2026.01.29

文化財を活かした観光の成功事例と地域振興のポイント

文化財を観光資源として活用する動きが各地で進み、2025年には「デジタルアーカイブ戦略 2026-2030」が発表されました。本記事では、文化財を観光資源として活用する方法や事例を解説します。

近年、文化財を観光資源として最大限に活用し、誘客につなげる取り組みが各地で進められています。2020年に「文化観光推進法」が施行され、さらに2025年に発表された「デジタルアーカイブ戦略 2026-2030」では、文化資産をデジタル化した利活用が地方創生の基盤として位置づけられました。

この記事では、文化財を観光資源として活用する具体的な方法や、全国の自治体による取り組み事例、事例から学ぶ文化財活用のポイントをご紹介します。

【この記事でわかること】

・文化財を活用した観光の可能性
・文化財を活用した観光振興の成功事例
・文化財による観光振興を成功させるポイント

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文化財を観光資源として活用する意義

文化財を単に「守るべきもの」としてとらえるのではなく、観光資源として積極的に活用することは、保存と継承を持続させるための有効な手段です。例えば、観光を通じて得られる入場料や販売収入などを、文化財の維持管理や修繕に充てることで、税金や寄付に過度に依存しない運営が期待できます。

また、文化財はその土地固有の歴史や物語を持ち、地域のブランド力を高める重要な資源でもあります。文化財を核に、宿泊・食事・体験型コンテンツなどを組み合わせた観光の展開は、周辺地域への消費を促し、地域経済を活性化につなげることが可能です。

参考:文化観光とは?文化資源を活かした持続可能な観光戦略|コラム|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

文化財の観光活用を取り巻く背景

文化財を活用した観光振興が重視される背景の一つに、修学旅行や教育観光の在り方の変化があります。学習指導要領の改訂により、知識を一方的に学ぶのではなく、能動的に考え、学びを深める「アクティブラーニング」が重視されるようになりました。これに伴い、修学旅行は単なる見学の場から、地域の歴史や文化を題材に探究学習を実践する機会としての意味合いが強まっています。

また、コロナ禍以降のインバウンド需要の回復や、「モノ消費」から「コト消費」への転換も、観光振興が重視される大きな要因です。城郭や古民家といった歴史的背景を持つ本物の空間での体験が、広く支持されています。これにより、地域の文化財を物語として理解し、体験する観光の重要性は、今後ますます高まっていくでしょう。

地方自治体が取り組む文化財観光の成功事例

全国の自治体では、アプリやAR(拡張現実)、VR(仮想現実)といったデジタル技術を文化財と組み合わせる取り組みが進んでいます。観光客の理解を促進するとともに、点在する文化財のつながりを可視化し、「巡りたい」「もっと知りたい」と思わせる体験を創出している点が特徴です。

ここでは、TOPPANが支援させていただいた自治体の中から、文化財の見せ方を工夫し、地域の魅力を引き出すことに成功した事例をご紹介します。

高野山:文化資源をまとめて紹介する拠点づくり

VRコンテンツ『高野山 壇上伽藍ー地上の曼荼羅ー』
製作協力:高野山真言宗 総本山金剛峯寺
製作著作:TOPPAN株式会社 © TOPPAN INC.

高野山では、文化資源が広範囲に点在し、情報が分散していることが課題でした。特に初めて訪れる観光客にとっては、地域全体の歴史や文化のつながりを把握しにくい状況にありました。

そこで、文化財や伝承を体系的に整理し、まとめて紹介する拠点の整備を行っています。また、VRコンテンツなどを活用することで、来訪者は全体像を理解した上で各所を巡れるようになりました。その結果、周遊が促進され、地域全体の魅力向上につながっています。

参考:文化観光推進事例 文化資源の魅力を伝える周遊拠点・サービス開発|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

津和野城:失われた城郭をVRで復元

津和野城は、礎石や石垣のみが残る山城であり、歴史的・文化的価値は高いものの、往時の姿を想像しにくい点が課題でした。

課題解決策として行ったのが、古地図や絵図をもとに、失われた城郭をデジタルで復元した、VR観光アプリの提供です。これにより、観光客は現地で江戸時代の城郭の姿を体験でき、古地図と現代地図を重ねて確認することも可能になりました。城跡だけでなく、周辺地域への周遊観光も促進された事例です。

