2026.06.30

自治体でのOCR活用法|手書き帳票のデータ化で業務効率化を実現

自治体向けOCRの必要性や選定ポイント、活用事例を解説。AI-OCRによる手書き帳票のデータ化で、入力業務の効率化や職員負担軽減、自治体DX推進を実現するポイントを紹介します。

自治体では、申請書や届出書など紙帳票を扱う業務が依然として多く、職員によるデータ入力や確認作業が大きな負担となっています。

人手不足や働き方改革への対応が求められる中、こうした業務を効率化する手段として注目されているのが、OCR(光学文字認識)の活用です。とくにAI-OCRは、手書き文字や非定型帳票にも対応できるため、自治体DXを支える基盤として導入が進んでいます。

本記事では、自治体におけるOCR導入の必要性や選定時のポイント、活用事例をご紹介します。

この記事でわかること

・自治体におけるOCRの概要
・自治体向けOCRに求められる要件
・自治体でのOCR活用事例

自治体でも活用が進むOCRとは?

OCR(Optical Character Recognition)とは、紙の申請書や届出書に記載された文字をスキャナやカメラで読み取り、デジタルデータへ変換する技術です。従来は職員が紙の書類を確認しながらシステムへ手入力していましたが、OCRを活用することでこうした作業を自動化できます。

近年では、OCRにAI技術をかけあわせた「AI-OCR」も登場し、手書き文字の癖や枠からはみ出した文字も高精度に認識できるようになりました。

少子高齢化による人手不足への対応や自治体DXの推進を背景に、業務効率化や職員負担軽減を目的として、多くの自治体で導入が進んでいます。

自治体におけるOCR導入の必要性

自治体では、申請書や届出書など紙帳票による業務が依然として多く残っており、職員による転記作業や入力確認、パンチ入力の負担が慢性的な課題となっています。こうした業務を効率化し、自治体DXを推進する手段の一つが、手書き帳票をデータ化できるOCRです。

ここでは、自治体でOCR導入が求められている背景について具体的に解説します。

自治体DX推進を支える技術

OCRは、デジタルデータでの受け取りが難しい書類や過去の紙帳票をデータ化するものであり、自治体DX推進を支える技術です。データ化した情報を基幹システムやRPAと連携することで、入力作業だけでなく業務全体の自動化を進めやすくなります。

ペーパーレス化や行政サービス向上の第一歩として、多くの自治体で導入が進んでおり、過去のデータを活用しやすくなることで、EBPM(エビデンスに基づく政策立案)や部署の壁を超えた行政手続きの実現にもつながります。

自治体DXの次なるステージへ|住民サービスの変革とAI活用で描く行政の未来|コラム|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

自治体システム標準化への移行

自治体DXの実現に向けて、2025年度末を移行期限とした自治体システム標準化が各自治体で進められています。標準準拠システムへの移行後は独自のカスタマイズができなくなるため、入力業務を効率化する仕組みの整備が必須です。

OCRは、即効性のある業務効率化の手段として有効です。また、システム標準化によって他自治体の設計を横展開しやすくなっており、OCRの導入・運用のハードルも下がっています。

人手不足と働き方改革の推進

給付金の申請や住民の異動に関する手続きでは、住民が手書きした書類を職員が目視で確認し、システムへ入力する作業が数多く発生します。OCRを活用することで、こうした転記作業を自動化でき、単純作業の削減が可能です。

これにより、通常業務だけでなく、異動が集中する時期や確定申告時期などの繁忙期における、残業時間の削減や職員のワークライフバランス改善も期待できます。さらに、入力ミスの確認や修正作業にかかる負担が軽くなることで、職員の心理的な負荷の軽減にも寄与します。

住民の利便性向上

OCRを活用して申請書類の処理を迅速化することで、給付金の支給や各種行政手続きの処理スピード向上が期待できます。また、データ入力や確認作業にかかる時間を削減できるため、職員が窓口対応や相談業務により多くの時間を割けるようになります。

さらに、紙業務のデジタル化を進めることで、オンライン申請をはじめとする利便性の高い行政サービスの整備も進めやすくなり、住民サービス全体の向上にもつながるでしょう。

自治体向けOCRに求められる要件

OCRはアナログとデジタルをつなぐ重要なツールです。しかし、自治体DXを実現するためには、OCRによるデータ化にとどまらず、業務プロセスのデジタル化や住民サービスの変革へとつなげる視点が欠かせません。そのため、OCR導入を業務やサービスの改革の入口と位置づけて検討することが求められます。

とくに、手書き帳票・非定型帳票への対応、LGWAN環境での運用、既存システムとの連携は重要なポイントです。ここでは、自治体向けOCRに求められる具体的な要件を解説します。

高精度の手書き文字認識(AI-OCR)

自治体が受け付ける申請書は、住民ごとに筆跡が異なる上、修正や書き直しが加えられることも多く、従来型OCRでは読み取り精度に課題がありました

しかし、AI-OCRであれば前後の文脈から単語を予測できるため、くずし字や筆跡のばらつきにも対応し、高精度な文字認識を実現可能です。これにより、入力ミスや確認作業を削減でき、職員負担の軽減を実現できます。

また、給付金申請や住民情報入力など、大量の帳票を処理する業務の効率化を支える重要な機能となっています。

AI技術でOCRによる文字認識率を向上させ業務を効率化|AI-OCRソリューション

非定型帳票への柔軟な対応

自治体では、住民向けの定型帳票だけでなく、民間企業や他自治体から提出される非定型帳票の処理も必要です。非定型帳票はレイアウトや記載位置が統一されていないため、帳票の種類を問わず柔軟に対応できるOCRが求められます

