2026.10.15
自治体における業務量調査の進め方|現場負担を抑える進め方とBPR・DXにつなげるポイント
本記事では、自治体の業務量調査の進め方やポイントを解説。現場の理解や協力を得ながら業務を可視化し、調査結果をもとにBPR・DX・BPOによる業務効率化につなげる方法を紹介します。
人口減少や職員不足が進む中、自治体には限られた人員で行政サービスを維持するための、業務の効率化や職員配置の見直しが求められています。その第一歩となるのが、職員がどの業務にどれだけの時間を費やしているのかを把握する「業務量調査」です。
一方で、現場職員の理解や協力を得て調査を進め、集計したデータをBPRやDX、BPOなどの具体的な改善につなげるためには、適切な調査設計と分析が欠かせません。
本記事では、自治体における業務量調査の進め方や現場の協力を得るためのポイント、調査結果を業務改革につなげる方法を、先行自治体の事例とともに解説します。
この記事で分かること
・自治体における業務量調査の概要と、業務分析・BPRとの違い
・自治体における業務量調査の手順とポイント
・調査結果をBPR・DX・BPOや改善効果の試算につなげる方法
・
自治体における業務量調査とは
自治体の業務量調査とは、庁内の業務を一覧化し、処理件数や作業時間、担当者数、実施時期などを定量的に把握する取り組みです。全庁または複数部署の業務負荷を俯瞰し、負荷の大きい部署・業務や、詳細な分析が必要な業務を抽出する役割があります。
ただし、業務量調査だけでは、負荷が大きい理由や最適な解決策までは判断できません。選定した業務を工程単位で分析し、BPR・DX・BPOなどの具体的な施策へつなげることが重要です。
自治体における業務量調査の目的
自治体の業務量調査は、職員がどのような業務にどれだけの時間を費やしているのかを把握し、業務の実態を可視化するために行います。単なる業務量の集計にとどまらず、業務上の課題や改善余地を明らかにし、BPR・DX・BPOなど次の施策につなげることが重要です。ここでは、自治体が業務量調査を実施する主な目的を整理します。
業務構造の可視化
業務量調査の主たる目的の1つは、部署・担当者ごとの業務内容や業務時間を把握し、自治体全体の業務構造を可視化することです。業務の偏りや繁閑、重複・類似業務などを明らかにすることで、非効率な業務や改善すべき領域を特定できます。
年間総工数だけでなく、処理件数や1件当たりの時間、担当職員の区分、実施時期などを組み合わせて分析することが求められます。
改善候補業務の絞り込み
可視化されたデータを掛け合わせて分析することで、効果的かつ戦略的に改善すべき業務を特定することも目的の1つです。限られた予算や人員などのリソースを集中投下すべき優先順位を、データに基づいてより正確に判断できます。
総労働時間の長さだけでなく、特定時期への負荷集中や、一部の職員へのノウハウの依存による属人化など、多角的な視点から改善候補を絞り込むことが重要です。
職員配置の適正化
業務量調査によって業務ごとの業務量や繁閑を把握し、特定の部署や職員に業務が集中していないかを明らかにできます。業務量と職員数を照らし合わせることで、実態に即した人員配置や応援体制を検討する材料が得られるでしょう。
配置人数は業務量だけで機械的に決めず、超過勤務や業務の難易度、繁忙期、住民への影響なども含めて判断することが重要です。
BPR・DX・BPOの推進
業務量調査は、BPR(業務改革)・DX(デジタル化)・BPO(外部委託)といった次の施策につなげるための足がかりとなるものです。調査結果をもとに、業務の廃止・集約・標準化や、システム導入・自動化などを検討します。
また、定型的で標準化しやすい業務は、BPOや庁内事務センターへの集約も選択肢となります。業務量調査とBPRで業務を整理することで、より効果的なDX・BPOの実施が可能です。
住民サービスの維持・向上
業務量調査は、その後のBPR・DX・BPOの効果を高め、最終的に住民サービスの維持・向上につながる取り組みです。業務効率化で生まれた人的リソースを、複雑な市民相談や政策立案などのコア業務へシフトできるほか、窓口の待ち時間削減やオンライン手続きの拡充といった住民の利便性向上にもつなげられます。
