2026.10.05
広域行政とは?自治体間の連携の進め方と持続可能な自治体運営のポイント
人口減少や職員不足への対策として注目される「広域行政」について、自治体間の連携手法や進め方、取り組み事例、デジタルとBPOを活用した持続可能な行政運営のポイントを解説します。
人口減少や職員不足、財政制約などにより、単独の自治体で行政サービスを維持することが難しくなる中、自治体間で連携して行政課題に取り組む「広域行政」が注目されています。
広域行政には、事務の共同処理や公共施設の共同利用、システムの共同化などさまざまな方法があり、地域の課題や連携の目的に応じて適切な仕組みを選ぶことが重要です。
本記事では、広域行政の種類や必要とされる背景、具体的な進め方、自治体が直面しやすい課題と推進のポイントを解説します。
この記事で分かること
・広域行政の概要
・広域行政の推進における課題
・広域行政の進め方
・
広域行政とは
広域行政とは、複数の自治体が連携し、単独では対応が難しい行政課題に共同で取り組む仕組みです。人口減少や職員不足、財政制約が進む中、限られた行政資源を有効に活用し、行政サービスを維持しながら業務を効率化する手段として重要性が高まっています。
具体的には、事務の共同処理や公共施設の共同利用、基幹系システムの共同化など、地域の実情に応じてさまざまな連携方法があります。
市町村合併が自治体そのものを一つに統合するのに対し、広域行政は自治体としての独立性を維持したまま、必要な分野で連携する点が特徴です。持続的な連携には、業務仕様の標準化に加え、デジタル技術や民間事業者のノウハウを活用し、効率的な体制を構築することが求められます。
自治体に広域行政が必要とされる理由
人口減少に伴い、単独の自治体で行政サービスを維持するために必要な人材や財源を確保することが難しくなっています。特に、団塊ジュニア世代が高齢期を迎え、生産年齢人口が急減する「2040年問題」が目前となる今、持続可能な行政運営のあり方を検討する必要があります。
広域行政の枠組みを活用し、自治体間で業務や施設、システムなどを共同化することで、限られた行政資源を効率的に活用することが可能です。また、専門人材やノウハウを自治体間で共有すれば、職員の負担軽減や行政サービスの質の維持にもつながります。
さらに、DXやBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を組み合わせることで、自治体ごとの業務負担を抑えながら、より効率的かつ持続的な広域連携を実現できるでしょう。
広域行政の種類
地方自治法上、自治体間で事務を共同処理する広域行政の仕組みには、一部事務組合や広域連合のように「別法人を設ける方式」と、連携協約や協議会の仕組みを利用したり、機関等を共同設置したりするなどの「別法人を設けない方式」があります。
<別法人を設ける方式>
・一部事務組合
・広域連合
<別法人を設けずに連携する方式>
・連携協約
・協議会
・機関等の共同設置
・事務の委託
・事務の代替執行
それぞれ対象とする事務や権限の扱い、運営方法などが異なるため、自治体が抱える課題や連携の目的に応じて適した仕組みを選択することが重要です。ここでは、広域行政を進める際に活用できる代表的な仕組みについてご紹介します。
別法人を設ける方式
複数の自治体が共同で事務を処理するために、一部事務組合や広域連合などの特別地方公共団体を設立する方式です。
一部事務組合は、消防やごみ処理、上下水道など特定の事務を共同で処理する際に活用されます。
※総務省「広域連携の仕組みと運用について」をもとに作成
一方、広域連合は、職員の人材開発や後期高齢者医療制度に関する事務など、広域的に処理することが適当な事務を担います。
※総務省「広域連携の仕組みと運用について」をもとに作成
別法人を設けずに連携する方式
新たな法人を設立せず、複数の自治体が柔軟に連携し、業務効率化や職員の負担軽減を図る方法もあります。
地方自治法に基づく仕組みとして、協議会、連携協約、機関等の共同設置などがあり、連携の目的や業務内容に応じて選択可能です。
・
| 連携方法 | 主な活用例 |
|---|---|
| 協議会 | 共同での事務処理や連絡調整 |
| 連携協約 | 自治体間の役割分担 |
| 機関等の共同設置 | 委員会などの共同運営 |
・
このほか、「事務の委託」は他の自治体に事務の処理を委ねる仕組みであり、「事務の代替執行」は、災害時などに他の自治体が代わって事務を執行する仕組みです。
