2026.06.12

税務DXで自治体の業務はどう変わる?取り組みの優先順位と成功事例を解説

自治体の税務DXを成功させる進め方を解説。優先的に取り組むべき業務領域やBPRの重要性、TOPPANの支援事例を通じた業務効率化・住民サービス向上のポイントを紹介します。

人口減少や制度改正への対応が進む中、自治体の税務課・収納課・DX推進部門では、限られた人員で膨大な税務業務を処理する体制づくりが大きな課題となっています。さらに、住民・事業者からは、オンライン手続きや迅速な対応へのニーズも高まっており、デジタル技術を活用した利便性の高い行政サービスの構築が急務です。

この記事では、自治体で税務DXが求められる背景を整理したうえで、優先的に着手すべき業務領域や推進のポイントを解説します。また、TOPPANによる自治体支援事例を通じて、現場負担を軽減しながら持続可能な税務行政を実現する方法もご紹介します。

この記事でわかること

・税務行政DXの概要
・税務DXを推進する上でのポイント
・税務DXの成功事例と導入効果



バナー画像

税務DXとは?国税・地方税で進むデジタル化の流れ

税務DXとは、国税庁が策定した「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2023-」に基づき、税務行政全体をデジタル前提へ転換する取り組みです。

「納税者の利便性向上」「課税・徴収事務の効率化・高度化」「事業者のデジタル化促進」の3つを柱として推進されています。e-Taxやマイナポータル連携の活用により、来庁不要のオンライン手続きが拡大しているほか、データ活用による申告誤りの防止や業務精度向上への取り組みも進んでいます。

これらは、限られた人員でも安定した税務運営を実現するため、データ分析やデジタル前提の業務プロセスへ転換するものです。単なるシステム導入ではなく、業務プロセスそのものを見直す行政改革として重要性が高まっています。

自治体に税務DXが求められる背景

自治体の税務業務は、住民生活を支える重要な基幹業務である一方、制度改正や住民ニーズの多様化により、業務量や運用の複雑化が進んでいます。ここでは、こうした自治体が税務DXへ取り組むべき背景や課題を具体的に解説します。

複雑化する税務業務と深刻な人員不足

自治体の税務業務は、固定資産税や住民税など各税目の制度改正や例外対応の増加により、年々複雑化しています。申告受付から課税、異動処理、督促・滞納整理まで幅広い業務を限られた人員で担う中で、紙申告や郵送、手作業による確認・入力も多く、繁忙期には業務負荷が集中しやすい状況です。

さらに、人口減少に伴う職員数の制約やノウハウの属人化も進み、安定的な運営が難しくなっています。その結果、職員が本来注力すべき判断業務や住民対応に十分な時間を割けないケースも増えているのが実情です。これらを解消するため、DXによる持続可能な体制への見直しが求められています。

行政サービスの利便性向上ニーズ

住民や事業者のデジタル利用が進み、「いつでも・どこでも完結できる利便性」への期待が高まってきました。自治体の税務手続きにおいても「来庁や郵送の負担を軽減してほしい」というニーズは年々増加しており、申告や各種申請、納付のオンライン化が進んでいます。

また、入力補助や手続きの簡素化によって、申告ミスの防止や利用者負担の削減を図ることも重要です。さらに、問い合わせ対応の効率化や分かりやすい情報提供など、住民接点の質の向上も求められています。

こうした変化に対応するため、自治体税務業務でもデジタル前提のサービス設計が必要です。

国が進める自治体システム標準化・共通化への対応

国主導で進む自治体基幹業務システムの標準化・共通化により、税務システムの見直しは避けられない状況です。標準仕様への準拠やガバメントクラウドへの移行など、従来システムの刷新が求められる中、各自治体独自の運用ルールの見直しや業務フローの整理・標準化も重要な課題となっています。

一方で、システム移行は現場業務への影響も大きく、職員負担や運用変更への不安も少なくありません。そのため、単なるシステム更改としてではなく、業務全体を見直すDXの視点で、計画的かつ段階的に取り組むことが重要です。

税務DX推進で優先的に着手したい業務領域

税務DXを効果的に進めるには、すべての業務を一度に変えるのではなく、効果が見えやすい領域から段階的に着手することが重要です。特に、定型業務が多い業務や住民利便性への影響が大きい領域は優先度が高いといえます。