人口減少に伴う将来的な職員数の減少を見据え、多様化・複雑化する住民ニーズに応えられる持続可能な自治体運営体制を構築する上でも、重要な取り組みといえます。
業務量調査で把握する項目
業務量調査の結果をBPR・DX・BPOにつなげるには、作業時間だけでなく、業務の内容や時期、担当者、関連法令、使用システムなども把握する必要があります。
ただし、全職員に詳細な入力を求めると回答負担が大きくなるため、全庁調査では必要最小限の項目を収集して自治体全体の業務量や偏りを俯瞰し、選定した業務だけを詳細に調査する二段階設計が有効です。
例えば、全庁調査(一次調査)では、以下のような項目を把握します。
● 業務の基本情報(所属や業務の分類など)
● 発生時期と繁閑(月次、週次など)
● 定量的ボリューム(処理件数、1件あたりの処理時間)
● 業務の特性(定型か非定型か、内部事務か対人・窓口業務かなど)
一次調査の結果を踏まえ、二次調査では、選定した業務について、以下のような項目を整理します。
● 関連法令・例規
● 使用システム(専用ツール、Excel、紙など)
● 業務フロー(申請の受付チャネルなど)
● 他部署との連携方法
● 難易度(属人化の度合い)
● 現場の課題(システムへの二重入力、手戻りが頻発するなど)
自治体が業務量調査を進める具体的な手順
業務量調査を効果的に進めるには、まず目的や対象範囲を明確にした上で、現場の負担を抑えながら必要なデータを収集することが重要です。また、調査の実施から結果の分析、改善対象の選定までを一連の流れとして設計し、調査結果をBPR・DX・BPOといった次の施策につなげる必要があります。
ここでは、自治体における業務量調査の基本的な進め方を、各段階に分けて解説します。
1.調査目的・活用方法・成果物を定める
まず、業務量調査によって何を明らかにし、どのような業務改善につなげるのかを明確にします。BPOや庁内のDX推進、職員配置の適正化など、調査の目的を定めることが重要です。
目的に応じて調査対象や収集するデータを定めることで、調査後の分析や施策検討までスムーズにつなげやすくなります。精度の高い業務量調査があってこそ、改善を伴った効果の高い委託やデジタル化が可能になるのです。
2. 対象範囲・業務粒度・調査期間を決める
全庁を対象とするのか、一部部署から試行するのかを決め、業務をどの程度の細かさで分類するかを統一します。調査期間は、繁忙期・閑散期による偏りが生じないように留意し、必要に応じて年間件数や月別の業務量も収集しましょう。
また、次年度の予算要求につなげる場合は、庁内の予算編成スケジュールから逆算して実施時期を設定することが重要です。
3.調査項目・測定方法・ツールを設計する
具体的な調査項目や測定方法を定め、調査に使用するツールを選定します。職員の入力負担を抑え、回答のばらつきを防ぐため、入力項目や回答方法はできるだけシンプルにすることが重要です。
Excelなどの既存ツールに加え、専用のデジタルツールを活用することで、データの集計や分析まで効率化しやすくなります。
4.原課・現場職員への事前説明を行う
業務量調査への協力を得るためには、原課・現場職員に対する実施目的や調査内容、結果の活用方法の事前説明が欠かせません。「職員の業務を評価するための調査ではない」ことも明確に伝え、現場の理解を得ることが重要です。
5.調査実施と集計
調査票やツールを使い、各部署・職員の業務内容や処理件数、作業時間などのデータを収集します。現場の入力負担を抑えるため、回答方法や記入ルールをあらかじめ統一し、必要に応じて問い合わせ窓口を設けることも有効です。
回収したデータを集計し、部署ごとの業務量や業務時間の偏りなど、全庁的な業務構造を把握します。
6.集計データを可視化する
集計した業務量や作業時間をグラフや一覧表などで可視化し、部署・業務ごとの特徴や偏りを把握します。業務量の多い業務や時間を要する業務、定型的な業務などを明確にして改善の優先順位を検討するとともに、誰が見ても課題を把握できる形に整理し、原課との課題共有や、BPR・DXの検討に活用します。