観光DXで江戸時代のお城を復元し、周遊観光を促進|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

群馬県:博物館の収蔵品を商店街で体験するMRイベント

群馬県では、博物館や美術館に収蔵されている貴重な資料をデジタルコンテンツ化し、地域で利活用することで交流人口の増加を図る取り組みを行いました。

具体的には、専用のMRゴーグルを装着すると、商店街の空間に収蔵品が現れる仕組みを構築し、日常空間の中で非日常的な文化体験の提供です。結果として、商店街ににぎわいが生まれるとともに、博物館・美術館そのものへの関心も高まり、来訪促進につながっています。

参考:博物館収蔵品のデジタルデータを活用したデジタルコンテンツによるにぎわい創出イベントの実施|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

松山市:歴史資料の活用によるイベント・PR

松山市の道後湯之町では、町制130周年の節目に、歴史資料の整理・保存・活用に向けた取り組みが求められていました。

そこで膨大な史料を次代へ継承しつつ、来訪者にその歴史と魅力を知ってもらうため、まず資料の整理と高精細デジタルカメラを使用したデータベース化を実施。さらに精度の高いレプリカの作成と展示、周遊スタンプラリーの実施により、道後温泉の魅力を広く伝えました。

文化財の保護と、実体験を伴う観光振興を両立させた事例です。

参考:文化資産のデジタルアーカイブを活用した観光施策

春日大社:アプリで「周り方」を分かりやすく案内

春日大社では、歴史ある建物や文化的価値を、訪日外国人観光客を含めた幅広い来訪者に分かりやすく伝えることが課題となっていました。

課題解決のために導入されたのが、周辺に点在する史跡や文化財をアプリ上でつなぎ、背景や見どころを整理して紹介する仕組みです。これにより、観光客は案内に沿って無理なく巡りやすくなり、滞在時間や関心の向上につながりました。地域の文化を体系的に伝えるための環境整備を実現した、好事例といえるでしょう。

参考:文化財のデジタル活用・観光アプリによる周遊促進|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

事例から学ぶ文化財活用のポイント

成果を上げている地方自治体は、文化財を単に公開するのではなく、魅力が伝わる説明や見せ方を工夫し、巡りやすい仕組みを整えることで誘客につなげています。ここでは、事例から学ぶ文化財活用のポイントを詳しく解説します。

文化財の背景や意味を説明する

価値ある体験を提供するためには、「〇年に作られた」「高さ〇メートル」といった事実情報だけでなく、その文化財が持つ物語を伝えることが重要です。背景や人物とのつながりを示すことで、見ただけでは伝わらない価値を補完でき、来訪者の関心を高めやすくなります。

「どのような人が、どんな目的で作ったのか」といった背景や意味を整理し、分かりやすく伝える工夫が求められます。

デジタル技術で分かりやすく伝える

文化財の背景や意味を説明する際、案内板や紙の資料だけでは理解が追いつかない場合も少なくありません。そこで有効なのが、VRやアプリ、デジタル展示といったデジタル技術の活用です。

多言語対応はもちろん、往時の姿や人々の暮らしを視覚的に再現したり、文化財を立体的に把握できるようにしたりすることで、理解を深めやすくなるでしょう。

また、保護の観点から、通常は実物を間近で見られない貴重な文化財も、デジタルコンテンツとして体験できるようになります。

地域を周遊する仕組みを作る

文化財を単体で見せるだけでは、観光客の滞在時間は短く、経済効果も限定的になりがちです。地図情報や解説、案内を一体化し、巡りやすい見学ルートを整えることで、地域内での滞在時間や消費の増加が期待できます。
例えば、文化財と関連する食事や伝統工芸体験へつながる動線の整備も有効です。周辺の関連史跡へ観光客を誘導することで、特定の有名スポットへの集中を避け、オーバーツーリズムの抑制にもつながります。

文化財を守りながら活かす持続可能な観光振興

文化財を活用した観光を持続的に進めるためには、観光客が魅力を感じやすいように、文化財に込められた物語や価値を分かりやすく伝える工夫が欠かせません。その手段として有効なのがデジタル技術の活用です。

TOPPANのデジタルアーカイブ・観光DXは、文化財のデータ化から情報発信、周遊支援までを一貫して支援するソリューションです。文化財の価値を守りながら分かりやすく伝えることで、来訪者の理解と満足度を高め、地域全体の観光振興や持続的な活性化に貢献します。

参考:観光振興|分野から探す|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

TOPPAN SOCIAL INNOVATION WEB 編集部

参考文献

  • 日本遺産 ポータルサイト(https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/)
  • 先端技術による文化財活用ハンドブック(https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/shuppanbutsu/sentan_handbook/pdf/r1421345_01.pdf)

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