ここでは、税務DXを進める上で着手しやすい業務領域を解説します。

1. AI-OCRやRPAを活用した入力作業の削減

税務DXでは、まず繁忙期に集中する大量書類の処理を自動化・効率化し、職員の余力を創出することが重要です。例えば、紙申告書や各種帳票のデータ化にAI-OCRを活用することで、手入力作業の大幅な削減が可能です。

また、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入すれば、定型的なデータ登録やシステム間の転記作業を自動化でき、処理時間の短縮や入力ミス防止にもつながります。これにより、職員は審査や判断など付加価値の高い業務へ集中しやすくなります。

一方で、帳票様式の統一や読み取り精度の担保など、導入効果を高めるための事前整理も欠かせません。TOPPANでは、手書き文字や非定型帳票に対応したAI-OCRソリューションを提供しています。

【関連サービス】AI技術でOCRによる文字認識率を向上させ業務を効率化|AI-OCRソリューション

2. 電子申告(eLTAX)の普及促進

AI-OCRやRPAを導入しても、確認や修正といった手作業はゼロにはなりません。そのため、紙そのものを減らす電子申告の推進は重要な施策です。

地方税の電子申告基盤である「eLTAX」を活用することで、申告・申請手続きのオンライン化を実現でき、受付・開封・入力などの負担軽減につながります。データ形式で受領することで、審査や課税処理の効率化も実現可能です。

納税者側にとっても、来庁不要・時間制約のない手続きが可能となり、利便性向上につながるでしょう。普及のためには、事業者や税理士への周知・利用促進施策が重要であり、段階的な利用拡大が鍵となります。

3. 問い合わせ対応の省力化

問い合わせ対応の省力化は、入力業務などのバックヤードだけでなく、フロント業務の負担軽減にもつながる重要な施策です。

具体的には、FAQサイトやAIチャットボットを活用することで、電話や窓口に集中しがちな問い合わせを分散・削減できます。また、よくある質問をデジタル化・可視化することで、住民が自己解決しやすい環境の整備につながるでしょう。

オンライン申請や手続き案内の充実により、問い合わせそのものの発生抑制も期待できます。

さらに、対応履歴や問い合わせデータを蓄積・分析することで、業務改善やサービス向上にも活用可能です。これにより、職員の対応時間を削減し、複雑な相談や個別対応にリソースを集中できる体制を構築できます。

TOPPANではAIチャットボットの導入から運用までをトータルでサポートしています。

【関連サービス】AIチャットボットサービス~導入から運用まで一括でご支援

また、コンタクトセンターBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)にも対応しており、業務の外部委託化だけでなく、問い合わせ業務の全体最適化や効果検証も含めた支援が可能です。

【関連サービス】コンタクトセンター BPOサービス|TOPPAN BPO

4. 業務プロセスの見直し・標準化

個別のDX施策は、日々の定型業務に追われる職員負担を軽減する有効な手段です。一方で、デジタル化の効果を最大化するには、現行業務の流れや運用ルールを可視化し、無駄や重複を整理することが欠かせません。

業務プロセス全体を見直して最適化するBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)に取り組むことで、属人化や非効率といった根本課題への対応が可能になります。

ただし、業務そのものの変更を伴うため、現場への影響は大きく、導入難易度も高くなります。そのため、まずはAI-OCRの導入やeLTAX、eL-QR活用など、既存業務を活かしたデジタル化から段階的に進める方法が有効です。

TOPPANでは、多様な自治体業務のアウトソーシングを現状分析や業務改革の段階から支援しています。

【関連サービス】自治体向けBPOサービス Hybrid-BPO®|TOPPAN BPO

税務DXを円滑に進めるためのポイント

税務DXは、単にシステムを導入するだけでは十分な成果につながりません。現場負担や運用面も考慮しながら進めることが重要です。

ここでは、税務DX推進で押さえるべきポイントを整理します。

現状の業務プロセスを可視化する

税務DXを進める第一歩は、申告受付から課税・徴収までの業務フロー全体を整理し、現状を正確に把握することです。各工程の作業量や処理時間を見える化することで、負担が集中している業務や、紙運用・手作業・二重入力といった非効率な工程を洗い出せます。