自治体職員の納得と協力を得る業務量調査のポイント
業務量調査は、現場職員の協力がなければ十分なデータを集められないため、調査による負担を抑え、理解と協力を得るための工夫が欠かせません。一方的に回答を依頼するのではなく、現場代表者に調査設計や試行へ参加してもらい、回答しやすい項目や業務分類を一緒に検討することが重要です。
ここでは、現場の理解と協力を得ながら業務量調査を進めるための具体的なポイントを解説します。
現場のメリットを伝える丁寧な事前説明
現場職員に調査の必要性を理解してもらうため、調査の目的や結果の活用方法を事前に説明することが不可欠です。事前に現場と十分にコミュニケーションを取り、職員不足などの共通課題を共有する必要があります。
また、業務量調査の目的は職員評価ではないことや、業務負担の軽減や働き方の改善につながる調査であることを伝え、現場にとってのメリットを具体的に示しましょう。
記入負荷を最小化するフォーマット設計
現場職員の負担を抑えるため、調査項目を必要最小限に絞り、短時間で回答できるフォーマットを設計します。選択式やプルダウンを活用して自由記述を減らすことで、入力の手間や回答のばらつきを抑えるのが有効です。
デジタルツールを活用すれば、入力・集計を効率化し、通常業務への影響を最小限に抑えられます。
調査結果の速やかな開示・還元
調査結果を現場へできるだけ速やかに共有し、職員が自分たちの業務状況や課題を確認できるようにします。
業務量の偏りや非効率な作業など、明らかになった課題と改善の方向性を具体的に示し、BPR・DXや業務負担の軽減に反映します。これにより、調査への協力が実際の改善につながったことを実感してもらうことが可能です。
業務量調査結果をBPRとDX・BPOにつなげる方法
業務量調査で得られたデータは、単なる現状把握のための資料とするだけでなく、業務のあり方を見直し、改善策を導くための重要な材料となります。業務量や作業時間、業務の特性などを分析し、業務の廃止・集約・標準化・自動化など、改善の方向性を具体化することが重要です。
ここでは、調査結果をBPRからDX・BPO施策へつなげ、業務効率化や職員の負担軽減を実現するポイントを解説します。
業務の工数×性質による優先度マトリクスを活用する
改善対象の業務を選定する際は、まず該当業務の性質上、そもそもデジタル化や委託が可能かどうかを検討する必要があります。その上で、業務量調査で把握した工数と業務の性質を掛け合わせ、改善効果の大きい業務から優先的に見直す流れが効率的です。
● 高工数×定型業務:デジタル化・自動化の効果が高いため、最優先でDXを進め、可能な限り自動化を目指す
● 高工数×非定型業務:まずBPRによる業務プロセスのスリム化・標準化を行った上で、デジタル化を検討する
● 低工数×定型業務:費用対効果を見極めながら、RPAやツール導入などを検討する
● 低工数×非定型業務:職員の判断や専門性を生かす業務として、原則的には優先度を下げる
このように優先度の高い業務から着手することで、限られた予算や人員でも効率的にBPR・DX・BPOを推進することが可能です。
BPOやDXを進める前にBPRを徹底する
業務量調査で明らかになった業務をそのままデジタル化するのではなく、まず業務の必要性や手順そのものを見直します。廃止・統合・集約・簡素化によって不要な作業や重複業務を取り除いた上で、デジタル化やBPOの対象を選定することが重要です。
BPRとDXを一体的に進め、単なる紙のデジタル化にとどまらない業務効率化を目指します。
先行自治体の業務量調査・BPR取組事例
業務量調査をBPRやDXにつなげるには、実際の自治体がどのように調査を行い、業務改善へ結び付けたのかを参考にすることが有効です。TOPPANでは、自治体の業務実態を把握する調査から、業務分析や改善施策の検討まで、自治体ごとの課題に応じた支援を行っています。
ここでは、TOPPANが支援した自治体の事例を通じて、業務量調査を起点としたBPRの進め方や成果をご紹介します。
業務量調査を踏まえたBPRによる市民サービスの維持・向上|福岡市
