

地域産業を活性化する方法

地域の産業振興は、地域経済の持続的な発展や地域社会の活力向上に直結する重要な取り組みです。ここでは、地域産業を活性化する具体的な方法をご紹介します。

地域資源の再評価・磨き上げ

地域産業を活性化するためには、地域に眠る資源や特色を改めて見直し、その価値を明確化することが重要です。

地元の農産物や工芸品、観光資源などを磨き上げ、付加価値を高めることで、地域の魅力を引き出し、地域ブランドの確立や認知度向上につなげられます。こうした取り組みは、収益性や魅力の強化に加え、後継者不足の解消にも寄与するでしょう。

TOPPANは、地域資源の発掘から磨き上げ、地域産業活性化プロジェクトの推進まで、さまざまなサービス・ソリューションで課題解決を支援します。

地域活性化|分野から探す|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

デジタル技術の導入とDX推進

業務効率化やコスト削減のためには、デジタル技術の導入とDX推進が欠かせません。生産管理や在庫管理、販売データ分析などにデジタル技術を活用することで、業務効率化や精度向上、コスト削減が可能です。

また、データに基づく需要予測や経営判断の精度向上により、計画的な経営も実現できます。DXは単なる技術導入にとどまらず、業務プロセスの改善や組織全体の競争力向上にもつながるものであり、地域産業の持続的な成長や外部環境の変化への柔軟な対応を支える重要な取り組みです。

TOPPANでは、デジタル技術を活用して地域産業の質やサービス向上を支援する多彩なソリューションを提供しています。例えば、AIアバターが独自データベースから高精度な回答を生成し、顧客一次対応を効率化する「AIナリキル」は、顧客満足度の向上やブランドイメージの強化にも役立つシステムです。

そのほか、農作業マッチングで分業化や生産規模拡大を支援する「農託®」など、各分野で地域産業のDX推進を後押ししています。

【生成AI×アバター】接客の高度化による顧客エンゲージメント向上|TOPPAN BiZ

農業支援サービス~農地の維持拡大に貢献|農託®︎|TOPPAN BiZ

販路の多様化と拡大

地域産業の安定的な収益確保や成長には、多様な販路の確保が求められます。地域産業の製品やサービスを地域内外に向けて販売する体制を整え、オンライン販売やECサイトも活用することで、新たな販路を開拓できます。

観光客や地域イベントを通じた販路拡大も、認知度向上や売上増加に効果的です。さらに、既存の販売チャネルに加え、国内外市場への展開も視野に入れることが重要です。

TOPPANでは、特産品のプロモーションや販路開拓を支援しています。例えば「ジモノミッケ!®」は、農産物の需給を可視化して生産者と顧客をつなぐWebアプリです。地産地消と地域内経済の循環促進に貢献するほか、出荷・入荷や売上管理も容易にします。

食農業の需給マッチングプラットフォーム「ジモノミッケ!®」|TOPPAN BiZ

また、インバウンドの観光誘客を目指す場合には、現地のニーズ調査と戦略立案が欠かせません。TOPPANは、イギリスのCROSS MEDIA社と提携し、観光誘客活動の全面的なサポートを提供しています。

地域の観光資源・食・文化を活かしインバウンドの観光誘客を図る|TOPPAN BiZ

戦略的なブランディングと情報発信

地域産業の特色や魅力を明確化し、ブランド価値を高めるためには、戦略的なブランディングと情報発信が不可欠です。地域ブランドを戦略的に構築したうえで、SNSやWebサイト、メディアを活用した情報発信により、消費者との接点を増やすことが効果的です。

ブランド力の向上は、販路拡大や観光客誘致、地域産業の持続的成長にもつながります。

TOPPANでは、戦略立案から施策実行までをサポートするブランドコンサルティングを提供しており、地域資源の商品開発やブランド確立もサポートしています。

TOPPANのブランドコンサルティング|TOPPAN BiZ

産学官連携による支援強化

産学官(民間企業、大学・研究機関、政府・地方公共団体)連携による支援強化は、地域産業の競争力向上や持続的成長に直結します。

例えば、大学や研究機関と連携して技術支援を受け新製品開発を行う、行政の助成金や支援制度を活用して資金面や経営面の支援を受ける、といった取り組みが考えられます。地域企業や外部団体との協働により、情報交換や共同事業の促進が可能になります。

TOPPANでは、専門知識を有するアドバイザーによる、地域特性に応じた産学官連携プロジェクトの推進支援を行っています。

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地域産業の活性化に成功した全国の自治体事例

全国の自治体では、地域資源や特色を活かし、地域産業の活性化を成功させた事例が多数あります。成功事例の特徴として挙げられるのは、地域ブランド構築、地域経済への貢献、デジタル化などの多角的な取り組みです。