昨今のAI-OCRは、「氏名」「住所」といった項目名を認識し、必要な情報を自動で抽出できるため、帳票ごとに細かな設定変更を行わなくても運用しやすくなっています。事前設定の負担を軽減できるだけでなく、制度改正や様式変更にも対応しやすいため、継続的な業務改善を進めやすい点も大きなメリットです。

非定型帳票対応OCRソリューション-AI技術で自動仕分けも|FlexiCaptureシリーズ

LGWAN環境への対応とセキュリティ

自治体業務では住民の個人情報を扱うため、OCRにも高いセキュリティ水準が求められます。LGWAN(総合行政ネットワーク)対応のOCRサービスであれば、自治体ネットワーク内で運用しやすく、安全性の確保につながります。

一方で、多くのAI-OCRはクラウド上で稼働するため、LGWAN環境から安全に通信できる設計かどうかを事前に確認することが必要です。また、データの保存場所や通信の暗号化、アクセス制御など、自治体が求めるセキュリティ要件を満たしているかも重要な選定ポイントです。

既存システムとの連携機能

OCRの導入効果を高めるためには、既存の基幹システムや業務システムと連携できることが重要です。読み取ったデータをシステムへ自動登録できれば、職員による転記作業や二重入力を削減できます。

また、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やワークフローシステムと連携することで、入力後の確認や通知といった後続業務の効率化も図れます。さらに、将来的なシステム更新や自治体DXの推進を見据え、さまざまなシステムと柔軟に連携できる拡張性を備えていることも重要な要件です。

自治体によるOCR活用事例

自治体では、申請書入力や帳票処理の効率化を目的にOCRの導入が進んでいます。とくに、以下などはOCRの効果を発揮しやすい業務です。

●税務:納付書・申告書
●申告書や口座振替依頼書
●福祉分野の給付金申請書
●住民サービスの異動届・各種申請書
●子育て分野の児童手当・保育所入所申請書
●教育分野の就学援助申請

OCRは単なる入力支援にとどまらず、業務フロー全体の改善や職員負担軽減にもつながっています。ここでは、TOPPANが支援した自治体におけるOCRの導入事例をご紹介します。

【中野区】AI-OCR技術の融合ソリューションが叶えた業務負担の大幅軽減

東京都中野区では、住民税収納業務における手作業による処理負担が長年の課題でした。そこで、AI-OCRを活用した業務改善ソリューションを導入し、手書き文字認識と非定型帳票対応OCRを組み合わせることで、100種類以上の帳票を効率的にデータ化できる環境を構築しました

その結果、作業量は約30%削減され、外部委託コストも25%削減されるなど、繁忙期における職員負担の軽減につながっています。また、帳票設計の見直しや運用手順書の整備まで含めた支援により、異動の多い自治体でも継続的に運用しやすい仕組みの構築にも寄与しています。

参考:AI-OCR技術の融合で収納事務にかかる作業の自動化を実現

【会談記事】住民税収納業務の作業量が30%軽減!人海戦術頼みの現場を劇的に変えた、AI-OCR技術の融合ソリューション

【埼玉県】人員削減と業務効率化に寄与するAI-OCRの活用

埼玉県後期高齢者医療広域連合給付課では、高額療養費振込口座の事前登録業務においてAI-OCRを活用したBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを導入しました。AI-OCRによって申請書をデータ化することで、入力業務の効率化とデータ作成時間の削減を実現しています。これにより、業務負荷が軽減され、人員削減や繁忙期対応の効率化にもつながっています。

また、10万件以上の申請書を自治体別・審査ステータス別に分類し、後続業務を見据えたデジタルアーカイブも実施しました。さらに、高齢者にもわかりやすい申請書デザインやコールセンターとの連携体制整備により、住民対応品質の向上にも寄与しています。

【岐阜県・神奈川県】警察本部で発生した紙書類をOCR処理・自動振り分け

岐阜県警察本部と神奈川県警察本部では、部署ごとに異なる様式や手書き文書が多く存在し、OCR化が困難な状況にありました。そこで、オートメーションプラットフォーム製品「DocProStar」を活用し、職員が帳票をスキャンしてフォルダへ格納すると、AI-OCRでデータ化しCSV出力したうえで、各警察署・本部ごとに自動振り分けする仕組みを構築しました

その結果、職員の作業はスキャンと結果確認・修正に限定され、入力業務の負担が大幅に軽減されています。また業務の定型化が進み、進捗状況やボトルネックの可視化にもつながりました。

自治体のOCR活用で業務効率を最大化しよう

OCRは、紙帳票の多い自治体業務において、入力作業や確認業務の効率化を支える重要なDX施策です。AI-OCRの活用により、手書き文字や非定型帳票にも柔軟に対応でき、職員負担の軽減や入力精度の向上につながります。

導入にあたっては、LGWAN対応や既存システム連携など自治体特有の要件をふまえた選定が重要です。

また、OCR単体の導入にとどまらず、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)や運用改善まで含めて検討することで、より高い業務効率化効果が期待できます。自治体事例を参考に自庁に適した活用を進め、持続可能な行政運営につなげていきましょう。

TOPPANでは、自治体におけるOCR導入はもちろん、BPRや自治体DXの推進まで見据えた支援を提供しています。OCR活用や業務効率化の進め方にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

TOPPAN SOCIAL INNOVATION WEB 編集部

最新コラム

関連コラム

資料ダウンロード

関連ソリューション