2026.08.06

SDGsにおける自治体の役割とは?17目標との関係性や実践のためのステップ

自治体が果たすべきSDGsの役割について、17の目標との関係性を軸に解説します。また、国の支援施策や実践ステップ、自治体の取り組み事例、SDGsウォッシュを防ぐポイントもご紹介します

人口減少や少子高齢化、脱炭素、地域経済の活性化など、自治体が抱える課題は複雑化・多様化しています。こうした課題を解決し、持続可能な地域づくりを進めるための指針として注目されているのが
「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」です。

しかし、「SDGsをどのように自治体行政へ落とし込めばよいのか」「実効性のある取り組みにするには何が必要なのか」と悩む担当者も少なくありません。

本記事では、自治体に求められるSDGsの役割を17の目標との関係性から整理し、国の支援制度や実践ステップ、自治体の取り組み事例、SDGsウォッシュを防ぐポイントについてわかりやすく解説します。

この記事でわかること

・SDGsにおける自治体の役割
・SDGsにおける自治体の役割を実践するための手順とポイント
・自治体におけるSDGs取り組み事例

SDGsにおける自治体の役割とは?17目標との関係性

SDGsの17目標は、環境・経済・社会のあらゆる分野と関わっており、自治体には地域課題と結びつけて施策へ落とし込む役割があります。福祉・教育・防災・産業振興・インフラ整備など既存の行政施策を17目標の視点で整理することで、総合計画や地方創生施策と一体的に推進しやすくなります。 また、SDGsは単なる環境施策ではなく、行政・企業・住民が共通の目標を持ち、持続可能な地域づくりを進めるためのフレームワークとして活用することが重要です。 ここでは、SDGsの17目標と自治体行政の関係性を整理し、それぞれの目標において自治体が果たすべき役割を解説します。

自治体の役割 対応するSDGsの17目標
住民福祉の向上 1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
10.人や国の不平等をなくそう
持続可能なまちづくり 6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任 つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
地域経済の活性化 8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
共創プラットフォームの構築 16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう

住民福祉の向上とソーシャル・インクルージョンの実現

SDGsの目標1・2・3・4・5・10に掲げられている、貧困の解消や健康、教育、ジェンダー平等、格差の解消などの住民福祉に直結する内容は、自治体行政とのかかわりが深く、誰一人取り残さない地域づくりの基盤となります。

福祉・医療・子育て・教育・男女共同参画などの施策を一体的に推進することで、すべての住民が安心して暮らせる包摂的な地域社会の実現につながります。

また、地域の実情に応じて支援が必要な人へ適切なサービスを届けるとともに、企業やNPOなど多様な主体と連携してソーシャル・インクルージョンを推進することも、自治体の重要な役割です。

持続可能なまちづくり

SDGsの目標6・7・11・12・13・14・15は、水・エネルギー・資源循環・気候変動対策・生物多様性の保全など、持続可能なまちづくりを支える重要なテーマです。 自治体には、上下水道や廃棄物処理、脱炭素、防災、自然環境保全といった行政施策を、地域特性を踏まえながら総合的に推進し、安全で環境負荷の少ない地域社会を実現する役割があります。 さらに地域資源の有効活用や住民・事業者との協働を通じて、環境・経済・社会の調和が取れた持続可能なまちづくりを進めることも、自治体が果たすべき大きな役割です。

地域経済の活性化

SDGsの目標8・9では、働きがいのある雇用の創出や持続可能な経済成長、産業振興、強靱なインフラ整備など、地域経済の活性化と地方創生につながる取り組みが掲げられています。

地域産業の競争力強化や創業支援、デジタル化の推進、公共インフラの整備などは、活力ある地域経済と暮らしやすいまちを実現する重要な施策です。

地域資源や民間事業者との連携を生かしながら、テクノロジーの活用や産業基盤の強化を進め、誰もが生き生きと働ける持続可能な経済をデザインすることが求められます。

行政・企業・住民を繋ぐ共創プラットフォームの構築

SDGsの目標16・17に掲げられているように、SDGsの実現には、透明性と信頼性の高い行政運営を基盤として、行政・企業・住民・教育機関など多様な主体が連携する仕組みづくりが欠かせません。

