2026.06.15

地域資源を関係人口創出につなげる。TOPPANの地域交流企画プログラム「生活価値体験ツアー」を活用した農村振興

富山県で実施された「生活価値体験ツアー」による農村関係人口創出の取り組みが、農林水産省の「農山漁村振興への貢献活動に係る取組証明書」を取得しました。取り組みの内容と、TOPPANの地域資源を活かした農村関係人口創出の考え方を解説します。

この記事で分かること

・「生活価値体験ツアー」の事例と効果
・生活価値体験ツアーを活用した関係人口創出のポイント

農山漁村が抱える地域課題

日本の農山漁村では、人口減少や過疎化、高齢化により、産業・インフラ・行政運営など多岐にわたる課題が表面化しています。とくに深刻なのが、産業の衰退と労働力不足です。後継者の不在による耕作放棄地の拡大や、手入れの行き届かない人工林の増加などが問題となっています。

なかでも、傾斜地・輸送効率の悪さといった地形的な制約と小規模経営が多い中山間地域では、収益性の向上が難しいのが現状です。

こうした状況の打開策として近年注目されている新たなテーマが、「関係人口」の創出です。単発イベント型の観光振興や移住・定住とは異なり、地域外の人が継続的にその地域と関わる関係人口を増やすことで、地域へ労働力や消費、活気をもたらすことが期待されます。

さらに、地元の住民にとっても暮らし・文化の新たな価値を再発見するきっかけにもなります。

農林水産省による「農山漁村振興への貢献活動に係る取組証明書」の制度が開始

2026年3月、農林水産省は2025年度の「農山漁村振興への貢献活動に係る取組証明書」を取得した50の企業等を決定し、証明書の授与を行いました。

「取組証明書」を取得した企業として、多様な人材が農村に関わる機会の創出や、農村における所得向上や雇用創出、地域レジリエンスの向上やコミュニティ活性化などへの貢献が認められた50の企業が選出されています。

この制度は、企業等による農山漁村の課題解決に向けた取り組みを、農林水産省が公式に証明するものです。証明書には、地域課題解決への取り組みを証明する「取組証明書」と、特定の社会・環境インパクトの創出を証明して資金調達等につなげる「インパクト証明書」の2種類があります。

富山県で実施した「生活価値体験ツアー」による農村関係人口創出への企画支援・広報支援の取り組みも、そのひとつに選出されました。

参考:【農林水産省】富山県での生活価値体験ツアーによる農村関係人口創出の取組で「農山漁村振興への貢献活動に係る取組証明書」を取得!

生活価値体験ツアーとは

生活価値体験ツアーは、都市で暮らす人が地方の仕事や暮らしに実際に触れ、ときには地域の困りごとの解決にも関わることができる地域交流・地域体験ツアーです。たとえば、雪国の雪かき体験や、港町での漁網の手入れ、広い農地での農作業などを地元の人と一緒に体験します。

通常の観光との違いは、名所を巡るなど「見る・食べる・買う」を中心とした旅ではなく、地域で暮らす人の営みや生業に触れる体験を通じて、参加者と地域の継続的な接点が生まれる点です。

参加することでその地域の生活文化や地域課題への理解が深まるため、参加者が「お客さん」から「地域の応援者」へと自然に変化していきやすいという特徴があります。

地方自治体・参加者・地域事業者のそれぞれにメリットがあり、課題解決と地域の魅力の再認識につながる仕組みです。

【関連サービス】生活価値体験ツアー

生活価値体験ツアーの開催事例

取組証明書の制度が発足した初年度の今回、取組証明書を取得した富山県でのツアーをはじめ、各地でどのような取り組みが行われているかをご紹介します。

【富山県富山市】耕作放棄地での干し柿づくりと郷土料理を満喫

富山市山田谷地区では、かつては串柿・干し柿づくりが盛んに行われていましたが、需要の低下とともに生産縮小や廃業する農家が増えてきました。耕作放棄地が拡大し、都市部への人口流出によりコミュニティが衰退した結果、野生動物の活動領域が広がり獣害という新たな問題も発生していました。

そこで、柿の木が残る耕作放棄地での収穫・干し柿づくりや、害獣対策(電気柵外し)の体験、郷土料理(熊鍋料理)を囲むといった生活価値体験ツアーを開催。地域のリアルな暮らしに根ざした体験が組まれ、県外からも多くの参加者が集いました。

参加者にとっては単なる体験コンテンツではなく、地域の手仕事や食文化、農村のリアルを知る機会となりました。放任柿や獣害という地域課題そのものを、地域外の人にとっての体験価値へ転換した好例といえます。

参考:【富山県富山市】10/25~10/26開催ツアー体験レポート:1日目

参考:【富山県富山市】10/25~10/26開催ツアー体験レポート:2日目

【静岡県森町】中山間地域での栗収穫・いが剥がし体験

地域課題に関連するテーマに限らず、地域の生業や食文化の魅力を「価値ある体験」として再構築した取り組み事例もあります。

「遠州の小京都」と称される静岡県森町は、地元の栗や柿を使った和菓子が有名な地域です。同町では、人口減少や高齢化の進行により離農者が増えるなか、地域の魅力を多くの人に発信するための生活価値体験ツアーを開催しました。

参加者は、栗園での収穫作業や栗の「いが」剥がし体験をはじめ、地元食材を使った飯ごう炊飯、町内で作られた栗蒸し羊羹の食べ比べなど、森町ならではの体験を満喫しました。

地域側が一方的に“もてなす”のではなく、体験を通じた自然な交流によって、参加者・地域住民双方の満足度向上を実現した事例です。

参考:【静岡県森町】9/27開催ツアー体験レポート

地域資源を観光イベントで終わらせないために。
絆を育む生活価値体験

地域には、外から見ると魅力的でも、地域内では当たり前になっている暮らしや生業がたくさんあります。地域の魅力を発信するためには、特別な観光資源を新たに作るよりも、外部の人にとって学びや発見になる「地域の日常の営み」を掘り起こし、参加者が関われる余地を設計することが求められます。

生活価値体験ツアーは、そうした地域資源を体験として磨き上げ、都市生活者との継続的な接点をつくることで、まちのファン育成と関係人口創出につなげる取り組みです。
富山県で実施した「生活価値体験ツアー」による農村関係人口創出への企画支援・広報支援の取り組みでの農林水産省の取組証明書の取得は、農山漁村振興に係る取り組みとして公式に認められたことを示すものです。

単発の観光イベントで終わらせず、地域資源を体験として磨き上げ、参加者との関係を継続させることで、関係人口創出につながります。生活価値体験ツアーは、観光イベントを関係人口創出の入口へと発展させるための、ひとつの実践的なヒントになるはずです。

TOPPANでは、地域課題の選定から参加者募集、ツアー催行までを一貫してサポートいたします。地域活性化施策として生活価値体験ツアーにご興味をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。

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