広域行政を実現する実施・運営手法
自治体間の連携のもと、実際の行政サービスや内部業務の効率化につなげる具体的な手法として、「共同BPO」や「共同調達」も挙げられます。
・共同BPO:複数の自治体が共同で、業務を民間事業者へ委託する
・共同調達:物品の購入やサービスの契約などを複数自治体でまとめて行う
特に、広域行政による共同BPOの展開は、総務省の「令和7年度自治体フロントヤードモデル改革プロジェクト」でも推進されている取り組みです。
※総務省「令和7年度自治体フロントヤードモデル改革プロジェクト」をもとに作成
窓口業務やバックオフィス業務などを複数自治体で標準化して委託することで、業務効率化や職員の負担軽減につなげられます。
広域行政の推進において自治体が直面する課題
広域行政は、限られた人材や財源を有効活用する手段となる一方、自治体間の合意形成や業務の標準化などが課題となります。ここでは、広域行政を進める際に課題となりやすいポイントを詳しく解説します。
近隣自治体との調整や合意形成
自治体ごとに財政状況や地域特性、住民ニーズが異なるため、共同化する業務や費用負担、役割分担について意見が分かれる場合があります。広域行政を進めるには、各自治体の課題や連携によるメリットを共有し、関係者間で合意形成を図ることが重要です。
共通の目的や連携の効果を明確にした上で、協議の場を設け、継続的に調整していくことが求められます。
自治体ごとに異なる業務仕様・システムの標準化
自治体ごとに業務手順や運用ルール、利用するシステムなどが異なるため、業務を共同化するには仕様のすり合わせが必要です。独自仕様が多いほど、システム統合や業務の共通化に時間やコストがかかりやすくなります。
連携する自治体間で業務プロセスを整理・標準化し、共通の運用ルールを構築することが重要です。
広域行政の進め方5ステップ
広域行政を実効性のある取り組みにするには、連携の必要性や目的を整理し、関係自治体との協議や実施手法の選定、必要な準備を段階的に進めることが重要です。ここでは、広域行政を進める際の具体的な5つのステップを解説します。
1.対象業務の特定
まず、広域連携によって効率化やサービス維持が期待できる業務を洗い出します。その際、客観的なデータに基づく業務量調査を実施し、業務の実態を正確に把握することが重要です。
調査結果をもとに、自治体ごとの業務量や職員配置、コスト、住民サービスへの影響などを比較し、共同化に適した業務を選定します。ここでの対象業務の選定が、広域連携の成果を左右します。
2.推進体制の構築・実施手法の選定
連携する自治体間で担当部署や責任者を明確にし、協議や意思決定を行う推進体制を整えます。その上で、連携の目的や対象業務に応じて、協議会や連携協約、事務の委託など適切な実施手法を選定します。
必要に応じて民間事業者のノウハウも活用し、業務の標準化や共同BPOなど、効率的に運用できる体制を検討することが重要です。
3.事業計画の策定
連携の目的や対象業務、実施体制、スケジュールなどを具体化し、事業計画を策定します。自治体ごとの役割分担や費用負担、業務・システムの標準化方針などをあらかじめ整理し、首長や担当者間で調整する必要があります。
あわせて、連携による業務効率化やコスト削減、住民サービスへの効果など、成果指標も設定しておきましょう。計画の具体化後は許可権者などに事前相談を行い、法令への適合性を確認することも必要です。
4.議会手続きと住民への周知
連携内容に応じて、条例の制定・改廃や予算措置など、必要な議会手続きを進めます。議会での議決後は、正式に協議を成立させ、必要に応じて許可権者へ申請します。
また、行政サービスや費用負担への影響について、住民に分かりやすく周知することも必要です。連携の目的や期待される効果を丁寧に説明し、理解を得ながら事業を進めましょう。
5.事業の実施
策定した事業計画に基づき、関係自治体や民間事業者と連携して対象業務を開始します。業務手順やシステム、情報共有の方法などを統一し、円滑に連携できる運用体制を整えることが重要です。
実施後も進捗や住民サービスへの影響を確認し、必要に応じて運用方法を改善します。
円滑な広域行政推進のポイント
広域行政を継続的な成果につなげるには、制度を整えるだけでなく、自治体間で協力しやすい業務や体制を構築することが重要です。ここでは、円滑に広域行政を推進するためのポイントを解説します。
スモールスタートによる成功体験の蓄積