また、属人化した運用や暗黙知を明文化することで、標準化や円滑な引き継ぎにもつながります。可視化を通じて、優先的にDXへ着手すべき領域を明確にすることが可能です。

ノンコア業務は外部委託・BPOの活用を検討する

データ入力や書類発送、問い合わせ一次対応などの定型的なノンコア業務は、DXだけでなくBPO活用も有効な選択肢です。

システム活用によるDX推進とBPOを組み合わせることで、単なる人手の代替ではなく、業務全体の効率化や負担平準化を実現できます。これにより、職員が高度な税務判断や住民対応といったコア業務に専念しやすい環境を整えることが可能です。

TOPPANでは、デジタル・アナログ双方に対応したBPO支援を提供し、自治体ごとの課題に応じた運用をサポートしています。

【関連サービス】自治体向けBPOサービス Hybrid-BPO®|TOPPAN BPO

情報セキュリティ対策の徹底

税務情報は極めて機密性が高いため、税務DXではセキュリティ確保が最優先事項となります。アクセス権限管理やログ監視を徹底することで、不正利用や情報漏えいリスクを低減できます。

また、データ暗号化やネットワーク分離などの技術的対策を講じ、安全な運用環境を整備することも重要です。

さらに、クラウド利用や外部委託時には、委託先のセキュリティ水準や契約内容の十分な精査が欠かせません。職員教育やルール徹底を通じて、人的リスクを含めた総合的なセキュリティ対策の強化が求められます。

スモールスタートの実施

税務DXは、全ての業務を一度に変革するのではなく、対象業務を絞って段階的に進めることが重要です。まずは、効果が見えやすく現場負担の軽減につながる領域から着手することで、成功体験を積みやすくなるでしょう。

小規模導入によって課題やリスクを把握し、改善を重ねながら全体展開へつなげることが可能です。現場の理解や協力を得やすく、運用変更への抵抗感を抑えながら定着を図れるだけでなく、短期間で成果を可視化することで、組織内のDX推進への機運醸成につなげられます。

職員のデジタルスキルの向上と意識改革

税務DXを定着させるためには、システム導入だけでなく、職員のデジタルリテラシー向上が欠かせません。研修やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を通じて、システム操作のみならず、データ活用や業務改善の視点を育成することが大切です。

さらに、「従来業務をそのままデジタル化する」のではなく、業務の在り方そのものを見直す意識改革も求められます。現場の不安に配慮しながら段階的な導入と丁寧なフォローで理解を促進し、デジタルを前提とした働き方を浸透させ、継続的な業務改善へとつなげていくことが重要です。

TOPPANでは、職員がDXを「自分ごと」として取り組めるような研修の実施もサポートしています。

行政DXを職員が自分ごとにするためには?動画配信を主軸とした行政DX研修|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

税務DXの成功事例と導入効果

税務DXの効果を具体的にイメージするには、実際の自治体事例を把握することが有効です。特に、現場課題に寄り添いながら導入された事例は、実践的なヒントとなります。

ここでは、TOPPANのソリューションを活用した税務業務のDX・効率化につながる事例や、税務と隣接する窓口・バックヤード業務を含めた事例をご紹介します。



バナー画像

【千葉県柏市】BPRとDX推進による持続可能な税務行政サービスの実現

千葉県柏市では、限られた人員の中で税収確保と住民サービス向上を両立するため、ノンコア業務の外部委託とDX推進を一体的に進めました。

納税促進センターの運営や窓口・バックヤード業務を包括的に委託し、業務の集約と効率化を実現しています。さらに、自動音声電話システムやSMSを活用することで、夜間・休日を含めた納付勧奨を可能とし、接触率の大幅な向上につなげました。

また、業務フローの可視化と継続的な改善のために行ったのが、現場に入り込むボトムアップ型BPRです。RPAやAI-OCRの活用も視野に入れながら、定型業務の削減とサービス品質向上を両立し、職員が滞納処分などの専門的なコア業務へ集中できる体制を構築しています。

自治体の業務効率化を加速させる行政DX ボトムアップ型BPRとDX推進で実践する、持続可能な税務行政サービスの実現|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

【大分県大分市】業務の見直しとBPOがDX推進の基盤に

大分市役所市民税課において課題となっていたのが、繁忙期に月100時間を超える時間外勤務です。課題を解決するために行ったのが、業務のアウトソーシングです。現行業務を詳細に見直したうえで、運用を標準化したマニュアルを整備しました。

稼働後は、繁忙期の時間外勤務が約50%まで削減され、他部署への応援業務にも人員を配置できるようになっています。今後は、AI-OCRやRPA導入、オンライン申告拡充なども見据え、さらなるDX推進を進めています。

参考:【会談記事】時間外勤務50%削減をかなえた、大分市役所市民税課のオンサイトBPO実例とは?

