2026.03.31

自治体アプリ事例集|DX推進を成功させる導入・運用のポイント

自治体アプリは、自治体が住民向けに提供するスマートフォンアプリです。迅速な情報発信や多言語対応、防災対策の手段として注目されています。本記事では、主な機能や導入事例、導入のポイントを紹介します。

自治体アプリとは、地方自治体が住民向けに提供するモバイル端末向けアプリケーションです。近年、自治体アプリの必要性が高まっている背景には、迅速かつ確実な情報伝達へのニーズ、外国人観光客・居住者の増加にともなう多言語対応の必要性、そして防災意識の高まりがあります。

自治体アプリの導入により、多岐にわたる行政サービスへの共通窓口を設置することができるようになり、これからのデジタル行政の必要インフラとなることが期待されています。さらに、災害情報や緊急のお知らせをプッシュ通知で届けることも可能です。

この記事でわかること

・自治体アプリでできること
・自治体アプリの成功事例
・自治体アプリ導入を成功に導くためのポイント


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自治体アプリの担う役割

自治体アプリは、単なる情報提供ツールではなく、行政と住民をつなぐ多機能なプラットフォームとしての役割を担っています。ここでは、住民の利便性向上と職員の業務効率化を実現する、自治体アプリが担う4つの主要な役割について詳しく解説します。

情報配信・コミュニケーション

アプリを活用することで、自治体からのお知らせやイベント情報、防災・防犯情報といった重要な情報をプッシュ通知で迅速に住民へ届けられます

たとえば、子育て世代や高齢者、居住地域といった属性情報に基づいて情報をパーソナライズして発信することが可能です。必要な人に必要な情報だけを届けることで、情報の見逃しを防ぐとともに、住民満足度の向上につながります。

行政手続き・オンライン申請

自治体アプリを導入することで、従来窓口に出向く必要があった行政手続きを、スマートフォン上から24時間いつでも行えるようになります。これにより、住民の利便性が飛躍的に向上します。マイナンバーカードと連携した公的個人認証機能を組み込むことで、本人確認が必要な手続きの安全性を確保することも可能です。

また、窓口の混雑緩和や紙の申請書類のデータ入力作業が削減されるため、職員の業務負担軽減にも直結します。

TOPPANの「クラシラセル®」は、アプリを起点に情報発信・行政手続きといった自治体サービスに誘導できるポータルサービスです。自治体サービスの共通窓口として、住民にサービス利用を促せます。

自治体ポータルサービス「クラシラセル®」

住民参画・インフラ管理

アプリを通じてアンケートを実施したり、市政に対する意見を募集したりすることで「住民参画」を促進することにもつながります

たとえば、道路の陥没やカーブミラーの破損、不法投棄などの地域の課題を、住民がスマートフォンで撮影し、位置情報とともに自治体へ通報するといった使い方もあります。

自治体の職員だけではカバーしきれない広範囲なパトロール業務を住民が補完できるようになれば、インフラの早期修繕や危険箇所の把握にも役立つでしょう。

TOPPANの「PosRe®」は、アプリやIoT機器から収集した情報を集約し、任意の形で公開できるサービスです。住民からの情報投稿にも対応しています。

まちの情報集約・発信サービス「PosRe®(ポスレ)」

地域活性化

自治体アプリの活用方法として、防災情報や観光情報の発信に加え、健康マイレージ(ポイント)の付与などを通じて、地域経済の循環と住民の行動変容を促すといった使い方もあります。

たとえば、健康マイレージで貯めたポイントを地元の店舗で利用できるようにすることで、健康寿命の延伸と地域商業の活性化を同時に実現することが可能です。

「aruku&(あるくと)」では、歩行や健診受診、イベント参加といった行動をすることでポイントを貯められます。住民の継続的な運動習慣づくりに寄与します。

市民の皆様と楽しめるウォーキングイベントで 自治体の健康増進活動をサポート aruku& for 自治体


また、観光客向けに、GPSを活用したルート案内や多言語での音声ガイド、AR/VR技術を用いた歴史的建造物の復元コンテンツを提供することで、周遊観光の促進が可能です。