広域行政を一度に大規模に導入するのではなく、まずは連携しやすく効果を検証しやすい業務から始めましょう。小規模な取り組みで成果や課題を把握し、その結果をもとに対象業務や連携範囲を段階的に広げていきます。
成果を自治体間で共有することで、関係者の理解や協力を得やすくなり、継続的な連携につながります。
業務プロセスの最適化・標準化
自治体ごとに異なる業務手順や運用ルールを整理し、連携する業務のプロセスを共通化します。このとき既存業務をそのまま統合するのではなく、重複や非効率な作業を見直し、より効率的な業務プロセスを設計することが重要です。
業務を標準化することで、システムの共同利用や共同BPOなども進めやすくなり、連携による効果を高められます。
対等なパートナーシップの維持
自治体ごとに財政規模や地域特性、抱える課題が異なることを踏まえ、それぞれの立場を尊重して連携を進める必要があります。費用負担や役割分担、意思決定のルールを明確にし、負担や権限が偏らない体制を整えることが重要です。
定期的な協議や情報共有を通じて信頼関係を築くことで、長期的に協力できるパートナーシップの維持につながります。
民間BPOやデジタルソリューションの積極的な導入
広域行政を円滑に推進するためには、自治体だけで業務を抱え込まず、民間事業者のノウハウやデジタル技術を活用して、広域連携の効率化を図ることも重要です。窓口やバックオフィス業務をBPO化し、複数自治体で共同委託することで、職員の負担軽減や業務の標準化につながります。
さらに、AIやクラウドなどのデジタルソリューションを活用し、業務プロセスや情報共有を効率化することで、広域行政の効率的な運営や持続可能性の向上が可能です。
複数市で実施された課税共同BPRの実証では、当初課税業務を対象に、自治体の枠を超えたBPR(業務改革)と共同化の可能性を検討しました。業務量や現行フローを調査・分析し、業務改善の可能性を検証しています。
BPOやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、電子申請などのDX施策に加え、業務運用や帳票の共通化についても検討しました。改善施策を実施した場合、繁忙期の複数市合計で29,475時間、職員の業務時間の約40%に相当する工数を削減できる可能性があると推定されています。
共同で業務を見直すことで、スケールメリットを活かした業務効率化に加え、超過勤務の抑制や、職員の心理的負担軽減も期待される事例です。
デジタルとBPOを組み合わせた広域行政で持続可能な自治体運営を
人口減少や職員不足が進む中、自治体単独で行政サービスを維持することが難しくなり、自治体間で連携する広域行政の重要性が高まっています。広域行政を効果的に進めるには、業務プロセスやシステムを標準化し、自治体間で共通の基盤を整えることが重要です。
さらに、民間BPOやデジタルソリューションを組み合わせることで、職員の負担を軽減しながら業務効率化を図り、行政サービスの品質維持・向上にもつなげられます。地域の実情に合った連携の形を検討し、持続可能な自治体運営を目指しましょう。
TOPPANでは、現状業務の可視化からBPR、自治体間の業務標準化、共同BPOの設計・運用などを支援しています。広域行政の進め方にお悩みの際は、ぜひご相談ください。

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参考文献
- 広域行政の手引|埼玉県企画財政部地域政策課(https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/14951/tebiki-ikkatu.pdf)
- 広域行政の必要性|青森県(https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/zaimu/shichoson/gappei-kouikihituyousei.html)
- 広域行政制度にはどういうものがあるの?|埼玉県(https://www.pref.saitama.lg.jp/a0106/kouiki/k-01.html)
- 都道府県・市町村間連携事業の効果と課題~公共施設集約化の事例分析を通じて~|日本経済研究所(https://www.jeri.or.jp/survey/202510-11_07/)
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