地域課題や目標を共有し、それぞれの強みや資源を生かした協働を促進することで、単独では解決が難しい課題にも継続的に取り組めるようになります。

自治体が果たすべき役割は、多様な主体をつなぐコーディネーターとしてパートナーシップを形成・発展させ、持続可能な地域づくりを支える共創プラットフォームを構築することです。

自治体の役割を後押しする国の取り組み

自治体によるSDGsの取り組みを後押しするため、国はさまざまな支援制度を展開しています。その代表格が、持続可能なまちづくりに取り組む自治体を認定する「SDGs未来都市」と、その中から特に先導的なプロジェクトを選定して資金支援を行う「自治体SDGsモデル事業」です。先進事例の創出と全国への横展開を目的として推進されています。

また、内閣府が設置した「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」を通じて、自治体と企業・団体とのマッチングや情報共有を支援し、多様な主体による共創を促進しています。

こうした支援制度や先進事例を積極的に活用することで、自治体は地域の実情に応じた施策を効率的に推進し、実効性の高いSDGsの実現につなげられます。

参考:地方創生SDGs官民連携プラットフォーム

参考:SDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業

SDGsにおける自治体の役割を実践するための5ステップ

SDGsを実効性のある施策として推進するには、目標を掲げるだけではなく、地域課題の把握から計画策定、施策の実行、効果検証・改善までを段階的に進めることが重要です。総合計画や地方創生施策と連動させるとともに、庁内外の関係者が共通認識を持ち、継続的に取り組める推進体制を構築する必要があります。

ここでは、自治体がSDGsを持続可能な地域づくりへつなげるための基本的な実践ステップをご紹介します。

1.現状の地域課題とSDGsのマッピング

SDGsを実効性のある施策へつなげる最初のステップは、人口動態や産業、環境、福祉などの地域課題を整理し、それぞれがSDGsの17目標のどこに関係するのかを可視化することです。

TOPPANは、国際連合地域開発センター(UNCRD)を中心とする「自治体SDGsモニタリング研究会」の立ち上げに参画し、自治体がSDGs達成度を効果的に測定する評価指標の開発を進めてきました。

この「自治体SDGsモニタリングの手引き」を活用することで、地域のSDGs達成度を客観的に把握し、強みや課題、優先的に取り組むべき施策を明確にできます。現状をデータに基づいて分析し、地域の実情に応じたKPIや目標を設定することが、その後の施策立案や進捗管理の実効性向上につながるでしょう。

参考:地方自治体SDGs達成度評価データブック | 技術・サービス | 大日本ダイヤコンサルタント

2.庁内推進体制の構築

SDGsを全庁的に推進するには、企画部門だけでなく、福祉・環境・産業・教育など関係部署が連携できる推進体制の構築が不可欠です。総合計画や個別計画との整合性を図るとともに、各部署の役割や目標を明確にすることで、部門横断的な施策を円滑に進められます。

さらに、推進組織の設置や進捗管理の仕組みを整備し、定期的な情報共有や効果検証を行うことで、SDGsの取り組みを継続的に改善していくことができます。

3.重点目標と具体的な施策の検討

次に、地域課題や将来像を踏まえ、優先的に取り組むSDGs目標を設定し、総合計画や地方創生施策と連動した具体的な施策へ落とし込むことが求められます。施策ごとにKPIや実施スケジュール、担当部署を明確にすることで、実効性の高い事業計画を策定しやすくなります。

限られた予算や人員を有効に活用するためにも、BPRやDX、民間事業者との連携を視野に入れ、地域の実情に応じた施策を検討しましょう。

4.パートナーシップによる施策の実行

SDGsの実現には、行政だけでなく、企業・大学・NPO・地域団体・住民など多様なステークホルダーと連携し、それぞれの強みを生かして施策を実行することが重要です。

官民連携や地域資源、デジタル技術を活用することで、限られた予算や人員では対応が難しい地域課題にも効果的に取り組めます。

また、役割分担や目標を共有しながら継続的な協働体制を構築することで、地域全体で持続可能なまちづくりを推進できます。

5.PDCAと情報発信

SDGsの取り組みを継続・発展させるためには、KPIなどを活用して進捗や成果を定期的に評価し、PDCAサイクルを回しながら施策を改善することが欠かせません。評価結果を総合計画や次年度施策へ反映することで、地域課題や社会情勢の変化に応じた柔軟な行政運営につながります。

