2025.09.22
防災システムとは?
自治体における役割と導入事例を解説
自治体が自然災害(台風・豪雨・地震など)に迅速かつ的確に対応するためには、「防災システム」の活用が不可欠です。この記事では、防災システムの仕組みや自治体での役割、導入事例をご紹介します。

近年、全国各地で台風・豪雨・地震などの自然災害が頻発しており、自治体には迅速かつ的確な対応が求められています。被害を最小限に抑えるためには、情報の収集・分析・共有の効率化と、住民への的確な情報伝達を可能にする「防災システム」の活用が不可欠です。
この記事では、防災システムの仕組みや自治体での役割、導入事例をご紹介します。
この記事で分かること
・防災システムの概要や仕組み
・他自治体における成功事例
・自分たちの自治体で取り組む方法

防災システムとは
地震や台風などの自然災害から地域を守るためには、正確な情報の把握と迅速な行動が欠かせません。その基盤となるのが「防災システム」です。
防災システムは、災害に関する情報を迅速かつ正確に収集・可視化し、被害状況や避難情報を住民や関係機関に的確に伝達する仕組みです。気象データや地震・洪水などのリアルタイム情報を統合し、自治体や防災関係機関の連携を支えることで、安全確保や迅速な避難誘導を可能にします。
国レベルでも、防災DXの推進は重要な課題です。実際に、内閣府では防災情報を一元的に集約・共有する「防災デジタルプラットフォーム」の中核として、「新総合防災情報システム(SOBO-WEB)」構築を進めています。
SOBO-WEBは、災害発生時における被災状況の早期把握・推計や被害全体像の可視化を支援し、災害対応の迅速化に寄与するシステムです。SOBO-WEBの強化と活用については、2025年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太方針2025)」にも明記されています。
・参考コラム|国土強靱化とは? 自治体が果たすべき役割や 取り組み事例も紹介

まちの情報集約・発信サービスをTOPPANがワンストップで提供
こうした防災システムの重要性を踏まえ、TOPPANでは自治体向けに、情報収集・管理・発信をワンストップで支援するシステムを提供しています。
LINEや専用アプリを通じて住民からの投稿を収集できるほか、センサーやカメラなど登録デバイスからのデータも一元管理可能です。これらの情報を防災マップとして集約し、住民へ公開することで、地域全体での防災力向上にも貢献します。
自治体における防災システムの役割
地域の安全を守るうえで、自治体は災害対応の最前線となります。その中核を担うのが防災システムです。災害時の情報収集・共有と住民への情報伝達、避難・救助活動の支援、さらには平時の防災意識向上まで、幅広い役割を果たしています。
ここでは、自治体における防災システムの役割と重要性について詳しく解説します。
迅速な情報収集及び関係機関への共有
災害発生時には、いち早く状況を把握することが重要です。防災システムを活用することで、気象情報や地震データなどをリアルタイムで収集し、被害規模や発生場所、影響範囲を迅速に分析できます。
収集した情報は、自治体内の関係部署や警察・消防・医療機関などと共有され、迅速で適切な対応につなげることが可能です。
住民への的確な情報伝達
災害時に住民の命を守るためには、正確かつタイムリーな情報の提供が不可欠です。防災システムを活用することで、避難指示や警戒レベル、危険区域などの情報を防災無線、メール、SNS、アプリなど多様な手段で発信できます。
情報伝達の際には、高齢者や外国の方など、情報を受け取りにくい人にもわかりやすく伝える工夫が大切です。また、平時からの広報活動や訓練により、住民が情報を正しく理解し行動できる環境づくりも重要です。誤情報の拡散を防ぎ、信頼性の高い公式情報を届ける体制整備が求められます。