TOPPANでは、デジタルソリューションを用いた観光振興を支援しています。具体的には、スマホアプリを通じて遺跡の過去の姿を体験できる「ストリートミュージアム®」や、まち歩き中にスマホをかざすことで観光案内の確認や人気キャラクターとの記念撮影などができる「まちなかAR」があります。

自治体観光誘客 XR観光ガイドアプリ ストリートミュージアム®

ウォーカブルなまちづくり推進|まちなかAR

住民満足度を高める自治体アプリ事例

住民の利便性向上や職員の業務効率化を実現した先進的な自治体アプリの導入事例は、DX推進の具体的な指針となります。ここでは、アプリの導入によって住民満足度の向上につながった事例を、導入背景や成果とあわせて詳しくご紹介します。

茨城県つくば市|住民一人ひとりに合った情報を届ける「つくスマ」

茨城県つくば市では、高齢者や子育て世代、外国人居住者への多言語対応が大きな課題となっていました。

TOPPANの自治体オリジナルアプリ構築サービス「クラシラセル®」を活用して開発されたスマートシティアプリ「つくスマ」は、この課題の解決を目的としたものです。住民の属性や関心に合わせたプッシュ通知選択機能により、必要な情報を適切なタイミングで届けることができます

多言語(自動翻訳)対応や、図書館利用カードのデジタル化など日常的に使える機能も搭載しました。これにより、住民の継続的な利用を促進するとともに、行政側からのアンケート実施も容易になりました。

参考:自治体向けオリジナルポータルアプリで情報を適切に届ける|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

宮城県名取市|行政からの情報発信を集約するポータルアプリ「ナトぽた」

宮城県名取市では、市民が行政に関する情報を得る際に複数の媒体を確認する必要があり、情報伝達に時間がかかることが課題でした。

そこで、TOPPANの「クラシラセル®」をベースとした自治体公式ポータルアプリ「ナトぽた」を開発しました。市民視点での使いやすさと、職員の負荷軽減に重点を置き、欲しい情報を探しに行かなくても届くプッシュ通知機能を搭載しています。

その結果、住民はリアルタイムで行政情報にアクセスできるようになり、情報発信ツールも一元化されたことで、運用担当職員の負担軽減にもつながりました。

参考:自治体ポータルサービス「クラシラセル®」

【お客様インタビュー】名取市役所様 自治体ポータルサービス「クラシラセル®」が行政情報を一元化! より便利で安全な市民生活に貢献

長野県飯綱町|情報公開・住民からの通報も可能な「iなび いいづな」

りんご栽培が盛んな長野県飯綱町では、山中に配水池が多く存在することに加え、猪や鹿などの獣が多く出没することから、罠の管理が大きな課題でした。

解決策として、リモート水位監視システム「スイミール®」や遠隔獣害対策「リモワーナ®」といった遠隔地の情報収集システムを、情報集約・発信サービス「PosRe®」に統合し、情報をワンストップで利活用できるようにしました。

さらに、住民向けのスマートフォンアプリ「iなび いいづな」を開発し、雨量や水位の情報を開示するとともに、住民からの通報・情報提供も行える仕組みを構築したのです。

配水池や罠の管理のために現地へ行く手間や職員の危険が軽減され、住民への防災情報等がスムーズに開示されることで、住民の安全・安心な生活を実現しています。

参考:【お客様インタビュー】飯綱町役場様 まちの情報集約・発信サービスが防災や業務効率化に「PosRe®」が貢献!