さらに、取り組み状況や成果を住民・企業へ積極的に情報発信し、透明性を確保することで、新たな協力や地域全体のSDGs推進につなげることも可能です。

自治体の役割を体現するSDGs取り組み事例

SDGsを地域に定着させるには、地域課題に応じた施策を着実に実行し、成果につなげている先進事例から実践のポイントを学ぶことが有効です。TOPPANは、BPOやDX、データ活用などの知見を生かし、自治体と連携しながらSDGsに寄与する地域づくりを支援しています。

ここでは、自治体のSDGs推進を支えるTOPPANの取り組み事例をご紹介し、持続可能な地域づくりを進めるためのポイントを解説します。

SDGs認知度の向上による自分ゴト化の推進

愛知県蒲郡市では、市民や企業へのSDGsの認知拡大と主体的な行動を促すため、地域特性を生かした普及啓発施策を展開しました。

「SDGsすごろく」の制作や市民参加型ワークショップの実施により、SDGsを身近なものとして考えられる機会を創出するとともに、市民主体の取り組みを推進しています。

あわせて、市独自のSDGs指標と評価ツールを整備し、総合計画と連動した進捗管理を実現することで、継続的な施策改善にもつなげています。

参考:市民への普及啓発を目的としたSDGs推進事業

公民連携による大都市型SDGsモデルの創出と総合支援

神奈川県横浜市では、環境・経済・社会課題を統合的に解決する「横浜型大都市モデル」の創出に向け、民間主体のSDGsデザインセンターを設立しました。

Webプロモーションによる情報発信や、認証制度「Y-SDGs」の窓口運営、多様な主体をつなぐマッチング支援などを、BPOを活用して実施しています。これにより、地域課題のニーズと企業のシーズ(保有する技術やノウハウ)を横断的に結びつけ、持続可能な社会基盤づくりに向けたイノベーション創出を後押ししました。

参考:環境・経済・社会的課題の統合的解決を図る SDGs「横浜型大都市モデル」の創出

DXを活用した使用済み紙おむつのリサイクルと資源循環

神奈川県鎌倉市と東京都では、廃棄物の多くを占める使用済み紙おむつの環境負荷軽減を目指し、回収から製品化までを一貫して行う完結型リサイクル事業の実証実験を実施しました。

センサーや動画再生機能を備えた回収ボックス「PoyPort」の設置や、AIを活用した効率的な回収ルートの設計など、各種DX施策を取り入れています。デジタル技術によって市民の行動変容を促すとともに、効率的な回収網を構築し、脱炭素化に寄与する循環型社会の形成を後押ししています。

参考:環境負荷軽減と資源循環を両立する使用済み紙おむつのリサイクル施策

資源ごみリサイクルと地域通貨の連携による地域経済活性化

高知県香美市において、人口減少にともなう域内消費の低下という課題への取り組みとして行われたのが、地域電子マネー「kamica」を活用した、補助金に頼らない循環システムの構築に向けた実証事業です。

リサイクルステーションに専用システムを搭載し、住民がペットボトルなどの資源ごみを廃棄すると、有価物の売却益を原資としたポイントが付与される仕組みを導入しました。

これにより、社会課題の解決につながる行動へのインセンティブを創出し、住民の環境意識や行動変容を促すとともに、キャッシュレス決済による域内消費の促進につなげています。

参考:補助金に頼らない地域電子マネーの循環システムを資源ごみのリサイクルで構築

BPOとオンライン申請を活用した省エネ家電導入

福岡県北九州市では、家庭でのエネルギー消費削減と脱炭素型ライフスタイルへの転換を目指し、省エネ家電の購入費用を還元するキャンペーンを実施しました。

オンライン申請フォームの構築によるDX化に加え、高いセキュリティ環境下でのコールセンターや事務局運営、申請内容の審査、商品券の発送業務にBPOを活用することで、円滑で安全な事業運営を実現しています。

さらに、還元を市内店舗限定の商品券で行うことで、環境保全と地域経済の活性化を両立させています。

参考:エコ家電の購入促進で脱炭素社会に向けた取り組みを支援

市の森林クレジットでオフセットを実施した企業とともに森林保全活動に参加

TOPPANは、岩手県陸前高田市の「企業等による森づくり制度」に基づき提供された区画を、「みんなのカーボンオフセットの森」として整備しました。

陸前高田市森林組合の指導のもと、ノウハウがなくても簡単にカーボンオフセットに取り組めるサービスである「みんなのカーボンオフセット®」のパートナー企業とともに、森林保全活動を実施しています。