同様に、徳島県徳島市でも繁忙期の業務負担軽減のためBPOを選択し、導入初年度から、時間外勤務40%超の削減に成功しました。BPOによる業務標準化や外部委託による職員の負担軽減は、業務プロセスの見直しやDX推進といった施策を進めやすくなる効果も期待できる取り組みです。

参考:【会談記事】専門知識を持つ管理者がリソースマネジメントを担う「オンサイトBPO」活用で、導入初年度から時間外勤務40%超削減を達成

【熊本県熊本市】市税を含む複数業務を対象とした行政DXおよび業務集約による効率化

熊本県熊本市では、行政ニーズの多様化・複雑化が進む一方で、定型業務の分散処理による非効率さや業務負担増が課題となっていました。その解決のために実施したのが、BPRによる全庁的な業務調査です。

処理件数や市民サービスへの影響度を踏まえ、委託可能なノンコア業務を選定。「総合行政事務センター」を設置し、市税関連を含む複数業務の定型処理を集約することで、業務の一元化と効率化を実現しました。

さらに、OCRや進捗管理システムを導入し、紙とデータが混在する業務の標準化・可視化を推進しています。審査や入力、通知作成などの工程を集約したことで、処理の迅速化と安定運用につながっています。

その結果、時間外勤務削減や人員配置が最適化され、創出したリソースは企画立案や市民対応へ充当する体制を構築できました。業務標準化と属人化防止により、将来的な業務拡張にも柔軟に対応しやすい持続的な運営モデルを実現しています。

熊本市総合行政事務センター行政DXと業務集約による効率化の実現|事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

【関連コラム】年間100万枚の書類を電子化し、職員の時間外勤務を削減~熊本市×TOPPANの業務改革|コラム

【東京都豊島区】公金収納業務などの窓口業務を効率化する体制構築

東京都豊島区で、来庁者増加や外国人住民への対応強化を背景に課題となっていたのが、窓口業務の効率化とサービス品質の向上です。同区では、住民基本台帳関連業務をはじめ、公金収納や証明発行、電話対応などを包括的にワンストップで委託。マルチスキルを持つスタッフを配置することで、混雑状況に応じた柔軟な人員配置を実現し、窓口滞留の緩和につなげています。

また、窓口進捗管理システムを導入し、各工程をリアルタイムで可視化することで、処理遅延防止と業務効率化を推進しました。

さらに、多言語対応ツールや専門スタッフ配置により、外国人来庁者への対応力強化にも取り組んでいます。オンライン申請の改善提案や自動交付機利用促進も進め、「来庁不要区役所」の実現を後押しするなど、窓口業務の効率化と住民満足度向上に取り組みました。

窓口業務の体制構築と運営支援で実現する自治体業務効率化 |事例紹介|TOPPAN SOCIAL INNOVATION

税務DXで職員が本来業務に集中できる体制へ

税務DXは単なるシステム導入やデジタル化ではなく、業務全体を見直し、現場負担を軽減するための取り組みです。業務プロセスの整理やBPR、外部リソースの活用を通じて定型業務を効率化することで、職員の余力を創出できます。

また、電子申告や自動化ツールの活用により、住民利便性の向上と業務効率化を同時に実現することも可能です。

税務DXは、一度に大きく変革するのではなく、スモールスタートで段階的に改善を重ねながら、無理なく定着させることが重要です。創出された時間を、判断業務や住民対応など本来注力すべき業務へ振り向けることで、持続可能で質の高い行政サービスにつながります。

TOPPANでは自治体の税務DX支援を行っています。進め方にお悩みの際はぜひご相談ください。

TOPPAN SOCIAL INNOVATION WEB 編集部

参考文献

  • 税務行政のデジタル・トランスフォーメーション|国税庁(https://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/digitaltransformation2023/index.htm)
  • 主税局ビジョン2030|東京都主税局(https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/tax/vision2030_202107)

最新コラム

関連コラム

資料ダウンロード

関連ソリューション

関連事例

関連コラム