高負荷な見回り業務をセンサーで自動化|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

大分県|健康寿命延伸を目指す健康アプリ「おおいた歩得」

大分県は平均寿命が全国トップクラスである一方、健康寿命は中位にとどまっており、県民の継続的な健康づくりが大きな課題でした。

この課題を解決するため、日常のウォーキングや健診受診、イベント参加でポイントが貯まる健康アプリ「おおいた歩得(あるとっく)」を開発しました

貯まったポイントを県内の協力店で特典サービスと交換できるようにしたことで、健康に無関心な層にも利用を促進しています。楽しみながら生活習慣の改善につながる環境づくりを通じて、継続的な利用を目指しています。

参考:健康寿命延伸に向けた取り組み 健康ポイントアプリによる健康増進|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

島根県津和野町|VR復元で周遊観光を促進する城跡アプリ

歴史的な城跡である島根県津和野城は、現在は石垣しか残っておらず、観光資源としての魅力を伝えにくいという課題がありました。

そこで、体験型VR観光アプリ「ストリートミュージアム®」を導入し、江戸時代の津和野城をVRで復元しました。アプリ上で当時の壮大な姿を体験できるデジタルコンテンツを提供したのです。

この取り組みにより、観光客は歴史を体感しながら城下町を巡ることが可能になり、地域の周遊観光の促進につなげています。観光地としての魅力を高め、地域活性化を図る好事例となりました。

参考:観光DXで江戸時代のお城を復元し、周遊観光を促進|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

事例からひも解く自治体アプリ導入のメリット

これまでの事例をふまえ、自治体アプリの活用によって期待できる効果を、住民と職員双方の視点から解説します。

住民利便性の向上

住民にとっての自治体アプリ導入の最大のメリットは、生活に必要な情報や行政サービスをスマートフォン一つで手軽に享受できる点です。従来のように紙の書類を探したり、窓口へ足を運んだりする手間が省けるため、行政がより身近で便利な存在になることが期待できます。

この利便性の向上について、具体的に解説します。

情報が集約されるため周知しやすい

アプリを導入することで、市のホームページや広報誌、回覧板、SNSなど複数の媒体に分散していた情報を「総合ポータル」として一つの画面に集約できます。

ゴミ出しカレンダーや防災マップ、子育て支援情報など、日常的に利用頻度の高い機能をまとめることも可能です。

これにより、自治体は情報を周知しやすくなり、住民はアプリ一つで必要な情報を得られるようになります

最新の情報を迅速に発信できる

印刷や配布に時間がかかる紙の広報誌や、能動的にアクセスしないと見られないWebサイトと比較し、自治体アプリなら、防災情報など緊急情報を「プッシュ通知」で住民に届けられる点もメリットです。

また、アプリに登録された年代や居住地域に応じたセグメント配信を活用すれば、対象者にのみイベントの中止や期日直前のお知らせを的確に送信でき、情報の見逃しを防ぐことができます。

多言語にも対応しやすい

紙媒体で多言語版を作成するには多大な翻訳・印刷コストがかかりますが、アプリであれば利用者のスマートフォンの言語設定に合わせて、情報をリアルタイムで表示を切り替えることができます

これにより、災害時の緊急情報、ゴミの分別ルールや行政手続きの案内など、日本での生活に不可欠な情報を、言語の壁を越えて伝えることができ、外国人居住者への対応課題の解決にもつながります。

職員の業務負担の軽減

アプリを通じてオンライン申請やアンケート回答が可能になることで、窓口での対面対応や、回答の回収の負担を削減できます。これまで紙で提出されていた申請書のデータ入力作業や、書類の不備確認といった事務作業が自動化されるため、ヒューマンエラーの防止につながるとともに、職員の業務効率が向上するでしょう。

また、災害状況の破損報告のように、住民からの情報提供をアプリが受け付けることで、現場確認の事前準備が効率化し、職員のパトロール業務や現地調査の負荷改善も期待できます