パートナー企業が活動する機会を創出するとともに、脱炭素社会への貢献意識の醸成を支援した取り組みです。

参考:TOPPAN、陸前高田市で「みんなのカーボンオフセットの森」森開き式を実施

自治体がSDGsウォッシュを防ぎ、信頼される推進体制をつくるポイント

SDGsを地域づくりに生かすためには、目標を掲げるだけでなく、地域課題の解決につながる実効性のある取り組みを継続することが重要です。

一方で、具体的な成果や進捗管理をともなわない取り組みは、SDGsに取り組んでいるように見せかけながら実態や成果がともなっていない「SDGsウォッシュ」と捉えられ、住民や事業者からの信頼を損なうおそれがあります。

自治体が本来の役割を果たすためには、どのような点を意識すべきなのか、ここでは、SDGsウォッシュを防ぎ、信頼される推進体制を構築するためのポイントを解説します。

目標と指標を具体的に設定する

SDGsを実効性のある取り組みにするには、地域課題に応じた目標を設定したうえで、達成状況を測定できる具体的なKPIや指標を定めることが不可欠です。数値目標や達成時期を明確にすることで、施策の進捗や成果を客観的に評価し、改善につなげやすくなります。

また、総合計画や個別計画との整合性を図りながら、地域の実情や社会情勢の変化に応じて指標を継続的に見直すことで、実効性の高いSDGs推進を実現できます。

外部評価の仕組みを導入する

SDGsの取り組みの客観性と透明性を高めるには、有識者や住民、企業など第三者による外部評価の仕組みを導入することが重要です。多様な視点から施策の成果や課題を検証することで、行政内部だけでは気づきにくい改善点を把握し、取り組みの実効性を高められます。

さらに、評価結果を施策の見直しや情報公開に活用することで、住民からの信頼を高めるとともに、SDGsウォッシュの防止にもつなげられます。

SDGsロゴの使用基準を厳格にする

SDGsのロゴやアイコンは、国連が定めるガイドラインに従って適切に使用し、取り組みの内容をともなわない安易な利用は避けなければなりません。<mark>ロゴを広報目的だけで使用するのではなく、具体的な施策や成果とあわせて発信することで、SDGsへの本気度や取り組みの信頼性を示せます。</mark>

使用基準を庁内で共有・徹底することで、誤解を招く表現やSDGsウォッシュと受け取られるリスクの低減につながるでしょう。

トレードオフを直視し開示する

SDGsの施策は、すべての目標を同時に達成できるとは限らず、環境・経済・社会の間でトレードオフが生じる場合があることを認識することが重要です。<mark>施策によるメリットだけでなく、想定される課題や影響も整理・公開することで、住民や関係者との合意形成を図りやすくなります。</mark>

また、トレードオフをふまえて施策を継続的に見直し、よりバランスの取れた意思決定につなげることで、透明性と信頼性の高いSDGs推進を実現できます。

SDGsにおける自治体の役割を押さえて本質的な地方創生へ

自治体におけるSDGsは、17の目標を地域課題の解決や持続可能な地方創生へ結びつけて推進することが重要です。

実効性のある取り組みを継続するには、庁内外の連携を図るとともに、PDCAの実践や客観的な評価を通じて、地域の実情に応じた施策へ改善を重ねていく必要があります。民間企業や地域団体の知見・リソースも活用しながら、多様な主体との共創によって、持続可能な地域づくりを推進していくことが求められます。

TOPPANでは、自治体のSDGs推進を支援するさまざまなソリューションを提供しています。SDGs推進の進め方にお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

TOPPAN SOCIAL INNOVATION WEB 編集部

参考文献

  • 地方創生SDGs・「環境未来都市」構想・広域連携SDGsモデル事業|内閣官房地域未来戦略本部事務局、内閣府地方創生推進事務局 (https://www.chisou.go.jp/tiiki/kankyo/miraitoshi.html)
  • 地方創生SDGs官民連携プラットフォーム |内閣府 地方創生推進事務局 (https://future-city.go.jp/platform/)

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