福岡市では、区役所職員の業務負荷増大を見据え、限られた人的リソースを必要性の高い業務へ振り向けるため、業務量調査を踏まえた業務改革(BPR)を実施しました。
7区役所の11業務を対象に、現行業務のプロセスや業務量、課題を調査・可視化するとともに、区ごとの違いも整理しました。その結果をもとに、改善後の業務フローや業務量を可視化し、共通事務の集約化・委託化、業務手順の見直し、デジタル技術の活用などを検討しています。
参考:
行政BPRで市民サービスの維持・向上へ|事例紹介
業務量調査を踏まえて6業務を集約・外部委託|熊本市
熊本市では、定型業務の増加や時間外勤務の常態化を背景に、業務量を把握し、効率化の余地を明らかにしました。11業務を対象に事前調査を行い、業務量や負荷を可視化するとともに、集約による削減効果を数値化しています。
その結果を踏まえ、6業務を総合行政事務センターへ集約・委託し、担当者の時間外勤務を対前年比約32%削減する成果につなげました。
参考:
熊本市総合行政事務センター 行政DXと業務集約による効率化の実現|事例紹介
年間100万枚の書類を電子化し、職員の時間外勤務を削減~熊本市×TOPPANの業務改革|コラム
業務量調査でボトルネックを特定し持続可能な行政運営を目指す|武蔵野市
武蔵野市では、子育て関連手続きの縦割りによる非効率や職員不足を背景に、持続可能な行政運営に向けた業務BPRを実施しました。業務量調査や窓口実態調査、ヒアリングなどを通じて業務プロセスを可視化し、重複業務やアナログ作業などのボトルネックを特定しています。
調査結果をもとに、定型業務のBPO化やオンライン申請の拡大、RPA・AI-OCRなどの活用を検討。市民サービスの向上と業務効率化の両立を目指しています。
参考:
「子育て支援」事務を部内横断で最適化。 行政手続きのオンライン化とボトムアップ型業務BPRで持続可能な市政運営へ|事例紹介
業務量調査をもとに自治体DXや業務プロセスの最適化へつなげよう
自治体の業務量調査は、業務や職員の負担状況を可視化するだけでなく、業務プロセスを見直すための出発点として活用することが重要です。
まず全庁的な業務量の傾向を把握し、改善効果が期待できる業務を選定した上で、業務フローや負荷の原因を詳しく分析しましょう。現場の負担や反発を抑えながら正確なデータを収集し、業務の廃止・集約・標準化・自動化などの次の改善施策につなげることが求められます。
業務量調査からBPR・DX・BPOまでを一貫して進めることで、職員がコア業務に集中できる環境を整え、持続可能な自治体運営を目指すことが可能です。
TOPPANでは、全庁アンケートによる業務量の傾向把握から、対象業務の現状整理と改善後のフロー作成、BPR・DX・BPO施策の検討、導入効果の試算まで支援しています。調査結果を予算化や具体的な改善施策につなげたい場合は、ぜひご相談ください。
参考文献
- 自治体フロントヤード改革|総務省 (https://www.soumu.go.jp/frontyard_portal/phase2_1.html)
- 課題解決ツールボックス|一般社団法人 行政情報システム研究所 (https://www.gov-toolbox.jp/)
最新コラム
関連コラム
資料ダウンロード
関連ソリューション
関連事例
-
東京都 豊島区
NEW
窓口業務の体制構築と運営支援で実現する自治体業務効率化
住民票・戸籍証明書発行(窓口・郵送)、住民異動届処理業務(窓口・入力) 体制構築および住民基本台帳等関連業務処理・フロア住民対応・公金収納等の受託
-
東京都 武蔵野市
NEW
「子育て支援」事務を部内横断で最適化
行政手続きのオンライン化とボトムアップ型業務BPRで持続可能な市政運営へ部内横断型の子育て支援事務BPR、オンライン申請率向上に向けたDX実行支援、および窓口・バックヤードの一体型業務委託
-
熊本市
熊本市総合行政事務センター
行政DXと業務集約による効率化の実現熊本市における総合行政事務センターの設立支援。 市税、医療費助成、就学援助など複数業務を対象とした集約とDX推進。