他地域の事例を参考にすることで、自治体の戦略や活性化策のヒントを得られるでしょう。ここでは、TOPPANが支援させていただいた全国の自治体事例をご紹介します。

地域産品のブランド力向上を目指すPR活動

埼玉県川島町では、人口減少や地域認知不足の課題を背景に、地域資源のブランド力向上が求められていました。その課題解決のために取り組んだのが、「KJ(かわじま)ブランド」としての特産品の磨き上げやデザイン改良、テストマーケティング支援の実施です。専門家によるセミナーを通じて、事業者と販路拡大やブランド力向上のノウハウを共有しました。

さらに、Webメディアの活用により、農産物や郷土料理などの魅力をストーリー化して発信し、首都圏でのマルシェや物産展などPRイベントを開催しました。これらの取り組みにより、地域産品のブランド力向上と持続的な地域産業の活性化が期待されています。

参考:地域産品を磨き上げ魅力を伝える|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

ポイントシステムによる地域電子マネーの利用率アップ

高知県香美市では、地域電子マネー「kamica」を導入し、地域内消費の促進や住民サービス向上を図っています。また、課題となっている利用率アップと定着化への対応として、日常行動と連動したポイント付与施策の効果検証も行っています。

具体的には、資源ごみ(PETボトルやアルミ缶)をリサイクルすると「kamica」にポイントが還元される仕組みです。リサイクルステーションに搭載されたセンサーによって、洗浄済み・中身なしの資源を判別し投函されたごみの売却収益をポイント原資として活用できます。

ポイント付与によるインセンティブで住民の行動変容を促し、エコ意識の醸成と地域経済の活性化に貢献している取り組みです。

参考:補助金に頼らない地域電子マネーの循環システムを資源ごみのリサイクルで構築|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

ARを活用した体験型クルーズによる観光振興

従来のクルーズ観光では船内イベントが中心でしたが、西海国立公園九十九島では差別化と高付加価値化のため、体験型クルーズを導入しました。その一環として、国土交通省観光庁の補助金を活用し、自然や歴史を体験できるARコンテンツを開発しています。

多言語対応アプリ(日本語・英語・中国語・韓国語)により、タブレットをかざすと島々の特徴や映像・画像が閲覧できる仕組みです。さらに、モニターツアーの実施や船内ネットワーク・案内パネル整備にも取り組んだ結果、参加者の65%以上が「満足」と回答しています。

滞在時間の延長や消費金額の増加、周遊促進につながる観光振興の取り組みといえるでしょう。

参考:ARを活用した体験型クルーズで国内外観光客の滞在時間増加・周遊を促進|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

地域産業の活性化に活用できる国の支援制度・補助金

地域産業の活性化を効率的に進めるためには、国が提供する支援制度や補助金の活用が有効です。代表的な制度として、以下が挙げられます。

【中小企業庁】
地域活性化創造技術研究開発費補助事業
計画支援事業費補助事業
→ 中小企業の新分野への進出や事業拡大を支援するもの

【農林水産省】
地域資源活用価値創出対策
地域特性に応じた支援メニュー(地域活性化型・創出支援型・産業支援型など)
→ 農林水産業や地域資源を活かした事業の価値創出を支援するもの

【内閣府】
新しい地方経済・生活環境創生交付金
地方創生推進交付金
→ 地域経済活性化や地方創生に資する事業を支援するもの

これらの支援制度や補助金を組み合わせて活用することで、地域産業の持続的成長と地域経済の活性化を総合的に推進することが可能です。

新しい地方経済・生活環境創生交付金
活用事例・関連ソリューション集

新しい地方経済・生活環境創生交付金の活用事例や、申請可能性のあるデジタルツールをまとめたカタログです。

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地域産業の未来を創るためにできること

地域産業の活性化は、経済活動の拡大にとどまらず、地域の魅力向上や住民生活の質の向上にもつながる取り組みです。地域の特性や課題を踏まえて最適な施策を選択することで、効果をより高めることができます。

さらに、産学官の連携や、国の補助金・支援制度の活用により、技術面・人材面・資金面での支援体制を強化することが可能です。全国の先行事例を参考にしつつ、各自治体に適した施策を継続的に進めることで、地域産業の新たな可能性を拓き、持続的な成長につなげられるでしょう。

TOPPANでは、デジタル技術や最新の知見を積極的に取り入れ、持続可能な地域産業の基盤の構築を支援しております。自治体における課題解決や活性化に向けた最適なサポートを提供いたしますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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TOPPAN SOCIAL INNOVATION WEB 編集部

参考文献

  • 地方創生と地域産業|国土交通省(https://www.cc.okayama-u.ac.jp/~ubbz0252/Sousei-Lec/Kokkousyou280219.pdf)
  • 都市自治体が地域産業振興に取り組む意義と課題(https://www.toshi.or.jp/app-def/wp/wp-content/uploads/2022/03/report199_00.pdf)
  • 中小企業庁:地域産業活性化のために(https://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/chiiki/leaflet03.html)
  • 農山漁村振興交付金のうち「地域資源活用価値創出対策(旧農山漁村発イノベーション対策)」(https://www.maff.go.jp/j/nousin/inobe/index.html)
  • 地域再生 - 地方創生推進事務局(https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikisaisei/index.html)

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