情報発信コストの削減

自治体アプリの導入は、広報誌やチラシなどの紙媒体の印刷・郵送コストの削減にも寄与します。すべての住民がスマートフォンを使いこなせるわけではないため、業務内容によっては紙媒体との併用が必要な場合もあります。そのため、まずは無理のない範囲からスモールステップで導入を進めることが重要です。

アプリでの情報発信には、TOPPANの「Con:tegration®」の活用が便利です。複数メディアの情報を一元管理できるため、アプリ、公式サイト、SNSなどのコンテンツ更新を一度の作業で行えます。また、住民一人ひとりに合わせた情報配信が可能な「クラシラセル®」との連携にも対応しています。

自治体情報発信支援ツール「Con:tegration®」

自治体ポータルサービス「クラシラセル®」

先進自治体の事例から学ぶアプリ導入成功のカギ

「アプリを作ったものの、住民にダウンロードされない」「使われないまま放置されている」という失敗を避けるためには、導入前の設計と導入後の運用プロセスが重要です。先進自治体の事例から、アプリ導入を成功に導くための3つのカギを解説します。

ユーザー目線のUI/UX設計

アプリが住民に使われ続けるための条件は、「住民と職員の双方にとって使いやすい(UXが高い)」ことです。単に機能を詰め込むだけでなく、利用者の視点に立ったUI(ユーザーインターフェース)設計が求められます

たとえば、高齢者でも迷わず操作できるように文字を大きくしたり、直感的なアイコンやボタン配置を採用したり、よく使われる機能をホーム画面の目立つ場所に配置するなど、細部にわたる配慮が必要です。

また、設計段階でアンケートや聞き取り調査などを実施し、住民や職員の声を反映させるプロセスを踏むことも重要です。

庁内調整を円滑にするスモールスタート

自治体アプリの導入では、防災課、子育て支援課、広報課など関係部署が多岐にわたるため、庁内調整が大きな壁になることもあります。

成功する自治体では、最初からすべての業務をオンライン化しようとはしません。まずは「防災情報のプッシュ通知」や「ゴミカレンダー」など、住民ニーズが高く、庁内の業務フロー変更が比較的少ない機能から「スモールスタート」を切る傾向が見られます。

的を絞った小規模なリリースによって、「住民から好評を得た」「電話問い合わせが減った」といった小さな成功体験を庁内で積み重ね、その実績を基に他部署・他業務に徐々に機能を追加・拡張していくアプローチが有効です。

認知度を高める多角的なプロモーション

どれほど優れた機能を備えたアプリでも、住民にその存在を認知されなければ意味がありません。そのため、アプリのリリース後はターゲット層に合わせた多角的なプロモーション戦略が不可欠です。

広報誌や自治体ホームページでの告知はもちろんのこと、より効果的なのは、市役所の窓口や図書館、地域のスーパーといった住民の生活動線上に、QRコード付きのポスターや卓上POPを設置してダウンロードを促すなどの施策です。

さらに、地域のイベント会場に「アプリ登録サポートブース」を設けて直接ダウンロードを手伝うなど、デジタルとアナログを掛け合わせた地道な普及活動が、利用率の底上げに直結するでしょう。

自治体アプリの導入事例を指針にデジタル行政の第一歩を踏み出そう

自治体アプリの導入は、住民サービスの利便性向上だけでなく、職員の業務負担軽減にもつながります。そのため、デジタル行政を目指す上での欠かせないインフラといえます。

ただし、職員・住民のニーズは自治体によって異なるため、他自治体の事例を参考にしつつ、ニーズの高い領域から段階的に導入を進めることが大切です。まずは、自部署の業務を棚卸しし、住民ニーズの高い一つの業務に絞ったスモールスタートから検討を開始することをおすすめします。

TOPPANでは、自治体ごとのニーズに合わせた最適なデジタルソリューションを提供しています。アプリを活用した事例も多いため、自治体アプリ導入を検討している場合はぜひ一度ご相談ください。


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TOPPAN SOCIAL INNOVATION WEB 編集部

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