防災機能 | 防災マップ
TOPPANでは、まちの情報集約・発信サービス「PosRe®(ポスレ)」に防災機能として防災マップを搭載しています。オープンデータやセンサー情報、リアルタイム投稿情報などの複数情報へのアクセスのしやすさに特化したマップ機能。参照する情報を一括集約し、災害時の対応をサポートします。
・まちの情報集約・発信サービス「PosRe®(ポスレ)」|TOPPAN Biz
避難・救助活動の支援
防災システムを活用して被害状況や危険な場所を見える化することで、安全な避難経路の選択や避難所の設置に役立ちます。避難対象者の把握のほか、高齢者や障がいのある方など、要配慮者の情報管理にも活用可能です。
また、消防・警察・自衛隊など救助機関との情報共有により、迅速で的確な救助活動を実現できます。さらに、ドローンやGPSなどの技術と連携し、現場状況をリアルタイムで把握することで、避難・救助活動の支援対応の最適化につながるでしょう。
平時の防災啓発
防災システムは災害時だけでなく、平時からの住民の防災意識を高めるためにも活用できます。過去の災害データや地域のリスク情報をもとにした「防災学習コンテンツ」や「訓練・シミュレーションツール」を活用することで、地域住民向けの講座や情報発信、訓練参加の促進が可能です。
子どもや高齢者、外国人など多様な層に向け、わかりやすい啓発手段を展開することは、平時から情報に触れる機会を増やし、いざという時の行動力や判断力を養うことができます。
TOPPANでは、小中学生向けに楽しみながら学べるデジタル防災教育・学習システム「デジ防災®」を提供しており、災害を自分ごととして考える機会を創出しています。
自治体による防災システムの導入事例
自治体では、災害対応力の向上を目的にICTを活用した防災システムの導入が進んでいます。防災情報の可視化や多様な情報伝達手段を備えたシステムにより、災害時における迅速な状況把握と住民への的確な情報発信が可能です。
ここでは、TOPPANが支援した、自治体における防災システムに関する具体的な事例をご紹介します。
【飯綱町】業務負担を軽減し、防災にも寄与するシステムの導入

長野県飯綱町では、山間部のため池や狩猟罠の確認に多くの時間がかかり、職員や市民の見回り業務の負担が課題となっていました。特に積雪期には現地確認が困難で、異変の早期把握が難しい状況でした。
この課題を解決するため、町内全域で無線通信技術「LPWA」を利用できるよう、中継器や各種センサーを設置しました。LPWA(Low Power Wide Area)とは、省電力で広い範囲の通信が可能な無線通信技術です。水位や雨量、積雪量、気温・湿度などのデータを遠隔で確認でき、異常時には自動でアラートを通知します。
グラフによるデータの可視化で、現場に行かずに状況把握ができる仕組みで、除雪車や罠の作動状況もGPS・センサーで一括管理が可能です。将来的には年間約850時間の業務削減が見込まれ、防災対応力の向上にもつながっています。
・参考:山間部での高負荷な見回り業務をセンサーで自動化|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
【善通寺市】双方向通信機能を持つシステムによる災害対策

香川県善通寺市で課題となっていたのは、災害時に防災無線が聞こえないために情報を受け取れない住民への対応です。特に高齢者や身体障害者など、避難行動要支援者世帯への情報伝達体制の強化が求められていました。
そこで導入されたのが、TOPPANが提供する戸別送受信機「あんしんライト®」です。あんしんライト®は、LED発光や音によって視覚・聴覚に訴える仕組みであり、確実に避難情報を伝達できます。
設置工事は不要で、電池と電源アダプターを差すだけで完了するため、自治体職員が戸別訪問しながら設置と説明を行うことができました。
また、双方向通信機能によって機器の故障や電源切れを自動で検知し、クラウドに記録することで、防災訓練や豪雨災害時の確実な情報伝達を可能にしています。
・参考:住民の安心・安全と見守りを支援|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION
・参考:自治体向け住民見守りサービス「あんしんライト」|TOPPAN Biz
【三豊市】小中学生向けのデジタル防災学習システム

香川県三豊市では、学校での防災教育を充実させるため、小中学生向けのデジタル防災学習システム「デジ防災®」を全国で初めて導入しました。
従来の避難訓練だけでは学習効果が低いという課題がありましたが、同システムは児童・生徒が防災意識を自分ごととして考え、楽しく学べるように設計されています。専門家が監修した全80のコンテンツを段階的に学習することで、地震や津波、土砂災害、水害などさまざまな災害への対応や、日常の防災対策まで幅広く身に付けることが可能です。
また、学習結果は、個人・クラス・学校・地域単位で可視化できるため、防災習熟度の把握や地域の防災計画づくりにも役立ちます。
ブラウザベースで環境を選ばず均一な学習ができるほか、教職員用指導手引きシステムによって授業準備の負担も軽減されています。防災学習システムを活用し、実効性の高い防災教育を実現している事例といえるでしょう。
被害を最小限に抑えるために、防災システムの導入を推進しよう
防災システムは、自治体の災害対応力を高め、住民の命と暮らしを守る基盤となります。導入することで、従来の人手による作業負担を軽減し、災害時の情報伝達や状況把握をリアルタイムで行うことが可能です。さらに、防災だけでなく日常業務の効率化や住民サービスの向上にもつながります。
TOPPANでは、自治体向けに防災システムの導入をサポートするサービスを提供しています。防災システムの導入を検討する際には、ぜひお気軽にご相談ください。


参考文献
- 新総合防災情報システム(SOBO-WEB)について(https://www.bousai.go.jp/taisaku/soboweb/index.html)
- 内閣府次期総合防災情報システムの概要(https://www.soumu.go.jp/main_content/000915910.pdf)